「野球肩」と一致するもの

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の言葉の罠

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の野球指導法の罠

近年、「プロ野球選手がみんなやっているから正しい」という魔法の言葉を使って選手を納得させるコーチやトレーナーが非常に多い印象です。実際僕の生徒さんの中にも、プロトレーナーやプロコーチから同じ言葉を言われたという選手が多数います。しかし「プロ野球選手がみんなやっている」=「正しい」という図式はまったく成り立ちません。

僕の投球フォーム指導法は、マスターすればパフォーマンスが上がるだけではなく、肩肘の怪我を減らすこともできます。これは医学的にも解剖学的にも正しい動作であり、野球選手を専門的に診ているスポーツ整形外科の先生やPTさんたち、柔道整復師のみなさんからもお墨付きをいただいています。

その指導法に関しては僕が監修しているビデオ『野球肩野球肘予防改善法・徹底解説ビデオ』をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、今プロで活躍している選手たちの多くは、野球動作を科学的に理解していないコーチたちの指導を受けてきたわけです。

例えば僕の場合、トップポジションに関しては内旋型トップポジションではなく、外旋型トップポジションを推奨し指導しています。内旋型トップポジションは肘の内側を怪我しやすく、肩にも負担がかかります。一方外旋型トップポジションで投げられれば、肩肘への負荷を高めることなく投げ続けることができます。

と言ってももちろん、常識外の球数を投げたり、疲労した状態で投げてしまえばどんなフォームだったとしても肩肘を痛めてしまいます。しかし常識内の球数や、極度の疲労状態で投げているわけではない場合、正しい形の外旋型トップポジションから投げられれば、まず肩肘を痛めることはなくなります。

これは僕が勝手に推奨している理論というわけではなく、人間の体の構造上、解剖学的に唯一の正しい投げ方となります。僕はプロコーチとして、理論を伝えられないことは絶対に選手たちに伝えることはしません。ですので「プロ野球選手たちもみんなそうしている」という説明で終わってしまう指導をすることも絶対にありません。

毎年数多くの選手が肩肘を痛めているプロ野球の現状

近年、高校生の生徒さんからちょくちょく言われることなのですが、高校の野球部で見てくれているプロトレーナーに、僕が指導した外旋型トップポジションだと肩肘を痛めやすいと言われた選手が複数人いるんです。

ちなみに肩を痛めやすいと言われただけで、なぜ痛めやすいのかという理論の説明は受けていない選手ばかりです。そして言われたことと言えば共通して「プロ野球選手はみんなこの形(内旋型トップポジション)から投げている」という説明だけだったそうです。

内旋型トップポジション 外旋型トップポジション

確かにその通りです。プロ野球選手のほとんどは内旋型トップポジションから投げています。これは確かな事実です。でもよく考えてみてください。毎年、一体何人のプロ野球選手たちが肩肘を痛めていますか?もし内旋型トップポジションが肩肘に負荷のかからない正しい投げ方なのだとすれば、プロ野球選手たちが肩肘を痛めることなど決してないはずです。

しかし12球団を見渡してみると、同年で1球団で4人も5人も肘の手術(トミージョン手術、TJ手術)を受けていたりします。「プロ野球選手がみんなそうしているから正しい」という論拠に乏しい指導をしているコーチ・トレーナーは、果たしてこの事実をどう考えているのでしょうか?とても気になるところです。

僕のレッスンを受けてくださっている選手の皆さんは僕のレッスンにより、「なぜ肩肘を痛めるのか?」「どうすれば痛めなくなるのか?」という点をしっかりと理解してくれていると思います。もちろん肩肘を痛めない投球フォームの習得には個々それぞれの時間がかかるわけですが、習得・未習得を別にすれば、どうすれば肩肘を痛めずに投げられるのかということを、小学生であっても理解してくれています。

プロコーチやプロトレーナーは「プロ野球選手がそうしているから正しい」と選手に伝えるのではなく、もっと解剖学的・医学的根拠に基づいて指導をすべきです。少年野球のボランティアコーチの方々にそこまで求めることはできませんが、しかしプロを名乗っているコーチやトレーナーであれば、そこまで学ぶことは義務だと思います。

コラム:野球肘とは?|内旋型トップポジションが野球肘を生み出す!

僕はお医者さんに野球フォームの指導法を指導するコーチ

一般的な整形外科の先生は筋肉や体の仕組みや治療法に関してはまさにプロフェッショナルです。お医者さんの医学的知見には僕らは太刀打ちできません。PTさんや柔道整復師の方々であっても、体の仕組み、リハビリ方法、コンディショニング法に関してはしっかり勉強されています。それぞれ国家資格ですからね。

でも「怪我をしにくい野球のフォーム」となると話は別です。もちろん野球を専門にされているスポーツ整形の先生などはフォームまでしっかりと勉強されているケースもありますが、そのような外科の先生は日本には数えるほどしかいらっしゃいません。そのため僕のようなコーチがお医者さん、PTさん、柔道整復師の方々に、肩肘を痛めにくいフォームの指導法のレクチャーを行なっているわけです。

僕のようなプロフェッショナルコーチは、医学的知見はそこそこしかありません。例えばお医者さんが使う専門用語をある程度理解していたり、レントゲン写真を見て異常を読み取る程度のことしかできません。ですが肩肘を痛めない理論的なフォームの指導や、痛めてしまった理由の解明に関してはプロフェッショナルです。このあたりに関しては僕はお医者さんにさえ絶対に負けることはありません。もちろんこの点だけですが。。。

「プロ野球選手がそうしているから正しい」という指導法は、これはプロコーチやプロトレーナーが行って良い指導法ではありません。これは週刊ベースボールで連続写真を見てフォームを学んでいるボランティアコーチの指導法です。ボランティアコーチであれば「プロ野球選手はみんなそうしている」という指導法が限界だとも言えますし、そうすることでしか説得力を増すことは難しいのかもしれません。

医学書は本当に高いけど、そこに投資するのがプロ!

しかしプロコーチ・プロトレーナーであれば、やはり一冊1〜2万円、安くても一冊5,000円程度する野球肩野球肘に関する医学書を開き、プロ野球選手たちのどの動作が正しくて、どの動作が誤りなのかを理論的に学び、分かりやすく選手たちに伝える技術が必要です。

ハッキリ言って医学書は本当に高いです。都内であれば新宿の紀伊國屋、池袋のジュンク堂などに行くと医学書がズラッと並んでいるわけですが、安い医学書というものは存在しません。週刊ベースボールよりもページ数が少ないスポーツ医学の月刊誌であっても3,000円くらいします。

ですがプロコーチ、プロトレーナーであればそこに投資しなければどんどん時代に取り残されてしまいます。ちなみに野球技術に関しては常にアメリカから日本に入ってくるという順序のため、英語をある程度理解できれば、最新の野球技術に関する論文もチェックできるようになります。

僕ももちろん最新の技術を英語の論文や、アメリカのコーチのレクチャーなどから学んでいます。2024年で僕はプロコーチ歴15年目となるわけですが、それでも未だに学ぶことだらけです。僕は他のプロコーチよりも多く学んでいる自負がありますが、それでもまだまだ時代に追いつくのがやっとです。

話は長くなりましたが、とにかく言いたいことは、「プロ野球選手のフォームを見て学ぶ」というのはアマチュアのやり方です。プロは「プロ野球選手のフォームを観察して、どの動作が理論的に正しくて、どの動作が理論的に良くないのか」を理論的に理解し、さらに理論的かつ分かりやすく説明できなくてはいけません。

僕もまだまだ成長過程のプロコーチではありますが、他のプロコーチやプロトレーナーと話をしていると、「この人たちは最新の野球技術を学んでいないんだなぁ」と思うがしばしばあります。

