満場一致でア・リーグMVPに選出された大谷翔平投手
2021年、アメリカンリーグのMVPは満場一致で大谷翔平投手が選出されました。本当にこれは快挙と呼ぶに相応しい偉業だと思います。二刀流でこれだけ活躍するなんてことは、まさに前人未到のことだったと思います。
しかし大谷翔平投手の進化はまだまだこれからだと、僕はプロコーチとして考えています。もちろん今のままでも十分に凄いわけですが、しかしもっとレベルアップできる余地を投球動作からは見ることができます。
2021年、アメリカンリーグのMVPは満場一致で大谷翔平投手が選出されました。本当にこれは快挙と呼ぶに相応しい偉業だと思います。二刀流でこれだけ活躍するなんてことは、まさに前人未到のことだったと思います。
しかし大谷翔平投手の進化はまだまだこれからだと、僕はプロコーチとして考えています。もちろん今のままでも十分に凄いわけですが、しかしもっとレベルアップできる余地を投球動作からは見ることができます。
プロ野球でもアマチュア野球でも、未だに体重が長打力に直結しているとしか考えていない方が多いようです。例えばプロ野球で言えば山川穂高選手や渡部健人選手、清宮幸太郎選手らは「体重が減ると長打力が低下する」と考えている選手たちです。
しかし日本ハムの新監督になられた新庄剛志監督は、清宮選手に対し即ダイエット指令を出しました。ダイエット指令に対し最初清宮選手は「長打力が低下する」という理由で渋っていたようですが、新庄監督の「今だってそんなに飛んでない」という言葉に言い返す言葉がなく、結局ダイエットをすることになったようです。
体重=長打力と考えられるようになったのは、細身だった落合博満選手が、あんこ体型に変えてからホームランを量産するようになった頃からだと思われます。落合選手自身、あんこ体型がホームラン増に繋がったと明言しているので尚更でしょう。
体重=長打力、これが100%間違っているというわけではありません。体重移動をするウェイトシフト打法で打つ場合は、ボールにぶつけられるエネルギーが大きくなるため、体重が重い方が飛距離がアップすることもあります。
ですがツーシームなどの速い変化球が全盛の現代野球では、体重移動をする打ち方は通用しません。野球のレベルが上がれば上がるほど通用しなくなります。
その理由はウェイトシフト打法だと頭が大きく移動してしまうからです。そしてツーシームやスプリッターなどの速い変化球は、頭を移動している真っ最中に変化してくるため、それらの変化球を正確に捉えることが非常に難しくなってしまうんです。
現代野球では中学生レベルでもツーシームやカッターを投げてきますので、やはり中学生に上がるまでにステイバック打法を身につけておくことが重要だと言えます。
体重移動に頼らないステイバック打法をマスターしている選手は、しっかりと引き締まった体を維持しつつ長打力も兼ね揃えています。松井秀喜選手、大谷翔平選手、柳田悠岐選手、坂本勇人選手、浅村栄斗選手などなどは、プロ入り後にステイバックをマスターした選手たちで、見た目は細身でスマートで、打率とホームラン両方で良い数字を残すことができています。
僕自身プロ野球選手のサポートや、子どもたちの個別レッスンをする際は、ウェイトシフトにこだわりがある場合以外は、ステイバック打法の指導のみを行っています。なぜなら、その方が圧倒的に成績が向上するからです。
ちなみにウェイトシフトにこだわりがある場合は、コーチングやレッスンをお断りするケースが多くなります。なぜならウェイトシフトであれば、僕じゃなくても指導できるコーチはいくらでもいるからです。
僕がレッスンをしている小中学生の中には、シーズン打率が.400以上の子が大勢います。みんな僕のレッスンを受けて、ウェイトシフトからステイバックに変えた子たちです。そして小柄でも細身でも、長打力アップに成功しています。
軟式野球の場合はボールに回転をかけられないため、非力な選手が長打力をアップさせることは難しい場合もあるのですが、硬式野球の場合は細身でも小柄でも女子でも飛距離をアップさせることができます。技術を身につけられれば、体重など関係なく長打力をアップさせることができるんです。
