「少年野球」と一致するもの

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の言葉の罠

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の野球指導法の罠

近年、「プロ野球選手がみんなやっているから正しい」という魔法の言葉を使って選手を納得させるコーチやトレーナーが非常に多い印象です。実際僕の生徒さんの中にも、プロトレーナーやプロコーチから同じ言葉を言われたという選手が多数います。しかし「プロ野球選手がみんなやっている」=「正しい」という図式はまったく成り立ちません。

僕の投球フォーム指導法は、マスターすればパフォーマンスが上がるだけではなく、肩肘の怪我を減らすこともできます。これは医学的にも解剖学的にも正しい動作であり、野球選手を専門的に診ているスポーツ整形外科の先生やPTさんたち、柔道整復師のみなさんからもお墨付きをいただいています。

その指導法に関しては僕が監修しているビデオ『野球肩野球肘予防改善法・徹底解説ビデオ』をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、今プロで活躍している選手たちの多くは、野球動作を科学的に理解していないコーチたちの指導を受けてきたわけです。

例えば僕の場合、トップポジションに関しては内旋型トップポジションではなく、外旋型トップポジションを推奨し指導しています。内旋型トップポジションは肘の内側を怪我しやすく、肩にも負担がかかります。一方外旋型トップポジションで投げられれば、肩肘への負荷を高めることなく投げ続けることができます。

と言ってももちろん、常識外の球数を投げたり、疲労した状態で投げてしまえばどんなフォームだったとしても肩肘を痛めてしまいます。しかし常識内の球数や、極度の疲労状態で投げているわけではない場合、正しい形の外旋型トップポジションから投げられれば、まず肩肘を痛めることはなくなります。

これは僕が勝手に推奨している理論というわけではなく、人間の体の構造上、解剖学的に唯一の正しい投げ方となります。僕はプロコーチとして、理論を伝えられないことは絶対に選手たちに伝えることはしません。ですので「プロ野球選手たちもみんなそうしている」という説明で終わってしまう指導をすることも絶対にありません。

毎年数多くの選手が肩肘を痛めているプロ野球の現状

近年、高校生の生徒さんからちょくちょく言われることなのですが、高校の野球部で見てくれているプロトレーナーに、僕が指導した外旋型トップポジションだと肩肘を痛めやすいと言われた選手が複数人いるんです。

ちなみに肩を痛めやすいと言われただけで、なぜ痛めやすいのかという理論の説明は受けていない選手ばかりです。そして言われたことと言えば共通して「プロ野球選手はみんなこの形(内旋型トップポジション)から投げている」という説明だけだったそうです。

内旋型トップポジション 外旋型トップポジション

確かにその通りです。プロ野球選手のほとんどは内旋型トップポジションから投げています。これは確かな事実です。でもよく考えてみてください。毎年、一体何人のプロ野球選手たちが肩肘を痛めていますか?もし内旋型トップポジションが肩肘に負荷のかからない正しい投げ方なのだとすれば、プロ野球選手たちが肩肘を痛めることなど決してないはずです。

しかし12球団を見渡してみると、同年で1球団で4人も5人も肘の手術(トミージョン手術、TJ手術)を受けていたりします。「プロ野球選手がみんなそうしているから正しい」という論拠に乏しい指導をしているコーチ・トレーナーは、果たしてこの事実をどう考えているのでしょうか?とても気になるところです。

僕のレッスンを受けてくださっている選手の皆さんは僕のレッスンにより、「なぜ肩肘を痛めるのか?」「どうすれば痛めなくなるのか?」という点をしっかりと理解してくれていると思います。もちろん肩肘を痛めない投球フォームの習得には個々それぞれの時間がかかるわけですが、習得・未習得を別にすれば、どうすれば肩肘を痛めずに投げられるのかということを、小学生であっても理解してくれています。

プロコーチやプロトレーナーは「プロ野球選手がそうしているから正しい」と選手に伝えるのではなく、もっと解剖学的・医学的根拠に基づいて指導をすべきです。少年野球のボランティアコーチの方々にそこまで求めることはできませんが、しかしプロを名乗っているコーチやトレーナーであれば、そこまで学ぶことは義務だと思います。

コラム:野球肘とは?|内旋型トップポジションが野球肘を生み出す!

僕はお医者さんに野球フォームの指導法を指導するコーチ

一般的な整形外科の先生は筋肉や体の仕組みや治療法に関してはまさにプロフェッショナルです。お医者さんの医学的知見には僕らは太刀打ちできません。PTさんや柔道整復師の方々であっても、体の仕組み、リハビリ方法、コンディショニング法に関してはしっかり勉強されています。それぞれ国家資格ですからね。

でも「怪我をしにくい野球のフォーム」となると話は別です。もちろん野球を専門にされているスポーツ整形の先生などはフォームまでしっかりと勉強されているケースもありますが、そのような外科の先生は日本には数えるほどしかいらっしゃいません。そのため僕のようなコーチがお医者さん、PTさん、柔道整復師の方々に、肩肘を痛めにくいフォームの指導法のレクチャーを行なっているわけです。

僕のようなプロフェッショナルコーチは、医学的知見はそこそこしかありません。例えばお医者さんが使う専門用語をある程度理解していたり、レントゲン写真を見て異常を読み取る程度のことしかできません。ですが肩肘を痛めない理論的なフォームの指導や、痛めてしまった理由の解明に関してはプロフェッショナルです。このあたりに関しては僕はお医者さんにさえ絶対に負けることはありません。もちろんこの点だけですが。。。

「プロ野球選手がそうしているから正しい」という指導法は、これはプロコーチやプロトレーナーが行って良い指導法ではありません。これは週刊ベースボールで連続写真を見てフォームを学んでいるボランティアコーチの指導法です。ボランティアコーチであれば「プロ野球選手はみんなそうしている」という指導法が限界だとも言えますし、そうすることでしか説得力を増すことは難しいのかもしれません。

医学書は本当に高いけど、そこに投資するのがプロ!

しかしプロコーチ・プロトレーナーであれば、やはり一冊1〜2万円、安くても一冊5,000円程度する野球肩野球肘に関する医学書を開き、プロ野球選手たちのどの動作が正しくて、どの動作が誤りなのかを理論的に学び、分かりやすく選手たちに伝える技術が必要です。

ハッキリ言って医学書は本当に高いです。都内であれば新宿の紀伊國屋、池袋のジュンク堂などに行くと医学書がズラッと並んでいるわけですが、安い医学書というものは存在しません。週刊ベースボールよりもページ数が少ないスポーツ医学の月刊誌であっても3,000円くらいします。

ですがプロコーチ、プロトレーナーであればそこに投資しなければどんどん時代に取り残されてしまいます。ちなみに野球技術に関しては常にアメリカから日本に入ってくるという順序のため、英語をある程度理解できれば、最新の野球技術に関する論文もチェックできるようになります。

僕ももちろん最新の技術を英語の論文や、アメリカのコーチのレクチャーなどから学んでいます。2024年で僕はプロコーチ歴15年目となるわけですが、それでも未だに学ぶことだらけです。僕は他のプロコーチよりも多く学んでいる自負がありますが、それでもまだまだ時代に追いつくのがやっとです。

話は長くなりましたが、とにかく言いたいことは、「プロ野球選手のフォームを見て学ぶ」というのはアマチュアのやり方です。プロは「プロ野球選手のフォームを観察して、どの動作が理論的に正しくて、どの動作が理論的に良くないのか」を理論的に理解し、さらに理論的かつ分かりやすく説明できなくてはいけません。

僕もまだまだ成長過程のプロコーチではありますが、他のプロコーチやプロトレーナーと話をしていると、「この人たちは最新の野球技術を学んでいないんだなぁ」と思うがしばしばあります。

ですのでもしプロコーチやプロトレーナーの指導を対価を支払って受ける場合は、ちゃんと理論まで説明してくれるかを先に確認するようにしてください。フォームに関して理論を説明できない方は、理論的に誤った指導をする可能性が高いため要注意です。せっかくお金を払って指導を受けるのですから、やっぱりちゃんとした理論を持った方に教わるのが一番です。

少なくとも「プロ野球選手がみんなやっているから」とか、その類の言葉ですべてを説明しようとするコーチには高いお金を支払わないようにしましょう。

試合で役立たない素振りをしている小学生が本当に多い!

バッティングに於いて一番の基礎練習と言えば素振りです。野球チームに入っている選手の中で、今まで一度も素振りをしたことがないという人は一人もいないはずです。野球を始めたばかりの小学生はもちろん、プロで大活躍している選手であっても日々の素振りを欠かすことはありません。

しかし残念ながら、この素振りを間違ったやり方で続けている選手が非常に多いんです。数こそ少ないとは言え、プロ野球選手の中にも間違ったやり方で素振りをしている選手はいて、そのような選手はやはり一軍ではなかなか活躍できずにいます。

これが少年野球になってくるとなおさらで、ある軟式少年野球チームを観察していると、半数以上の選手が間違ったやり方で素振りをしているようでした。

ではどんな間違ったやり方かというと、ボール球を振る素振りです。この素振りをしてしまう小学生は本当に多いと思います。肩の高さにバットを通して行う素振りなのですが、肩の高さというのは根本的にボール球です。そして野球というスポーツは、ボール球を振ってもなかなかヒットにはならないように設計されています。

そしてボール球を振る素振りを続けてしまうと、試合でも自然とボール球に手を出すようになってしまいます。このような練習を続けてしまい、大人のコーチたちが修正してあげられない状態が続くと、何年野球を続けてもなかなかヒットを打てない選手になってしまいます。

そしてヒットを打てなければ野球を最大限楽しむこともできなくなり、野球チームをやめてしまう子もどんどん増えてしまいます。

ストライクゾーンのおさらい

ここでストライクゾーンのおさらいをしておきましょう。ストライクゾーンの左右は、もちろんホームプレートの幅です。ホームプレートの両サイドのラインにボールがすれすれでも触れていればストライクです。つまりホームプレートの幅+両サイドのボール2つ分がストライクゾーンの横幅になります。

そしてストライクソーンの下は膝のラインで、上は肩とベルトの中間線となります。この上下のラインに、やはりボールがすれすれでも触れていればストライクとなるため、この上下のライン+上下ボール2つ分がストライクゾーンとなります。

ちなみにこの上下のラインはバットを振る前の姿勢ではなく、スウィング中の姿勢で審判は見ていきます。つまりバットを振る前はしゃがむほど低い姿勢を取っていたとしても、スウィング中にはもっと姿勢が高くなる場合、しゃがんだ状態でボールを見送って、ボールが頭の高さを通ってもストライクとなります。