ですのでもしプロコーチやプロトレーナーの指導を対価を支払って受ける場合は、ちゃんと理論まで説明してくれるかを先に確認するようにしてください。フォームに関して理論を説明できない方は、理論的に誤った指導をする可能性が高いため要注意です。せっかくお金を払って指導を受けるのですから、やっぱりちゃんとした理論を持った方に教わるのが一番です。

少なくとも「プロ野球選手がみんなやっているから」とか、その類の言葉ですべてを説明しようとするコーチには高いお金を支払わないようにしましょう。

ボランティアコーチが適切な指導法を学ぶのは難しいのかもしれない

野球のコーチは常に指導法をアップデートし続けよう

選手以上に情報のアップデートが必要なのがコーチであるということは、プロフェッショナルコーチの間ではすでに常識になっています。野球理論やトレーニング理論は年々アップデートしていかなければ、どんな選手でも上達させることができるコーチになることはできません。

ただ、少年野球や野球部などのいわゆるボランティアコーチにそこまで求めるのは酷という見方ができるのも事実です。僕らのようなプロフェッショナルコーチであれば情報の常時アップデートはプロとしての義務でありながらも、同時に日々苦もなく自然と行なっています。

でもボランティアコーチや教員コーチの場合、コーチである以前に会社勤めや教員としての業務があります。それ以外の個人的な時間を長時間使って勉強するというのは、なかなか大変なことだと思います。

ですが僕らのように対価をいただいてレッスンをしているコーチの場合は、情報の常時アップデートができない場合はすぐに周回遅れになってしまい、選手を上達させることができないコーチになってしまいます。その結果、元プロ野球選手の野球塾であってもあっという間に廃業に追い込まれてしまいます。

プロトレーナー、元プロ野球選手、元高校球児、元大学野球などなど、現代ではさまざまな肩書きを持った方々が日本全国で野球塾を展開しています。ちなみに僕自身は怪我により、選手としては高校一年生の春までしかプレーすることはできませんでした。高校時代は右肩のリハビリに明け暮れ、高校卒業後に選手としての道は完全に諦め、プロコーチになるための勉強を始めました。

僕自身が13年ほど、野球とはまったく関係のない職に就きながらプロコーチになる勉強、修行をしていたので、その大変さは身を持って知っています。生半可な覚悟では続かないと思います。

元プロ野球選手が野球科学を学ぶと鬼に金棒

だとしても、プロコーチだろうがボランティアコーチだろうが、選手にとってはどちらも同じコーチです。ですのでボランティアコーチだったとしても、できる範囲で情報のアップデートはしていく必要があります。

ではなぜそんなに頻繁に情報のアップデートが必要なのでしょうか?その理由は簡単で、野球動作理論にしろトレーニング理論にしろ、日進月歩で進化し続けているからです。その進化に付いて行けないと、令和なのに昭和に取り残されたようなコーチになるしかありません。

例えばバッティング技術だけを見ても、10年前まで常識だったことが現代ではそうではなくなり、10年前にはなかった理論が現代では確立されていたりもします。野球理論やトレーニング理論は、5年10年経つとガラッと変わってしまうこともありますので、スポーツ科学のメッカとも言えるアメリカの最新理論に対し常にアンテナを張っておく必要があるわけです。

ちなみに理論というのは誰にでも通用しなければなりません。例えば魔女のホウキは空を飛んで移動するのにはとても便利ですが、でも魔女しかホウキに乗って空を飛ぶことはできません。しかし科学によって作られた飛行機は、飛行機が空を飛んでいるメカニズムなどまったく知らなくても、誰でも飛行機に乗って空を飛んで移動することができます。

この魔法と科学の違いのように、僕がレッスンするような科学的根拠に基づいた動作指導法であれば、どんなレベルのどんなタイプの選手でも上達させることができます。ですが選手時代に身につけたセンスや経験則を主に指導するコーチの場合、その指導内容と選手との相性が合わないケースも多々あります。

プロ野球でも、監督やコーチが代わった途端に活躍するようになる選手がいますよね?このケースなどはまさにその典型で、相性の良いコーチと運良く出会えると、自らの能力を一気に開花させられることがあります。

でも例えば野球動作を科学的に学んだ千葉ロッテマリーンズの吉井理人監督のような方であれば、選手個々にフィットした指導法の引き出しをたくさん持っていますので、どのような投手でもレベルアップさせることができます。

吉井監督のように、プロ野球選手・メジャーリーガーとして圧倒的な実績がある方が野球科学・トレーニング科学を学ぶと、まさに鬼に金棒だと思います!

どの選手にも通用する万能な指導法は存在しない!

コーチとして一番やってはいけないことは、「俺が子どもの頃はこうやって教わった」という考え方を前提にして選手を指導してしまうことです。これは指導ではなく、知識の押し付けでしかありません。

根性論にしても、根性というものを心理学的に理論立てて説明できないコーチは、決して根性論を選手に押し付けるべきではありません。そもそもスポーツ心理学を学んでいる方であれば、根性論を前提にすることもないとは思いますが。

すべての選手に通用する万能の指導法など存在しません。もちろん投げる・打つに関しての基本に関しては共通するわけですが、基本以外の指導に関しては選手が100人いたら、100通りの指導法をコーチは用意する必要があります。

僕は双子の選手を指導した経験も豊富にあるのですが、一卵性の双子であってもその指導法は個々によって異なります。もちろん似てくるところもあるわけですが、しかし双子だからといって僕の指導内容が同一になることはありません。

僕の場合は選手個々のタイプ、レベル、人柄などに合わせて指導法や伝え方を変えています。もちろんこれは決して楽な作業ではありませんが、しかし僕は2010年1月の開校以来、ずっとマンツーマンにこだわって、このやり方を続けています。

その結果たくさんの生徒さんが12球団ジュニアトーナメントの最終選考に合格したり、甲子園に出場したり、六大学野球で活躍したり、プロ野球選手になったりしています。

僕の選手としての実績は上述の通り、野球肩により高校一年生止まりです。ですので他の一般的な野球経験者よりもプレー経験は乏しいとも言えます。しかし野球動作やトレーニング理論を科学的にしっかりと学び、その内容を常にアップデートし続けているため、そんな僕でも選手たちをどんどん上達させることができていますし、長年プロ野球選手のサポートも続けています。

そして選手たちが実際に上達を実感してくれているからこそ、2010年にスタートした僕の野球塾は、2023年になった今でも多くの生徒さんが通ってくれているんです。

野球塾を選ぶ際はまずはコーチのレベルを確認しよう

もし今現在、どの野球塾に通おうかを迷っているようでしたら、野球動作やトレーニング理論を科学的に学んでいると思われるコーチがいる野球塾を選ぶようにしてください。「コーチが元プロ野球選手だから」「コーチに甲子園で活躍した経験があるから」という理由だけで野球塾を選ぶことは避けてください。

本気でもっと野球を上手くなりたいのであれば、必ず最新の野球理論やトレーニング理論を学んでいるコーチを探してください。ちなみに「ステイバックを教わることはできますか?」とか、「エクステンションはどうやって伸ばすのが適切ですか?」とか、「プライオメトリクスの正しいやり方を知りたいです」というふうに、専門用語を出して質問して、それに対し真摯に分かりやすく説明してくれるコーチは、ちゃんと勉強しているコーチです。

逆に「ステイバックは今流行っているのかもしれないけど、私は私のやり方での指導を続けています」という感じで、どうもお茶を濁すような受け答えをしてくるコーチは絶対に避けてください。引退後は野球塾で指導している元プロ野球のスター選手であっても、僕が実際にお話をさせていただくと、そのようなコーチは少なくありませんでした。

実際に僕がそのようなコーチとお話をする機会があると、科学的な野球用語やスポーツ理論用語がまったく通じないコーチが本当にたくさんいました。重要なのは練習アイデアの豊富さではなく、科学に基づいた理論をどれだけ持っているかどうかです。ここを見誤ってしまうと、高いレッスン料を払ってもあまり上達できない、という残念な結果になってしまうこともありますので、ぜひご注意ください。

