「野球肘」と一致するもの

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の言葉の罠

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の野球指導法の罠

近年、「プロ野球選手がみんなやっているから正しい」という魔法の言葉を使って選手を納得させるコーチやトレーナーが非常に多い印象です。実際僕の生徒さんの中にも、プロトレーナーやプロコーチから同じ言葉を言われたという選手が多数います。しかし「プロ野球選手がみんなやっている」=「正しい」という図式はまったく成り立ちません。

僕の投球フォーム指導法は、マスターすればパフォーマンスが上がるだけではなく、肩肘の怪我を減らすこともできます。これは医学的にも解剖学的にも正しい動作であり、野球選手を専門的に診ているスポーツ整形外科の先生やPTさんたち、柔道整復師のみなさんからもお墨付きをいただいています。

その指導法に関しては僕が監修しているビデオ『野球肩野球肘予防改善法・徹底解説ビデオ』をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、今プロで活躍している選手たちの多くは、野球動作を科学的に理解していないコーチたちの指導を受けてきたわけです。

例えば僕の場合、トップポジションに関しては内旋型トップポジションではなく、外旋型トップポジションを推奨し指導しています。内旋型トップポジションは肘の内側を怪我しやすく、肩にも負担がかかります。一方外旋型トップポジションで投げられれば、肩肘への負荷を高めることなく投げ続けることができます。

と言ってももちろん、常識外の球数を投げたり、疲労した状態で投げてしまえばどんなフォームだったとしても肩肘を痛めてしまいます。しかし常識内の球数や、極度の疲労状態で投げているわけではない場合、正しい形の外旋型トップポジションから投げられれば、まず肩肘を痛めることはなくなります。

これは僕が勝手に推奨している理論というわけではなく、人間の体の構造上、解剖学的に唯一の正しい投げ方となります。僕はプロコーチとして、理論を伝えられないことは絶対に選手たちに伝えることはしません。ですので「プロ野球選手たちもみんなそうしている」という説明で終わってしまう指導をすることも絶対にありません。

毎年数多くの選手が肩肘を痛めているプロ野球の現状

近年、高校生の生徒さんからちょくちょく言われることなのですが、高校の野球部で見てくれているプロトレーナーに、僕が指導した外旋型トップポジションだと肩肘を痛めやすいと言われた選手が複数人いるんです。

ちなみに肩を痛めやすいと言われただけで、なぜ痛めやすいのかという理論の説明は受けていない選手ばかりです。そして言われたことと言えば共通して「プロ野球選手はみんなこの形(内旋型トップポジション)から投げている」という説明だけだったそうです。

内旋型トップポジション 外旋型トップポジション

確かにその通りです。プロ野球選手のほとんどは内旋型トップポジションから投げています。これは確かな事実です。でもよく考えてみてください。毎年、一体何人のプロ野球選手たちが肩肘を痛めていますか?もし内旋型トップポジションが肩肘に負荷のかからない正しい投げ方なのだとすれば、プロ野球選手たちが肩肘を痛めることなど決してないはずです。

しかし12球団を見渡してみると、同年で1球団で4人も5人も肘の手術(トミージョン手術、TJ手術)を受けていたりします。「プロ野球選手がみんなそうしているから正しい」という論拠に乏しい指導をしているコーチ・トレーナーは、果たしてこの事実をどう考えているのでしょうか?とても気になるところです。

僕のレッスンを受けてくださっている選手の皆さんは僕のレッスンにより、「なぜ肩肘を痛めるのか?」「どうすれば痛めなくなるのか?」という点をしっかりと理解してくれていると思います。もちろん肩肘を痛めない投球フォームの習得には個々それぞれの時間がかかるわけですが、習得・未習得を別にすれば、どうすれば肩肘を痛めずに投げられるのかということを、小学生であっても理解してくれています。

プロコーチやプロトレーナーは「プロ野球選手がそうしているから正しい」と選手に伝えるのではなく、もっと解剖学的・医学的根拠に基づいて指導をすべきです。少年野球のボランティアコーチの方々にそこまで求めることはできませんが、しかしプロを名乗っているコーチやトレーナーであれば、そこまで学ぶことは義務だと思います。

コラム:野球肘とは?|内旋型トップポジションが野球肘を生み出す!

僕はお医者さんに野球フォームの指導法を指導するコーチ

一般的な整形外科の先生は筋肉や体の仕組みや治療法に関してはまさにプロフェッショナルです。お医者さんの医学的知見には僕らは太刀打ちできません。PTさんや柔道整復師の方々であっても、体の仕組み、リハビリ方法、コンディショニング法に関してはしっかり勉強されています。それぞれ国家資格ですからね。

でも「怪我をしにくい野球のフォーム」となると話は別です。もちろん野球を専門にされているスポーツ整形の先生などはフォームまでしっかりと勉強されているケースもありますが、そのような外科の先生は日本には数えるほどしかいらっしゃいません。そのため僕のようなコーチがお医者さん、PTさん、柔道整復師の方々に、肩肘を痛めにくいフォームの指導法のレクチャーを行なっているわけです。

僕のようなプロフェッショナルコーチは、医学的知見はそこそこしかありません。例えばお医者さんが使う専門用語をある程度理解していたり、レントゲン写真を見て異常を読み取る程度のことしかできません。ですが肩肘を痛めない理論的なフォームの指導や、痛めてしまった理由の解明に関してはプロフェッショナルです。このあたりに関しては僕はお医者さんにさえ絶対に負けることはありません。もちろんこの点だけですが。。。

「プロ野球選手がそうしているから正しい」という指導法は、これはプロコーチやプロトレーナーが行って良い指導法ではありません。これは週刊ベースボールで連続写真を見てフォームを学んでいるボランティアコーチの指導法です。ボランティアコーチであれば「プロ野球選手はみんなそうしている」という指導法が限界だとも言えますし、そうすることでしか説得力を増すことは難しいのかもしれません。

医学書は本当に高いけど、そこに投資するのがプロ!

しかしプロコーチ・プロトレーナーであれば、やはり一冊1〜2万円、安くても一冊5,000円程度する野球肩野球肘に関する医学書を開き、プロ野球選手たちのどの動作が正しくて、どの動作が誤りなのかを理論的に学び、分かりやすく選手たちに伝える技術が必要です。

ハッキリ言って医学書は本当に高いです。都内であれば新宿の紀伊國屋、池袋のジュンク堂などに行くと医学書がズラッと並んでいるわけですが、安い医学書というものは存在しません。週刊ベースボールよりもページ数が少ないスポーツ医学の月刊誌であっても3,000円くらいします。

ですがプロコーチ、プロトレーナーであればそこに投資しなければどんどん時代に取り残されてしまいます。ちなみに野球技術に関しては常にアメリカから日本に入ってくるという順序のため、英語をある程度理解できれば、最新の野球技術に関する論文もチェックできるようになります。

僕ももちろん最新の技術を英語の論文や、アメリカのコーチのレクチャーなどから学んでいます。2024年で僕はプロコーチ歴15年目となるわけですが、それでも未だに学ぶことだらけです。僕は他のプロコーチよりも多く学んでいる自負がありますが、それでもまだまだ時代に追いつくのがやっとです。

話は長くなりましたが、とにかく言いたいことは、「プロ野球選手のフォームを見て学ぶ」というのはアマチュアのやり方です。プロは「プロ野球選手のフォームを観察して、どの動作が理論的に正しくて、どの動作が理論的に良くないのか」を理論的に理解し、さらに理論的かつ分かりやすく説明できなくてはいけません。

僕もまだまだ成長過程のプロコーチではありますが、他のプロコーチやプロトレーナーと話をしていると、「この人たちは最新の野球技術を学んでいないんだなぁ」と思うがしばしばあります。

ですのでもしプロコーチやプロトレーナーの指導を対価を支払って受ける場合は、ちゃんと理論まで説明してくれるかを先に確認するようにしてください。フォームに関して理論を説明できない方は、理論的に誤った指導をする可能性が高いため要注意です。せっかくお金を払って指導を受けるのですから、やっぱりちゃんとした理論を持った方に教わるのが一番です。

