質の良いボールを制球力良く投げるためには、とにかくまず最初にしっかりと踏ん張ることが重要です。踏ん張れなければ股関節を使ってボールを投げることはできず、股関節を使えなければ手投げをするしかなくなってしまいます。ここでも何度か書いたかと思いますが、股関節を使えていない投げ方=手投げ、ということになります。
その踏ん張りなのですが、体のどの部分を使って踏ん張るかと言えば実は股関節なのです。例えば踏ん張りを強くするためにタオルギャザーなどの足裏トレーニングをされている方も多いと思いますが、タオルギャザーで鍛えられる部位そのもので踏ん張ることはできません。あくまでも股関節で踏ん張り、それを補助するためにタオルギャザーで鍛えると考えた方が踏ん張りを強くすることができます。
股関節をどれくらい使いたいかと言うと、非軸足のつま先と骨盤が90°の関係になるくらい深く内旋させたいんです。これを可能にするためにはまずランディング後の非軸足が浮いたり回ったりしないよう、股関節に乗ってしっかりと踏ん張る必要があります。股関節に乗るというのはいわゆる体重移動のことです。体重移動とは上半身の重さを、軸脚側股関節から非軸脚側股関節に移動していく作業です。脚→脚ではなく、股関節→股関節ですので間違わないでください。
この体重移動を良い形で終えられると踏ん張りを強めやすくなります。そして体重移動を終わらせるためには、ランディング後の非軸脚が、体重移動を終わらせられる形状になっている必要があります。この時非軸脚が傾いていたり突っ込んでたりすれば体重移動を終わらせることができず、移動させてきた上半身の重さも逃げてしまい、結果的に踏ん張りも弱くなってしまいます。
ピッチングモーションとは、複数の細かい動作が集合して1つのピッチングモーションを作り上げています。そして細かい動作の1つ1つすべてがどこかに影響を与えており、極端な話をすると、キーとなる歯車(1つの細かい動作)が1つ狂ってしまうと、ピッチングモーション全体が狂ってしまうことも少なくありません。
歯車が狂ってしまった時、その狂いを最小限に抑えるためにもしっかりと踏ん張ることにより、土台を安定させておく必要があるわけです。土台さえ安定していれば、多少調子を落としたとしてもその原因を比較的早く改善させることもできます。ですが土台が安定していなければ、1つ狂っただけですべてが狂ってしまいます。
質の良いボールを投げるためにも、好不調の波を小さくさせるためにも、踏ん張ることによって土台を安定させることは非常に重要なことです。そして踏ん張りとは股関節で行う動作ですので、股関節が硬かったり弱かったりすれば、踏ん張りを強くさせることはできません。つまり股関節が硬い選手は自ずと手投げになってしまうということです。
ピッチングマスターコースではストレッチング方法もアドバイスしているのですが、年代問わず硬い選手は非常に多いです。そして股関節が硬い選手で「良い投げ方をしているなぁ」という選手はいません。
少年野球チームでもストレッチングをほとんどしないチームが多いそうです。練習後、試合後には最低限1時間くらいはチームでストレッチングをしたいものです。チームでストレッチングを教われないということもあり、ピッチングマスターコースでストレッチングのやり方を学んでいる選手も多いほどです。
踏ん張りを強くし、パフォーマンスをアップさせるためにも、股関節の柔軟性と強さは技術トレーニングよりも大切にしていただければと思います。
- 踏ん張るという動作は足ではなく股関節で行う?!
- 踏ん張れなければ質の良いボールは投げられない!
- 踏ん張っていないと好不調の波が大きくなる?!
コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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