そしてもしこのコラムを読んでくださり、僕のレッスンに少しでもご興味を持ってくださった場合は、お気軽にLINE(僕のLINEはこちらから友だち追加してください)よりお声掛けくださいませ。よろしくお願いいたします。

TeamKazオンライン野球塾

新しい野球塾が誕生して別の野球塾が潰れていくこの10年

僕自身、やっぱり納得いくまで野球をしたかったなという気持ちはありました。でも中学卒業後、高校の野球部に参加していた入学式の前日、僕は肩関節胞損傷というかなり痛い部類の野球肩になってしまいました。高校時代はずっと右肩のリハビリを続けていましたが、結局その肩が以前のようにボールを投げられるようにはなりませんでした。

僕は中学3年生の時点で125km/h程度のストレートを投げられるようになっていました。1978年生まれの僕らの世代にとっては、中学生の120km/h台というのはかなり速い部類で、全国を探しても130km/h以上を投げられる中学生などほとんどいませんでした。そんな時代でしたから、125km/hであっても当時としてはかなり速い方だったんです。

細身の体に対して速過ぎるボールを投げ続けた影響だったのかもしれません。肩を痛めて選手としての道は断たれ、高校卒業後の19歳くらいの時から野球動作に関する科学を学び始めました。そこから13年ほど野球とは関係ない仕事をしながら、野球に関する様々な科学を学び続け、2010年1月にあるプロ野球選手の自主トレをサポートする形でプロコーチデビューを果たし、念願だった転職を実現させました。

僕の野球塾はそこから始まったわけですが、その当時はまさかここまで長くできるとは思っていませんでした。この10年くらい、野球塾は引退したプロ野球選手たちが次々と開校していきました。しかしその中でもレッスンし続けられる野球塾はごく一部で、これまで本当に多くの野球塾が経営難で潰れてきました。そんな中でも僕の野球塾は今なお潰れる気配なく毎日選手を指導し続けられています。

僕の個別レッスン野球塾が、他の野球塾のグループレッスンよりも安い理由

僕のように目立った球歴を持たないのにこれだけ長く野球塾を続けていられるのは、やはりプロコーチになる前にしっかりと野球に関する科学を学んだことが一番だったと思います。フォームに関するバイオメカニクスや人体力学、解剖学、投球や打球に関する物理学、野球に関する医学、スポーツ心理学、栄養学などなど、コーチをする上で役立ちそうな科学はすべて学びました。

それに加え子どもたちを教え始める前、僕は複数の野球塾の見学にも行きました。いわゆるベンチマーキングです。他の野球塾がどのようなコーチングを行なっているのかをリサーチしたり、情報交換をしたりしました。そしてそこで気づいたのは、有料の野球塾であっても科学的根拠のないことを子どもたちに教えているところがすごく多いということでした。

有料の野球塾なのに根性論で指導をしていたり、少年野球チームやクラブチームの延長のような指導しかしていないところがとても多かったんです。もちろん中には科学的根拠の見える指導を行っている良い野球塾もありましたが、それを確信できるところは僕が見学に行かせてもらった中ではせいぜい1割程度でした。

そして野球に関する科学的用語を使って話そうとしても、その用語を補足なしで理解できるプロコーチもやはりほとんどいらっしゃいませんでした。中には、元プロ野球選手だったコーチなのですが、軸足のことを軸だと思っているレベルのコーチさえいました。しかし軸足は軸として機能することはありません。軸足は英語で言うと "pivot foot" と言います。意味は "旋回する足" です。そして軸は英語では "axis" と言って、pivot foot とはまったくの別物です。

元プロ野球選手たちの選手としての経験値は半端じゃありません。僕なんかに太刀打ちできるものではありません。しかしコーチとして必要なスポーツ科学への造詣の深さは、元プロ野球選手である野球塾のコーチたちは僕に太刀打ちできません。関東近辺では僕が知る限りでは、元西武ライオンズの熊澤とおるコーチくらいです。熊澤コーチは僕が尊敬するコーチの一人です。

有名トレーナー主宰の有名野球塾は要注意!

ちなみにプロ野球チームでも活躍された有名トレーナーが主宰する野球塾も多いですよね。しかしご注意いただきたいのは、そのトレーナーの野球塾であっても、そのトレーナーから直接指導を受けることはできない、という点です。

多数の野球動作に関する本を出されているトレーナーの野球塾に通っていた僕のある生徒さんは、その野球塾では根性論ばかりを言われたと話していました。中学生である選手自身だけではなく、送り迎えをされていた親御さんもその指導法を見聞きしていましたので、間違いないかと思います。野球塾を主宰している有名トレーナー自身の知見はすごかったとしても、その野球塾で実際に指導に当たっていたのは大学生のアルバイトコーチだったそうです。

その生徒さんと親御さんは、高いレッスン料を払って根性論を聞きにきているわけではないという思いからその野球塾はやめて、僕のレッスンを受けるようになりました。ちなみにレッスン料は僕の野球塾よりもはるかに高額だったそうです。なぜ高額になるかと言うと、単純にその有名トレーナーのネームバリューと、充実した屋内練習場の設備の影響です。大した内容の指導を受けられなくても、設備が充実しているだけでレッスン料は高額になります。

しかし現在の僕の子どもたちへのレッスンはZOOMのみです。コロナ前は子どもたちにも対面でマンツーマンレッスンを行っていましたが、現在対面でコーチングを行なっているのはプロ野球選手のサポート時のみです。小中学生に関してはすべてZOOMレッスンで、生徒さんたちはみなさんご自宅のお部屋やお庭からレッスンを受けているのですが、僕のレッスン内容は科学的根拠が満載であるため、充実した屋内練習場などなくてもどんどん上達していきます!

そして箱(屋内練習場)を持たない僕の野球塾のマンツーマンレッスン料は、場合によっては他の野球塾のグループレッスン料よりも安いことがあります。時々、僕は元プロ野球選手じゃないからレッスン料が安い、もしくは安かろう悪かろうと思われることもあるのですがそうではなく、僕の野球塾は箱を持たない分マンツーマンなのに安くなっているんです。

グループレッスン野球塾では選手個々の動きをすべて追うことは不可能!

充実した設備は、ないよりはあった方が良いと思います。しかしそれによってレッスン料が高額になってしまってはいけません。そして野球塾のレッスンは、グループレッスンよりもマンツーマンの方がはるかに高い効果を得ることができます。もしグループレッスンとマンツーマンレッスンの選択肢があるのであれば、ご予算が許す限りは絶対にマンツーマンレッスンを選んでください。

グループレッスンは、一般的には5〜12人程度に1人のコーチが付くという割合が多いと思います。1クラスの生徒さんが5人前後であれば、少人数制レッスンと紹介されていると思います。

僕自身、この野球塾で一夏だけグループレッスンをしたことがありました。その時の生徒さんは4人でした。1クラス4人で1レッスン1時間だったのですが、たった4人であっても、選手全員の細かい動きを追い続けることは困難でした。もちろん全体的に動作を追うことはできるのですが、しかしマンツーマンをやっている時のように、選手の動きを完璧に追い続けることはできませんでした。

そのため選手が良くないフォームを取った時、それがその時がたまたまだったのか、それともいつもなのか、もしくは何割程度の割合なのかを把握することができません。さらにはその動作が常に出ているわけではない場合、僕がその動作に気づけないことだってあります。そしてそれはコーチングとしては致命的なミスとなってしまうこともあります。

僕は一般的には視野が広いタイプのコーチで、監督経験もあるのですが、監督としてはベンチから試合のすべての状況を常に把握することができました。しかし試合状況とコーチングはまったくの別物でした。選手個々のフォームをしっかり追い切れないことから、僕がグループレッスンを行ったのはその夏休み期間が最初で最後となりました。

