スランプを短期間で切り抜けられる可能性を高めるアクティブリコール
僕が野球塾のレッスンで最も大切にしていることの一つに、野球塾でのレッスンが修了したあとでも上達し続けられる選手を育成する、というものがあります。これを可能にするのがアクティブリコールという作業です。アクティブリコールという言葉をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、これは野球用語というよりは、心理学用語に近い勉強法に関する用語です。
僕のレッスンも含め、他の野球塾でもやはり多いのが、レッスン中は上達できるんだけどレッスンが終わるとフォームがレッスン前のものに戻ってしまう、という悪循環です。フォームが元に戻るところまで行かなかったとしても、調子を崩した時にスランプを最短で切り抜けることができない、という選手が一定数います。
そんなもったいない状態を回避できる可能性を高めてくれるのが、アクティブリコールという作業です。アクティブリコールとは平たくいうと、学んだことを一定期間を置いたのち思い出そうとする作業のことです。この作業を繰り返すことによって記憶がどんどん脳や筋肉に定着していきます。
例えば日本の携帯電話は11桁の数字からなるわけですが、この11桁の新しい数字を普通にサッと覚えることはとても難しいと思います。短時間は暗記できたとしても、数時間後には忘れてしまうことがほとんどではないでしょうか。
でも自分の電話番号を、サイトや書類に何度も繰り返し書いていくことによって、自然とその11桁の番号を覚えることができ、しかもその番号を使っている間にその番号を忘れてしまうこともありません。これはまさにアクティブリコールの好例の一つだと言えます。
サイトにしろ書類にしろ、そう頻繁に電話番号を書くわけではありません。書いたとしてもせいぜい1ヵ月に一度か二度ではないでしょうか。でもこの約1ヵ月というスパンがアクティブリコールにとっては重要なんです。
アクティブリコール作業によって短期記憶を長期記憶に変換する
記憶というのは、例えば三日間連続である特定の11桁の数字を覚えようとするよりも、今日とりあえず一度覚えたら、二週間後、1ヵ月後に思い出そうとすることによって、その数字が脳に定着していきます。ちなみに脳や筋肉に定着していない短期記憶は、あっという間に覚えた内容がボヤけて行ってしまいます。
逆にしっかりと脳や筋肉に定着させた長期記憶に関しては、時間が経ってもそう簡単に忘れることはありません。例えば5年前まで使っていた電話番号を、今でもサラッと言えたりしますよね?これがまさに脳に定着された長期記憶であり、野球動作の習得もこのように、短期記憶から長期記憶に変換していきたいわけです。
ちなみに僕は、小学生の頃「今からキャッチボールしようぜ!」と頻繁に電話していた友だちの03から始まる家電の番号を未だに覚えています。僕が小学生だった1990年頃は、まだスマホどころか携帯電話さえほぼないに等しく、パソコンではなくワープロ全盛期でした(笑)
そんは話はさておき、僕のレッスンを定期的に受けてくださっている方ならピンと来ると思いますが、僕はある内容を指導したら、数週間後、数ヵ月後に必ず「これについては覚えていますか?」と質問をして、選手に答えてもらうようにしています。この作業がアクティブリコールであり、この作業を繰り返すことにより、まず正しいフォームの知識を脳に定着させていきます。
脳に定着された動き方の知識は、体でも体現しやすくなります。例えば正しいフォームの知識をアクティブリコールによって脳に定着させ、それをメンタルプラクティスによって頭の中で映像化していきます。すると頭の中で映像化させたフォームで、実際のグラウンド上でも投げたり打ったりしやすくなるんです。
そして良いフォームが身に付いたら、そのフォームが崩れかけた時に「この動作はどのように動くのが正しいか覚えていますか?」と質問をします。この時ただ動き方を説明させるだけではなく、なぜその動作が必要なのか、なぜ以前の動作では良くなかったのか、という理論まで説明させることが重要です。
例えばある動作を身につけられると球速がアップするとします。その場合、「この動作はこのように動くのが正しくて、これができるようになると、体のここをこんな風に使えるようになるから球速がアップします」という感じで選手に答えさせます。そして上手く答えられなかったらそこで復習をして、再度正しい知識を頭と体に入れていきます。
これがアクティブリコールという作業を取り入れている僕のレッスンの大まかな流れです。この作業を根気強く続けていくことにより、選手の頭と体に正しい動作が刷り込まれていきます。動作改善というのは、これまでの「良くなかった動作」という名の癖を、「良い動作」という名の癖で上書きしていく作業のことです。つまり大切なのはその場でできるようになることだけではなく、一年後も二年後も同様に良いフォームで投げたり打ったりできているか、ということなのです。
手取り足取りの指導だけではプロコーチの指導としては物足りない
アクティブリコールによって正しい動作をしっかりと長期記憶に変換しておくと、レッスンが修了してしばらくして調子を崩した時、「そう言えばこんな時、レッスンでこんなことを教わって練習したら調子を取り戻したんだった!」と記憶を繋げられるようになり、自分で自分のコーチングができるようになります。
調子を崩した時に、よく今のフォームとヒットを打った時のフォームの動画を見比べることがありますが、この時重要なのはそのヒットを打った時のフォームが、たまたま出たヒットなのか、それともしっかりと理論的にも良いフォームで打てているヒットなのか、という点です。
もしそれがたまたま出たヒットだっとすれば、良いフォームで打っているとは限りません。逆に結果としてはアウトになっていたとしても、理論的に良いフォームで振っている打席の映像は、これは好例として保存しておくべきです。そして調子を崩した時にその映像を使いながら、僕のレッスンで教わったことを見直していくと、より早く不振から脱却できるようになります。
手取り足取りの指導だけでは記憶はどんどん薄れていく
一方アクティブリコールなど一切気にせず、その場でできるようになることをまず最優先にし、理論など気にせず、手取り足取りで教えても、僕のレッスン同様その場ではすぐにできるようになったり、数日後の試合でも好結果を得られることもあります。しかしそこから時間が経てば経つほど、その正しい動作は少しずつ歯車が狂っていき、気がつくと実は教わったフォームとは違うフォームでプレーしていた、というケースも多々あります。
そこで再度手取り足取り教えてあげても、これは結局は短期記憶にしかならないため、また時間が経つとフォームが崩れてしまい、いつまで経っても好不調の波が大きい状態が続いてしまいます。つまり重要なのは崩れてしまってから教え直すことではなく、忘れてしまう前に正しいフォームを思い出して良いフォームを崩さないようにすることなのです。
良いフォームを短期間しか保てないのはとてももったいないので、やはり野球塾のレッスンでもコーチ側はアクティブリコールを取り入れ、頭と体に入れていく記憶をできるだけ早く、短期記憶から長期記憶に変換していきたいわけなのです。
ちなみに実際に記憶が定着されていくのは睡眠時ですので、質の良い睡眠を心がけることもアクティブリコールにとっては大切な要素となります。もし睡眠直前の2時間でブルーライトを浴びたり、血行をよくするストレッチングをしてしまったりすると睡眠の質が低下しますので注意が必要です。
ということで今回のコラムでは、僕の野球塾ではただ野球を教えるだけではなく、アクティブリコール作業を用いながら選手を指導している、ということについて書いてみました。もし僕のレッスンに少しでも興味を持っていただけたら、お気軽にLINE(僕のLINEはこちらから友だち追加してください)よりお声掛けください。
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