時々中学野球や高校野球でも見かけますが、打席でしゃがむようにして投球を待つ打者がいますよね?もしスウィング中に姿勢を高くしてしまうのであれば、このしゃがむ動作はまったく無意味になります。もちろんしゃがんだまま振ればほとんどすべての投球がボールとなるのでしょうが、しかししゃがんだままバットを振ってもキャッチャーゴロを打つのが精一杯です。

何年野球をやっていても、このストライクゾーンを理解していない選手・ボランティアコーチが非常に多いように思います。ご存知の方も多いと思いますが、毎年3月下旬〜4月上旬あたりに最新の公認野球規則が発売されます。

僕らのようなプロの野球コーチは毎年必ず新しいものを買うのですが、一年や二年でルールが大幅に変わることはまずありません。ですので野球に携わる方は、せめて4〜5年に一冊くらいのペースでこのルールブックを購入し、しっかりと野球のルールを確認していくことが大切だと思います。

公認野球規則2023

上の写真は僕が所有している公認野球規則です。¥1,000で買えるので最新じゃなかったとしても一家に一冊、せめてチームで一冊は持っておきましょう。

大人が少年野球でBPを務める際の注意点

もし大人のコーチがちゃんと野球のルールを理解していれば、子どもたちがボール球を振る素振りを繰り返していたらすぐに修正してあげられるはずです。でもそれに気づかずにボール球を振る素振りを繰り返させてしまうと、その子たちはなかなかヒットを打てなくなってしまいます。

それともう一点注意していただきたい点として、大人のコーチが小学生にボールを投げるフリーバッティングです。大人と子どもには30cm前後の身長差があります。この身長差により、フリーバッティングがボール球を打つ練習になってしまっているケースがとても多いんです。

大人が16mの距離から70〜80km/hのボールをフワリと投げると、ボールは必ずやまなりになります。そしてそのやまなりのボールはインパクトゾーンでは、小学生バッターの肩や頭の高さを通過して落ちていきます。

つまり大人のコーチが小学生バッターにボールを投げた場合、かなり高い確率でボール球を打たせるフリーバッティングになってしまうということです。

もちろん僕も小学生相手にフリーバッティングで投げた経験は豊富にあります。ですが僕の場合、投球時は屈むようにして姿勢を低くし、肘が脇腹に触れそうになる程肘を下げ、小学生の身長に合わせたリリースポイントの高さから投げます。そのためフワリとしたボールを投げても、ボールはちゃんと小学生の身長のストライクゾーンを通っていきます。

少年野球で大人がフリーバッティングのBP(バッティングピッチャー)を務める際には、必ずこのような工夫をしてください。そうしなければ子どもたちは大根切り打法を覚えるばかりになってしまいます。

もちろん一番良いのは小学生バッターには、小学生ピッチャーが投げて練習することなのですが、しかし少年野球チームで防球ネットを所有しているチームはまずないと思います。特に軟式チームでは。

ですので安全性を考えればどうしても大人が投げる必要があるわけですが、その際にはとにかくストライクゾーンに注意しながら、小学生の身長に合わせたリリースポイントから投げてあげるようにしましょう。そうすればちゃんと試合でヒットを打てる子たちを育てられるはずです。

カズコーチのレッスン動画:間違った素振りを繰り返すとせっかくの努力が水の泡になる!

間違った素振りを繰り返すとせっかくの努力が水の泡になる!

今回のビデオでは、先日少年野球の練習と練習試合を観察していた際に気になった、間違った素振りについてレッスンをしています。例えば毎日頑張って100回ずつ素振りをしたとしても、それが間違ったやり方では好成績につながることはなく、せっかくの努力が実を結ぶこともありません。

素振りという基本練習を、しっかりと試合にプラスになる素振りにしていくためにも、間違ったやり方で素振りを繰り返すのではなく、正しいやり方を覚えて毎日の素振りを繰り返すようにしましょう。

カズコーチの僕と野球塾

反抗期の子の野球塾での指導はこうすると上手くいく

これは野球塾、野球部、少年野球チームすべて共通なのですが、どんどん上達できる子と、なかなか上達できない子というのは、その言動に明確な違いがあります。

上達できない子には、その典型的な言動がよく見られ、上達できる子もやはり、同じようにその典型的な言動がよく見られます。つまり言い方を変えると、上達できる子の言動を先に知ることにより、それを少しずつ上達できないタイプの子にやらせていくと、上達できないタイプの子でも、少しずつ上達できるタイプの子に変わっていくことができるということです。

これは何も、性格を変えるという大袈裟なことではなく、単純に言動を少し変えれば良いだけなので、挑戦する意欲があれば誰にでもできることです。

ですがすごく恥ずかしがりだったり、反抗期だったりすると、やれるはずなのにやらない、やれないというケースもあります。恥ずかしがりの場合は少しずつ時間をかけて慣らしていけば良いのですが、反抗期の場合は何かフックになるものをコーチが与えてあげなければ、なかなか上手くいかないケースが増えてしまいます。

ちなみにこのフックというのは、反抗期である選手に「あれ?この人は俺のことをひょっとしたら分かってくれるのかな?」と、少しでも興味を抱かせる何かのことです。

フックとなる何かの一例

  1. その選手の特徴を一瞬で見抜き言い当てる
  2. その選手の心情などに共感を示す(同情ではない)
  3. 周囲の大人とは違う伝え方で指導する
これらの例は特に反抗期の選手に効果的な方法ですので、反抗的な態度を取る選手に対して試してみていただければと思います。

ただし1の「その選手の特徴を一瞬で見抜き言い当てる」というのはプロコーチにしかできないことですので、一般のコーチが無理に言い当てようとすると、逆に反感を買ってしまうことがありますのでご注意ください。

伝え方に関して言えば、周囲の大人は「〜しなさい」と、Do itという文章で物事を伝えてくることが多いと思います。これをLet's do itにして「〜してみよう」と言い換えるだけで、その言葉がすっと相手の耳に入っていくようになります。

これはコーチングをする際の鉄則の一つでもあるため、もし親御さんでもいつも「〜しなさい」と頭ごなしに言ってしまっている場合は、言い方をLet's do itや、Let's try itに変えて伝え直してみてください。すると相手も聞く耳を開きやすくなります。

野球塾に通っても上達できない子の典型的な言動

さて、話を上達できる子とできない子の特徴に戻したいと思います。まず上達しにくい子の典型的な言動ですが、とにかく「はい」と言ってくることです。こちらが何かと言うと必ず「はい」と返事をして来ます。

これは一見とても良いことのように思えたりもするのですが、経験のあるプロコーチが見ると、しっかり理解をしたという意味の「はい」と、何も考えずに条件反射的に言った「はい」はすぐに見分けがつきます。

今の「はい」はきっと条件反射的に言っただけで、多分話は理解していないな、と思い、「じゃあ今教わったことを自分で説明してみて」と言うと、案の定まったく説明できないことがほぼ100%です。

僕のコーチングでの信条の一つに、「身体で覚える前にまずは頭で理解させる」というものがあります。一般的な野球塾だと、とにかく手取り足取り動きだけを教えていくことがほとんどです。この場合、確かにその動作は僕のレッスン同様に選手たちはその動作をできるようになっていきます。しかし問題はそのあとです。

身体だけで動きを覚えようとすると、確かにその場ではできるようになることも多いのですが、一日二日、一週間二週間、一ヵ月二ヵ月、一年二年と時間が経過していくと、時間が経てば経つほど教わった時の正しい動作を身体で正しく思い出すことができなくなります。

ですが身体だけではなく、頭でもしっかりその動作を理解しておくと、その正しい動作が少しずつ崩れて来た時、選手自身で「そう言えばあの時、この動作はこんなイメージで動くと良いって言われたなぁ」というふうに、正しい動作への具体的な修正方法を思い出すことができ、なんとなくではなく、理論的に崩れた動作を自分自身で正しい動作に修正できるようになります。

だからこそ僕の野球塾のレッスンでは身体の動きでだけではなく、頭でもしっかりと正しい動作を理解してもらうようにしているんです。

そして上達できないタイプの子の場合、何か動作を説明させると「ここがこうなって、こっちがこうで」というように、ノートに書いてもまったく意味がない言葉で説明することが多いんです。

ですので選手に自分でも説明させる際には、必ずノートにそのまま書ける具体的な言葉で説明させるようにしましょう。そして主語を抜かして説明する子も多いため、必ず正しい主語を使わせて説明させるようにしてください。主語があやふやだと、のちのちそれがどの動作の説明だったのかが分からなくなってしまいます。

すべて挙げるとキリがないのですが、上述したことは上達できないタイプの子には非常によく見られるケースですので、指導する側にある方はぜひ覚えておいてください。

野球塾に通うとどんどん上達できるタイプの子の典型的な言動

野球塾で上手くなれる子となれない子

逆に上達できるタイプの子は、こちらから何かを聞くと、必ず自分で少し考えてから回答します。例えば同じ「はい」という回答にしても、上達できない子は即答するのに対し、上達できる子は数秒自分でしっかりと考えてから「はい」と答えて来ます。

また、分からないことを分からないままにはしません。上達できない子の場合、本当はまったく理解できていないのに、「すべて理解できたかな?」と聞いても「はい」と即答して来ます。しかし上達できるタイプの子は、こちらが理解の確認を入れる前に、「ここが分かりませんでした」というふうに聞いて来ます。これはとても大切なことです。

野球塾のレッスンは時間制です。永遠にレッスンをし続けられるわけではありません。僕の場合は1枠30分のレッスンになるのですが、この時間制限があるため、レッスンをしていても教えた内容のすべてを再確認していくわけにはいきません。そんなことをしていたらレッスンがまったく進まなくなってしまいます。

だからこそ一番良いのは、選手自身が分からなかった時にしっかりと「分かりませんでした」と伝えてくることなのです。そうすれば僕らコーチからすると、「分かりませんでした」と言って来たところだけを再確認すれば良いだけになるので、時間を浪費することなくどんどんレッスンを進めていくことができます。

野球塾で上達できる子はメモの取り方が上手い

そして上達できる子はしっかりとメモを取りながら話を聞きます。僕のレッスンでは伝えることがとても多いため、必ずメモを取りながら話を聞いてもらうのですが、上達できないタイプの子は最初のうちは、メモを取るように言ってもまったく書くことができません。

