反抗期の子の野球塾での指導はこうすると上手くいく
これは野球塾、野球部、少年野球チームすべて共通なのですが、どんどん上達できる子と、なかなか上達できない子というのは、その言動に明確な違いがあります。
上達できない子には、その典型的な言動がよく見られ、上達できる子もやはり、同じようにその典型的な言動がよく見られます。つまり言い方を変えると、上達できる子の言動を先に知ることにより、それを少しずつ上達できないタイプの子にやらせていくと、上達できないタイプの子でも、少しずつ上達できるタイプの子に変わっていくことができるということです。
これは何も、性格を変えるという大袈裟なことではなく、単純に言動を少し変えれば良いだけなので、挑戦する意欲があれば誰にでもできることです。
ですがすごく恥ずかしがりだったり、反抗期だったりすると、やれるはずなのにやらない、やれないというケースもあります。恥ずかしがりの場合は少しずつ時間をかけて慣らしていけば良いのですが、反抗期の場合は何かフックになるものをコーチが与えてあげなければ、なかなか上手くいかないケースが増えてしまいます。
ちなみにこのフックというのは、反抗期である選手に「あれ?この人は俺のことをひょっとしたら分かってくれるのかな?」と、少しでも興味を抱かせる何かのことです。
フックとなる何かの一例
- その選手の特徴を一瞬で見抜き言い当てる
- その選手の心情などに共感を示す(同情ではない)
- 周囲の大人とは違う伝え方で指導する
ただし1の「その選手の特徴を一瞬で見抜き言い当てる」というのはプロコーチにしかできないことですので、一般のコーチが無理に言い当てようとすると、逆に反感を買ってしまうことがありますのでご注意ください。
伝え方に関して言えば、周囲の大人は「〜しなさい」と、Do itという文章で物事を伝えてくることが多いと思います。これをLet's do itにして「〜してみよう」と言い換えるだけで、その言葉がすっと相手の耳に入っていくようになります。
これはコーチングをする際の鉄則の一つでもあるため、もし親御さんでもいつも「〜しなさい」と頭ごなしに言ってしまっている場合は、言い方をLet's do itや、Let's try itに変えて伝え直してみてください。すると相手も聞く耳を開きやすくなります。
野球塾に通っても上達できない子の典型的な言動
さて、話を上達できる子とできない子の特徴に戻したいと思います。まず上達しにくい子の典型的な言動ですが、とにかく「はい」と言ってくることです。こちらが何かと言うと必ず「はい」と返事をして来ます。
これは一見とても良いことのように思えたりもするのですが、経験のあるプロコーチが見ると、しっかり理解をしたという意味の「はい」と、何も考えずに条件反射的に言った「はい」はすぐに見分けがつきます。
今の「はい」はきっと条件反射的に言っただけで、多分話は理解していないな、と思い、「じゃあ今教わったことを自分で説明してみて」と言うと、案の定まったく説明できないことがほぼ100%です。
僕のコーチングでの信条の一つに、「身体で覚える前にまずは頭で理解させる」というものがあります。一般的な野球塾だと、とにかく手取り足取り動きだけを教えていくことがほとんどです。この場合、確かにその動作は僕のレッスン同様に選手たちはその動作をできるようになっていきます。しかし問題はそのあとです。
身体だけで動きを覚えようとすると、確かにその場ではできるようになることも多いのですが、一日二日、一週間二週間、一ヵ月二ヵ月、一年二年と時間が経過していくと、時間が経てば経つほど教わった時の正しい動作を身体で正しく思い出すことができなくなります。
ですが身体だけではなく、頭でもしっかりその動作を理解しておくと、その正しい動作が少しずつ崩れて来た時、選手自身で「そう言えばあの時、この動作はこんなイメージで動くと良いって言われたなぁ」というふうに、正しい動作への具体的な修正方法を思い出すことができ、なんとなくではなく、理論的に崩れた動作を自分自身で正しい動作に修正できるようになります。
だからこそ僕の野球塾のレッスンでは身体の動きでだけではなく、頭でもしっかりと正しい動作を理解してもらうようにしているんです。
そして上達できないタイプの子の場合、何か動作を説明させると「ここがこうなって、こっちがこうで」というように、ノートに書いてもまったく意味がない言葉で説明することが多いんです。
ですので選手に自分でも説明させる際には、必ずノートにそのまま書ける具体的な言葉で説明させるようにしましょう。そして主語を抜かして説明する子も多いため、必ず正しい主語を使わせて説明させるようにしてください。主語があやふやだと、のちのちそれがどの動作の説明だったのかが分からなくなってしまいます。
すべて挙げるとキリがないのですが、上述したことは上達できないタイプの子には非常によく見られるケースですので、指導する側にある方はぜひ覚えておいてください。
野球塾に通うとどんどん上達できるタイプの子の典型的な言動
逆に上達できるタイプの子は、こちらから何かを聞くと、必ず自分で少し考えてから回答します。例えば同じ「はい」という回答にしても、上達できない子は即答するのに対し、上達できる子は数秒自分でしっかりと考えてから「はい」と答えて来ます。