野球塾の経営という視点で考えると、絶対にグループレッスンは行った方が実入りは良くなります。しかし僕は選手全員を上達させたいという強い思いがあるため、今後もマンツーマンにこだわってレッスンをしていくつもりです。

もし野球チームや他の野球塾で指導を受けていても、いまいち根拠に欠ける指導ばかりだと感じた時は、ぜひ一度僕のレッスンを受けてみてください。僕のLINEを友だち追加してもらえれば、体験レッスンが無料になるクーポンもプレゼントしています。無料レッスンですので受けて損することはありません。ぜひ一度僕の理論派レッスンを受けてみてください。

レッスン内容は超理論的ですが、でも小学生でも大人でもちゃんと理解できるように分かりやすくお伝えしています。小学生には小学生に合わせて、大人には大人に合わせて言葉を選びながらレッスンをしています。そして一度レッスンを受けてくれた方はその内容に非常に満足してくださり、70〜80%の方がその後もレッスンを受け続けてくださいます。

実際にレッスンを受けてくださった方からいただいたご感想もこちらの野球塾ページの感想欄でご紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。

僕の場合はある日突然肩に痛みが走りました

僕は高校の入学式の前日に肩関節胞を損傷するという酷い野球肩になり、ボールを投げられなくなってしまったわけですが、これは本当に痛かった。右手では歯磨きさえもできないくらい痛かった。

僕の場合は、痛みに関しては急に出ました。肩関節胞の損傷そのものはすでに中学時代からあったはずなのですが、それが痛みとなって出てきたのは高校の入学式の前日が初めてでした。そして僕の場合に関しては、痛みが出た時はもう手遅れで、手術をしてもまたちゃんとボールを投げられるようになるかは分からない、という診断でした。

そのため手術はせず、しばらくは自然治癒に期待しながら、少しずつリハビリを始めていきました。でも結局ちゃんと治ることはやはりなく、今も少し強くボールを投げるとジンジン痛みます。

それでも諦めなかったティーンとしての最後の一年

それでも19歳までは選手としての道は諦めず、僕は運良くプロテストのようなものを受けられることになりました。トライアウト制度がある現在はもうプロテストのようなものは基本的にはないのですが、当時はまだあって、あるパ・リーグ球団の方にプレーを見てもらいました。

打撃、走力、守備力に関しては合格でした。特に守備力に関しては内外野の両方を守らされて、どこをやっても上手くこなせました。でもやはり投げるのだけはダメで、外野フライを捕っても二塁までボールが全然届かない(苦笑)

打撃は、ホームランバッターではなかったけどヒットを打てたし、50m走は5秒台。「ボールさえ投げられればドラフト下位指名の可能性は十分」という評価でした。

ちなみにその時見てくださった方は、僕が中学時代にまだ怪我をする前に僕のピッチングを何度か見に来てくれていたスカウトマンでした。そういう縁もあり、肩が痛い僕のために時間を作ってくださったんです。

人生を変えた一冊の本

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僕が野球の科学や医学を本気で勉強し始めたのは、このテストで踏ん切りがついたからでした。もう選手としての道はキッパリと諦めて、時間をかけて勉強して、いつかプロコーチになろうという決意のもと勉強を始めたのです。1997年のことでした。

当時はまだ野球科学はそれほど発展しておらず、僕がまず読み込んだのはロバート・アデアの『ベースボールの物理学』という本でした。この本は僕に大きな衝撃を与えました。この本との出会いがなければ、僕はきっと今のような理論派コーチにはなれていなかったでしょう。

この本は、ハッキリ言って難しいです。野球が大好きでも、読書が大好きでも、この本をスラスラと読める人はそうそういないと思います。それくらい難しい。だけど何度も何度もメモしながら読み返しているうちに、書かれている内容がだんだんヴィジョンとして頭の中で鮮明になっていきました。

僕はプロコーチとして、フライボール革命という言葉が誕生する前からフライボール革命の内容を選手たちに伝え続けていたのですが、それができたのも勉強し始めた時にこの本を読んだからでした。

もう古本でしか入手できないと思いますが、もし興味があれば読んでみてください。本当に興味深い一冊です。僕ももちろんこの本はまだ持っていて、今も時々開いては読み返しています。

ということで、これが僕のコーチ人生の指針となった一冊の本なわけです。

助走をつけられる野手の肩への負荷は確かに小さい

野球肘のリスクは投手だけではなく全ポジションにある!?

時々、野球肩野球肘はピッチャー以外は心配いらないと勘違いされている親御さんがいらっしゃいます。「肩肘を痛めないようにうちの子にはピッチャーはやらせない」と考えている親御さんも一定数いらっしゃるようですが、これは間違いです。

確かに球数という面を考えればピッチャーが一番肩肘を痛めるリスクが高いわけですが、しかし他のポジションであってもキャッチボールからノック、ボール回しなどの練習をトータルで考えると、かなりの球数になっていきます。

ステップによって助走をつけてから投げられる内外野手の場合は、肩への負荷を多少抑えることはできると思います。しかし肘への負荷に関しては、本当に正しい投げ方が身についていなければ、助走しながら勢いをつけて投げたとしても負荷を抑えることはできません。

つまり野球肘に関しては、どのポジションも平等にリスクがあるということです。

野手よりも肩への負荷が大きくなりやすい投手

投手の次に肘を痛めやすいのは、2010年以降の僕の生徒さんたちの割合だけで見るならば捕手です。

捕手は試合ではピッチャーの次に球数が多くなり、二塁送球などはほとんどステップせずに投げる必要があります。そのために投げ方が良くないと、あっという間に肘を痛めてしまいます。

肩に関しては、まだステップワークが0ではない分投手よりは負荷は小さくなると言えます。しかし肘への負荷は、投げ方が良くなければスナップスローであっても抑えることはできません。

ちなみに投手がステップするモーションはステップワークとは呼びません。これは厳密にはストライディングと呼び、ステップワークとは別物なんです。ステップは、やはり両足を動かす必要があります。しかし投手の場合は非軸足のみを前に出していきますので、これはステップ"ワーク"とは呼ばないわけです。

ステップワークがない分、投手の場合は肩関節の動きが大きくなりやすく、科学的に本当に正しいフォームが身に付いていない場合、すぐにインナーマッスルを痛めてしまうタイプの野球肩になってしまいます。

野球肘のリスクは全ポジションにある

しかし、肩肘に負荷のかかりにくい科学的に本当に正しい投げ方というものが存在しています。これは体の使い方としては医学的にも正しい動作になるため、たくさんボールを投げても常識の範囲内の球数であれば肩肘を痛めることはほとんどなくなります。

この科学的に本当に正しい投げ方については、投球障害予防改善法-徹底解説ビデオで2時間44分かけて分かりやすくレッスンしていますので、詳しくはビデオをチェックしてもらえたらと思います。

結論として、野球肩野球肘は投手だけに起こるものではありません。野球肩に関しては投手が一番なりやすいわけですが、野球肘に関しては、投げ方が悪ければ全ポジションにリスクが伴います。

しかし僕のレッスンビデオを見ていただき、丁寧に時間をかけて動作改善をしてもらえれば、たくさんボールを投げても肩肘を痛めにくい投げ方を身につけられるはずです。ぜひ親御さんにこのビデオを見ていただき、親御さんがコーチになってお子さんに教えてあげて欲しいなと思います😊

道具の性能に頼ったプレーができなくなる今後の中学野球

道具の性能に頼った野球ができなくなりつつある中学野球

中学生は野球塾のレッスンで科学的に正しいフォームを身につけることで、グングン上達していくことができます。一般的に男子生徒は中学生に入ると身長が伸び始め、体も強くなっていきます。つまり小学生時代にはできなかったレベルのフォームでプレーできるようになる、ということです。

でもその時、科学的に正しいフォームが身に付いていないと体格でしか勝負できなくなり、自分と同じ体格以上が相手になると勝てなくなりますし、そもそも科学的に正しくはないフォームで打ったり投げたりを繰り返していると、必ず怪我をしてしまいます。