少なくとも「プロ野球選手がみんなやっているから」とか、その類の言葉ですべてを説明しようとするコーチには高いお金を支払わないようにしましょう。

Yahoo!ニュースで特集されていた監督の指導法に対する疑問

Yahoo!ニュースで特集されていた監督の指導法に関する疑問

2023年4月から5月くらいにかけて、Yahoo!ニュースである中学硬式野球チームの監督が、「最新の指導法を学んでいる指導者」として特集されていました。しかしその監督のコメントを読んでいくと、とても最新指導法を学んでいるようには思えないことを話されていました。

結論から言うとその監督は、体重を軸足に乗せて打つとアウトサイドインになり、必ず手打ちになるという趣旨のことを仰っていました。そしてその監督曰く、しっかりと体重移動をして打つとインサイドアウトのスウィングになるのだそうです。しかしこれはまったく理論的ではありませんし、理論的には完全に間違いだと言えます。

このチームはこれまでに三回全国大会で優勝しているそうですが、監督が名将だからなのか、それとも集まった選手が最初から抜群のセンスを持っていたからなのかは僕には分かりません。

さて、この監督に言わせれば体重を軸足に乗せて打つとアウトサイドインになるとのことでしたが、毎年安定して成績を残しているプロ野球選手やメジャーリーガーたちのインパクトの瞬間の体の形をよく観察してみてください。体重をしっかりと軸足に乗せ切り、捕手側に上半身を傾けて打っている打者ばかりのはずです。大谷翔平選手ももちろんそうですね。

つまりこの監督は、このように軸足に体重を乗せて打っているプロの打者たちは手打ちであり、スウィングはアウトサイドインだと仰っているわけです。ちなみに体重を軸足に乗せて、上半身を捕手側に傾けてインパクトを迎える技術をステイバックと言います。

もちろん一流打者たちだって投手のボールに崩されれば体重が非軸足に流れて、スウェーしながら振ってしまうこともあります。しかしよほど崩されていなければ、体重をしっかりと軸足に乗せて打っているプロ野球選手やメジャーリーガーたちばかりです。

問題はこの監督がどのような方法で最新の野球指導法を学んでいるのかということ

この中学野球の監督は、上述した通り最新の指導法を学んでいる方として特集されていましたが、この監督はステイバックという技術をご存知の上でこのようなお話をされているのでしょうか?記事を読む限りではこの監督がステイバックを理解しているようには感じなかったのですが、もし本当にそうだとしたら、この監督は最新指導法など学んでおらず、自分自身の経験則において自己判断で最新だと思い込んでいるだけなのではないでしょうか。

この監督はしっかりと体重移動をすることによってスウィングがインサイドアウトになり、ヘッドも利いてくると仰っています。しかしインサイドアウトそのものに関しては、体重移動をしようがしまいが、インサイドアウトでバットを振ることは可能です。現に僕のマンツーマンレッスンで上達して打率.400以上をマークしている小中学生は全員、体重を軸足に乗せるステイバックという形でバットを振っています。

体重移動をフォームの中にインストールするかどうかは選手自身の判断であるため、体重移動をした方がヒットが増えるのであれば、体重移動をするウェイトシフト打法で打っていくべきだと思います。しかし打率が.300にも満たないのであれば、なぜ.300に届かないのか、どうすれば.400にしていけるのかを考え、それを可能にするステイバックなどのモーションをフォームの中にインストールしていくべきです。

ちなみに体重移動をするとバットスウィングが水平になりやすく、物理的に重力を使ってバットを振ることができず、腕力に頼ったスウィングになりやすいので注意が必要です。レベルスウィングに関しては、こちらの『レベルスウィングを徹底解説-メリットデメリットを学ぼう』をご覧になってみてください。

10年前の最新野球指導法は現代ではもはや最新とは言わない

最新の野球指導法というのは、常に科学的根拠を以って説明されるべきです。指導者個人の感覚や経験則で語るべきものではありません。例えば今まで昭和のやり方しか知らなかった方が、今から10年前に確立された技術をどこかで学び、それを選手たちに教えたとすれば、その指導者にとってその技術は最新となります。しかし僕らのように現段階での最新指導法を学んでいるプロコーチからすると、10年前に確立された技術はもはや新しくも何ともありません。

ちなみに近年新しく技術として確立されつつあるのが体幹主導型のスウィングです。例えば大谷翔平選手らのフォームがそうですね。もちろん体幹主導で振っていた選手は以前からいたわけですが、これがスポーツ科学として理論的に説明されるようになり、技術として確立されてきたのは近年のことです。

ただし体幹主導型のスウィングは鍛え抜かれた体幹力が必須となりますので、小中学生はもちろん、高校生や大学生でもマスターすることは困難です。そのため現段階では僕は、アマチュア選手には「体幹主導型のスウィングというものも存在する」という説明程度に留めており、実際にアマチュア選手たちにそれを指導することはありません。僕が現段階で体幹主導型のスウィングをコーチングするのはプロ野球選手のみです。

さて、日本のアマチュアチームの指導者たちの中にも、僕らプロコーチが学ぶようなことを頑張って学ぼうとしている方はたくさんいらっしゃいます。現に僕自身、これまでに多数のアマチュアチームの指導者の方に、子どもたちが怪我することなくピッチングやバッティングのパフォーマンスを上げていける指導法をレッスンしてきました。

そのような勉強熱心な指導者の皆さんは、全国大会に行けていなかったとしても、子どもたちに伸び伸びと怪我なく野球を楽しんでもらうことができています。そしてもちろん子どもたちはどんどん上達していき、中学や高校では名門チームのレギュラーになれた子も数多くいます。

子どもたちの肩肘を守るために本当に大切なこととは?

ですが、これはあくまでも僕個人の感想でしかないのですが、上でご紹介した中学硬式チームの監督は、最新の野球指導法などご存知ないように見えるのです。コメントを読んでいても、この監督の言葉には科学的根拠がまったくないからです。

全国大会に行っているから、元プロ野球選手だったから、社会人野球までずっと野球を続けていたから優れた指導者というわけではありません。優れた指導者とは、どんなレベルの選手であっても怪我させることなく上達させられる指導者のことです。

ちなみにこの監督のチームでは子どもたちの野球肘を防ぐために投球練習を少なめの球数に設定しているそうです。しかしこれは野球肘の予防とは言い切れません。なぜなら球数が多かろうと少なかろうと、肘が痛くなる投げ方をしていれば痛くなる子はすぐに痛くなってしまうからです。

野球肘の予防はもちろん無茶な球数を投げさせないことが大切ですが、しかしそれ以上に大切なことは、指導者が子どもたちに肘を痛めにくい科学的に本当に正しい投げ方を指導することです。ですが僕が調べた限り、この監督のチームに所属していた選手や保護者の方にお話を伺っても、そのような指導は見たことないと仰っていました。ちなみに僕の生徒さんの中にはこのチームに所属していた選手が数名います。そのため実際にお話を聞くことができたわけです。

このコラムのまとめ

ただし、もちろん記事の中には含まれていないこの監督の優れた指導法はたくさんあるはずです。ですのでこの記事はこの監督を全否定するためのコラムではありません。あくまでもバッティングの体重移動の有無とインサイドアウトに関するこの監督の説明が、まったく理論的ではないことを指摘しているだけです。

僕自身は、この監督が指導する中学硬式野球に所属していた選手たちを生徒さんに持っていますが、この監督自身とは面識はありません。ただしYahoo!ニュースで紹介されていたこと以外のこの監督の指導法を聞いていても、硬式野球なのに軟式野球の打ち方を教えているようだという印象を僕は持ちました。

この監督は野球教則本も執筆されている方なのですが、この方が自らの指導法を科学的にファクトチェックされているのかどうかは、僕には分かりません。しかし僕が知る限り4冊くらいは本を書かれている方なので、さすがに野球科学や物理は理解していると思いたいのですが、Yahoo!ニュースでのご本人のコメントを拝見する限りでは、僕個人はこの監督が野球科学を理解しているようには感じられませんでした。

しかしこれはあくまでも僕個人が感じたことですので、もしこの監督が普段、科学的根拠満載の指導をチームでされているのだとしたら本当にゴメンなさい!僕が間違っているようでしたら、このコラムはすぐに撤回いたします!