そのような場合は僕が画面に説明を書き、それをそのままノートに写してもらいます。そして何月何日に何をノートに書いてもらったのかはこちらですべて記録しているため、何かを思い出してもらう時は「何月何日のノートを開いてください」と言えば、一瞬で復習態勢に入ることができます。

逆に上達できるタイプの子は、要点をしっかりとメモしていくことができます。例えば僕の説明を一言一句漏らさずメモをしていくと、これもやはり時間の浪費になってしまいます。ですがそうではなく、上達できるタイプの子は大事なキーワードを上手く抜き出し要領良くメモを取っていくことができます。

要点を上手く抜き出してメモをする練習は、人の話を聞いてすぐに理解する能力を養うことができます。ですので野球選手に限らず、子どもでも大人でも理解力を高めたい方はぜひ日常的に上手くメモを取る練習をすると良いと思います。

ちなみに最近はテレビを観ていても、YouTubeを観ていても、ほぼ確実に喋っている内容の字幕が出ていますよね?耳が聞こえない方向けの字幕ではなく、カラフルな文字で絶対に目が行ってしまうような目立つ字幕です。

このカラフルな字幕は実際には画面の人が喋っていることと同じなのですが、これだけ目立つ色で字幕を付けてしまうと、嫌でも字幕を目で追ってしまうようになります。しかしこれが人の理解力を低下させる一因になっているんです。

日常的に字幕を見ながら話を聞くことが習慣付いてしまっているため、目の前の人と字幕なしで(当たり前ですが)会話をしても、相手の話の内容がまったく頭に入ってこなくなってしまうんです。これはテレビやYouTubeの弊害と言って間違いありません。

自分の得意分野であったり、興味があることに対してはすでに理解が深まっているため、字幕なしでも理解することはできます。しかし学校の勉強であったり、野球塾で教わる新しい動作であったり、初めて聞くことや難しく感じることの場合、字幕なしでは理解度が大幅に低下してしまう選手が、子どもだけではなく、プロ野球選手の中にも大勢います。

だからこそ、仮にその場では理解し切れなかったとしても、あとで読み返して理解を深めたり、あとで改めて質問をするためにも、メモをすることが重要なんです。紙のメモでもデジタルメモでもどちらでも良いと思います。

僕の場合はレッスンではMac、iPad、iPhoneとすべてAppleプロダクツを使っているため、Appleのメモアプリを使っています。デジタルメモなので、キーワードを入力するとあっという間に過去に書いたをメモ検索することができてとても便利です。

野球塾で上達しやすいタイプの子に変わっていくためのまとめ

話をまとめるとだいたい以下のような感じになります。

  1. 何も考えずに条件反射的に「はい」と答えず、しっかり考えてから「はい」と答えさせる。
  2. 身体で覚える前に、まずは頭で正しい動き方とその必要性を理解させる。
  3. 分からないことは分からないままにするのではなく、必ずコーチに分からないということを伝えさせる
  4. コーチに教わったことを、ノートにそのまま書けるような具体的な言葉で自分でも説明できるようにさせる。
  5. 重要なキーワードだけを抜き出して効率よくメモできるようにさせる。
最低限このあたりのことを、できるところからひとつずつしっかりやらせていくだけでも、上達しやすいタイプの子に変わっていくことができます。ただし短期間で変えようとするのではなく、決して本人を焦らせることなく、じっくりと時間をかけて指導する側が対応していくようにしましょう。

一番良いのは本人や親御さんが、「あれ?レッスンを受ける前ってこんなに理解力あったかな?」という感じで、気付かないうちにいつの間にか理解力が高まっていることです。理解力は押し付けによって伸ばせる要素ではないため、やはりロングテール的にじっくりと時間をかけていくことが大切なわけです。

そういう意味でも僕のレッスンでも、6ヵ月コースよりも1年コースでじっくりとレッスンを受けている子の方が、上達しやすいタイプの子に変わりやすく、その後もどんどん上達していけるようになります。そのため僕の野球塾では1年コースが圧倒的に人気があるコースとなっています。

今までなかなか上達できなかった子は、上記のポイントを1つずつ抑えていくだけでも、必ず上達しやすいタイプの子に変わっていくことができます。ですので親御さんやチームで指導される方は、決して焦って押し付けることなくサポートしてあげてください。

ボランティアコーチが適切な指導法を学ぶのは難しいのかもしれない

野球のコーチは常に指導法をアップデートし続けよう

選手以上に情報のアップデートが必要なのがコーチであるということは、プロフェッショナルコーチの間ではすでに常識になっています。野球理論やトレーニング理論は年々アップデートしていかなければ、どんな選手でも上達させることができるコーチになることはできません。

ただ、少年野球や野球部などのいわゆるボランティアコーチにそこまで求めるのは酷という見方ができるのも事実です。僕らのようなプロフェッショナルコーチであれば情報の常時アップデートはプロとしての義務でありながらも、同時に日々苦もなく自然と行なっています。

でもボランティアコーチや教員コーチの場合、コーチである以前に会社勤めや教員としての業務があります。それ以外の個人的な時間を長時間使って勉強するというのは、なかなか大変なことだと思います。

ですが僕らのように対価をいただいてレッスンをしているコーチの場合は、情報の常時アップデートができない場合はすぐに周回遅れになってしまい、選手を上達させることができないコーチになってしまいます。その結果、元プロ野球選手の野球塾であってもあっという間に廃業に追い込まれてしまいます。

プロトレーナー、元プロ野球選手、元高校球児、元大学野球などなど、現代ではさまざまな肩書きを持った方々が日本全国で野球塾を展開しています。ちなみに僕自身は怪我により、選手としては高校一年生の春までしかプレーすることはできませんでした。高校時代は右肩のリハビリに明け暮れ、高校卒業後に選手としての道は完全に諦め、プロコーチになるための勉強を始めました。

僕自身が13年ほど、野球とはまったく関係のない職に就きながらプロコーチになる勉強、修行をしていたので、その大変さは身を持って知っています。生半可な覚悟では続かないと思います。

元プロ野球選手が野球科学を学ぶと鬼に金棒

だとしても、プロコーチだろうがボランティアコーチだろうが、選手にとってはどちらも同じコーチです。ですのでボランティアコーチだったとしても、できる範囲で情報のアップデートはしていく必要があります。

ではなぜそんなに頻繁に情報のアップデートが必要なのでしょうか?その理由は簡単で、野球動作理論にしろトレーニング理論にしろ、日進月歩で進化し続けているからです。その進化に付いて行けないと、令和なのに昭和に取り残されたようなコーチになるしかありません。

例えばバッティング技術だけを見ても、10年前まで常識だったことが現代ではそうではなくなり、10年前にはなかった理論が現代では確立されていたりもします。野球理論やトレーニング理論は、5年10年経つとガラッと変わってしまうこともありますので、スポーツ科学のメッカとも言えるアメリカの最新理論に対し常にアンテナを張っておく必要があるわけです。

ちなみに理論というのは誰にでも通用しなければなりません。例えば魔女のホウキは空を飛んで移動するのにはとても便利ですが、でも魔女しかホウキに乗って空を飛ぶことはできません。しかし科学によって作られた飛行機は、飛行機が空を飛んでいるメカニズムなどまったく知らなくても、誰でも飛行機に乗って空を飛んで移動することができます。

この魔法と科学の違いのように、僕がレッスンするような科学的根拠に基づいた動作指導法であれば、どんなレベルのどんなタイプの選手でも上達させることができます。ですが選手時代に身につけたセンスや経験則を主に指導するコーチの場合、その指導内容と選手との相性が合わないケースも多々あります。

プロ野球でも、監督やコーチが代わった途端に活躍するようになる選手がいますよね?このケースなどはまさにその典型で、相性の良いコーチと運良く出会えると、自らの能力を一気に開花させられることがあります。

でも例えば野球動作を科学的に学んだ千葉ロッテマリーンズの吉井理人監督のような方であれば、選手個々にフィットした指導法の引き出しをたくさん持っていますので、どのような投手でもレベルアップさせることができます。

吉井監督のように、プロ野球選手・メジャーリーガーとして圧倒的な実績がある方が野球科学・トレーニング科学を学ぶと、まさに鬼に金棒だと思います!

どの選手にも通用する万能な指導法は存在しない!

コーチとして一番やってはいけないことは、「俺が子どもの頃はこうやって教わった」という考え方を前提にして選手を指導してしまうことです。これは指導ではなく、知識の押し付けでしかありません。

根性論にしても、根性というものを心理学的に理論立てて説明できないコーチは、決して根性論を選手に押し付けるべきではありません。そもそもスポーツ心理学を学んでいる方であれば、根性論を前提にすることもないとは思いますが。

すべての選手に通用する万能の指導法など存在しません。もちろん投げる・打つに関しての基本に関しては共通するわけですが、基本以外の指導に関しては選手が100人いたら、100通りの指導法をコーチは用意する必要があります。

僕は双子の選手を指導した経験も豊富にあるのですが、一卵性の双子であってもその指導法は個々によって異なります。もちろん似てくるところもあるわけですが、しかし双子だからといって僕の指導内容が同一になることはありません。

僕の場合は選手個々のタイプ、レベル、人柄などに合わせて指導法や伝え方を変えています。もちろんこれは決して楽な作業ではありませんが、しかし僕は2010年1月の開校以来、ずっとマンツーマンにこだわって、このやり方を続けています。

その結果たくさんの生徒さんが12球団ジュニアトーナメントの最終選考に合格したり、甲子園に出場したり、六大学野球で活躍したり、プロ野球選手になったりしています。

僕の選手としての実績は上述の通り、野球肩により高校一年生止まりです。ですので他の一般的な野球経験者よりもプレー経験は乏しいとも言えます。しかし野球動作やトレーニング理論を科学的にしっかりと学び、その内容を常にアップデートし続けているため、そんな僕でも選手たちをどんどん上達させることができていますし、長年プロ野球選手のサポートも続けています。

そして選手たちが実際に上達を実感してくれているからこそ、2010年にスタートした僕の野球塾は、2023年になった今でも多くの生徒さんが通ってくれているんです。

野球塾を選ぶ際はまずはコーチのレベルを確認しよう

もし今現在、どの野球塾に通おうかを迷っているようでしたら、野球動作やトレーニング理論を科学的に学んでいると思われるコーチがいる野球塾を選ぶようにしてください。「コーチが元プロ野球選手だから」「コーチに甲子園で活躍した経験があるから」という理由だけで野球塾を選ぶことは避けてください。