さて、なぜ今回は中学生をテーマにしたかと言うと、中学生の体格はもう小学生とは異なりますし、かと言って高校生ほど大人に近いというわけでもありません。つまり文字通り中学生は、小学生と高校生の中間に位置しているとても重要な世代だと言えるのです。そのため今回は中学生をテーマに野球コラムを書いています。

反発係数が木製バット同様になるバットが主流になる高校野球の未来

高校野球では年々低反発バットへの移行が強く推奨されるようになってきました。今までの金属バットというのは本当に飛びすぎるくらい打球がよく飛ぶバットだったのです。ちなみに日本の金属バットは反発係数が高すぎて、アメリカでは使うことはできません。

高反発バットというのは打球がよく飛びますので、打球速度の速さも半端ではなく、実はとても危険なんです。そして高校野球では高反発バットによるホームランの量産ばかりが注目されるようになり、技術力の向上が置き去りにされてきました。そのため日本の高校生バッターは、国際大会ではほとんど通用していません。

一方アメリカの金属バットは、反発係数を木製バットと同水準にしなければならないという規定があるため、高校生レベルであっても金属バットから木製バットへのシフトにはほとんど苦労しません。しかし日本の場合、高校生が金属バットから木製バットに持ち替えた途端打てなくなることがほとんどです。

ビヨンドが使用禁止になった12球団ジュニアトーナメント

小学生の場合も、高校野球で低反発バットの需要が高まりつつあるのと同じ現象が起き始めています。2022年の12球団ジュニアトーナメントでは、2022年夏に行われたセレクションまではビヨンドやカタリストなどの複合バットの使用は可能でしたが、12月27日から行われた大会では正式にビヨンドやカタリストの使用が禁止されました。

12球団ジュニアトーナメントで使用できるのは通常の金属バット、木製バット、バンブーバット、ラミバットのみです。つまり2023年以降は、ビヨンドの恩恵でヒットや長打を打てていた選手は、12球団ジュニアトーナメントのセレクションには通らなくなる、ということです。

このように今、少年野球でも高校野球でも高反発バットの利用を禁じる方向に時代は進んでいます。日本のバットは、日本独自の進化を遂げることによってどんどん飛距離が伸びるようになりました。その反面道具に頼ってヒットや長打を打てるようになり、技術力を大切にする選手が減ってしまいました。

いま野球を本気で頑張っている中学生の多くは、高校に入ったら野球部に入ると思います。その時高反発バットの性能に頼っていたり、ビヨンド打ちが体に染み付いてしまっていると、高校野球ではまったく通用しなくなります。打球はほとんど外野にさえ届かなくなるはずです。

そうならないためにも、体がどんどん大きく強くなっていく中学生のうちに、どんなバットでもヒットを打てる科学的に正しいフォームを身につけておく必要があるんです。そしてそのための徹底サポートをしているのが僕の野球塾をはじめとした理論派野球塾の存在です。

体の成長に比例して上達速度を速められる可能性を秘める中学生

体の成長に比例して上達速度を速められる可能性を秘める中学生

そもそも軟式野球と硬式野球の打ち方というのは、まったく異なります。軟式野球はビヨンドに代表されるように、ボールの正面をバットの正面で打つことにより打球を飛ばして行きます。しかし硬式野球でこの打ち方をしてしまうと、よほどパワーのあるバッターじゃない限り打球を遠くまで飛ばすことはできません。

硬式野球は打球にバックスピンやトップスピンをかけることによって飛距離を伸ばしたり、ゴロの球足を速くさせていきます。ホームランに関しても体格や筋力に頼るのではなく、マグナス力を上手く利用できるように、打球にスピンをかける技術が求められます。この技術さえ身につけてしまえば、小柄でも細身でもホームランを打てるようになります。

高校時代の清原和博選手を覚えている方も多いと思いますが、清原選手は細身だったPL学園時代やライオンズ時代の方が、格闘家のような体型になった後よりも怪我なくホームランを量産することができていました。しかも清原選手の高校時代には、現代のような高反発金属バットなど存在していません。

しかし技術を身につけられなければ、あとは体格で勝負するしかなくなります。中学野球で非常に多いのですが、体を大きくするために練習の合間にドカベンを食べさせる野球指導者が日本には大勢います。これはまず栄養学的に間違ったやり方ですし、そもそも練習の合間のドカベンは熱中症のリスクを高めるだけです。

そして多くの野球指導者が科学的に野球フォームを学んでいないため、科学的に正しい投げ方・打ち方を指導することができません。するとどうなるかと言うと、体の大きさで勝負するしかなくなり、子どもたちにドカベンの完食を求めるようになるわけです。ここでまず言えることは、練習の合間にドカベンを食べさせるような指導者に子どもたちを預けてはいけない、ということです。

中学生の体はまさに日に日に大きくなり、大人へと近づいていきます。つまりここで科学的に正しいフォームをしっかり身につけることができると、体の成長速度に比例して、技術力もどんどん向上させていくことができます。体が大人の体に近づいて強くなっていくほど、レベルの高い技術を身につけられるようになります。

まずこれが、特に中学生が野球塾のレッスンで科学的に正しいフォームを身につけられるとグングン上達していける最初の理由です。僕の野球塾でも多くの中学生がレッスンを受けていますが、間違いなく中学生の上達速度は、小学生よりも高校生よりも速いと言えます。

例えば中学の野球チームで5番手投手だった選手は、レッスンを受けた半年後にはエースとして投げるようになり、大会でチームを勝利に導ける投手になりました。また、シニアでなかなか背番号をもらえなかった打者は、レッスンを受け始めた10ヵ月後の最後の夏には4番打者としてチームを牽引するようになりました。

中学生というのは、野球塾のレッスンによって科学的に正しいフォームをしっかりと身につけられると、このように急激な上達を実現できる可能性が非常に高いんです!

小学生には理解できないことも理解できるようになる中学生

小学生には理解できない野球塾のレッスンも理解できるようになる中学生

怪我をしない投げ方や打ち方を身につけるのであれば、選手個々のフォームが癖づく前の小学生のうちに動作改善をしてしまうのがベストです。怪我をしやすい投げ方や打ち方を、体も大きくなってきてフォームがある程度固まったあとから改善しようとすると、けっこう時間がかかってしまうんです。

怪我をしにくいフォームという意味では中学生の場合、小学生よりも改善までに少し時間はかかってしまうのですが、それでも高校生になってから改善しようとするよりは短時間で済みます。

そして中学生は、言葉の理解力がグングン高まってくる世代です。僕は小学生、中学生、高校生、大学生、プロ野球選手の個別サポートを業務としているのですが(メインはプロ野球選手の動作改善サポート)、中学生になってくると多くの選手たちの僕の言葉に対する理解力が高まっていくんです。

そのため小学生をレッスンする際には使わないような専門用語(もちろん初めて使う時は言葉の意味を説明します)を増やしたり、小学生には教えられない難しいレベルの動作を伝えられるようにもなります。そしてその理解力は高校生と大差はありません。もちろん国語力的には中学生よりも高校生の方が上なのですが、しかし僕の言葉に対する理解力に関して言えば、中学生と高校生とでは平均的にはほとんど差はありません。

そのため中学生の場合、正しい動き方を正しく理解し、正しく体現できるだけではなく、その動作がなぜ必要で、今までの動作だとなぜ良くないのかも深く理解できるようになります。小学生の場合は、このあたりが理解ではなく、暗記になってしまうことが多いんです。言葉を暗記しただけでは正しいフォームの理解度は深まりません。それが中学生になると覚えられるだけではなく、覚えたことをしっかりと理解できるようになるんです。

例えば「脚を高く振り上げて投げましょう」という指導をしたとすると、ほとんどの小学生の場合はただ脚を高く上げて投げようとするだけに留まります。レッスン中にできるだけ分かりやすく説明をしても、その動作の必要性や、今までの動作がなぜダメだったのかを理解できるまでに時間がかかるケースが多くなります。そのためその場では理解できなかったとしても、中学高校になった時に役立てられるように、僕は小学生にもレッスン内容をしっかりとノートに書いてもらうようにしています。

国語力が低すぎる選手はプロ野球でも大成できない!