また、分からないことを分からないままにはしません。上達できない子の場合、本当はまったく理解できていないのに、「すべて理解できたかな?」と聞いても「はい」と即答して来ます。しかし上達できるタイプの子は、こちらが理解の確認を入れる前に、「ここが分かりませんでした」というふうに聞いて来ます。これはとても大切なことです。
野球塾のレッスンは時間制です。永遠にレッスンをし続けられるわけではありません。僕の場合は1枠30分のレッスンになるのですが、この時間制限があるため、レッスンをしていても教えた内容のすべてを再確認していくわけにはいきません。そんなことをしていたらレッスンがまったく進まなくなってしまいます。
だからこそ一番良いのは、選手自身が分からなかった時にしっかりと「分かりませんでした」と伝えてくることなのです。そうすれば僕らコーチからすると、「分かりませんでした」と言って来たところだけを再確認すれば良いだけになるので、時間を浪費することなくどんどんレッスンを進めていくことができます。
野球塾で上達できる子はメモの取り方が上手い
そして上達できる子はしっかりとメモを取りながら話を聞きます。僕のレッスンでは伝えることがとても多いため、必ずメモを取りながら話を聞いてもらうのですが、上達できないタイプの子は最初のうちは、メモを取るように言ってもまったく書くことができません。
そのような場合は僕が画面に説明を書き、それをそのままノートに写してもらいます。そして何月何日に何をノートに書いてもらったのかはこちらですべて記録しているため、何かを思い出してもらう時は「何月何日のノートを開いてください」と言えば、一瞬で復習態勢に入ることができます。
逆に上達できるタイプの子は、要点をしっかりとメモしていくことができます。例えば僕の説明を一言一句漏らさずメモをしていくと、これもやはり時間の浪費になってしまいます。ですがそうではなく、上達できるタイプの子は大事なキーワードを上手く抜き出し要領良くメモを取っていくことができます。
要点を上手く抜き出してメモをする練習は、人の話を聞いてすぐに理解する能力を養うことができます。ですので野球選手に限らず、子どもでも大人でも理解力を高めたい方はぜひ日常的に上手くメモを取る練習をすると良いと思います。
ちなみに最近はテレビを観ていても、YouTubeを観ていても、ほぼ確実に喋っている内容の字幕が出ていますよね?耳が聞こえない方向けの字幕ではなく、カラフルな文字で絶対に目が行ってしまうような目立つ字幕です。
このカラフルな字幕は実際には画面の人が喋っていることと同じなのですが、これだけ目立つ色で字幕を付けてしまうと、嫌でも字幕を目で追ってしまうようになります。しかしこれが人の理解力を低下させる一因になっているんです。
日常的に字幕を見ながら話を聞くことが習慣付いてしまっているため、目の前の人と字幕なしで(当たり前ですが)会話をしても、相手の話の内容がまったく頭に入ってこなくなってしまうんです。これはテレビやYouTubeの弊害と言って間違いありません。
自分の得意分野であったり、興味があることに対してはすでに理解が深まっているため、字幕なしでも理解することはできます。しかし学校の勉強であったり、野球塾で教わる新しい動作であったり、初めて聞くことや難しく感じることの場合、字幕なしでは理解度が大幅に低下してしまう選手が、子どもだけではなく、プロ野球選手の中にも大勢います。
だからこそ、仮にその場では理解し切れなかったとしても、あとで読み返して理解を深めたり、あとで改めて質問をするためにも、メモをすることが重要なんです。紙のメモでもデジタルメモでもどちらでも良いと思います。
僕の場合はレッスンではMac、iPad、iPhoneとすべてAppleプロダクツを使っているため、Appleのメモアプリを使っています。デジタルメモなので、キーワードを入力するとあっという間に過去に書いたをメモ検索することができてとても便利です。
野球塾で上達しやすいタイプの子に変わっていくためのまとめ
話をまとめるとだいたい以下のような感じになります。
- 何も考えずに条件反射的に「はい」と答えず、しっかり考えてから「はい」と答えさせる。
- 身体で覚える前に、まずは頭で正しい動き方とその必要性を理解させる。
- 分からないことは分からないままにするのではなく、必ずコーチに分からないということを伝えさせる
- コーチに教わったことを、ノートにそのまま書けるような具体的な言葉で自分でも説明できるようにさせる。
- 重要なキーワードだけを抜き出して効率よくメモできるようにさせる。
一番良いのは本人や親御さんが、「あれ?レッスンを受ける前ってこんなに理解力あったかな?」という感じで、気付かないうちにいつの間にか理解力が高まっていることです。理解力は押し付けによって伸ばせる要素ではないため、やはりロングテール的にじっくりと時間をかけていくことが大切なわけです。
そういう意味でも僕のレッスンでも、6ヵ月コースよりも1年コースでじっくりとレッスンを受けている子の方が、上達しやすいタイプの子に変わりやすく、その後もどんどん上達していけるようになります。そのため僕の野球塾では1年コースが圧倒的に人気があるコースとなっています。
今までなかなか上達できなかった子は、上記のポイントを1つずつ抑えていくだけでも、必ず上達しやすいタイプの子に変わっていくことができます。ですので親御さんやチームで指導される方は、決して焦って押し付けることなくサポートしてあげてください。
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