本気でもっと野球を上手くなりたいのであれば、必ず最新の野球理論やトレーニング理論を学んでいるコーチを探してください。ちなみに「ステイバックを教わることはできますか?」とか、「エクステンションはどうやって伸ばすのが適切ですか?」とか、「プライオメトリクスの正しいやり方を知りたいです」というふうに、専門用語を出して質問して、それに対し真摯に分かりやすく説明してくれるコーチは、ちゃんと勉強しているコーチです。

逆に「ステイバックは今流行っているのかもしれないけど、私は私のやり方での指導を続けています」という感じで、どうもお茶を濁すような受け答えをしてくるコーチは絶対に避けてください。引退後は野球塾で指導している元プロ野球のスター選手であっても、僕が実際にお話をさせていただくと、そのようなコーチは少なくありませんでした。

実際に僕がそのようなコーチとお話をする機会があると、科学的な野球用語やスポーツ理論用語がまったく通じないコーチが本当にたくさんいました。重要なのは練習アイデアの豊富さではなく、科学に基づいた理論をどれだけ持っているかどうかです。ここを見誤ってしまうと、高いレッスン料を払ってもあまり上達できない、という残念な結果になってしまうこともありますので、ぜひご注意ください。

そしてもしこのコラムを読んでくださり、僕のレッスンに少しでもご興味を持ってくださった場合は、お気軽にLINE(僕のLINEはこちらから友だち追加してください)よりお声掛けくださいませ。よろしくお願いいたします。

カズコーチの僕と野球塾

スランプを短期間で切り抜けられる可能性を高めるアクティブリコール

少年野球でも効果絶大なアクティブリコール

僕が野球塾のレッスンで最も大切にしていることの一つに、野球塾でのレッスンが修了したあとでも上達し続けられる選手を育成する、というものがあります。これを可能にするのがアクティブリコールという作業です。アクティブリコールという言葉をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、これは野球用語というよりは、心理学用語に近い勉強法に関する用語です。

僕のレッスンも含め、他の野球塾でもやはり多いのが、レッスン中は上達できるんだけどレッスンが終わるとフォームがレッスン前のものに戻ってしまう、という悪循環です。フォームが元に戻るところまで行かなかったとしても、調子を崩した時にスランプを最短で切り抜けることができない、という選手が一定数います。

そんなもったいない状態を回避できる可能性を高めてくれるのが、アクティブリコールという作業です。アクティブリコールとは平たくいうと、学んだことを一定期間を置いたのち思い出そうとする作業のことです。この作業を繰り返すことによって記憶がどんどん脳や筋肉に定着していきます。

例えば日本の携帯電話は11桁の数字からなるわけですが、この11桁の新しい数字を普通にサッと覚えることはとても難しいと思います。短時間は暗記できたとしても、数時間後には忘れてしまうことがほとんどではないでしょうか。

でも自分の電話番号を、サイトや書類に何度も繰り返し書いていくことによって、自然とその11桁の番号を覚えることができ、しかもその番号を使っている間にその番号を忘れてしまうこともありません。これはまさにアクティブリコールの好例の一つだと言えます。

サイトにしろ書類にしろ、そう頻繁に電話番号を書くわけではありません。書いたとしてもせいぜい1ヵ月に一度か二度ではないでしょうか。でもこの約1ヵ月というスパンがアクティブリコールにとっては重要なんです。

アクティブリコール作業によって短期記憶を長期記憶に変換する

記憶というのは、例えば三日間連続である特定の11桁の数字を覚えようとするよりも、今日とりあえず一度覚えたら、二週間後、1ヵ月後に思い出そうとすることによって、その数字が脳に定着していきます。ちなみに脳や筋肉に定着していない短期記憶は、あっという間に覚えた内容がボヤけて行ってしまいます。

逆にしっかりと脳や筋肉に定着させた長期記憶に関しては、時間が経ってもそう簡単に忘れることはありません。例えば5年前まで使っていた電話番号を、今でもサラッと言えたりしますよね?これがまさに脳に定着された長期記憶であり、野球動作の習得もこのように、短期記憶から長期記憶に変換していきたいわけです。

ちなみに僕は、小学生の頃「今からキャッチボールしようぜ!」と頻繁に電話していた友だちの03から始まる家電の番号を未だに覚えています。僕が小学生だった1990年頃は、まだスマホどころか携帯電話さえほぼないに等しく、パソコンではなくワープロ全盛期でした(笑)

そんは話はさておき、僕のレッスンを定期的に受けてくださっている方ならピンと来ると思いますが、僕はある内容を指導したら、数週間後、数ヵ月後に必ず「これについては覚えていますか?」と質問をして、選手に答えてもらうようにしています。この作業がアクティブリコールであり、この作業を繰り返すことにより、まず正しいフォームの知識を脳に定着させていきます。

脳に定着された動き方の知識は、体でも体現しやすくなります。例えば正しいフォームの知識をアクティブリコールによって脳に定着させ、それをメンタルプラクティスによって頭の中で映像化していきます。すると頭の中で映像化させたフォームで、実際のグラウンド上でも投げたり打ったりしやすくなるんです。

そして良いフォームが身に付いたら、そのフォームが崩れかけた時に「この動作はどのように動くのが正しいか覚えていますか?」と質問をします。この時ただ動き方を説明させるだけではなく、なぜその動作が必要なのか、なぜ以前の動作では良くなかったのか、という理論まで説明させることが重要です。

例えばある動作を身につけられると球速がアップするとします。その場合、「この動作はこのように動くのが正しくて、これができるようになると、体のここをこんな風に使えるようになるから球速がアップします」という感じで選手に答えさせます。そして上手く答えられなかったらそこで復習をして、再度正しい知識を頭と体に入れていきます。

これがアクティブリコールという作業を取り入れている僕のレッスンの大まかな流れです。この作業を根気強く続けていくことにより、選手の頭と体に正しい動作が刷り込まれていきます。動作改善というのは、これまでの「良くなかった動作」という名の癖を、「良い動作」という名の癖で上書きしていく作業のことです。つまり大切なのはその場でできるようになることだけではなく、一年後も二年後も同様に良いフォームで投げたり打ったりできているか、ということなのです。

手取り足取りの指導だけではプロコーチの指導としては物足りない

アクティブリコールによって正しい動作をしっかりと長期記憶に変換しておくと、レッスンが修了してしばらくして調子を崩した時、「そう言えばこんな時、レッスンでこんなことを教わって練習したら調子を取り戻したんだった!」と記憶を繋げられるようになり、自分で自分のコーチングができるようになります。

調子を崩した時に、よく今のフォームとヒットを打った時のフォームの動画を見比べることがありますが、この時重要なのはそのヒットを打った時のフォームが、たまたま出たヒットなのか、それともしっかりと理論的にも良いフォームで打てているヒットなのか、という点です。

もしそれがたまたま出たヒットだっとすれば、良いフォームで打っているとは限りません。逆に結果としてはアウトになっていたとしても、理論的に良いフォームで振っている打席の映像は、これは好例として保存しておくべきです。そして調子を崩した時にその映像を使いながら、僕のレッスンで教わったことを見直していくと、より早く不振から脱却できるようになります。

手取り足取りの指導だけでは記憶はどんどん薄れていく

一方アクティブリコールなど一切気にせず、その場でできるようになることをまず最優先にし、理論など気にせず、手取り足取りで教えても、僕のレッスン同様その場ではすぐにできるようになったり、数日後の試合でも好結果を得られることもあります。しかしそこから時間が経てば経つほど、その正しい動作は少しずつ歯車が狂っていき、気がつくと実は教わったフォームとは違うフォームでプレーしていた、というケースも多々あります。

そこで再度手取り足取り教えてあげても、これは結局は短期記憶にしかならないため、また時間が経つとフォームが崩れてしまい、いつまで経っても好不調の波が大きい状態が続いてしまいます。つまり重要なのは崩れてしまってから教え直すことではなく、忘れてしまう前に正しいフォームを思い出して良いフォームを崩さないようにすることなのです。

良いフォームを短期間しか保てないのはとてももったいないので、やはり野球塾のレッスンでもコーチ側はアクティブリコールを取り入れ、頭と体に入れていく記憶をできるだけ早く、短期記憶から長期記憶に変換していきたいわけなのです。

ちなみに実際に記憶が定着されていくのは睡眠時ですので、質の良い睡眠を心がけることもアクティブリコールにとっては大切な要素となります。もし睡眠直前の2時間でブルーライトを浴びたり、血行をよくするストレッチングをしてしまったりすると睡眠の質が低下しますので注意が必要です。

ということで今回のコラムでは、僕の野球塾ではただ野球を教えるだけではなく、アクティブリコール作業を用いながら選手を指導している、ということについて書いてみました。もし僕のレッスンに少しでも興味を持っていただけたら、お気軽にLINE(僕のLINEはこちらから友だち追加してください)よりお声掛けください。

TeamKazオンライン野球塾

新しい野球塾が誕生して別の野球塾が潰れていくこの10年

僕自身、やっぱり納得いくまで野球をしたかったなという気持ちはありました。でも中学卒業後、高校の野球部に参加していた入学式の前日、僕は肩関節胞損傷というかなり痛い部類の野球肩になってしまいました。高校時代はずっと右肩のリハビリを続けていましたが、結局その肩が以前のようにボールを投げられるようにはなりませんでした。

僕は中学3年生の時点で125km/h程度のストレートを投げられるようになっていました。1978年生まれの僕らの世代にとっては、中学生の120km/h台というのはかなり速い部類で、全国を探しても130km/h以上を投げられる中学生などほとんどいませんでした。そんな時代でしたから、125km/hであっても当時としてはかなり速い方だったんです。

細身の体に対して速過ぎるボールを投げ続けた影響だったのかもしれません。肩を痛めて選手としての道は断たれ、高校卒業後の19歳くらいの時から野球動作に関する科学を学び始めました。そこから13年ほど野球とは関係ない仕事をしながら、野球に関する様々な科学を学び続け、2010年1月にあるプロ野球選手の自主トレをサポートする形でプロコーチデビューを果たし、念願だった転職を実現させました。

僕の野球塾はそこから始まったわけですが、その当時はまさかここまで長くできるとは思っていませんでした。この10年くらい、野球塾は引退したプロ野球選手たちが次々と開校していきました。しかしその中でもレッスンし続けられる野球塾はごく一部で、これまで本当に多くの野球塾が経営難で潰れてきました。そんな中でも僕の野球塾は今なお潰れる気配なく毎日選手を指導し続けられています。

