手打ちは体の16%しか使わないからとても楽!楽だからこそ皆やってしまう

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手打ちとは体全体の16%しか使わずにバットを振る打ち方のこと

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実は手打ちってすごく楽な打ち方で、楽だからこそみんなどうしても手打ちをしたがってしまうんです。でも誰もがご承知の通り、手打ちで良いバッティングを続けられることは決してありません。稀に良い当たりが飛び出したとしても、それが続くことはまずないでしょう。

そもそも手打ちとはスポーツ科学においては「骨盤回旋不良バッティング」というふうに言います。どういうことかと言うと、右打者の場合は左股関節、左打者の場合は右股関節を使えていないことで、骨盤が上手く回っていない打ち方のことです。そしてこれは手投げでもまったく同じ説明になります。

さて、ここで腕の体に対する割合を覚えておきましょう。一般的には腕一本は体全体の約8%とされています。もちろん人によって小差は出てくるわけですが、平均としては腕一本は8%です。そして腕2本合わせても16%でしかないわけです。

ようする手打ちとは極端な言い方をすると、体全体の16%しか使わない打ち方だと言えるわけです。体全体の16%しか使わないわけですから、その分体力が消耗することもなく、当然楽に振ることが可能ですよね。でもそんな楽な打ち方をしても毎試合安定してヒットを打てるようにはなりません。

一度楽な打ち方を覚えてしまうとそれを直すのは非常に難しい!

腕一本は8%ですが、脚一本となると約16%となり、両脚合わせると32%になります。つまり体の1/3が脚というわけですね。野球動作の場合、まずこの体の1/3を占める両脚を上手く使ってエネルギーを起こし、それを股関節を介して上半身に伝え、体幹を通して腕、そしてバットにそのエネルギーを伝えていくことになります。

この時股関節を使えていない手打ちになっていると、いくら下半身を鍛えて下半身で大きなエネルギーを作り出せたとしても、それがすべて股関節で止まってしまい、結果的に手打ちをするしかなくなるということにもなります。

そうならないためにも上手く股関節を使って、下半身のエネルギーを上半身に伝えられるバッティングフォームを身につけていく必要があるわけです。でもその打ち方は、まずは体の32%となる両脚を上手く使う必要があり、それができなければ手打ちを卒業することもできません。

でも今まで体の16%しか使わずに打っていた選手が、いきなり両脚の32%を使うようになると下半身がめちゃくちゃ疲れるようになります。おそらく体力がない選手であれば、下半身を使った素振りを10回繰り返すことさえ困難だと思います。

でも辛いからといってそこで楽なスウィングに戻してしまうと、一生手打ちを卒業できなくなってしまうわけです。だからこそ野球指導者は、特に初心者に対しては徹底して下半身主導のスウィングを指導し、楽な振り方を覚えさせないことが大切になります。

楽な振り方を覚えてしまうと、人間はどうしても楽な方楽な方へと行きがちです。そして一度楽な打ち方を覚えてしまうと、それをしっかりと下半身主導で振るスウィングに変えるのは非常に難しくなるし、時間もかかってしまいます。だからこそ指導者は選手が楽なスウィングを覚えてしまわないように、初心者のうちから徹底して下半身主導のフォーム作りを指導していく必要があるわけです。

下半身主導のスウィングになっていれば真っ先に下半身が疲れてくる!

ちなみに下半身からスウィングを始動させ、体幹を通してエネルギーを腕、バットまで伝えていく、いわゆる全身を使って振るスウィングというのは慣れるまでは本当に疲れます。でも一度慣れてしまえばそれが当たり前になり、全身を使ってスウィングをしてもそう簡単には疲れなくなります。

例えば僕のレッスンでは確実に下半身主導のスウィングにしていくため、選手たちには「W90°」という技術を徹底して覚えてもらっています。W90°は専門的に言うと「バック・ヒップ・ターニング」という技術になるのですが、この動作がバッティングフォーム全体を動かす最初の歯車となります。

この最初の歯車を上手く回していくことで、キネティックチェーン(運動連鎖)がしっかりと下から順番に繋がるようになり、全身を使ってスウィング、ピッチングができるようになります。でもこの最初の歯車を上手く使えないと、簡単に想像していただけると思いますが、その他の歯車の動きがどんどんチグハグになっていき、キネティックチェーンもまったく成り立たず、手だけで打つしかなくなってしまうわけです。

でも全国の野球指導現場を見ていっても、このW90°、もしくはバック・ヒップ・ターニングを適切に教えられている指導者はほとんどいないように見えます。

多くの指導者たちがこの最初の歯車よりも先に、ヘッドが下がっているだの、頭が移動しているだの、腰が入っていないだの、上半身の話ばかりをしてしまっています。つまりこれを言い換えると、上半身主導の手打ちをするための指導をしているのと同じになってしまうわけです。だって32%の両脚よりも先に、上半身の話ばかりしてしまっているわけですからね。

とにかく結論として言えることは、ちゃんと安定したバッティング成績を残し続けられるバッティングフォームというのは、非常に体力が必要になるということです。よほど体力がある選手は別として、素振りを100回も200回も余裕でできてしまっている場合、それは手打ちになっている可能性が非常に高いと言えます。

しっかりと下半身主導でバットを振っていった場合、真っ先に疲れるのは軸脚です。つまり右打者の右脚、左打者の左脚ですね。ここが最初に疲れてこないフォームは手打ちと見てほぼ間違いないでしょう。

そして付け加えておくと、軸脚というのは軸としては一切機能していないのでご注意ください。ピッチングでもバッティングでも、僕が入塾直後の選手に「軸がどこだか分かりますか?」と聞くと、ほとんどの選手が「軸脚」というふうに答えます。しかし軸脚はピッチング、バッティングの軸としては機能しませんので、野球指導をされている方は、ここは絶対に間違わないでくださいね。

軸脚は軸ではなく、最初の歯車だと覚えてください。特に軸足に関してはまさに最初の歯車となります。これをしっかりと覚えておけば、手打ちになっているかどうかの判断も自分でできるようになり、自分で分かるようになると修正もしやすくなるはずです。
脚:脚全体のこと、足:靴を履く足部のこと

とにかく下半身主導のスウィングができるようになると、まず軸脚、特に軸脚の太腿が疲れてくると覚えておいてください。この疲れ方になっていれば、下半身主導になっているという一つの目安にすることができるはずです。

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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