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鵜呑みにはできない竹内樹生投手の130km/hという球速

130km/hを投げる小学生・竹内樹生投手の投球フォーム分析

2022年12月27日、北海道日本ハムファイターズジュニアの竹内樹生投手が大会史上初のノーヒットノーランを達成しました。僕もこの試合のピッチングを少し映像で拝見したのですが、確かに体格や投げているボールは6年生とは思えないレベルでした。

スポーツ紙によればこの試合の最速は130km/hだったそうです。ただしこの130km/hという数字を鵜呑みにすることはできません。もちろん一般の野球ファンにはこの結果を喜んであげて欲しいのですが、僕個人のプロコーチとしての意見は、実はそれほど高い評価ではありません。

確かに6年生としては素晴らしいと思います。普通の6年生であれば100km/hを超えるボールを投げるだけでも大変なのに、竹内投手は130km/hを投げているのです。これはもう本当に素晴らしいし、このまま怪我なく野球を続けて欲しいなと思っています。

ですがまず、神宮球場というのは球速が出やすい球場ということを忘れてはなりません。2022年の時点で神宮球場が、どのポイントで球速を測っているのかは分かりません。10年前に比べるとスピードは出にくくなっているとは思うのですが、それでもおそらくは18.44mの中間よりも僅かに投手よりで計測しているような印象です。

ということは小学生の16mという距離の場合、竹内投手の130km/hという球速は初速で計測された可能性が非常に高いと思います。おそらく3ヵ月後に中学生になって18.44mになった際、ボールは打者の手元でけっこう失速しているはずです。竹内投手の投げ方は、そのようなボールになってしまう投げ方をしているんです。

小学生相手にムキになるなとも言われてしまいそうですが、しかし僕は野球動作改善のプロフェッショナルコーチですので、ここはしっかりと理論的に書いていきたいと思います。

エクステンションが非常に短い竹内樹生投手のフォーム

まず竹内樹生投手のフォームの最大の特徴は、クロスインステップです。踏み込んでいく右靴を真ん中よりも左側にランディングさせ、つま先もやや一塁ベンチの方を向いています。これは間違いなくクロスファイアーを意識してのフォームだと思うのですが、クロスインにしてしまうことで右股関節をほとんど使えていない状態にあります。

左投手の場合、ボールは右股関節の内旋屈曲で投げていくものなのですが、竹内投手の場合は右股関節ではなく、左肩の水平内転によってボールを投げてしまっています。この投げ方のデメリットとしては、肩関節の真ん中〜後方にかけて大きな外反ストレスがかかり、このあたりの筋肉、特に棘上筋を痛めやすいという点です。つまり野球肩になりやすいということです。

以前、花巻東高校の佐々木監督は左腕が入部したら必ずクロスファイアーで投げさせると仰っていました。ですがこれをさせるということは、佐々木監督は解剖学を解ってらっしゃらないということだと思います。まだスポーツ科学が発展する前は、日本でもクロスファイアーは大きな武器として周知されていました。

ですが僕のような野球動作改善のプロフェッショナルが登場してくると、クロスファイアーで投げると確かに打者は打ちにくくなるけど、それ以上に左肩にかかるストレスが非常に大きくなるということがスポーツ医学的に理解されるようになりました。そのため僕自身はプロコーチになった2010年1月以降、クロスファイアーに関しては僕の教え子たちには基本的にはやめるように言っています。しかしクロスファイアーをやめても、理論的に正しい投げ方をマスターするとちゃんと打者を抑えることができますし、肩を壊す心配もなくなります。

僕の教え子の中にももちろんサウスポーは大勢いて、野球肩野球肘に悩んでいる選手もたくさんいました。そしてその多くの左腕が指導者からクロスファイアーで投げるようにと言われていました。そのため僕のレッスンではまずクロスファイヤーをやめさせ、しっかりと股関節を使える体の構造に則ったフォームに改善させました。その結果球速や制球力も上がり、ほとんどの選手が肩肘の痛みから解放されました。
※ よほど悪化した状態の場合は動作改善だけでは野球肩野球肘を治すことはできません。

竹内投手は将来的には硬式野球に進むのだと思います。ですが体がまだ出来上がっていないうちから130km/hのボールを投げ続け、しかもクロスファイアーで投げ続ければ、近い将来必ず肩肘を痛めてしまうはずです。僕個人としては、竹内投手が投球障害を抱えるとすれば、肩の真ん中〜後方、もしくは肘の内側を痛める可能性が高いと見ています。

さて、竹内投手は右股関節の内旋屈曲ではなく、左肩の水平内転でボールを投げていることは上述した通りです。この投げ方をしてしまうと、エクステンションが非常に短くなってしまうんです。打者を差し込めるか否かは、ひとえにエクステンションの長さにかかっています。
※ エクステンションとはピッチャーズプレートからリリースポイントまでの距離のこと

これはアメリカの有名コーチであるトム・ハウス氏がリサーチしたものなのですが、打者を差し込めるか否かは球速ではなく、エクステンションの長さが重要であるというエビデンスが存在しています。つまり球速が遅くてもエクステンションが長ければ被打率は向上し、球速が速くてもエクステンションが短い投手は被打率が悪くなります。