高校生が野球塾に通うのは非常に難しい

高校生と野球塾

僕は2010年1月にマンツーマン専門野球塾を開校して以来、高校生に対するコーチングもたくさん行なってきました。しかし実感としては、高校生のコーチングは非常に難しいというイメージが強く残っています。小学生、中学生、高校生、大学生、社会人野球、草野球、プロ野球の中で、個人的には高校生が一番コーチングしにくいというのが実感です。

その理由として、まず高校の野球部はほとんど毎日活動があるため、レッスンを受けられる時間が非常に少ないことが挙げられます。本来であれば週7回部活動を行うことはできないはずなのですが、このガイドラインに従わずにほとんど毎日部活動を行なっている野球部がほとんどです。このような理由から、まず物理的に高校生のレッスンは非常にやりにくいんです。

恐らく他の野球塾や野球アカデミーでも同じような実感があり、高校生を受け入れている野球塾も数としては多くはありません。僕自身も最近は高校生の受け入れは基本的には休止しています。

僕の場合は高校生と大学生であれば、大学生の指導をすることの方が多く、レッスンも大学生の方がずっとやりやすいという印象を持っています。大学生の場合は仮に部活がほとんど毎日あったとしても、授業次第では毎週しっかりとレッスンを受けられる選手がほとんどだからです。

名門野球部ということで言えば、僕は慶應大学、早稲田大学、明治大学、立教大学、法政大学、東京大学、駒澤大学、亜細亜大学などなど、東京近辺の多くの野球名門大学の選手たちを個別指導してきました。そこには六大学リーグで活躍してプロ入りした選手たちも含まれています。

そして甲子園出場選手のレッスンも多数行ってきましたが、残念ながら高校生を指導して、その高校生が甲子園に出場できたケースは僕の野球塾では一件もありません。小中学生時代に複数年レッスンを受けてくれた子が高校に進み、甲子園に出場したケースばかりです。

詳しくはこれからまた書き進めていきますが、今後僕の場合においては、よほど受講に対し熱心な選手以外は高校生の受け入れは行わない予定です。

当野球塾においての高校球児と大学生選手の受講時の違い

高校生のコーチングが難しいもう一つの理由として、プライドの高さが挙げられます。小学生・中学生時代もずっと野球をやってきて、高校でも毎日ガッツリ野球に取り組んでいることから、高校生は非常にプライドが高いんです。

そういう意味では大学生も同じでは?と思うところですが、大学生の場合はプライドの高さよりも、柔軟性が先行してきます。もちろんすべての高校生・大学生がそうというわけではないのですが、2010年以来の僕の野球塾においてはこの傾向が顕著に表れています。

高校生の場合は、今までやってきた理論や動作と違うことに対し拒否反応を示すケースが多いんです。例えば肘を痛めた選手がいたとします。その選手のフォームを見て、僕が肘が痛くなっている原因を指摘し、フォームの改善方法をアドバイスしていっても、「でも監督はこの投げ方が良いと言っています」という感じで、多くの場面で「でも」という言葉を使ってきます。

冷静に考えれば、そのフォームで野球肘になっているのだから、そのフォームを修正しなければまた肘が痛くなると分かります。しかし高校生の場合はその考えに至るケースが少なく、今までのフォームを少しでも変えていくことに拒否反応を示すことが多いんです。

一方大学生の場合は、肘が痛い、肩が痛い、球速が上がらない、制球力が上がらない、だからフォームを修正したいという考えで僕の野球塾の門を叩いてきます。そのため僕がたくさん伝えていく理論に対しても非常に貪欲で、一生懸命ノートを取ってくれる選手が多いんです。

逆に高校生の場合は、肘痛を治したい、肩痛を直したい、球速を上げたい、制球力を上げたい、というところで思考が止まってしまっている選手が多いようです。繰り返し言いますが、もちろん全員ではありません。しかし全体的に見るとそういう高校球児が僕の野球塾においては多いようです。

肘痛を治したいけど今までやってきたことは変えたくない。球速を上げたいけどフォームを変えたいわけじゃない。という考え方の高校生が多い印象です。高校生・大学生くらいになると、フォームもかなり固まってきています。そのため僕も、フォームを大幅に変更させることはほとんどありません。

もちろん選手が望めば大幅に変えることもありますが、基本的には現在のフォームを崩さずに、細かなマイナーチェンジを積み重ねてパフォーマンスを向上させる方向でレッスンを進めていきます。しかし高校生の場合は、そのマイナーチェンジを受け入れる心構えができていないケースがほとんどのようです。

しかしフォームも変えたくない、今までやってきたことも変えたくない、マイナーチェンジも難しそうでは、野球塾に通ってもらう意味はありません。特に僕のレッスンのように、一緒に練習をするタイプの野球塾ではなく、フォーム改善を専門にした野球塾であれば尚更です。

野球塾で個別レッスンを受ける理想的な流れ

僕の今までのプロコーチとしての経験から言わせてもらえれば、野球塾に通って一番成長できるのは中学生です。その次が中学生と大差なく小学生。続いて大学生という順番になると思います。大人の草野球選手に関しても、本気で受講してくださる方は40代50代でも球速が10km/h前後速くなるケースも多々あります。

投手育成コラム:中学生が野球塾に通うとグングン上達できる3つの理由

ただしこれも繰り返しになりますが、僕のレッスンを受けて本気でパフォーマンスを向上したいと考えている高校生に関しては、ご相談いただければ受け入れを行なっています。しかし試しに受講してみようかな、という程度の高校生に関しては現在はすべてお断りしております。

やはり一番良いのは、レッスンによって5〜6年生までに投打共にしっかりと正しい基礎を身につけて、中学でグングン伸びていくための下地を作ることです。そして引き続き中学でもレッスンを受け続けて、しっかりとした基礎の上に今度は応用などさらにレベルアップした内容を入れていけると、高校・大学に進んでいってもちゃんと活躍できる選手になれます。

実際このような流れで僕のレッスンを受けてくれた高校生は、高校野球で通算打率.400以上打っていたり、奪三振の山を築けたりしています。ちなみに彼らは高校入学後は僕のレッスンは受けていません。困ったことがあると時々LINEで相談を送ってきてくれる程度です。

高校に入ってからではもう手遅れ、というわけではありません。球児自身の考え方次第では高校に入ってからグングン伸びていくことも可能です。しかしできるならば野球塾のレッスンは小学生のうちから受けて、科学的に本当に正しい基礎を身につけ、そして中学で応用を入れていけるように流れを作って受講していただくのがベストです。

しかし高校生になって初めて僕の野球塾の存在を知り、本気でレッスンを受けて本気でレベルアップしたいという選手は、ぜひ保護者の方よりお気軽にメールやLINEにてご相談くださいませ。本気の選手に対しては、僕も本気でコーチングをしています。

助走をつけられる野手の肩への負荷は確かに小さい

野球肘のリスクは投手だけではなく全ポジションにある!?