中学野球で多いのですが、体重を増やすために子どもたちに練習の合間に、ドカベンを食べさせる指導者がいます。これは栄養学的にも、生理学的にも、野球技術的にも完全に間違った指導法です。特に夏場にこれをやってしまうと熱中症のリスクを大幅に高めてしまいます。
野球界にも、そろそろ科学的根拠のある野球教則本が増えると良いのですが、そのような本は野球を科学的に勉強されたトレーナーさんたちが数冊出している程度で、元プロ野球選手らの本の中では、ほとんど皆無と言えます。
体重移動をすると頭の位置は必ず移動するのですが、それなのに体重移動を指導しながら「頭を移動させずにバットを振ろう」というチグハグなことが書かれている元プロ野球選手監修の野球教則本もあります。
スポーツはもはや科学の時代です。日本球界でもトラックマンなどでデータを取るようにはなりましたが、ピッチングモーションやバッティングモーションの指導に関しては、まだまだほとんどの指導現場で非科学的な指導が行われています。
親交のある元プロ野球の打撃コーチ何人かに話を伺っても、プロ野球12球団でも非科学的な指導やメニューが組まれていることがほとんどとのことでした。
野球指導者たちはそろそろ科学的に野球技術を学び、体型に関わらず選手たちを上達させられる指導スキルを身につける必要があります。
しかしそのような野球指導者が現場にはほとんどいないため、僕らのように科学的に野球動作を学んだプロフェッショナルコーチの野球塾が今なお必要とされているわけなのです。
今回の投手育成コラムでは、コーチングへの組み方について少しお話してみたいと思います。小中学生チームのボランティアコーチの場合、理論的にコーチングできる方というのはほとんどいらっしゃいません。強豪硬式チームであっても、経験則だけで指導してしまっている監督・コーチが大半ではないでしょうか?
コーチングに於いて経験則というのは、実はあまり役に立ちません。経験値は必要なのですが、経験則というのは役に立たないことがほとんどです。と言いますのは、A君で上手く行った指導法で、B君も同じように上手く行くことはまずないからです。なぜならA君とB君は性格も体格も選手のタイプも違うからです。
これが仮に一卵性の双子であったとしても同様です。双子であっても性格や嗜好というものは違ってくることがほとんです。コーチの役割というのは知っていることをただ伝えるだけではありません。目の前の1人の選手にとって、今一番必要なことを見極めた上で伝えていき、選手を上達へと導いていくことが役割です。
知っていることを判で押したようにただ繰り返すのはコーチングではなく、ティーチングです。コーチングはあくまでも、目の前にいる1人に対し個別の指導を当てていく作業です。つまりA君が目の前にいたなら、A君の現状をしっかりと把握した上で、今もっとも足りていないことを見極め、それを補っていくサポートをします。そして同時にA君の長所も見極め、それを伸ばしていくこともコーチの役割です。
例えば近年、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手(現オークランドアスレティクス)が不振に苦しんでいます。果たしてタイガースの投手コーチは藤浪投手に対し適切なコーチングを行えていたのでしょうか。経験則だけでコーチングをしてしまってはいなかったでしょうか。
もし僕が藤浪投手のパーソナルコーチングを担当するのなら、真っ先に考えるのはスケール効果についてです。藤浪投手のパフォーマンスを不安定にさせている最大の要因はスケール効果にあると僕は考えていますので、まずはスケール効果の影響を最小限に抑えられるフォーム作り、厳密に言えば運動軸を体の外側に出し、慣性モーメントを小さくするためのコーチングから始めていくと思います。
その上で彼の長い四肢を活かして、左股関節の使い方を改善することにより、リリースポイントをもっと打者に近付けエクステンションを伸ばし、少し力を抜いても簡単にバッターを差し込むことのできるストレートを作り上げていこうとすると思います。あくまでも僕ならば。