実はプロ野球選手の中には、国語力がまったくない選手が少なくありません。高校時代は体格やセンスだけで野球をやっていて、プロスカウトも注目していた高校生だったため、勉強の成績は常に赤点というような選手たちです。僕が指導を担当したある選手は2軍で燻っていた20代の選手だったのですが、その選手の体のケアを担当されていたトレーナーさん経由で、僕に動作改善を手伝ってもらいたいというオファーが届きました。

しかしその選手が僕のサポートを受けたのは短期間だけでした。その理由は、彼が僕が説明する言葉がほとんど理解できなかったためです。もちろん僕はスポーツの専門用語や解剖学用語に関しては必ずどういう意味なのかを説明しました。ですが彼はそのような言葉を覚えたり、理解することを苦痛に感じてしまい、1ヵ月も立たないうちに僕のサポートを打ち切ってしまいました。そしてそれから一年も経たないうちに、彼は一度も1軍に定着することなく、トレードで得た新たなチャンスも活かせず、戦力外通告を受けてしまいました。

確かに中には大人になってもこのように国語力に乏しい選手は大勢います。しかし国語で平均点以上の点数を取れている中学生であれば、ほぼ確実に僕が説明する言葉や動き方を正しく理解することができます。この理解力は小学生には一部の選手にしか求められないものです。僕のレッスンにおいては、だいたい小学生全体の5%くらいしか、中学生同様に少し難しい話を理解できる小学生はいません。

逆に中学2年生や、2年生を間近にした年代になってくると、理解力がどんどん向上していきます。そのため言葉の説明さえ先にしてしまえば、スポーツの専門用語を絡めながら動作指導をしても、しっかりと理解することができます。正しい動作をよく理解できるからこそ、トレーニングでも正しい動作で投げたり打ったりすることを意識できるようになり、その結果実戦でも正しいフォームでプレーできるようになり、成績がどんどん向上していくようになります。これが中学生が野球塾のレッスンを受けるとグングン上達していける2つめの理由です。

中学生になると練習すればするほどスタミナがついていく!

中学生になると練習すればするほどスタミナがついていく!

「動作をマスターする」というのは、運動習熟というスポーツ心理学用語で説明することができます。運動習熟とは、その動作を意識しなくても自然とできるようになっている状態のことで、その動作が癖づいているということを意味します。

新しい動作を運動習熟状態まで持っていくためには、一般的な現役選手の場合は平均2000回その動作を繰り返すことによって、その動作がマッスルメモリー(筋肉が動作を覚えた状態)された状態となり、意識しなくてもその良い動作で投げたり打ったりできるよういなります。つまりその動作が新たな癖になるということです。

2000回と聞くと最初は途方もない数字のように感じてしまうかもしれませんが、しかし毎日100回ずつ繰り返したとしたら20日間、200回ずつなら10日間で終わってしまう程度の回数です。つまり毎日普通に練習をしていればあっという間にクリアできる数字、ということになります。

ただし気をつけたいのは、同じ動作を2000回繰り返す必要があるということです。もし途中で元の動作に戻ってしまったり、違う動作が挟まったりしてしまうと、カウントはリセットされてしまいます。ですので、とにかく正しい動作をひたすら繰り返す必要があります。

小学生・中学生・高校生、各世代ごとの強化しやすいポイント

さて、ここで各世代ごとの特徴をおさらいしておきたいと思います。まず12歳までの小学生世代というのは敏捷性が向上する世代となります。12歳までに敏捷性を向上させておかなければ、中学高校になってから敏捷性を向上させることは非常に難しくなります。もちろん不可能ではないのですが、上手くいかなかったり、必要以上に時間がかかってしまうことが多くなります。ですのでジャンプや短距離走など、体を高速で素早く動かす必要がある動作への対応は、遅くとも12歳までに行っておく必要があります。

そして高校生の場合は、筋力がつきやすくなります。もちろん小学生でも中学生でも筋肉量を増やすことはできるのですが、大人の体にかなり近づき、ほぼ計算通りに筋肉量を増やしていけるようになるのが16歳以上となる高校生世代となります。このような生理学的理由もあり、ダンベルなどのウェイトを使った本格的な筋トレは、高校生になって身長がほぼ止まってから始めるのがベストだと言えます。それまでは筋トレをするにしても、自重(自分の体の重さ)だけを使って行うようにしましょう。

では13〜15歳の中学生世代ではどのポイントが強化しやすくなるのか?それはスタミナです。中学生世代というのはどんどんスタミナつけていくことができる世代です。つまり練習時間や練習回数をどんどん増やしていける世代ということになります。

ある動作をマスターするためには2000回の反復練習が必要であることはすでに上述しました。中学生世代になるとスタミナがつくようになり、この2000回という数字の難易度がかなり下がっていくんです。さらには途中でカウントがリセットされてしまったとしても、何度でもやり直す体力を持てるようになります。要するに練習をすればするほどスタミナが強化され、さらにたくさんの練習をこなせるようになる、ということです。これが中学生が野球塾でレッスンを受けるとグングン上達していける3つ目理由です。これはスタミナが付きにくい小学生には真似することはできません。

中学生が野球塾に通うとグングン上達できる理由についてのまとめ

中学生が野球塾に通うとグングン上達できる理由についてのまとめ

とにかく中学生になると男子選手は一般的にはどんどん体が大きくなっていきます。しかしまだ大人の体としては完成というわけではないので、体の状態としてはまだフレキシブルだと言えます。つまり例え悪い癖がフォーム内に入っていたとしても、まだ比較的短期間で修正することができ、良い動作を入れ直す作業もそれほど時間はかからないということです。

そして国語力もアップしていくことにより、コーチの言葉に対する理解度も深くなり、一つ一つの練習の必要性をしっかりと理解した上で練習に励んでいけます。それぞれの練習意図をしっかりと理解できるようになると、理解できていない時と比べ、上達速度はどんどん速くなっていきます。

また、動作をマスターするために必要な反復練習も、小学生にはできないような回数をこなせるようになり、新しい動作を次々とマスターしていくことができます。

だからこそ中学生は、野球塾で理論的に正しいフォームを学ぶことで小学生よりも、高校生よりも上達していくことが可能なんです。

でも注意してください。野球塾ならどこでも良いというわけではありません。その野球塾でレッスンを担当するコーチが、野球動作の科学的理論を学んでいるかどうかを必ず確認してください。元プロ野球選手、元高校球児、甲子園出場経験など、そのような肩書きには絶対に捉われないでください。

元プロ野球選手たちにしても多くの方が野球塾を開講していますが、ほとんどの方の野球塾が失敗に終わっています。例えば日本シリーズで活躍した元プロ野球選手二人で開講した野球塾があったのですが、そんな元スター選手二人がいるにもかかわらず、その野球塾は大きな先行投資(屋内練習場や広告費など)をしたのに、あっという間に廃れてしまいました。当人は今では多額の借金のみが残ってしまったとお話しされていました。

しかしプロ野球経験などの肩書きがなくても、僕のようにスポーツ科学などをしっかりと勉強されている方の野球塾は、確実に選手を上達させることができ、長年経営を続けることができています。僕の野球塾にしても、おかげさまで2023年1月1日で13周年(14年目)を迎えることができました。