時々、野球肩野球肘はピッチャー以外は心配いらないと勘違いされている親御さんがいらっしゃいます。「肩肘を痛めないようにうちの子にはピッチャーはやらせない」と考えている親御さんも一定数いらっしゃるようですが、これは間違いです。

確かに球数という面を考えればピッチャーが一番肩肘を痛めるリスクが高いわけですが、しかし他のポジションであってもキャッチボールからノック、ボール回しなどの練習をトータルで考えると、かなりの球数になっていきます。

ステップによって助走をつけてから投げられる内外野手の場合は、肩への負荷を多少抑えることはできると思います。しかし肘への負荷に関しては、本当に正しい投げ方が身についていなければ、助走しながら勢いをつけて投げたとしても負荷を抑えることはできません。

つまり野球肘に関しては、どのポジションも平等にリスクがあるということです。

野手よりも肩への負荷が大きくなりやすい投手

投手の次に肘を痛めやすいのは、2010年以降の僕の生徒さんたちの割合だけで見るならば捕手です。

捕手は試合ではピッチャーの次に球数が多くなり、二塁送球などはほとんどステップせずに投げる必要があります。そのために投げ方が良くないと、あっという間に肘を痛めてしまいます。

肩に関しては、まだステップワークが0ではない分投手よりは負荷は小さくなると言えます。しかし肘への負荷は、投げ方が良くなければスナップスローであっても抑えることはできません。

ちなみに投手がステップするモーションはステップワークとは呼びません。これは厳密にはストライディングと呼び、ステップワークとは別物なんです。ステップは、やはり両足を動かす必要があります。しかし投手の場合は非軸足のみを前に出していきますので、これはステップ"ワーク"とは呼ばないわけです。

ステップワークがない分、投手の場合は肩関節の動きが大きくなりやすく、科学的に本当に正しいフォームが身に付いていない場合、すぐにインナーマッスルを痛めてしまうタイプの野球肩になってしまいます。

野球肘のリスクは全ポジションにある

しかし、肩肘に負荷のかかりにくい科学的に本当に正しい投げ方というものが存在しています。これは体の使い方としては医学的にも正しい動作になるため、たくさんボールを投げても常識の範囲内の球数であれば肩肘を痛めることはほとんどなくなります。

この科学的に本当に正しい投げ方については、投球障害予防改善法-徹底解説ビデオで2時間44分かけて分かりやすくレッスンしていますので、詳しくはビデオをチェックしてもらえたらと思います。

結論として、野球肩野球肘は投手だけに起こるものではありません。野球肩に関しては投手が一番なりやすいわけですが、野球肘に関しては、投げ方が悪ければ全ポジションにリスクが伴います。

しかし僕のレッスンビデオを見ていただき、丁寧に時間をかけて動作改善をしてもらえれば、たくさんボールを投げても肩肘を痛めにくい投げ方を身につけられるはずです。ぜひ親御さんにこのビデオを見ていただき、親御さんがコーチになってお子さんに教えてあげて欲しいなと思います😊

野球肘になる変化球と、野球肘にならない変化球

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なぜ変化球を投げると肘を痛めるのか?!

野球肘になる変化球と、野球肘にならない変化球

野球肘の原因が変化球にあるとはよく言われることですが、これは正解であると同時に不正解でもあります。正しい投げ方をすれば変化球で肘を壊すことはありませんし、正しい投げ方ができていなければ多投しなくても変化球によって肘を痛めてしまいます。

スライダーにしてもシュートにしても他の球種にしても、ストレートとまったく同じ腕の振りで投げられれば肘を痛めることはありません。もちろんそのためにはまず、ストレートを肩肘を痛めにくい良いフォームで投げられるようになっている必要があるのですが💦

正しい変化球のリリースポイント

ストレートの腕の振りで、肩関節が内旋過程からニュートラルになった瞬間、手のひらがほぼ下を向いた状態でボールリリースを迎えられるのが、本当に正しい腕の振り方をした時のストレートのリリースです。しかし手のひらが捕手と向き合って正面を向いた状態でリリースしている場合、球種問わず肘の内側を痛めやすくなります。

まず前者の良いフォームになっていて、ニュートラルになる90°手前で抜くようにリリースするとカーブ、45°手前で切るようにリリースするとスライダー、30°前後手前ならカッターになります。逆にニュートラルになって肩関節が内旋過程ではなく、実際に内旋状態なった瞬間にリリースするとシュートになります。

このように腕の振りはストレートとまったく同じで、どこでリリースするかによってボールにさまざまな回転を与えて投げるのが変化球なんです。間違っても肩関節を外旋させたり、肘を回内・回外させたりしてボールに横回転を与えることはしないでください。あっという間に肘が痛くなります❗️

ちなみにリリースするポイントに関しては、握り方によってのみコントロールしていきます。例えば人差し指を浮かせて、中指の薬指側の面を縫い目にかければ、自然と90°手前でボールは抜けるようになり、縦に大きく割れるドロップを投げることができます。

握り方を変えても上手く変化球を投げられない場合は、肩肘を柔らかく使うことができていないはずです。逆に正しいフォームが身に付いていればスローイングアームの力みもなくなっていき、自然と肩肘を柔らかく使って投げられるようになります。

野球肘と変化球に関する結論

要するに正しい投げ方さえできていれば、小学生が変化球を投げても肘を痛めることはない、ということです。例えばドロップという球種はストレートよりもずっと球速が遅いため、正しいフォームで投げればストレートよりも肩肘にかかる負荷は小さくなります。そのためアメリカではドロップは"セーフティカーブ"と呼ばれているんです。

プロコーチとして僕がオススメしたいのは、ドロップを正しいフォームで投げられるようになり、投球をドロップから始めることで肩肘を柔らかく使う投げ方で慣らし、その後で速いボールを投げ込んでいくという流れのキャッチボールです。肩肘を柔らかく使えていると、ストレートの伸びもアップしていくはずです。

とにかく野球肘にならないようにするためには、まずはストレートを正しいフォームで投げられるようになる、ということです。しかし少年野球の指導現場のほとんどは内旋型トップポジションを子どもたちに教え込んでいて、変化球を投げなくても肘に負荷のかかる投げ方の子が本当に多いんです😭

ですので僕が作った『投球障害予防改善法ビデオ』を、本当に一人でも多くの野球指導者に見ていただきたいと思うわけなのです!

道具の性能に頼ったプレーができなくなる今後の中学野球

道具の性能に頼った野球ができなくなりつつある中学野球

中学生は野球塾のレッスンで科学的に正しいフォームを身につけることで、グングン上達していくことができます。一般的に男子生徒は中学生に入ると身長が伸び始め、体も強くなっていきます。つまり小学生時代にはできなかったレベルのフォームでプレーできるようになる、ということです。

でもその時、科学的に正しいフォームが身に付いていないと体格でしか勝負できなくなり、自分と同じ体格以上が相手になると勝てなくなりますし、そもそも科学的に正しくはないフォームで打ったり投げたりを繰り返していると、必ず怪我をしてしまいます。

さて、なぜ今回は中学生をテーマにしたかと言うと、中学生の体格はもう小学生とは異なりますし、かと言って高校生ほど大人に近いというわけでもありません。つまり文字通り中学生は、小学生と高校生の中間に位置しているとても重要な世代だと言えるのです。そのため今回は中学生をテーマに野球コラムを書いています。

反発係数が木製バット同様になるバットが主流になる高校野球の未来

高校野球では年々低反発バットへの移行が強く推奨されるようになってきました。今までの金属バットというのは本当に飛びすぎるくらい打球がよく飛ぶバットだったのです。ちなみに日本の金属バットは反発係数が高すぎて、アメリカでは使うことはできません。

高反発バットというのは打球がよく飛びますので、打球速度の速さも半端ではなく、実はとても危険なんです。そして高校野球では高反発バットによるホームランの量産ばかりが注目されるようになり、技術力の向上が置き去りにされてきました。そのため日本の高校生バッターは、国際大会ではほとんど通用していません。

一方アメリカの金属バットは、反発係数を木製バットと同水準にしなければならないという規定があるため、高校生レベルであっても金属バットから木製バットへのシフトにはほとんど苦労しません。しかし日本の場合、高校生が金属バットから木製バットに持ち替えた途端打てなくなることがほとんどです。

ビヨンドが使用禁止になった12球団ジュニアトーナメント

小学生の場合も、高校野球で低反発バットの需要が高まりつつあるのと同じ現象が起き始めています。2022年の12球団ジュニアトーナメントでは、2022年夏に行われたセレクションまではビヨンドやカタリストなどの複合バットの使用は可能でしたが、12月27日から行われた大会では正式にビヨンドやカタリストの使用が禁止されました。

12球団ジュニアトーナメントで使用できるのは通常の金属バット、木製バット、バンブーバット、ラミバットのみです。つまり2023年以降は、ビヨンドの恩恵でヒットや長打を打てていた選手は、12球団ジュニアトーナメントのセレクションには通らなくなる、ということです。