このように、コーチングというのは目の前の選手のウィークポイントとストロングポイントをしっかりと見極めて、ウィークポイントを補いながら、同時にストロングポイントを伸ばしていく必要があります。しかしこの作業は経験則だけでは行えません。ピッチングモーションのバイオメカニクスをしっかりと学び、モーションのすべての細かい動作を理論的に説明できる知識が必要です。
もちろん週末のボランティアコーチの皆さんにそこまで求めるのは酷だと思います。ですが本当に子どもたちを上達させたいのであれば、10分でも20分でも1対1のコーチングを行なっていくべきです。例えばチームに20人の子供達がいたとして、1人10分ずつみっちりマンツーマンでやったとしても4時間かかりませ。コーチが2人なら2時間、コーチが4人なら1時間で済みます。
そしてコーチは、とにかくメモを取ることが重要です。選手にとってコーチは少人数ですが、コーチにとって選手は少人数ではありません。ですので誰に何を伝えたかを覚えておくのはなかなか難しいものです。だからこそ、いつ誰に何をどのように伝えたのか、ということをしっかりメモをしておく必要があります。
今まで行ったコーチングを忘れている状態でまたコーチングを始めても、効率の良い指導は絶対にできません。そして子どもたちも「また同じこと言っているなぁ」と飽き始めてしまいます。飽きられないためにも「先週こういうことを教わったの覚えてる?まだできていないからもうちょっと時間を割いていこうか」と、コーチは言ったことをすべて覚えている、ということを選手に理解させる必要があります。そうすれば飽きられることなく、逆に「また同じ注意されないようにしなきゃ!」と緊張感を持ってくれるようになります。
結局のところコーチングというのは、どれだけ「コーチは僕のことをしっかり見てくれている!」と思ってもらえるかどうかなのです。「どうせ僕のことなんて大して見てない」と思われてしまっては、どんなに良い指導をしても効果は得られません。果たしてタイガース時代の藤浪投手の周辺はどうだったのでしょうか。僕には何とも言えないところではありますが、コーチやグラウンドに顔を出すOBは行きずりの指導をしてしまってはいないでしょうか。もし場当たり的なコーチングをしていなかったのであれば、藤浪投手がここまで長く不振に苦しむことはなかったはずです。
今回の投手育成コラムでは、ピッチャーの軸に関しお話しして見たいと思います。軸が安定しなければパフォーマンスが安定することもないわけですが、この軸を安定させるのがなかなか大変で、まずは足で土台をしっかりと安定させる必要があります。つまり踏ん張りの弱い選手は、軸を安定させることができないというわけです。
下半身主導でボールを投げるためには、とにかく股関節を使える投球・送球動作を身に付ける必要があります。それは下半身で作り出したエネルギーはすべて、股関節を介して上半身に伝えられるためです。つまり股関節が使えていなければ、いくら下半身の筋肉を鍛えたとしても、下半身で作り出したエネルギーはすべて股関節で止まってしまい、結局手投げをするしかなくなってしまうんです。
少年野球でトップポジションの形を指導する際、手を上に挙げて手のひらを外側に向ける形を指導している方は今だに多いと思います。しかしこの形でトップポジションを作らせてしまうとパフォーマンスが低下するばかりか、肩肘を痛めてしまうリスクを大幅に高めてしまうことにもなります。
今回の投手育成コラムではワインドアップ、ノーワインドアップ、セットポジション、クイックモーション、プラントレッグの違いについてかんたんに解説をしてみたいと思います。
質の良いボールを制球力良く投げるためには、とにかくまず最初にしっかりと踏ん張ることが重要です。踏ん張れなければ股関節を使ってボールを投げることはできず、股関節を使えなければ手投げをするしかなくなってしまいます。ここでも何度か書いたかと思いますが、股関節を使えていない投げ方=手投げ、ということになります。