竹内樹生投手の場合、右股関節の内旋屈曲が非常に浅いため、エクステンションが非常に短いんです。おそらくリリースポイントは顔の横あたりに来ているのではないでしょうか。130km/hのボールなんて見たことがない小学生を相手に、16mの距離からそのボールを投げれば、もちろんエクステンションなど関係なくなかなか打つことはできないでしょう。

しかし3ヵ月後に18.44mになった時、エクステンションが短いと130km/h以上のボールを投げたとしても、中学2〜3年生の打者ならば普通に打っていくことができます。

竹内投手の今後の課題は肩肘を痛めにくいフォームを身につけることと、エクステンションを長くして力を抜いて投げても打者を差し込めるようになることだと思います。ちなみに現時点の竹内投手のスローイングアームの使い方は非常にタイトで、緩い変化球を投げにくいフォームになっています。そしてタイトであるということは肘もロックされやすくなるということで、仮にフォークボールやチェンジアップの習得を目指した時、肘への負荷は他の投手以上に大きくなってしまうはずです。

プロコーチとして気になるのは竹内樹生投手の初速と終速の差

続いて右膝について見ておきましょう。竹内投手の右膝はランディングした瞬間、ほぼ足首の真上付近まで来てしまっています。これは上半身主体の投げ方をする投手の典型的な形です。プロでもなかなか1軍で活躍できない投手の中にもこの形の選手が多数います。この右膝の使い方をしてしまうと必ず上半身は突っ込んでしまいます。実際竹内投手のフォームは上半身が突っ込み、体も開き気味です。

竹内投手の体格は178cm/75kgだそうですが、現状ではこの体格に頼って速いボールを投げているという評価になります。もちろんそれでも初速130km/hを投げられるということは本当に凄いことなのですが、しかし質の良い130km/hかと問われれば、そうではないというのが僕の正直な意見です。

小学生としてのすべての試合を終えたら、竹内投手の周囲にいる関係者の方々には、ぜひ竹内投手の初速と終速を18.44mで計測して欲しいなと思います。現状、この差はかなり大きいはずです。理想としては3km/h以下、悪くてもその差は5km/h以下に抑えていきたいのですが、果たして竹内投手の初速と終速の差はどれくらいになるのでしょうか。

初速と終速差が大きくても、16mであれば失速する前にキャッチャーミットに収まります。しかし18.44mになるとそうはいきません。しかも上述の通り右膝がかなり前に流れているため、傾斜のある大人用のマウンドではもっと体が突っ込むようになり、この突っ込みを改善できなければトップポジション付近からの加速時に、肩関節の前方にも外反ストレスがかかりやすくなります。

現時点では球数も多くないし、ボールもJ号で軽いため、肩肘の負荷は最小限に抑えられていると思います。しかしこれがM号や硬式球になった時、ボールは大きくなり重くもなります。それによって増幅させられる体への負荷を竹内投手の現時点でのフォームでは軽減させられないはずです。

本当に素晴らしい資質を持つ竹内樹生投手

6年生で130km/hを投げられるなんて本当に素晴らしい資質です!だからこそ僕はプロコーチとして、竹内投手には絶対に怪我をして欲しくないと願っています。しかしそのためには解剖学をしっかりと理解しているコーチのもとで動作改善をしていく必要があります。今のフォームのままではいずれ肩肘を痛めるでしょうし、中学2〜3年生、そして高校生になった時に通用しない投手になってしまいます。

竹内投手も周囲の大人たちも、ノーヒットノーランや130km/hという結果には絶対に慢心すべきではありません。竹内投手のフォームは他の投手が真似しても問題ない良いフォームではありません。とは言えすべてを短期間で直していくことは難しいので、ぜひ1つ1つ正しいスポーツ科学や解剖学に則って、焦らずにゆっくりと動作改善をしていって欲しいなと思います。

こんなに素晴らし資質を持った選手なのですから、周囲の大人は絶対に彼が怪我をしないように見守ってあげる必要があります。そのためにもまずは股関節を適切に使った投げ方の習得は必須です。股関節を使えれば肩肘に頼らずに済みますし、逆に現時点のように股関節を使えていなければ、肩肘に頼って投げるしかなくなります。

ちなみにもう少し付け加えておくと、竹内投手のフォームは上半身と下半身が上手く連動していません。さらにボールリリースの瞬間の形を見ると、地面からの反力も得にくく、下半身のエネルギーもボールリリースに伝わりにくい形になっています。そして投手はオフバランスで投げたいところを、オンバランスに投げてしまっていて、ヒップファーストフォールを作れないモーションにもなっています。

竹内樹生投手のフォームを細かいところまですべて語っていくと、ちょっとものすごい長さのコラムになってしまいそうなので、今回は僕が気になった大まかな部分だけをご紹介しておきたいと思います。

それにしても16mの距離から130km/hのボールを投げられたら、相手の小学生打者は本当に怖いでしょね!しかもクロスファイアーで投げているため、左打者はなおさら怖さがあると思います。

こんな素晴らしい資質を持った竹内樹生投手には、いつかファイターズジュニア出身選手としてファイターズのエースになって欲しいなと僕は願っています。

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