このように今、少年野球でも高校野球でも高反発バットの利用を禁じる方向に時代は進んでいます。日本のバットは、日本独自の進化を遂げることによってどんどん飛距離が伸びるようになりました。その反面道具に頼ってヒットや長打を打てるようになり、技術力を大切にする選手が減ってしまいました。

いま野球を本気で頑張っている中学生の多くは、高校に入ったら野球部に入ると思います。その時高反発バットの性能に頼っていたり、ビヨンド打ちが体に染み付いてしまっていると、高校野球ではまったく通用しなくなります。打球はほとんど外野にさえ届かなくなるはずです。

そうならないためにも、体がどんどん大きく強くなっていく中学生のうちに、どんなバットでもヒットを打てる科学的に正しいフォームを身につけておく必要があるんです。そしてそのための徹底サポートをしているのが僕の野球塾をはじめとした理論派野球塾の存在です。

体の成長に比例して上達速度を速められる可能性を秘める中学生

体の成長に比例して上達速度を速められる可能性を秘める中学生

そもそも軟式野球と硬式野球の打ち方というのは、まったく異なります。軟式野球はビヨンドに代表されるように、ボールの正面をバットの正面で打つことにより打球を飛ばして行きます。しかし硬式野球でこの打ち方をしてしまうと、よほどパワーのあるバッターじゃない限り打球を遠くまで飛ばすことはできません。

硬式野球は打球にバックスピンやトップスピンをかけることによって飛距離を伸ばしたり、ゴロの球足を速くさせていきます。ホームランに関しても体格や筋力に頼るのではなく、マグナス力を上手く利用できるように、打球にスピンをかける技術が求められます。この技術さえ身につけてしまえば、小柄でも細身でもホームランを打てるようになります。

高校時代の清原和博選手を覚えている方も多いと思いますが、清原選手は細身だったPL学園時代やライオンズ時代の方が、格闘家のような体型になった後よりも怪我なくホームランを量産することができていました。しかも清原選手の高校時代には、現代のような高反発金属バットなど存在していません。

しかし技術を身につけられなければ、あとは体格で勝負するしかなくなります。中学野球で非常に多いのですが、体を大きくするために練習の合間にドカベンを食べさせる野球指導者が日本には大勢います。これはまず栄養学的に間違ったやり方ですし、そもそも練習の合間のドカベンは熱中症のリスクを高めるだけです。

そして多くの野球指導者が科学的に野球フォームを学んでいないため、科学的に正しい投げ方・打ち方を指導することができません。するとどうなるかと言うと、体の大きさで勝負するしかなくなり、子どもたちにドカベンの完食を求めるようになるわけです。ここでまず言えることは、練習の合間にドカベンを食べさせるような指導者に子どもたちを預けてはいけない、ということです。

中学生の体はまさに日に日に大きくなり、大人へと近づいていきます。つまりここで科学的に正しいフォームをしっかり身につけることができると、体の成長速度に比例して、技術力もどんどん向上させていくことができます。体が大人の体に近づいて強くなっていくほど、レベルの高い技術を身につけられるようになります。

まずこれが、特に中学生が野球塾のレッスンで科学的に正しいフォームを身につけられるとグングン上達していける最初の理由です。僕の野球塾でも多くの中学生がレッスンを受けていますが、間違いなく中学生の上達速度は、小学生よりも高校生よりも速いと言えます。

例えば中学の野球チームで5番手投手だった選手は、レッスンを受けた半年後にはエースとして投げるようになり、大会でチームを勝利に導ける投手になりました。また、シニアでなかなか背番号をもらえなかった打者は、レッスンを受け始めた10ヵ月後の最後の夏には4番打者としてチームを牽引するようになりました。

中学生というのは、野球塾のレッスンによって科学的に正しいフォームをしっかりと身につけられると、このように急激な上達を実現できる可能性が非常に高いんです!

小学生には理解できないことも理解できるようになる中学生

小学生には理解できない野球塾のレッスンも理解できるようになる中学生

怪我をしない投げ方や打ち方を身につけるのであれば、選手個々のフォームが癖づく前の小学生のうちに動作改善をしてしまうのがベストです。怪我をしやすい投げ方や打ち方を、体も大きくなってきてフォームがある程度固まったあとから改善しようとすると、けっこう時間がかかってしまうんです。

怪我をしにくいフォームという意味では中学生の場合、小学生よりも改善までに少し時間はかかってしまうのですが、それでも高校生になってから改善しようとするよりは短時間で済みます。

そして中学生は、言葉の理解力がグングン高まってくる世代です。僕は小学生、中学生、高校生、大学生、プロ野球選手の個別サポートを業務としているのですが(メインはプロ野球選手の動作改善サポート)、中学生になってくると多くの選手たちの僕の言葉に対する理解力が高まっていくんです。

そのため小学生をレッスンする際には使わないような専門用語(もちろん初めて使う時は言葉の意味を説明します)を増やしたり、小学生には教えられない難しいレベルの動作を伝えられるようにもなります。そしてその理解力は高校生と大差はありません。もちろん国語力的には中学生よりも高校生の方が上なのですが、しかし僕の言葉に対する理解力に関して言えば、中学生と高校生とでは平均的にはほとんど差はありません。

そのため中学生の場合、正しい動き方を正しく理解し、正しく体現できるだけではなく、その動作がなぜ必要で、今までの動作だとなぜ良くないのかも深く理解できるようになります。小学生の場合は、このあたりが理解ではなく、暗記になってしまうことが多いんです。言葉を暗記しただけでは正しいフォームの理解度は深まりません。それが中学生になると覚えられるだけではなく、覚えたことをしっかりと理解できるようになるんです。

例えば「脚を高く振り上げて投げましょう」という指導をしたとすると、ほとんどの小学生の場合はただ脚を高く上げて投げようとするだけに留まります。レッスン中にできるだけ分かりやすく説明をしても、その動作の必要性や、今までの動作がなぜダメだったのかを理解できるまでに時間がかかるケースが多くなります。そのためその場では理解できなかったとしても、中学高校になった時に役立てられるように、僕は小学生にもレッスン内容をしっかりとノートに書いてもらうようにしています。

国語力が低すぎる選手はプロ野球でも大成できない!

実はプロ野球選手の中には、国語力がまったくない選手が少なくありません。高校時代は体格やセンスだけで野球をやっていて、プロスカウトも注目していた高校生だったため、勉強の成績は常に赤点というような選手たちです。僕が指導を担当したある選手は2軍で燻っていた20代の選手だったのですが、その選手の体のケアを担当されていたトレーナーさん経由で、僕に動作改善を手伝ってもらいたいというオファーが届きました。

しかしその選手が僕のサポートを受けたのは短期間だけでした。その理由は、彼が僕が説明する言葉がほとんど理解できなかったためです。もちろん僕はスポーツの専門用語や解剖学用語に関しては必ずどういう意味なのかを説明しました。ですが彼はそのような言葉を覚えたり、理解することを苦痛に感じてしまい、1ヵ月も立たないうちに僕のサポートを打ち切ってしまいました。そしてそれから一年も経たないうちに、彼は一度も1軍に定着することなく、トレードで得た新たなチャンスも活かせず、戦力外通告を受けてしまいました。

確かに中には大人になってもこのように国語力に乏しい選手は大勢います。しかし国語で平均点以上の点数を取れている中学生であれば、ほぼ確実に僕が説明する言葉や動き方を正しく理解することができます。この理解力は小学生には一部の選手にしか求められないものです。僕のレッスンにおいては、だいたい小学生全体の5%くらいしか、中学生同様に少し難しい話を理解できる小学生はいません。

逆に中学2年生や、2年生を間近にした年代になってくると、理解力がどんどん向上していきます。そのため言葉の説明さえ先にしてしまえば、スポーツの専門用語を絡めながら動作指導をしても、しっかりと理解することができます。正しい動作をよく理解できるからこそ、トレーニングでも正しい動作で投げたり打ったりすることを意識できるようになり、その結果実戦でも正しいフォームでプレーできるようになり、成績がどんどん向上していくようになります。これが中学生が野球塾のレッスンを受けるとグングン上達していける2つめの理由です。

中学生になると練習すればするほどスタミナがついていく!

