体重=長打力は正解でもあり、同時に間違いでもある

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体重=長打力は間違いでもあり正解でもある

プロ野球でもアマチュア野球でも、未だに体重が長打力に直結しているとしか考えていない方が多いようです。例えばプロ野球で言えば山川穂高選手や渡部健人選手、清宮幸太郎選手らは「体重が減ると長打力が低下する」と考えている選手たちです。

しかし日本ハムの新監督になられた新庄剛志監督は、清宮選手に対し即ダイエット指令を出しました。ダイエット指令に対し最初清宮選手は「長打力が低下する」という理由で渋っていたようですが、新庄監督の「今だってそんなに飛んでない」という言葉に言い返す言葉がなく、結局ダイエットをすることになったようです。

体重=長打力と考えられるようになったのは、細身だった落合博満選手が、あんこ体型に変えてからホームランを量産するようになった頃からだと思われます。落合選手自身、あんこ体型がホームラン増に繋がったと明言しているので尚更でしょう。

体重=長打力、これが100%間違っているというわけではありません。体重移動をするウェイトシフト打法で打つ場合は、ボールにぶつけられるエネルギーが大きくなるため、体重が重い方が飛距離がアップすることもあります。

ですがツーシームなどの速い変化球が全盛の現代野球では、体重移動をする打ち方は通用しません。野球のレベルが上がれば上がるほど通用しなくなります。

その理由はウェイトシフト打法だと頭が大きく移動してしまうからです。そしてツーシームやスプリッターなどの速い変化球は、頭を移動している真っ最中に変化してくるため、それらの変化球を正確に捉えることが非常に難しくなってしまうんです。

現代野球では中学生レベルでもツーシームやカッターを投げてきますので、やはり中学生に上がるまでにステイバック打法を身につけておくことが重要だと言えます。

打率と長打力を兼ね揃えた選手はスマートな体型の選手ばかり

体重移動に頼らないステイバック打法をマスターしている選手は、しっかりと引き締まった体を維持しつつ長打力も兼ね揃えています。松井秀喜選手、大谷翔平選手、柳田悠岐選手、坂本勇人選手、浅村栄斗選手などなどは、プロ入り後にステイバックをマスターした選手たちで、見た目は細身でスマートで、打率とホームラン両方で良い数字を残すことができています。

僕自身プロ野球選手のサポートや、子どもたちの個別レッスンをする際は、ウェイトシフトにこだわりがある場合以外は、ステイバック打法の指導のみを行っています。なぜなら、その方が圧倒的に成績が向上するからです。

ちなみにウェイトシフトにこだわりがある場合は、コーチングやレッスンをお断りするケースが多くなります。なぜならウェイトシフトであれば、僕じゃなくても指導できるコーチはいくらでもいるからです。

僕がレッスンをしている小中学生の中には、シーズン打率が.400以上の子が大勢います。みんな僕のレッスンを受けて、ウェイトシフトからステイバックに変えた子たちです。そして小柄でも細身でも、長打力アップに成功しています。

軟式野球の場合はボールに回転をかけられないため、非力な選手が長打力をアップさせることは難しい場合もあるのですが、硬式野球の場合は細身でも小柄でも女子でも飛距離をアップさせることができます。技術を身につけられれば、体重など関係なく長打力をアップさせることができるんです。

中学野球で多いのですが、体重を増やすために子どもたちに練習の合間に、ドカベンを食べさせる指導者がいます。これは栄養学的にも、生理学的にも、野球技術的にも完全に間違った指導法です。特に夏場にこれをやってしまうと熱中症のリスクを大幅に高めてしまいます。

まだまだ科学的根拠のある野球教則本が少ない現状

野球界にも、そろそろ科学的根拠のある野球教則本が増えると良いのですが、そのような本は野球を科学的に勉強されたトレーナーさんたちが数冊出している程度で、元プロ野球選手らの本の中では、ほとんど皆無と言えます。

体重移動をすると頭の位置は必ず移動するのですが、それなのに体重移動を指導しながら「頭を移動させずにバットを振ろう」というチグハグなことが書かれている元プロ野球選手監修の野球教則本もあります。

スポーツはもはや科学の時代です。日本球界でもトラックマンなどでデータを取るようにはなりましたが、ピッチングモーションやバッティングモーションの指導に関しては、まだまだほとんどの指導現場で非科学的な指導が行われています。

親交のある元プロ野球の打撃コーチ何人かに話を伺っても、プロ野球12球団でも非科学的な指導やメニューが組まれていることがほとんどとのことでした。

野球指導者たちはそろそろ科学的に野球技術を学び、体型に関わらず選手たちを上達させられる指導スキルを身につける必要があります。

しかしそのような野球指導者が現場にはほとんどいないため、僕らのように科学的に野球動作を学んだプロフェッショナルコーチの野球塾が今なお必要とされているわけなのです。

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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