ですので野球塾を選ぶ際は、必ずスポーツ科学をしっかりと学んだコーチがいる野球塾を探してください。そしてもし肩書きがあるコーチの方が信頼しやすいという場合は、元プロ野球選手ではなく、現役トレーナーもしくは元トレーナーが主宰している野球塾を選んでください。トレーナー経験があれば、その方はほぼ確実にスポーツ科学を学んでいると言えます。ただし僕のようにバイオメカニクスまで学んでいるトレーナーは多くありませんので、そのあたりは確認が必要かもしれません。ちなみに僕自身はバイオメカニクス、解剖学、運動心理学などを学んでいます。そのためパフォーマンスが向上して怪我をしにくくなるフォームの指導や、適切なトレーニング法、メンタル強化レッスンまで行うことができます。

ただし僕のようにマンツーマンにこだわっているコーチの場合、大勢の選手を受け入れることはできませんので、僕の野球塾に関して言えば、レッスンのお申し込みをお断りしたり、レッスン開始までお待ちいただくケースがあります。ちなみに僕の場合は特別な肩書きはありませんが、埼玉西武ライオンズの1軍コーチが僕の動作改善理論を推奨してくださっていますし、人気野球雑誌『中学野球太郎』でも僕のレッスンを特集していただきました。そういう意味では安心してレッスンを受けていただけるかと思います。

いずれにしても、スポーツ科学をしっかりと勉強しているコーチであれば肩書き関係なく安心してレッスンを受けることができます。しかし勉強されてなく、経験則だけで教えてしまっているコーチの場合、元プロ野球のスター選手であってもなかなか選手を上達させることはできません。

センスがあるプロ野球選手ほど選手を教えることができないという衝撃の事実!

なぜそうなるかと言うと、古田敦也氏が仰るように、ほとんどのプロ野球選手がセンスだけでプレーしてしまっているからです。古田敦也氏自身、現役時代はセンスだけでプレーをしていたから、他の選手に上手く教えてあげることができないとお話されていました。確かに古田敦也氏のYouTubeを拝見させていただくと、理論的に野球動作が説明されている動画はほぼ皆無でした。そして一部の動画では、野球肩野球肘の予防改善面においてマイナスになってしまうようなことも「正しい動作」として紹介されていました。
野球系YouTube動画で野球のフォームを学ぶ時はここに気をつけて!

古田氏のような方の指導は、教えられなくてもどんどん上手くなっていけるセンスがあるタイプの選手には合っています。ですが基礎からしっかりと教わっていかなければならない選手の場合は、現役時代はセンスでプレーをしていて、経験則だけで教えてしまうタイプのコーチの指導を受けてもほとんど上手くなることはできません。

このような点も、野球塾を選ぶ際の参考にされると良いと思います。基礎動作から学ぶ必要がある選手は僕のような理論派コーチのいる野球塾、逆にセンスがある選手は必ずしても理論派コーチがいる野球塾じゃなくても良いと思います。ただしセンスがある選手が理論を身につけられると鬼に金棒です!例えばイチロー選手、ダルビッシュ有投手、大谷翔平投手らはまさにセンス+理論のお手本選手たちです。

そして最後にもう一点、プロ野球チームが開講している野球アカデミーは注意が必要ということを付け加えておきたいと思います。このような野球アカデミーの場合、指導マニュアルというものが存在しており、そのマニュアルに書かれていること以外はコーチは教えることができません。これは実際にそこで指導されていた元プロ野球選手のアカデミーコーチから伺ったことです。つまりアカデミーではどの選手に対しても同じ内容の指導が行われてしまうということです。もちろんこれも良し悪しのため、最初からセンスがあるタイプの場合は、プロ野球チームの野球アカデミーでもどんどん上手くなれると思います。

ということでずいぶんと長いコラムになってしまいましたが、最後までお読みくださりありがとうございました。中学生のお子さんをお持ちの方は、ぜひこの機会に野球塾のレッスンをご検討いただき、「やっぱりレッスンを受けとくべきだった」と後悔のない中学野球を過ごせるようにサポートしてあげてください。

鵜呑みにはできない竹内樹生投手の130km/hという球速

130km/hを投げる小学生・竹内樹生投手の投球フォーム分析

2022年12月27日、北海道日本ハムファイターズジュニアの竹内樹生投手が大会史上初のノーヒットノーランを達成しました。僕もこの試合のピッチングを少し映像で拝見したのですが、確かに体格や投げているボールは6年生とは思えないレベルでした。

スポーツ紙によればこの試合の最速は130km/hだったそうです。ただしこの130km/hという数字を鵜呑みにすることはできません。もちろん一般の野球ファンにはこの結果を喜んであげて欲しいのですが、僕個人のプロコーチとしての意見は、実はそれほど高い評価ではありません。

確かに6年生としては素晴らしいと思います。普通の6年生であれば100km/hを超えるボールを投げるだけでも大変なのに、竹内投手は130km/hを投げているのです。これはもう本当に素晴らしいし、このまま怪我なく野球を続けて欲しいなと思っています。

ですがまず、神宮球場というのは球速が出やすい球場ということを忘れてはなりません。2022年の時点で神宮球場が、どのポイントで球速を測っているのかは分かりません。10年前に比べるとスピードは出にくくなっているとは思うのですが、それでもおそらくは18.44mの中間よりも僅かに投手よりで計測しているような印象です。

ということは小学生の16mという距離の場合、竹内投手の130km/hという球速は初速で計測された可能性が非常に高いと思います。おそらく3ヵ月後に中学生になって18.44mになった際、ボールは打者の手元でけっこう失速しているはずです。竹内投手の投げ方は、そのようなボールになってしまう投げ方をしているんです。

小学生相手にムキになるなとも言われてしまいそうですが、しかし僕は野球動作改善のプロフェッショナルコーチですので、ここはしっかりと理論的に書いていきたいと思います。

エクステンションが非常に短い竹内樹生投手のフォーム

まず竹内樹生投手のフォームの最大の特徴は、クロスインステップです。踏み込んでいく右靴を真ん中よりも左側にランディングさせ、つま先もやや一塁ベンチの方を向いています。これは間違いなくクロスファイアーを意識してのフォームだと思うのですが、クロスインにしてしまうことで右股関節をほとんど使えていない状態にあります。

左投手の場合、ボールは右股関節の内旋屈曲で投げていくものなのですが、竹内投手の場合は右股関節ではなく、左肩の水平内転によってボールを投げてしまっています。この投げ方のデメリットとしては、肩関節の真ん中〜後方にかけて大きな外反ストレスがかかり、このあたりの筋肉、特に棘上筋を痛めやすいという点です。つまり野球肩になりやすいということです。

以前、花巻東高校の佐々木監督は左腕が入部したら必ずクロスファイアーで投げさせると仰っていました。ですがこれをさせるということは、佐々木監督は解剖学を解ってらっしゃらないということだと思います。まだスポーツ科学が発展する前は、日本でもクロスファイアーは大きな武器として周知されていました。

ですが僕のような野球動作改善のプロフェッショナルが登場してくると、クロスファイアーで投げると確かに打者は打ちにくくなるけど、それ以上に左肩にかかるストレスが非常に大きくなるということがスポーツ医学的に理解されるようになりました。そのため僕自身はプロコーチになった2010年1月以降、クロスファイアーに関しては僕の教え子たちには基本的にはやめるように言っています。しかしクロスファイアーをやめても、理論的に正しい投げ方をマスターするとちゃんと打者を抑えることができますし、肩を壊す心配もなくなります。

僕の教え子の中にももちろんサウスポーは大勢いて、野球肩野球肘に悩んでいる選手もたくさんいました。そしてその多くの左腕が指導者からクロスファイアーで投げるようにと言われていました。そのため僕のレッスンではまずクロスファイヤーをやめさせ、しっかりと股関節を使える体の構造に則ったフォームに改善させました。その結果球速や制球力も上がり、ほとんどの選手が肩肘の痛みから解放されました。
※ よほど悪化した状態の場合は動作改善だけでは野球肩野球肘を治すことはできません。