僕の個別レッスン野球塾が、他の野球塾のグループレッスンよりも安い理由

僕のように目立った球歴を持たないのにこれだけ長く野球塾を続けていられるのは、やはりプロコーチになる前にしっかりと野球に関する科学を学んだことが一番だったと思います。フォームに関するバイオメカニクスや人体力学、解剖学、投球や打球に関する物理学、野球に関する医学、スポーツ心理学、栄養学などなど、コーチをする上で役立ちそうな科学はすべて学びました。

それに加え子どもたちを教え始める前、僕は複数の野球塾の見学にも行きました。いわゆるベンチマーキングです。他の野球塾がどのようなコーチングを行なっているのかをリサーチしたり、情報交換をしたりしました。そしてそこで気づいたのは、有料の野球塾であっても科学的根拠のないことを子どもたちに教えているところがすごく多いということでした。

有料の野球塾なのに根性論で指導をしていたり、少年野球チームやクラブチームの延長のような指導しかしていないところがとても多かったんです。もちろん中には科学的根拠の見える指導を行っている良い野球塾もありましたが、それを確信できるところは僕が見学に行かせてもらった中ではせいぜい1割程度でした。

そして野球に関する科学的用語を使って話そうとしても、その用語を補足なしで理解できるプロコーチもやはりほとんどいらっしゃいませんでした。中には、元プロ野球選手だったコーチなのですが、軸足のことを軸だと思っているレベルのコーチさえいました。しかし軸足は軸として機能することはありません。軸足は英語で言うと "pivot foot" と言います。意味は "旋回する足" です。そして軸は英語では "axis" と言って、pivot foot とはまったくの別物です。

元プロ野球選手たちの選手としての経験値は半端じゃありません。僕なんかに太刀打ちできるものではありません。しかしコーチとして必要なスポーツ科学への造詣の深さは、元プロ野球選手である野球塾のコーチたちは僕に太刀打ちできません。関東近辺では僕が知る限りでは、元西武ライオンズの熊澤とおるコーチくらいです。熊澤コーチは僕が尊敬するコーチの一人です。

有名トレーナー主宰の有名野球塾は要注意!

ちなみにプロ野球チームでも活躍された有名トレーナーが主宰する野球塾も多いですよね。しかしご注意いただきたいのは、そのトレーナーの野球塾であっても、そのトレーナーから直接指導を受けることはできない、という点です。

多数の野球動作に関する本を出されているトレーナーの野球塾に通っていた僕のある生徒さんは、その野球塾では根性論ばかりを言われたと話していました。中学生である選手自身だけではなく、送り迎えをされていた親御さんもその指導法を見聞きしていましたので、間違いないかと思います。野球塾を主宰している有名トレーナー自身の知見はすごかったとしても、その野球塾で実際に指導に当たっていたのは大学生のアルバイトコーチだったそうです。

その生徒さんと親御さんは、高いレッスン料を払って根性論を聞きにきているわけではないという思いからその野球塾はやめて、僕のレッスンを受けるようになりました。ちなみにレッスン料は僕の野球塾よりもはるかに高額だったそうです。なぜ高額になるかと言うと、単純にその有名トレーナーのネームバリューと、充実した屋内練習場の設備の影響です。大した内容の指導を受けられなくても、設備が充実しているだけでレッスン料は高額になります。

しかし現在の僕の子どもたちへのレッスンはZOOMのみです。コロナ前は子どもたちにも対面でマンツーマンレッスンを行っていましたが、現在対面でコーチングを行なっているのはプロ野球選手のサポート時のみです。小中学生に関してはすべてZOOMレッスンで、生徒さんたちはみなさんご自宅のお部屋やお庭からレッスンを受けているのですが、僕のレッスン内容は科学的根拠が満載であるため、充実した屋内練習場などなくてもどんどん上達していきます!

そして箱(屋内練習場)を持たない僕の野球塾のマンツーマンレッスン料は、場合によっては他の野球塾のグループレッスン料よりも安いことがあります。時々、僕は元プロ野球選手じゃないからレッスン料が安い、もしくは安かろう悪かろうと思われることもあるのですがそうではなく、僕の野球塾は箱を持たない分マンツーマンなのに安くなっているんです。

グループレッスン野球塾では選手個々の動きをすべて追うことは不可能!

充実した設備は、ないよりはあった方が良いと思います。しかしそれによってレッスン料が高額になってしまってはいけません。そして野球塾のレッスンは、グループレッスンよりもマンツーマンの方がはるかに高い効果を得ることができます。もしグループレッスンとマンツーマンレッスンの選択肢があるのであれば、ご予算が許す限りは絶対にマンツーマンレッスンを選んでください。

グループレッスンは、一般的には5〜12人程度に1人のコーチが付くという割合が多いと思います。1クラスの生徒さんが5人前後であれば、少人数制レッスンと紹介されていると思います。

僕自身、この野球塾で一夏だけグループレッスンをしたことがありました。その時の生徒さんは4人でした。1クラス4人で1レッスン1時間だったのですが、たった4人であっても、選手全員の細かい動きを追い続けることは困難でした。もちろん全体的に動作を追うことはできるのですが、しかしマンツーマンをやっている時のように、選手の動きを完璧に追い続けることはできませんでした。

そのため選手が良くないフォームを取った時、それがその時がたまたまだったのか、それともいつもなのか、もしくは何割程度の割合なのかを把握することができません。さらにはその動作が常に出ているわけではない場合、僕がその動作に気づけないことだってあります。そしてそれはコーチングとしては致命的なミスとなってしまうこともあります。

僕は一般的には視野が広いタイプのコーチで、監督経験もあるのですが、監督としてはベンチから試合のすべての状況を常に把握することができました。しかし試合状況とコーチングはまったくの別物でした。選手個々のフォームをしっかり追い切れないことから、僕がグループレッスンを行ったのはその夏休み期間が最初で最後となりました。

野球塾の経営という視点で考えると、絶対にグループレッスンは行った方が実入りは良くなります。しかし僕は選手全員を上達させたいという強い思いがあるため、今後もマンツーマンにこだわってレッスンをしていくつもりです。

もし野球チームや他の野球塾で指導を受けていても、いまいち根拠に欠ける指導ばかりだと感じた時は、ぜひ一度僕のレッスンを受けてみてください。僕のLINEを友だち追加してもらえれば、体験レッスンが無料になるクーポンもプレゼントしています。無料レッスンですので受けて損することはありません。ぜひ一度僕の理論派レッスンを受けてみてください。

レッスン内容は超理論的ですが、でも小学生でも大人でもちゃんと理解できるように分かりやすくお伝えしています。小学生には小学生に合わせて、大人には大人に合わせて言葉を選びながらレッスンをしています。そして一度レッスンを受けてくれた方はその内容に非常に満足してくださり、70〜80%の方がその後もレッスンを受け続けてくださいます。

実際にレッスンを受けてくださった方からいただいたご感想もこちらの野球塾ページの感想欄でご紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。

スポーツ心理学を学ぼうとさえしない野球指導者たち

スポーツ心理学を学ぼうとさえしない野球指導者たち

野球に限らない話ですが、野球界でも指導者による体罰や暴言が本当になくなりませんね。これだけ頻繁に体罰・暴言に関する報道が出されているのに、野球指導者というのはまったくニュースを見ないのでしょうか?同じ野球のコーチとして本当に呆れるばかりです。

体罰・暴言が出てくるのは、ほぼ確実に中学・高校野球部、中学クラブチーム、少年野球のどれかです。大学野球や社会人野球でこのようなニュースが出てくることはほとんどありません。その理由として考えられるのは、大学や社会人野球の指導者は報酬をもらっているということが影響しているのではないでしょうか?

僕自身も野球塾を主宰しているプロフェッショナルコーチです。お金を頂かずに選手を指導することはありません。ですが少年野球や中学クラブチームの指導者はすべてボランティアコーチですし、野球部の指導者のほとんどすべては教職員です。私立高校の野球部では中には雇われ監督もいらっしゃいますが、これはレアなケースです。

僕らのようにお金を頂いてコーチをしている人間は、やはり人よりも少しでも多く勉強をしようと考えます。野球科学・スポーツ科学、解剖学はもちろんのこと、スポーツ医学やスポーツ心理学も勉強します。そして指導者になるために最も学ばなければならないことはスポーツ心理学です。

運動指導の心理学

スポーツ心理学に関しては、僕は『運動指導の心理学』という本を中心に学んでいます。スポーツ心理学に関する本はたくさん読みましたが、この一冊に関しては本当に素晴らしい内容であるため、何度も読み返しています。そして重要なポイントはノートにまとめてあり、必要な内容は一瞬で目の前に出せるようにしています。

選手に対し体罰・暴言を行う野球指導者というのは、ほとんど100%スポーツ心理学など学んでいないのでしょう。さらに付け加えれば、選手に対するセクハラも同様です。詳しくは受容性が強い選手はセクハラさえも受容してしまうというコラムで書いていますが、男性指導者による女子選手に対するセクハラもまったくなくなる気配がありません。

ボランティアコーチはもちろんのこと、教員にしても野球部の指導に対する対価は基本的には得ていません。出ているとすれば時間外労働に対する賃金となるのではないでしょうか。指導をしていることに対する報酬を得ていない分、何か他で対価を得ようとするのかもしれません。

例えばセクハラをして性的満足を得ようとしたり、部員を殴ってスカッとしようとしたり、暴言や誹謗中傷を浴びせて上位に立とうとしたり。そういうことによってなんらかの利益を得ようとしているのかもしれません。もしくは「ボランティアでやってやってるんだ」という上から目線的な意識を拭えないのでしょう。

選手に「死ね」と言ったのは掛川工業高校の教員だけではない

今回は掛川工業高校の野球部指導者が選手に対し「死ね」「バカ」「使えないな」と暴言を吐いたと報道されましたね。この指導者は30代男性教員だそうです。子どもを教育する立場の人間が高校生に対し「死ね」と言っているわけです。高校野球は言わずと知れた教育の一環であるわけですが、この教員は一体どのような教育を受けて生徒に「死ね」なんて言える教育をしていたのでしょうか?

