今回の投手育成コラムではワインドアップ、ノーワインドアップ、セットポジション、クイックモーション、プラントレッグの違いについてかんたんに解説をしてみたいと思います。
まずワインドアップというのは両腕を頭の上に振りかぶってモーションをスタートさせる投げ方です。ノーワインドアップは振りかぶらないこと以外は、ワインドアップとほとんど同じです。
セットポジションはあらかじめ両足をプレートと平行にセットした状態から投げ始めます。クイックモーションはセットポジションとほとんど同じですが、盗塁を防ぐために非軸脚をほとんど上げずに素早く投げます。
最後にプラントレッグというのはあらかじめ足を大きく開いた状態でセットし、非軸脚はもちろん振り上げず、ステップもほとんどせずに投げます。
ピッチングモーションのポイントは、どれだけ股関節を上手に使えるかどうかにあります。股関節を使えない投げ方=手投げと言い、専門的には手投げのことを「骨盤回旋不良」と言います。ワインドアップがもっとも股関節を深く使うことができ、クイックモーションやプラントレッグでは股関節の使い方が非常に難しくなります。
時々制球力を良くするためにワインドアップではなく、セットポジションで投げるように指導するコーチがいますが、これは間違いです。制球力は股関節の動作を改善することによりスローイングアームの動き方をコンパクトにし、良くしていきます。つまりワインドアップで制球力が悪い投手は、セットポジションに変えても根本的に制球力が改善することはありません。
それどころから股関節の使い方が浅くなってしまう分手投げになりやすく、小手先でコントロールする悪い癖がつき、それによって投球時に肘がロックされやすくなり、肘を痛めてしまいます。
特に小学生のように投球動作のスキルがまだ高くない場合、投手もキャッチボール中の野手もワインドアップで投げるべきです。股関節を上手に使うことができると肩肘を使って投げる必要がなくなり、野球肩・野球肘のリスクを軽減させることができます。
ちなみにワインドアップとノーワインドアップに関しては、どちらでも良いと思います。この2つに関しては自分自身がリズムを取りやすいフォームを選択すれば問題ありません。最初の構えの時に両靴がまっすぐキャッチャーの方を向いていて、振りかぶると同時に非軸足を一足分バックステップし、そこから軸脚側の股関節を90°開いて軸足をプレートにセットする形ができていれば、どちらを選んでも大差はありません。
ワインドアップでは股関節を深く使える分体全体を使えるようになり、プラントレッグに近付くほど股関節を深く使うことが難しくなります。股関節を使えない分、通常ワインドアップと比べると、セットポジションでは5km/h前後球速が低下してしまいます。ただしプロ選手でも一握りしかいない、股関節の使い方が非常に上手な投手であればワインドアップとセットポジションでの球速差はほとんど出ません。例えばダルビッシュ有投手などは、ほとんど球速差が見られない投手だと思います。
小学生選手の将来を考えるならば、やはり通常はしっかりと振りかぶり、股関節を深く使いやすいモーションで投げるべきだと思います。ただ、中にはセットポジションでないとリズムを作れない投手も稀にいます。そういう場合に関してのみは、セットポジションで股関節を深く使うための技術を、ちょっと難しいですが身につけていけば良いと思います。
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コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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