竹内投手は将来的には硬式野球に進むのだと思います。ですが体がまだ出来上がっていないうちから130km/hのボールを投げ続け、しかもクロスファイアーで投げ続ければ、近い将来必ず肩肘を痛めてしまうはずです。僕個人としては、竹内投手が投球障害を抱えるとすれば、肩の真ん中〜後方、もしくは肘の内側を痛める可能性が高いと見ています。

さて、竹内投手は右股関節の内旋屈曲ではなく、左肩の水平内転でボールを投げていることは上述した通りです。この投げ方をしてしまうと、エクステンションが非常に短くなってしまうんです。打者を差し込めるか否かは、ひとえにエクステンションの長さにかかっています。
※ エクステンションとはピッチャーズプレートからリリースポイントまでの距離のこと

これはアメリカの有名コーチであるトム・ハウス氏がリサーチしたものなのですが、打者を差し込めるか否かは球速ではなく、エクステンションの長さが重要であるというエビデンスが存在しています。つまり球速が遅くてもエクステンションが長ければ被打率は向上し、球速が速くてもエクステンションが短い投手は被打率が悪くなります。

竹内樹生投手の場合、右股関節の内旋屈曲が非常に浅いため、エクステンションが非常に短いんです。おそらくリリースポイントは顔の横あたりに来ているのではないでしょうか。130km/hのボールなんて見たことがない小学生を相手に、16mの距離からそのボールを投げれば、もちろんエクステンションなど関係なくなかなか打つことはできないでしょう。

しかし3ヵ月後に18.44mになった時、エクステンションが短いと130km/h以上のボールを投げたとしても、中学2〜3年生の打者ならば普通に打っていくことができます。

竹内投手の今後の課題は肩肘を痛めにくいフォームを身につけることと、エクステンションを長くして力を抜いて投げても打者を差し込めるようになることだと思います。ちなみに現時点の竹内投手のスローイングアームの使い方は非常にタイトで、緩い変化球を投げにくいフォームになっています。そしてタイトであるということは肘もロックされやすくなるということで、仮にフォークボールやチェンジアップの習得を目指した時、肘への負荷は他の投手以上に大きくなってしまうはずです。

プロコーチとして気になるのは竹内樹生投手の初速と終速の差

続いて右膝について見ておきましょう。竹内投手の右膝はランディングした瞬間、ほぼ足首の真上付近まで来てしまっています。これは上半身主体の投げ方をする投手の典型的な形です。プロでもなかなか1軍で活躍できない投手の中にもこの形の選手が多数います。この右膝の使い方をしてしまうと必ず上半身は突っ込んでしまいます。実際竹内投手のフォームは上半身が突っ込み、体も開き気味です。

竹内投手の体格は178cm/75kgだそうですが、現状ではこの体格に頼って速いボールを投げているという評価になります。もちろんそれでも初速130km/hを投げられるということは本当に凄いことなのですが、しかし質の良い130km/hかと問われれば、そうではないというのが僕の正直な意見です。

小学生としてのすべての試合を終えたら、竹内投手の周囲にいる関係者の方々には、ぜひ竹内投手の初速と終速を18.44mで計測して欲しいなと思います。現状、この差はかなり大きいはずです。理想としては3km/h以下、悪くてもその差は5km/h以下に抑えていきたいのですが、果たして竹内投手の初速と終速の差はどれくらいになるのでしょうか。

初速と終速差が大きくても、16mであれば失速する前にキャッチャーミットに収まります。しかし18.44mになるとそうはいきません。しかも上述の通り右膝がかなり前に流れているため、傾斜のある大人用のマウンドではもっと体が突っ込むようになり、この突っ込みを改善できなければトップポジション付近からの加速時に、肩関節の前方にも外反ストレスがかかりやすくなります。

現時点では球数も多くないし、ボールもJ号で軽いため、肩肘の負荷は最小限に抑えられていると思います。しかしこれがM号や硬式球になった時、ボールは大きくなり重くもなります。それによって増幅させられる体への負荷を竹内投手の現時点でのフォームでは軽減させられないはずです。

本当に素晴らしい資質を持つ竹内樹生投手

6年生で130km/hを投げられるなんて本当に素晴らしい資質です!だからこそ僕はプロコーチとして、竹内投手には絶対に怪我をして欲しくないと願っています。しかしそのためには解剖学をしっかりと理解しているコーチのもとで動作改善をしていく必要があります。今のフォームのままではいずれ肩肘を痛めるでしょうし、中学2〜3年生、そして高校生になった時に通用しない投手になってしまいます。

竹内投手も周囲の大人たちも、ノーヒットノーランや130km/hという結果には絶対に慢心すべきではありません。竹内投手のフォームは他の投手が真似しても問題ない良いフォームではありません。とは言えすべてを短期間で直していくことは難しいので、ぜひ1つ1つ正しいスポーツ科学や解剖学に則って、焦らずにゆっくりと動作改善をしていって欲しいなと思います。

こんなに素晴らし資質を持った選手なのですから、周囲の大人は絶対に彼が怪我をしないように見守ってあげる必要があります。そのためにもまずは股関節を適切に使った投げ方の習得は必須です。股関節を使えれば肩肘に頼らずに済みますし、逆に現時点のように股関節を使えていなければ、肩肘に頼って投げるしかなくなります。

ちなみにもう少し付け加えておくと、竹内投手のフォームは上半身と下半身が上手く連動していません。さらにボールリリースの瞬間の形を見ると、地面からの反力も得にくく、下半身のエネルギーもボールリリースに伝わりにくい形になっています。そして投手はオフバランスで投げたいところを、オンバランスに投げてしまっていて、ヒップファーストフォールを作れないモーションにもなっています。

竹内樹生投手のフォームを細かいところまですべて語っていくと、ちょっとものすごい長さのコラムになってしまいそうなので、今回は僕が気になった大まかな部分だけをご紹介しておきたいと思います。

それにしても16mの距離から130km/hのボールを投げられたら、相手の小学生打者は本当に怖いでしょね!しかもクロスファイアーで投げているため、左打者はなおさら怖さがあると思います。

こんな素晴らしい資質を持った竹内樹生投手には、いつかファイターズジュニア出身選手としてファイターズのエースになって欲しいなと僕は願っています。

三度の野球肩を克服して甲子園の舞台に立った僕の生徒さん

2年連続で野球肩を経験した中二のシニアリーグ選手

もう5年前の話です。ある中学生投手とお父さんが僕のレッスンを受けるために連絡して来てくださいました。この子はまだ中学2年生でしたが185cmあり、公式戦での最高球速も124kmで、将来を嘱望されたシニアリーグのエースピッチャーでした。

しかし中学に入ってからは2年続けて肩を痛めてしまい、2年続けて3〜5ヵ月の間ノースローで過ごすことを強いられていました。お父さんのお話によると、シニアリーグの監督に投げ方を直されてから痛むようになったとのことでした。

完治させてもフォームを直さなければ野球肘は必ず再発する?!

野球肘/内側・外側・肘頭の割合

一般的に野球肘は下記のような割合だとされています。

  • 内側型野球肘/60%以上
  • 外側形野球肘/20%程度
  • 肘頭形野球肘/3%程度
このように、肘の内側を痛めてしまうタイプの野球肘が圧倒的に多いんです。肘の内側には内側側副靱帯というものがあるんですが、この靭帯に外反ストレスがかかってしまうことで野球肘を発症しやすくなります。

プロ野球選手の夢を諦め歩んだプロコーチへの道

踵の怪我が野球肩につながった可能性

僕は中学生になると、少しずつ野球肩の兆候が出始めました。

実は中学二年生の秋に体育の授業で踵にヒビが入るという怪我をしてしまったのですが、その完治から少しずつ投球フォームが崩れて行きました。すると学年が上がっても思いのほか球速が伸びなくなり、中三での最速は124km(練習中の最速は127km)でした。