中学生になると練習すればするほどスタミナがついていく!

「動作をマスターする」というのは、運動習熟というスポーツ心理学用語で説明することができます。運動習熟とは、その動作を意識しなくても自然とできるようになっている状態のことで、その動作が癖づいているということを意味します。

新しい動作を運動習熟状態まで持っていくためには、一般的な現役選手の場合は平均2000回その動作を繰り返すことによって、その動作がマッスルメモリー(筋肉が動作を覚えた状態)された状態となり、意識しなくてもその良い動作で投げたり打ったりできるよういなります。つまりその動作が新たな癖になるということです。

2000回と聞くと最初は途方もない数字のように感じてしまうかもしれませんが、しかし毎日100回ずつ繰り返したとしたら20日間、200回ずつなら10日間で終わってしまう程度の回数です。つまり毎日普通に練習をしていればあっという間にクリアできる数字、ということになります。

ただし気をつけたいのは、同じ動作を2000回繰り返す必要があるということです。もし途中で元の動作に戻ってしまったり、違う動作が挟まったりしてしまうと、カウントはリセットされてしまいます。ですので、とにかく正しい動作をひたすら繰り返す必要があります。

小学生・中学生・高校生、各世代ごとの強化しやすいポイント

さて、ここで各世代ごとの特徴をおさらいしておきたいと思います。まず12歳までの小学生世代というのは敏捷性が向上する世代となります。12歳までに敏捷性を向上させておかなければ、中学高校になってから敏捷性を向上させることは非常に難しくなります。もちろん不可能ではないのですが、上手くいかなかったり、必要以上に時間がかかってしまうことが多くなります。ですのでジャンプや短距離走など、体を高速で素早く動かす必要がある動作への対応は、遅くとも12歳までに行っておく必要があります。

そして高校生の場合は、筋力がつきやすくなります。もちろん小学生でも中学生でも筋肉量を増やすことはできるのですが、大人の体にかなり近づき、ほぼ計算通りに筋肉量を増やしていけるようになるのが16歳以上となる高校生世代となります。このような生理学的理由もあり、ダンベルなどのウェイトを使った本格的な筋トレは、高校生になって身長がほぼ止まってから始めるのがベストだと言えます。それまでは筋トレをするにしても、自重(自分の体の重さ)だけを使って行うようにしましょう。

では13〜15歳の中学生世代ではどのポイントが強化しやすくなるのか?それはスタミナです。中学生世代というのはどんどんスタミナつけていくことができる世代です。つまり練習時間や練習回数をどんどん増やしていける世代ということになります。

ある動作をマスターするためには2000回の反復練習が必要であることはすでに上述しました。中学生世代になるとスタミナがつくようになり、この2000回という数字の難易度がかなり下がっていくんです。さらには途中でカウントがリセットされてしまったとしても、何度でもやり直す体力を持てるようになります。要するに練習をすればするほどスタミナが強化され、さらにたくさんの練習をこなせるようになる、ということです。これが中学生が野球塾でレッスンを受けるとグングン上達していける3つ目理由です。これはスタミナが付きにくい小学生には真似することはできません。

中学生が野球塾に通うとグングン上達できる理由についてのまとめ

中学生が野球塾に通うとグングン上達できる理由についてのまとめ

とにかく中学生になると男子選手は一般的にはどんどん体が大きくなっていきます。しかしまだ大人の体としては完成というわけではないので、体の状態としてはまだフレキシブルだと言えます。つまり例え悪い癖がフォーム内に入っていたとしても、まだ比較的短期間で修正することができ、良い動作を入れ直す作業もそれほど時間はかからないということです。

そして国語力もアップしていくことにより、コーチの言葉に対する理解度も深くなり、一つ一つの練習の必要性をしっかりと理解した上で練習に励んでいけます。それぞれの練習意図をしっかりと理解できるようになると、理解できていない時と比べ、上達速度はどんどん速くなっていきます。

また、動作をマスターするために必要な反復練習も、小学生にはできないような回数をこなせるようになり、新しい動作を次々とマスターしていくことができます。

だからこそ中学生は、野球塾で理論的に正しいフォームを学ぶことで小学生よりも、高校生よりも上達していくことが可能なんです。

でも注意してください。野球塾ならどこでも良いというわけではありません。その野球塾でレッスンを担当するコーチが、野球動作の科学的理論を学んでいるかどうかを必ず確認してください。元プロ野球選手、元高校球児、甲子園出場経験など、そのような肩書きには絶対に捉われないでください。

元プロ野球選手たちにしても多くの方が野球塾を開講していますが、ほとんどの方の野球塾が失敗に終わっています。例えば日本シリーズで活躍した元プロ野球選手二人で開講した野球塾があったのですが、そんな元スター選手二人がいるにもかかわらず、その野球塾は大きな先行投資(屋内練習場や広告費など)をしたのに、あっという間に廃れてしまいました。当人は今では多額の借金のみが残ってしまったとお話しされていました。

しかしプロ野球経験などの肩書きがなくても、僕のようにスポーツ科学などをしっかりと勉強されている方の野球塾は、確実に選手を上達させることができ、長年経営を続けることができています。僕の野球塾にしても、おかげさまで2023年1月1日で13周年(14年目)を迎えることができました。

ですので野球塾を選ぶ際は、必ずスポーツ科学をしっかりと学んだコーチがいる野球塾を探してください。そしてもし肩書きがあるコーチの方が信頼しやすいという場合は、元プロ野球選手ではなく、現役トレーナーもしくは元トレーナーが主宰している野球塾を選んでください。トレーナー経験があれば、その方はほぼ確実にスポーツ科学を学んでいると言えます。ただし僕のようにバイオメカニクスまで学んでいるトレーナーは多くありませんので、そのあたりは確認が必要かもしれません。ちなみに僕自身はバイオメカニクス、解剖学、運動心理学などを学んでいます。そのためパフォーマンスが向上して怪我をしにくくなるフォームの指導や、適切なトレーニング法、メンタル強化レッスンまで行うことができます。

ただし僕のようにマンツーマンにこだわっているコーチの場合、大勢の選手を受け入れることはできませんので、僕の野球塾に関して言えば、レッスンのお申し込みをお断りしたり、レッスン開始までお待ちいただくケースがあります。ちなみに僕の場合は特別な肩書きはありませんが、埼玉西武ライオンズの1軍コーチが僕の動作改善理論を推奨してくださっていますし、人気野球雑誌『中学野球太郎』でも僕のレッスンを特集していただきました。そういう意味では安心してレッスンを受けていただけるかと思います。

いずれにしても、スポーツ科学をしっかりと勉強しているコーチであれば肩書き関係なく安心してレッスンを受けることができます。しかし勉強されてなく、経験則だけで教えてしまっているコーチの場合、元プロ野球のスター選手であってもなかなか選手を上達させることはできません。

センスがあるプロ野球選手ほど選手を教えることができないという衝撃の事実!

なぜそうなるかと言うと、古田敦也氏が仰るように、ほとんどのプロ野球選手がセンスだけでプレーしてしまっているからです。古田敦也氏自身、現役時代はセンスだけでプレーをしていたから、他の選手に上手く教えてあげることができないとお話されていました。確かに古田敦也氏のYouTubeを拝見させていただくと、理論的に野球動作が説明されている動画はほぼ皆無でした。そして一部の動画では、野球肩野球肘の予防改善面においてマイナスになってしまうようなことも「正しい動作」として紹介されていました。
野球系YouTube動画で野球のフォームを学ぶ時はここに気をつけて!