全体的に見ると教員の数は決して足りているわけではないようですが、しかしこのような暴言を吐いた者は教員免許を剥奪されるべきです。もしくは教育実習からやり直すべきでしょう。そして再発防止プログラムを徹底させるべきです。

ちなみにニュースにはなっていませんが、選手に「死ね」という暴言を吐いている野球指導者はあちこちに存在しています。僕自身それを目の当たりにしたことも複数回あります。

東京の江戸川河川敷で、江戸川区の中学の野球部が他校と練習試合をしていました。すると内野の子が連続してエラーしてしまったんです。するとその中学の監督、つまり教員はその選手を大声で「お前頼むから死んでくれよ!」と罵倒し始めました。口調はもうほとんどヤクザです。

保護者、もしくは学校関係者の大人も数人見えていたのですが、その監督を注意する大人は一人もいないようでした。これが現実です。監督は子どもに「死ね」と怒鳴っているのに、周りの大人は何も言わない。もちろん審判も何も言わない。そして「死ね」と言われた子を助ける大人も誰もいない。こんなのまったく教育と呼ぶことなんてできません。

その時僕は隣のグラウンドでコーチングをしていたのですが、コーチングの合間に暴言を吐いた監督をたしなめにいきました。中学名が入ったユニフォームを着て暴言を吐いているシーンを撮影してあり、その動画を教育委員会に報告すると告げると、アホみたいにヘコヘコしてきました。そして僕自身は謝罪は受け付けず、謝罪するなら選手本人とチームメイト、相手チームにしろ告げ、僕はコーチングに戻りました。

野球界も本格的な指導者ライセンスの導入を急ぐべき

体罰は暴行罪、暴言は名誉毀損、セクハラはセクハラであり、セクハラは最悪の場合性的暴行(レイプ)に繋がります。どれも紛いない犯罪です。このような犯罪に対してはもう容赦すべきではないと思います。今回の掛川工業高校の問題に関しても、生徒側は弁護士を立ててこの教員に対し徹底的に反撃し、それなりの慰謝料を得るべきです。そして出来うれば、その慰謝料は野球部の道具購入などで使って欲しい。そして生徒たちが何の不安もなく伸び伸びとプレーできるようになって欲しい。

教育委員会はあまり頼りにはなりません。これらの犯罪報告があれば調査するけど、教育委員会自らには問題をほじくり出して改善しようという意思は見られません。そしてこれは各野球連盟にも言えることです。野球連盟も、大会開催以外で役に立っているようんは見えません。

ポニーリーグに関しては先進的な取り組みに挑戦する姿を見せてくれています。しかし他の野球連盟に関しては未だ前時代的で、昭和気質の無能な野球指導者を野放しにしているのが現状です。

やはりチームの指導者となるためには、指導者ライセンスを必須にすべきでしょう。スポーツ心理学を学んでいない人間に子どもたちを預けるべきではないと思います。指導者ライセンスはもちろん万能ではありませんが、しかしスポーツ心理学を指導者たちにかじらせることはできます。

かじってみて、そこから自ら勉強を深めていくかどうかは本人次第です。そして勉強を頑張って良い指導者になろうと努力した人に対しては、A級、S級といったクラスのライセンスを付与していけば、子どもを預ける側の親御さんも安心してチーム選び、学校選びができるようになります。

野球人口が減少していると言われ始めもう久しいわけですが、一体どれくらいの野球未経験者の親御さんが、未だに暴力・暴言の報道が絶えない野球チームにあえて子どもを入れたいと思うでしょうか?野球人口を増やすために5人制野球を作るのも良いのですが、しかしその前にまず暴力・暴言の根絶が先だと僕は思うんですが、いかがですか?財団法人全野球協会の皆様。

レベルスウィングとは?

少年野球や中学野球を中心にし、日本では未だにバットを水平に振るレベルスウィングを勉強不足の野球指導者たちが子どもたちに教え込んでいます。僕は2010年1月にマンツーマンレッスン野球塾を開校して以来、子どもたちには一度もレベルスウィングをするように指導していません。しかし当野球塾の生徒さんの多くが打率.400を軽々と越えています。

そもそもレベルスウィングとはどういうスウィングのことかと言うと、文字通りバットを水平(レベル)に振るスウィングのことです。

レベルスウィングはバットを水平に振るスウィングのこと

レベルスウィングとは

指導者たちは、飛んでくるボールの軌道にバットを入れて空振りを減らすために子どもたちにレベルスウィングを必死に教え込もうとしています。しかしよく考えてみてください。投手が投げるボールが水平軌道を描いて飛んでくることはほとんどありません。プロ野球選手が投げる150km/h前後のストレートであっても、水平に飛んでくることは稀です。

数多くのプロ野球選手のフォームを分析してきた僕の知る限りでは、文字通り水平軌道を描いたストレートを投げていたいのは全盛期の藤川球児投手や松坂大輔投手、近年では平良海馬投手ら数名です。藤川投手の場合は真ん中の高さでも水平軌道を描いていましたが、松坂投手の場合は高めのストレートのみ水平軌道でした。

そして大谷翔平投手や佐々木朗希投手らは、球速や球質はおそらくは藤川投手や松坂投手以上です。しかしストレートが水平軌道かと言うと、そうではありません。大谷投手と佐々木投手の場合は身長がある分、やや上からの角度が付いたストレートになっています。ただし高めのボール球に関しては水平軌道になっていることもあります。

このように、プロ野球の一流投手であっても水平軌道のストレートを投げることは困難です。それならば球速がまだ遅い小中学生ならば尚更です。小中学生が水平軌道のストレートを投げることは、物理的に不可能です。もちろんサイドハンドスローから投げれば、リリース直後の数メートルは水平かもしれません。しかしそれでもホームプレートに到達するまでにはかなり下垂しているはずです。

それなのに少年野球や中学野球の指導者たちは、ボールの軌道にバットを入れるためだと説明しながら、一生懸命子どもたちにレベルスウイングを教え込もうとしています。このやり方は、野球科学がまだ発展する前の昭和時代であれば一番正しい理論だったかもしれません。しかし野球科学が進歩した今、僕らのように野球科学を理解しているコーチが選手にレベルスウィングを指導することは絶対にありません。

僕はプロ野球選手の個人コーチも務めているのですが、プロフェッショナルコーチとしてハッキリ言います。レベルスウィングを癖づけてバッティングの成績が上がることは絶対にありません!

レベルスウィングでバットを振るメリット

レベルスウィングのメリットとデメリット

プロコーチとして言わせてもらえれば、レベルスウィングにはメリットなどありません。でも話をここで終わらせてしまっては解説にはならないため、一応挙げられるメリットをご紹介しておきたいと思います。

レベルスウィングをして考えられるメリットは2つあります。それは、素振りと置きティーによるティーバッティングが楽になる、という点です。この2つ以外に、確実に得られると思われるメリットを挙げることは僕にはできません。プロコーチになって2023年で14年目になりますが、これ以外のメリットは14年間でまだ見つけられてはいません。

まず素振りですが、レベルスウィングで振るということは、基本的には上半身を反対打席側に傾けて振ることはしないと思います。上半身を立てたまま振ることが出るので、下半身をしっかりと踏ん張らなくてもバットを振ることができてしまいます。そのためレベルスウィングであれば、小学生でも毎日素振りを100回200回繰り返すことができてしまいます。

しかし僕がレッスンで指導しているような下半身をしっかりと使ってバットを振るフォームになると、毎日200スウィング以上振って、筋トレもしているような高校生や大学生であっても、最初のうちは30回の素振りさえまともにできなくなります。それまで手打ちをしていた選手が本当に正しい下半身主導のスウィングをできるようになると、それくらい下半身がきつくなるということです。逆を言えば、レベルスウィングでは下半身をほとんど使わなくなる、ということです。

そしてレベルスウィングで楽な素振りをしていれば、下半身を使っていない分体も楽になり、何となく安定したスウィングをしているように見えるんです。勉強不足の指導者はそれを見て「ブレのない良いスウィングだ」と勘違いしてしまっているんです。ですがレベルスウィングを叩き込まれた選手の、真ん中から低めのボールへの対応を観察してみてください。必ずヘッドが下がっているはずです。

※ ヘッドが下がっているとは、軸とバットが直角の関係になっていない状態のこと。

ティースタンド

続いて置きティーの話もしておきましょう。置きティーとは、ティースタンドにボールを乗せてそれを打つ練習のことです。この練習をする際、バットを水平にするとティースタンドがほとんど倒れなくなるんです。スタンドを倒さずにポンポン打っていくことができますので、傍目には良い練習をしているように見えます。しかし実際にはそうではありません。

良いスウィングとは簡単に説明すると、インパクトまではダウン軌道で、インパクト後はアッパー軌道に見えるスウィングのことです。この良いスウィングをできるようになると、ティースタンドはけっこう頻繁に倒れるようになります。そのため僕がグラウンドレッスンでティーバッティングを見る際は、ティースタンドをペグで固定しています。

打っている本人からしても、やはり頻繁にティースタンドが倒れてしまうとイライラしてきてしまいます。するとティースタンドが倒れない打ち方をするようになり、バットがティーに触れなくなる水平軌道でバットを振るようになってしまうんです。

これらが、強いて言うなればレベルスウィングのメリットです。素振りが安定して見えることと、ティースタンドが倒れなくなること。でもこの2つって、実際の試合の打席ではまったく役に立たないメリットです。つまりレベルスウィングのメリットとは、ただ練習をしやすくするだけということです。

ちなみにスワローズで活躍されている青木宣親選手はある意味レベルスウィングなのですが、バットを水平に振るレベルスウィングではありません。飛んでくる投球軌道に対してバットを平行に入れる(投球軌道の延長線上にバットを入れる)打ち方をしています。あくまでも投球軌道に対してバットを平行に入れているのであり、地面に対して平行に振っているわけではありません。

レベルスウィングでバットを振るデメリット

続いてレベルスウィングでバットを振るデメリットについてですが、バットを振る際に重力をまったく使うことができなくなります。つまりヘッドを効かせることができないということです。重力を使ってヘッドを効かせられなければ、あとは腕力に頼って重さのあるバットを振っていくしかなくなります。
バットのヘッドの利かせ方

バットは、体の力と重力の両方を使って速く振っていくのですが、重力を使えなくなれば、その分加速エネルギーは小さくなり、バットスウィングは遅くなってしまいます。そしてバットスウィングが遅くなれば、トランポリン効果も得られなくなります。トランポリン効果とは、いわゆるバットがしなって弾性力が強くなり、打球速度がアップする効果のことです。

金属バットの場合はもちろんバットはしならないのですが、しならない分バットの打面が凹み、トランポリン効果を生み出します。木製バットの場合は柾目を使って打つことで、文字通りバットがしなって飛距離がアップしていきます。詳しくは『実は金属バット以上に飛距離を伸ばせる木製バット』にてご確認ください。

打球速度を最も速くできる打ち方は、ストレートの場合、投球軌道に対して斜め上45°からバットをボールにぶつけた時に物理的にインパクトが最も強くなり、打球速度も最も速くなります。これは野球の物理学で科学的に立証されています。