古田氏のような方の指導は、教えられなくてもどんどん上手くなっていけるセンスがあるタイプの選手には合っています。ですが基礎からしっかりと教わっていかなければならない選手の場合は、現役時代はセンスでプレーをしていて、経験則だけで教えてしまうタイプのコーチの指導を受けてもほとんど上手くなることはできません。

このような点も、野球塾を選ぶ際の参考にされると良いと思います。基礎動作から学ぶ必要がある選手は僕のような理論派コーチのいる野球塾、逆にセンスがある選手は必ずしても理論派コーチがいる野球塾じゃなくても良いと思います。ただしセンスがある選手が理論を身につけられると鬼に金棒です!例えばイチロー選手、ダルビッシュ有投手、大谷翔平投手らはまさにセンス+理論のお手本選手たちです。

そして最後にもう一点、プロ野球チームが開講している野球アカデミーは注意が必要ということを付け加えておきたいと思います。このような野球アカデミーの場合、指導マニュアルというものが存在しており、そのマニュアルに書かれていること以外はコーチは教えることができません。これは実際にそこで指導されていた元プロ野球選手のアカデミーコーチから伺ったことです。つまりアカデミーではどの選手に対しても同じ内容の指導が行われてしまうということです。もちろんこれも良し悪しのため、最初からセンスがあるタイプの場合は、プロ野球チームの野球アカデミーでもどんどん上手くなれると思います。

ということでずいぶんと長いコラムになってしまいましたが、最後までお読みくださりありがとうございました。中学生のお子さんをお持ちの方は、ぜひこの機会に野球塾のレッスンをご検討いただき、「やっぱりレッスンを受けとくべきだった」と後悔のない中学野球を過ごせるようにサポートしてあげてください。

鵜呑みにはできない竹内樹生投手の130km/hという球速

130km/hを投げる小学生・竹内樹生投手の投球フォーム分析

2022年12月27日、北海道日本ハムファイターズジュニアの竹内樹生投手が大会史上初のノーヒットノーランを達成しました。僕もこの試合のピッチングを少し映像で拝見したのですが、確かに体格や投げているボールは6年生とは思えないレベルでした。

スポーツ紙によればこの試合の最速は130km/hだったそうです。ただしこの130km/hという数字を鵜呑みにすることはできません。もちろん一般の野球ファンにはこの結果を喜んであげて欲しいのですが、僕個人のプロコーチとしての意見は、実はそれほど高い評価ではありません。

確かに6年生としては素晴らしいと思います。普通の6年生であれば100km/hを超えるボールを投げるだけでも大変なのに、竹内投手は130km/hを投げているのです。これはもう本当に素晴らしいし、このまま怪我なく野球を続けて欲しいなと思っています。

ですがまず、神宮球場というのは球速が出やすい球場ということを忘れてはなりません。2022年の時点で神宮球場が、どのポイントで球速を測っているのかは分かりません。10年前に比べるとスピードは出にくくなっているとは思うのですが、それでもおそらくは18.44mの中間よりも僅かに投手よりで計測しているような印象です。

ということは小学生の16mという距離の場合、竹内投手の130km/hという球速は初速で計測された可能性が非常に高いと思います。おそらく3ヵ月後に中学生になって18.44mになった際、ボールは打者の手元でけっこう失速しているはずです。竹内投手の投げ方は、そのようなボールになってしまう投げ方をしているんです。

小学生相手にムキになるなとも言われてしまいそうですが、しかし僕は野球動作改善のプロフェッショナルコーチですので、ここはしっかりと理論的に書いていきたいと思います。

エクステンションが非常に短い竹内樹生投手のフォーム

まず竹内樹生投手のフォームの最大の特徴は、クロスインステップです。踏み込んでいく右靴を真ん中よりも左側にランディングさせ、つま先もやや一塁ベンチの方を向いています。これは間違いなくクロスファイアーを意識してのフォームだと思うのですが、クロスインにしてしまうことで右股関節をほとんど使えていない状態にあります。

左投手の場合、ボールは右股関節の内旋屈曲で投げていくものなのですが、竹内投手の場合は右股関節ではなく、左肩の水平内転によってボールを投げてしまっています。この投げ方のデメリットとしては、肩関節の真ん中〜後方にかけて大きな外反ストレスがかかり、このあたりの筋肉、特に棘上筋を痛めやすいという点です。つまり野球肩になりやすいということです。

以前、花巻東高校の佐々木監督は左腕が入部したら必ずクロスファイアーで投げさせると仰っていました。ですがこれをさせるということは、佐々木監督は解剖学を解ってらっしゃらないということだと思います。まだスポーツ科学が発展する前は、日本でもクロスファイアーは大きな武器として周知されていました。

ですが僕のような野球動作改善のプロフェッショナルが登場してくると、クロスファイアーで投げると確かに打者は打ちにくくなるけど、それ以上に左肩にかかるストレスが非常に大きくなるということがスポーツ医学的に理解されるようになりました。そのため僕自身はプロコーチになった2010年1月以降、クロスファイアーに関しては僕の教え子たちには基本的にはやめるように言っています。しかしクロスファイアーをやめても、理論的に正しい投げ方をマスターするとちゃんと打者を抑えることができますし、肩を壊す心配もなくなります。

僕の教え子の中にももちろんサウスポーは大勢いて、野球肩野球肘に悩んでいる選手もたくさんいました。そしてその多くの左腕が指導者からクロスファイアーで投げるようにと言われていました。そのため僕のレッスンではまずクロスファイヤーをやめさせ、しっかりと股関節を使える体の構造に則ったフォームに改善させました。その結果球速や制球力も上がり、ほとんどの選手が肩肘の痛みから解放されました。
※ よほど悪化した状態の場合は動作改善だけでは野球肩野球肘を治すことはできません。

竹内投手は将来的には硬式野球に進むのだと思います。ですが体がまだ出来上がっていないうちから130km/hのボールを投げ続け、しかもクロスファイアーで投げ続ければ、近い将来必ず肩肘を痛めてしまうはずです。僕個人としては、竹内投手が投球障害を抱えるとすれば、肩の真ん中〜後方、もしくは肘の内側を痛める可能性が高いと見ています。

さて、竹内投手は右股関節の内旋屈曲ではなく、左肩の水平内転でボールを投げていることは上述した通りです。この投げ方をしてしまうと、エクステンションが非常に短くなってしまうんです。打者を差し込めるか否かは、ひとえにエクステンションの長さにかかっています。
※ エクステンションとはピッチャーズプレートからリリースポイントまでの距離のこと

これはアメリカの有名コーチであるトム・ハウス氏がリサーチしたものなのですが、打者を差し込めるか否かは球速ではなく、エクステンションの長さが重要であるというエビデンスが存在しています。つまり球速が遅くてもエクステンションが長ければ被打率は向上し、球速が速くてもエクステンションが短い投手は被打率が悪くなります。

竹内樹生投手の場合、右股関節の内旋屈曲が非常に浅いため、エクステンションが非常に短いんです。おそらくリリースポイントは顔の横あたりに来ているのではないでしょうか。130km/hのボールなんて見たことがない小学生を相手に、16mの距離からそのボールを投げれば、もちろんエクステンションなど関係なくなかなか打つことはできないでしょう。

しかし3ヵ月後に18.44mになった時、エクステンションが短いと130km/h以上のボールを投げたとしても、中学2〜3年生の打者ならば普通に打っていくことができます。

竹内投手の今後の課題は肩肘を痛めにくいフォームを身につけることと、エクステンションを長くして力を抜いて投げても打者を差し込めるようになることだと思います。ちなみに現時点の竹内投手のスローイングアームの使い方は非常にタイトで、緩い変化球を投げにくいフォームになっています。そしてタイトであるということは肘もロックされやすくなるということで、仮にフォークボールやチェンジアップの習得を目指した時、肘への負荷は他の投手以上に大きくなってしまうはずです。

プロコーチとして気になるのは竹内樹生投手の初速と終速の差

続いて右膝について見ておきましょう。竹内投手の右膝はランディングした瞬間、ほぼ足首の真上付近まで来てしまっています。これは上半身主体の投げ方をする投手の典型的な形です。プロでもなかなか1軍で活躍できない投手の中にもこの形の選手が多数います。この右膝の使い方をしてしまうと必ず上半身は突っ込んでしまいます。実際竹内投手のフォームは上半身が突っ込み、体も開き気味です。

竹内投手の体格は178cm/75kgだそうですが、現状ではこの体格に頼って速いボールを投げているという評価になります。もちろんそれでも初速130km/hを投げられるということは本当に凄いことなのですが、しかし質の良い130km/hかと問われれば、そうではないというのが僕の正直な意見です。