軟式野球の場合はバットの正面でボールの正面を叩いていきます。硬式野球の場合はボールの中心の6mm下を叩くと打球にバックスピンがかかり、最大限のマグナス力を得られるようになり、小柄でも細身でも柵越えのホームランを打てるようになります。逆に中心の6mm上を打っていくとトップスピンがかかり、あっという間に野手の間を抜けていく球足の速いゴロを打つことができます。

正しい技術が身に付けば誰も買わなくなるであろうビヨンド

しかしレベルスウィングで振ってしまうとこれらの科学的効果を一切得られなくなってしまいます。するとどうなるかと言うと、技術ではなく高価な道具に頼って打つしかなくなってしまうわけです。つまりビヨンドとは、野球知識のない野球指導者が間違った打ち方を子どもたちに教え込むことにより発明された複合バットと言えるわけです。

もし科学的に本当に正しいフォームを身につけられていれば、普通の金属バットでも十分ヒットを量産できますし、柵越えのホームランだって打つことができます。現に僕のレッスンを受けて打率.400を越えていった小中学生のほとんどはビヨンドなどの複合バットは使っていません。

つまりちゃんとヒットを打つことができる正しいフォームを身につけていれば、誰もあんなに高価なビヨンドなど買わなくなるということです。でもそうじゃないから、みなさん高価なバットに頼るしかなくなってしまうんです。

僕は1978年生まれで小学生時代は軟式、中学からは硬式(学校の部活では軟式野球部)でした。当時の軟式球にはまだゴルフボールのようなディンプルがついており、現在のJ号やM号と比較すると飛距離は出ませんでした。バットにしてもビヨンドなどもちろんなく、金属バットにしても現在のような良く飛ぶバットなどまだありませんでした。

そして僕はチームでも最も細身な投手体型だったのですが、3番打者として小学生時代から柵越えのホームランを打っていました。打率だって、中学最後の夏の大会(4〜5試合)の打率は.800を越えました。僕はしっかりとしたバッティング技術を身につけていたので、当時5000円程度のMizunoの普通の金属バットでも3番投手としてヒットを打ちまくっていました(硬式バットはチームの古いバットを借りていました)。

レベルスウィングに関するまとめ

今回のコラムを読んでいただいたことで、レベルスウィングがどういうスウィングなのかということと、レベルスウィングで振ってしまうと打者としてどれだけレベルが下がってしまうのかを分かっていただけたと思います。

しかし残念ながら日本の少年野球や中学野球の指導現場ではもちろんのこと、高校大学の指導現場、はたまた有料の野球塾であっても未だにレベルスウィングを子どもたちに教え込もうとしている指導者で溢れています。僕の調査では、複数の元プロ野球選手の有料野球塾でもレベルスウィングを教えているそうです。それらの野球塾に通って成績が上がらず、僕のレッスンを受けるようになった生徒さんや親御さんたちにそれを伺いました。ちなみに生徒さんたちはもちろん、僕のレッスンを受けてからは成績はグングン上がっていきました。

ボランティアコーチでも、野球塾のプロコーチでも、もしレベルスウィングで振るように言ってきたらその指導者は要注意です。もし今後チーム選びをする際は、体験入部の際に指導者がしきりにレベルスウィングを教えていないかどうかをしっかりと観察してください。もしレベルスウィングとノーステップ打法を教えていたらその指導者は要注意です。

もしヒットをたくさん打って同時に長打率もアップさせたい場合は、今すぐレベルスウィングはやめてください。ではどうすれば良いのか?このコラムでは割愛させていただきますが、『ミート力も長打力もアップするフラフープ練習法』のレッスン動画を参考にしてみてください。こちらの動画で、本当に正しいスウィング軌道の作り方をレッスンしています。

なぜ大人たちは子どもたちに「なぜ」と言わせない指導をするのか?!

少年野球や中学野球の良い指導者と悪い指導者の割合は22:78という法則

僕はプロコーチとして様々なチームを見てきましたが、特に小中学生チームに多かったのが、選手たちに「なぜ」を言わせない指導者の存在です。これが高校野球や大学野球レベルになると、年代的にも選手自身である程度の理論武装をすることができます。そのため「なぜ」を言わせない指導はほぼ通用しなくなります。

しかし少年野球、学童野球、リトルリーグ、中学野球部、シニアリーグなどでは、選手に「なぜ」を言わせない指導が未だにまかり通っています。指導者自身が勝手に正しいと思い込んでいることを、子どもたちに頭ごなしに教え込むやり方です。これはまさに昭和の前時代的なやり方であって、スポーツ科学的には誤ったやり方であるとしか言えません。

ではなぜ指導者たちは「なぜ」を子どもたちに言わせないのか?その理由は簡単で、自分たちが最新の野球指導法をまったく勉強していないからです。だから子どもたちに「なぜ」と聞かれても答えられないわけです。だから「なぜ」を言わせない頭ごなしのやり方をするしかないんです。しかしこれは指導法としては最低のやり方です。

もちろん中には、子どもたちの疑問を丁寧に解決しようとしてくれ、スポーツ科学を独学されている指導者もいらっしゃいます。しかしそのような指導者は少年野球や中学野球ではレアな存在です。ほとんどいらっしゃらない、と言った方が正確です。

僕の個別レッスンを受けたことがある方であればご存知だと思いますが、僕のレッスンでは僕の方から選手にどんどん質問をし、考えさせるようにしています。ちなみに、もちろん質問する内容はレッスンで指導済みのことのみです。

レッスンを受けにきてくださるお子さんたちの99%は、自分から「なぜ」を伝えてくることはありません。色々な動作を指導していても、なぜその動作にすると良いのか、ということを、僕が指導する前に積極的に聞いてくる小中学生は1%いるかいないかという割合です。これもやはり、チームで「なぜ」が許されない頭ごなしの指導が行われている影響だと思われます。

なお、頭ごなしと言うとスパルタ的なイメージもありますが、笑顔で優しい口調だったとしても、子どもたちが「なぜ」と聞きにくい教え込み方は、これも頭ごなしであると言えます。

良い指導者と悪い指導者の割合は22:78

実は良いコーチというのは自ら教えにいくことはないんです。もちろん僕のレッスンを受けに来てくれた子には、教えるべきことは教えるわけですが、ですがコーチの最大の仕事は、とにかく選手を観察することです。選手の細かい動作の変化に咄嗟に気付けるようにしておくことです。これができないコーチは、プロだろうとアマだろうと選手を伸ばすことはできません。

僕のレッスンではこちらからたくさん質問をしますし、ノートにもたくさんのことを書いてもらいます。このノートというのがとても大切で、いくら僕がコーチとして素晴らしいことを指導したとしても、その話を聞いた数日後には記憶は薄れていってしまいます。すると何を教わったのかをすっかり忘れてしまい、同じことを何度もレッスンしなければいけない、というもったいない状況に陥ってしまいます。

そうならないように、僕は子どもたちにはとにかくこまめにノートを取るようにしてもらっています。そして正しく書けているかどうかも確認するようにしています。しっかりとノートに書いておけば、正しい動作の記憶が薄れてしまっても、そのノートを見ればまた正しい動作を思い出すことができます。聞いて、書いて、動いて、忘れて、ノートを見て、また動いて。この繰り返しを続けていけば、どんどん正しい動作を体が覚えていきます。

そして僕は、選手たちに伝えた言葉や指導内容をすべてメモしています。僕は記憶力はかなり良い部類ではありますが、それでも時間が経つと記憶が曖昧になることもあります。そんな時は「この選手にあの内容は伝えただろうか?」と思い返し、デジタルでメモしているノートに検索をかけます。すると、何月何日のレッスンで伝えたということが一瞬で分かるわけです。逆にまだ伝えていなければ、検索結果が0件になります。

僕自身もこうしてすべてメモしていくことで、自分の言葉とレッスン内容に責任を持つようにしています。ですが上述した頭ごなしの指導者の場合、「同じことを何回も言わせるなよ!」と言いつつも、実はそれは他の選手に言ったこと、というケースが多々あります。これは少年野球や中学野球だけではなく、一般社会でもきっと同じですよね。そういう上司、周りにいたりしませんか?

でもそんな時、「聞いた記憶がありません」なんて言ってしまうと今度は逆ギレして、「お前が覚えてないだけだ!」と言ってきたりするわけです。もうこれはまさに最悪の部類の野球指導者ですね。もちろん最悪な指導者は全体を見渡せば一部であるわけですが、それでも全国的に見ると数え切れないほどいる、という人数になります。

皆さんはユダヤの法則をご存知ですか?これは、世の中は常に22:78の割合で成り立っている、という考え方です。良い指導者が22人いたとしたら、無能な指導者が78%いるということです。そして良い指導者22人の22%にあたる約4.8人が素晴らしい指導者である可能性があり、22人の中の78%にあたる約17.1人が普通のいい指導者と考えることができます。

逆に78人の無能な指導者の中の78%にあたる約60.8人はただ無能なだけの指導者で、78人の中の22%にあたる約17.1人は最悪の指導者である可能性があります。このように常に22:78の割合で掘り下げていくと、世の中の縮図を作ることができます。

中学野球で肩肘を壊されながらも、神宮デビューした僕の教え子

無能な指導者は、とにかく選手に意見を求めることはしません。例えば僕の生徒さんの中に、東京の名門シニアリーグでピッチャーをやっている選手がいて、肩も肘も痛めてしまったため、それを治すために僕の動作改善を受けに来た中学生がいました。

その中学生は、シニアリーグに入ってすぐ監督にフォームを直されて肩肘の痛みを訴えるようになりました。その時の監督の言葉は「走り込みが足りないからすぐ肩肘が痛くなるんだ」というものだったそうです。野球の指導者をしているくせに、本当にどれだけ野球の勉強をするのが嫌いなのでしょうか?この監督は。

約6ヵ月間のドクターストップ期間にレッスンを受けに来てくれたのですが、6ヵ月かけて本当に素晴らしいフォームに改善することができました。肩肘は強く投げてもまったく痛まなくなり、最速110km/hだったストレートも、レッスン後は125km/hと、わずか6ヵ月のレッスンで球速が15km/hもアップしました。

そして肩肘も治り、球速も上がり、満を持してチームに復帰したのですが、監督からかけられた言葉は「俺が教えたフォームがかなり崩れている」、だったそうです。そして「俺の言う通りに投げられないなら試合では使えない」と言われたそうです。これは脅迫です。

この中学生選手は僕のレッスンを受けた後、このような形で再度監督に肩肘を壊すためのフォームに戻されてしまいました。そしてレッスン修了から約1年後、この中学生はまた肩肘を痛めて僕の野球塾に戻ってきました。僕と親御さんはそこで初めて、彼が上述した脅迫めいたことを言われ、監督に従うしかなかったことを知りました。

この中学生にとっては中学最後の夏目前の出来事でした。このようなこともあり、親御さんの方針でこの子はそのシニアチームを退部し、僕のレッスンだけを受けることにしました。チームの移籍も考えたようですが、しかしこれは日本ではとても難しいんです。日本の小中学生チームは横のつながりは本当に意地悪で、近隣チームでの退部情報はすぐにシェアされ、近隣チームを辞めた子を受け入れてくれるケースはほとんどないんです。

このような日本特有の事情もあり、親御さんは息子さんを退部させることにしました。そしてそこから高校までの間、みっちり僕のレッスンを受け、ピッチングフォームもバッティングフォームも素晴らしいフォームになりました。その甲斐もあり、彼は高校3年間で一度も怪我をすることなく高校野球を全うしました。残念ながら甲子園はあと1勝というところで届かなかったのですが、しかし大学では無事神宮デビューを果たすことができました。

ちなみにこの子に肩肘を痛めるためのフォームを頭ごなしに教え込んだ監督は、今も現役の監督だそうです。このように指導者に恵まれずに怪我に苦しんだ小中学生は、本当に数え切れないほどいます。そして子どもたちが野球から離れる理由の1位・2位は常に怪我と人間関係です。

僕の野球塾でレッスンを重ね、最終的に神宮デビューしたこの子は、中学時代は怪我にも泣かされ、指導者との人間関係にも恵まれない状況でした。でも彼は野球が好きだったのでそこで諦めることなく頑張ってトレーニングを続けました。その結果高校・大学では良い指導者に恵まれたようです。そして高校でも大学でも「本当に良いフォームで投げている」と褒められたそうです。ちなみに大学の監督さんは、僕もよく知る仲の監督さんでした。彼が監督に僕からフォームを教わったことを告げると、「どうりで良いフォームなわけだ」と言われたそうです。

そして高校の監督も、大学の監督も、疑問に思ったことはいつでも聞くことができ、質問をすると一緒に真剣に考えてくれたそうです。これこそが素晴らしい指導者のあるべき姿です。小中学生のチームにも、本当にこのような指導者たちに増えて欲しいなというのが、プロフェッショナルコーチである僕の切なる願いです。

少年野球やクラブチームに保護者の当番制は必要なし!

未だに保護者に当番制を強いる日本の少年野球と当番制はないアメリカ

近年はお茶当番などを廃止した少年野球チームや学童チーム、クラブチームも少しずつ増えているようですが、しかし実際にはお茶当番などを強制させられるチームがまだまだ大半だと言えます。

個人的には当番制は必要ないと僕は考えています。まずお茶なんて各自が飲み物を用意してグラウンドに来れば良いだけの話ですし、車の送迎に関しても無茶な遠征試合を組まなければ、電車や路線バスで十分事足ります。

ちなみにBRITAのスクイーズボトルが一つあれば、これを空っぽのまま持っていくだけで、公園などの水道水を安心して美味しく飲めるようになります。もちろん僕も愛用している超オススメ商品です。

さて、車の送迎係を担当されたことがある方であればお分かりいただけるかと思いますが、少年野球でも草野球でも、一日野球をした選手たちを同乗させてあげると、車の中が砂だらけになりますし、シートだって汚れてしまうことが多々あります。ハッキリ言ってもし高級車をお持ちの方であれば、絶対に汚されたくはないはずです。

また、スコアブックや撮影などを担当されるケースもあると思いますが、スコアブックなんて勉強会をして選手たち自身で書けばいいと思いますし、試合中はベンチでそれほど忙しくしていない大人のコーチだっているはずです。そのためスコアブックにしても撮影にしても、保護者に当番制を求める必要はないんです。

そもそもプロ野球以外の野球では、大人のコーチがベースコーチャーとして立つことはまずありません。ですので監督以外の大人のコーチがいるのであれば、コーチたちは試合中は必ず手持ち無沙汰になるはずなんです。

ちなみにスコアブックは書き方さえ覚えられれば書くのはとても簡単です。同じスコアであっても、楽譜(スコア)を読む難しさとは雲泥の差です。楽譜の場合は楽典を読んだところで普通は読めるようにはなりませんが、野球のスコアブックに関しては、書き方の本を読めば誰でも100%読み書きできるようになります。

ワンオペ監督の場合はできる限り周りがサポートしてあげて!

ただし、監督に関してのみは試合中は試合に集中させてあげるべきです。まず監督は敵味方にルール違反がないかや、投手に疲れが出てきて重心が浮いていないかどうか(継投のタイミング)、次の1球の戦術とその先々の戦術の想定などなど、試合中は頭を使わなければならないことが盛り沢山です。

ですのでもし大人のコーチが一人もおらず、大人の指導者が監督のみのワンオペの場合は、ぜひ保護者の方に色々とサポートして欲しいなと思います。でも大人のコーチが一人でもいる場合は、スコアブックや撮影なんて当番制じゃなくコーチがやればいいと思いますし、そもそも撮影なんて三脚にスマホを乗せておけば十分だと思います。もし一眼レフカメラなどをお持ちの保護者がいれば協力をお願いすればいいだけです。

ちなみにスコアブックに関しても、グラウンド全体が映るようにスマホで1試合丸ごと撮影しておけば、あとで監督などがビデオを見ながらスコアリングすることもできます。もしくは最近は、スコアの書き方が分からなくてもスコアを記録できる便利なスマホアプリもありますので、そのようなデジタルツールを利用するのもいいのではないでしょうか。

野球の本場アメリカの少年野球は日本とはこんなに違う!

さて、ここで野球の本場アメリカの少年野球事情についても少しお話をしておきましょう。アメリカの場合は当番制は基本的にはないのですが、しかしまるっきりないというわけでもありません。

例えばアメリカの場合、土地がバカでかいですよね?そのため基本的には車社会なんです。そして日本よりもはるかに簡単に車の免許を取れるし、簡単に車を購入することができます。そのため子どもをリトルリーグ(アメリカの少年野球はリトルリーグ一択)に入れられるご家庭であれば、かなり高い確率で車をお持ちです。

それでも中には運転が怖くて乗れない方や、ニューヨークのように地下鉄が発達している都市部にお住まいの方は車を持っていないケースも多々あります。そのような場合は、隣町まで簡単に行くことができないアメリカの場合、やはり車を持っている方が近隣のチームメイトの子たちを同乗させるケースがほとんどです。

そして車乗せてもらった側の保護者は、代わりに自分の子どもと合わせてその方の子どもがプレーする写真や動画をたくさん撮ってあげたり、乗せてくれたご家庭のランチを用意するなどし、持ちつ持たれつという関係で上手く回しています。

アメリカのリトルリーグで確実に言えることは、「保護者はこれをしなければならない」という当番制は存在しないということです。当番制のようなことをできる人はもちろん輪番制でやってくれますし、できない人はできないなりに他の部分で貢献します。例えば他チームとの連絡係やグラウンドの予約、派遣コーチとのやりとりは、車がなくても週末が仕事でもできます。

アメリカにだってもちろん週末は仕事でどうしてもリトルリーグに貢献できない、という保護者も大勢いらっしゃいます。そのような場合でも無理に何かを強制されることは決してなく、「週末来られないなら、できる範囲のことで子どもたちをサポートしてあげて下さい」というふうに言われることがほとんどです。

ちなみにアメリカのリトルリーグの場合、チームに必ず1人は僕のようなプロコーチがリトルリーグから派遣されます。そのため日本のように、時代は令和なのに未だに昭和の指導をするようなコーチは1人もいません。

アメリカでは試合の戦略や戦術を立てるのは監督の務め、技術を教えるのはプロコーチの役割、そして子どもたちがケンカせずに仲良くプレーできるように環境を整えてあげるのが保護者の役割、というふうに明確に分業されています。

また、日本では学童野球であっても子どもたちに罵声を浴びせる無能は指導者が山ほどいますが、アメリカのリトルリーグの場合、他の保護者などからリトルリーグに通報が入ると、速攻でリトルリーグの関係者が視察に訪れ、子どもたちに罵声を浴びせた指導者は即刻グラウンドから退場させられ、指導者としてグラウンドに立つことは当分の間はできなくなります。

日本と違ってリトルリーグ連盟が迅速に動いてくれるアメリカ

日本の場合、野球連盟がよく分からないくらいたくさんありますよね?でもアメリカの少年野球はリトルリーグ連盟一択のため、何か問題が起きた場合、リトルリーグの事務局に連絡をすればスピーディーに対応してもらえます。日本のように「調査します」「検討します」という言葉でお茶を濁されることもありません。

保護者から通報が入ると、リトルリーグ連盟はすぐに派遣したプロコーチに現状確認を行い、その後すぐに事務局からもスタッフがすぐに視察に訪れます。日本よりもはるかに土地が広いアメリカなのに、日本の野球連盟よりもはるかにフットワークが軽いんです。

野球においてもアメリカがすべて正しいとは思いませんが、でも少なくとも少年野球など子どもたちの指導現場においては、アメリカのやり方の方がよほど合理的で、選手、保護者、指導者らほとんどの参加者が納得できる形で運営されていることは事実だと言えます。そして日本のように「ボランティアで教えてやってるんだ」という上から目線の指導者もほとんどいません。もちろん0ではないのですけどね。

日本は少子高齢化が極端に進みつつあり、野球人口もかなり減ってきています。その上野球の道具は本当に高い!これ以上野球人口を減らさないためにも、日本も無数にある連盟が一致団結して、包括的に少年野球やクラブチームの運営方法や保護者にかける負担迅速に改めていくべきです。

保護者への負担が大きい場合、野球にそれほど熱心ではない保護者(例えば野球嫌いのサッカーファンなど)は、いくら子どもが野球をやりたいと言っても、子どもを野球チームに入れることを嫌がるはずです。もちろん入ってしまえばそんな親でも熱心に子どもを応援する野球ファンになってくれるとは思うのですが、重要なのはスタートしてくれるかどうかです。

もっと野球への敷居を低くし、1人でも多くの子と保護者の方々が野球の門を叩けるように、いい加減各連盟が協力し知恵を出し合い、迅速に改革を進めて欲しいというのが、プロコーチとして子どもたちの指導を担当する僕の正直な意見です。