小学生としてのすべての試合を終えたら、竹内投手の周囲にいる関係者の方々には、ぜひ竹内投手の初速と終速を18.44mで計測して欲しいなと思います。現状、この差はかなり大きいはずです。理想としては3km/h以下、悪くてもその差は5km/h以下に抑えていきたいのですが、果たして竹内投手の初速と終速の差はどれくらいになるのでしょうか。

初速と終速差が大きくても、16mであれば失速する前にキャッチャーミットに収まります。しかし18.44mになるとそうはいきません。しかも上述の通り右膝がかなり前に流れているため、傾斜のある大人用のマウンドではもっと体が突っ込むようになり、この突っ込みを改善できなければトップポジション付近からの加速時に、肩関節の前方にも外反ストレスがかかりやすくなります。

現時点では球数も多くないし、ボールもJ号で軽いため、肩肘の負荷は最小限に抑えられていると思います。しかしこれがM号や硬式球になった時、ボールは大きくなり重くもなります。それによって増幅させられる体への負荷を竹内投手の現時点でのフォームでは軽減させられないはずです。

本当に素晴らしい資質を持つ竹内樹生投手

6年生で130km/hを投げられるなんて本当に素晴らしい資質です!だからこそ僕はプロコーチとして、竹内投手には絶対に怪我をして欲しくないと願っています。しかしそのためには解剖学をしっかりと理解しているコーチのもとで動作改善をしていく必要があります。今のフォームのままではいずれ肩肘を痛めるでしょうし、中学2〜3年生、そして高校生になった時に通用しない投手になってしまいます。

竹内投手も周囲の大人たちも、ノーヒットノーランや130km/hという結果には絶対に慢心すべきではありません。竹内投手のフォームは他の投手が真似しても問題ない良いフォームではありません。とは言えすべてを短期間で直していくことは難しいので、ぜひ1つ1つ正しいスポーツ科学や解剖学に則って、焦らずにゆっくりと動作改善をしていって欲しいなと思います。

こんなに素晴らし資質を持った選手なのですから、周囲の大人は絶対に彼が怪我をしないように見守ってあげる必要があります。そのためにもまずは股関節を適切に使った投げ方の習得は必須です。股関節を使えれば肩肘に頼らずに済みますし、逆に現時点のように股関節を使えていなければ、肩肘に頼って投げるしかなくなります。

ちなみにもう少し付け加えておくと、竹内投手のフォームは上半身と下半身が上手く連動していません。さらにボールリリースの瞬間の形を見ると、地面からの反力も得にくく、下半身のエネルギーもボールリリースに伝わりにくい形になっています。そして投手はオフバランスで投げたいところを、オンバランスに投げてしまっていて、ヒップファーストフォールを作れないモーションにもなっています。

竹内樹生投手のフォームを細かいところまですべて語っていくと、ちょっとものすごい長さのコラムになってしまいそうなので、今回は僕が気になった大まかな部分だけをご紹介しておきたいと思います。

それにしても16mの距離から130km/hのボールを投げられたら、相手の小学生打者は本当に怖いでしょね!しかもクロスファイアーで投げているため、左打者はなおさら怖さがあると思います。

こんな素晴らしい資質を持った竹内樹生投手には、いつかファイターズジュニア出身選手としてファイターズのエースになって欲しいなと僕は願っています。

三度の野球肩を克服して甲子園の舞台に立った僕の生徒さん

2年連続で野球肩を経験した中二のシニアリーグ選手

もう5年前の話です。ある中学生投手とお父さんが僕のレッスンを受けるために連絡して来てくださいました。この子はまだ中学2年生でしたが185cmあり、公式戦での最高球速も124kmで、将来を嘱望されたシニアリーグのエースピッチャーでした。

しかし中学に入ってからは2年続けて肩を痛めてしまい、2年続けて3〜5ヵ月の間ノースローで過ごすことを強いられていました。お父さんのお話によると、シニアリーグの監督に投げ方を直されてから痛むようになったとのことでした。

完治させてもフォームを直さなければ野球肘は必ず再発する?!

野球肘/内側・外側・肘頭の割合

一般的に野球肘は下記のような割合だとされています。

  • 内側型野球肘/60%以上
  • 外側形野球肘/20%程度
  • 肘頭形野球肘/3%程度
このように、肘の内側を痛めてしまうタイプの野球肘が圧倒的に多いんです。肘の内側には内側側副靱帯というものがあるんですが、この靭帯に外反ストレスがかかってしまうことで野球肘を発症しやすくなります。

MLB公式球の革質が変わり、トミー・ジョン手術が減る?!

滑りやすいボールが増やしているMLBの野球肘

2021年の今季は、メジャーリーグで粘着物を使った不正投球が話題になりましたね。実際試合中に不正有無の確認をされるピッチャーもたくさん出ました。

このような不正投球は元々は暗黙の了解として実際に行われていたことでした。もちろん公に「やっている」と言われることはないわけですが、しかし投球が滑って死球が増えるよりはバッターとしてはましなわけです。

ただ、もちろん不正投球を実際に行っていたのはあくまでも少数派で、ほとんどのピッチャーはロジンバックのみを利用して投げていました。この点に関しては適切な理解が必要だと思います。

メジャーリーグやマイナーリーグで使われている公式球はなめしが甘く、日本プロ野球の公式球と比べると滑りやすい革質なんです。そして実は、この革質が野球肘を増やしているという考え方もできるんです。

気軽に肘の手術を受けるようになったメジャーリーガーたち

ボールが滑りやすいということは、それだけ強くボールを握って投げなければならなず、そして強く握るほど投球時に肘がロックされやすくなります。これが肘の内側、つまり内側側副靱帯に大きなストレスを与えるようになってしまうんです。

トミー・ジョン手術の失敗がほとんどなくなった現代では、アメリカのプロ野球選手たちは気軽にトミー・ジョン手術を受けるようになりました。ですがやはり手術は受けないに越したことはありません。

手術自体は成功だったとしても、怪我をする前のコンディションに戻れるという保証はなく、競技復帰までにも過酷なリハビリを行う必要があるためです。

滑りにくくなるメジャーリーグの公式球

ですがそこに新たなニュースがアメリカから届きました。今季2021年、マイナーリーグ3Aクラス数球団の今季最後の10試合で、滑りにくくなった新たな公式球が試験導入されるのだそうです。

不正投球が話題になった際、ダルビッシュ有投手ら多くのメジャーリーガーが反発をしたわけですが、それによりMLB機構が公式球の改良をスタートさせたのだそうです。そして仕上がってきた試作品を、現在3Aで試用しているのだそうです。

今はまだこの改良された公式球の数が少ないため、3Aの数球団でのみ試験されているようなのですが、生産が追いつき選手からの不評がなければ、来季以降は本格的にこの新たな公式球が導入されるようです。

ことごとく肘を痛めた日本人メジャーリーガーたち

ボールが滑りにくくなれば、ボールを必要以上に強く握って投げる必要がなくなり、それにより肘もロックされにくくなり、メジャーリーグでのトミー・ジョン手術の件数も今後減っていく可能性が予測されます。

日本から海を渡った投手たちも、これまで多くの選手が手術を受けていますね。松坂大輔投手、和田毅投手、藤川球児投手、ダルビッシュ有投手、大谷翔平投手、前田健投手と、錚々たる顔ぶれの選手たちが渡米後にトミー・ジョン手術を受けています。

もちろん日本で野球を続けていれば肘を痛めなかったと言い切ることはできないわけですが、しかし滑りやすかったメジャーリーグの公式球が肘への負荷を高めたことに関しては事実だと言い切れます。

僕もメジャーリーグの公式球でキャッチボールをしたことがあるのですが、やはりNPBの公式球と比べると滑りやすく、僅かに重くて僅かに大きく、少し投げにくいなぁという印象でした。

しかし来季以降はメジャーリーグの公式球も革質が変わるようですので、日本人選手たちも安心してメジャーリーグを目指したり、国際試合に出場できるようになりますね!