満場一致でア・リーグMVPに選出された大谷翔平投手
2021年、アメリカンリーグのMVPは満場一致で大谷翔平投手が選出されました。本当にこれは快挙と呼ぶに相応しい偉業だと思います。二刀流でこれだけ活躍するなんてことは、まさに前人未到のことだったと思います。
しかし大谷翔平投手の進化はまだまだこれからだと、僕はプロコーチとして考えています。もちろん今のままでも十分に凄いわけですが、しかしもっとレベルアップできる余地を投球動作からは見ることができます。
とは言うものの、僕は大谷投手が再度肩肘を怪我してしまうのではないかと少し心配しています。
その主な理由は2つあり、まず今季はクロスイン(クロスステップ+インステップ)というステップの形で投げていました。これはプロコーチとしてはあまりお勧めできない形です。
そしてクロスインで投げていることにより、左股関節の内旋幅が小さくなっているように見えます。そのせいでボールリリースで胸の向きが一塁ベンチ側に向き切らず、肩関節の水平内転を大きくすることによって手部をリリースポイントまで持って行ってます。
このフォームは一般的な投手でも肩への負荷が大きくなり、大谷翔平投手のように160km/h以上のボールを投げる投手だと、なおさら肩肘への負荷は大きくなってしまうと思います。
大谷投手は手術後はリハビリによってかなり体を鍛えたのだと思います。その影響でストレングス(強度)は高くなり、投球による負荷を跳ね返すことが現状ではできています。
しかし勤続疲労が出てきた時、フォームが僅かに崩れて調子を落とした時、この負荷は好調時よりも大きくなってしまいます。今季は全体的に体の状態は良かったと思うのですが、状態が良いこの時期に1〜2年かけてゆっくりと、将来に向けてフォームをマイナーチェンジさせておくと良いかもしれません。
実は子どもたちにはオススメできない現在の大谷投手の投げ方
クロスステップにすると、内転筋が鍛え上げられていて、その内転筋を使いこなせると、投球時のボディスピンを鋭くさせることができます。その結果キレや球威という面をアップさせられます。しかし同時に内転筋への負荷が非常に大きくなってしまう諸刃のモーションとなります。
そしてインステップに関しては、根本的に非軸足側股関節の内旋幅を狭くしてしまいます。現在の大谷投手の投球時の下半身の動かし方は、ファイターズ時代とはかなり変わってきていて、股関節の内旋というよりは、体幹主導によるボディスピンでボールを投げるというモーションになっています。
大谷投手はバッティングに関しても、上半身でも下半身でもなく、体幹主導でバットを振っているのですが、ピッチングでもその体の使い方に変えたようです。
もしかしたらメジャーの硬いマウンドに合わせ、下半身への負荷を減らしたいという意図があるのかもしれませんが、全体的に見ると上半身への負荷は以前よりも大きくなっていると僕は見ています。
心配なのは、日本の子どもたちがこのフォームを見て、そのまま真似てしまうことです。大谷投手の現在のフォームは体幹を鍛え抜いたからこそのフォームであり、体がまだ出来上がっていないレベルの選手にはお勧めできないフォームとなっています。
以前の大谷投手のフォームは、ハムストリングスをしっかりと使える、下半身主導の子どもたちが真似しても安心な投げ方でした。それが現在ではハムストリングスよりも、体幹主導のメジャーリーガー流のフォームに変わっています(良し悪しの問題ではありません)。そのため投球後に左靴が二塁側にクイっと引かれるプルバックモーションの発生もあまり見られなくなったように感じます。
大谷翔平投手が今後痛めてしまいそうな体の部位
MVPの選出に水を差したいわけではないのですが、お祝いに関しては他の方に任せるとして、僕はプロコーチとして大谷投手の現状のフォームを冷静に見ていきたいと思います。
まず大谷投手が現状のピッチングモーションで将来的に痛めやすそうな部位は、右肘の内側、肩関節の真ん中から後方、内転筋といったところが挙げられます。
もちろんすぐに痛めるというわけではなく、投球フォームを見た上で大きな負荷がかかっていると言える部位が、上述したポイントとなります。
ただし意図せずにそのようなフォームに変えたわけではないと思いますし、勉強熱心な大谷投手であれば、メリットとリスクの両方を承知の上で現在の投げ方に変えているはずです。そのため大谷投手自身に対し、僕がとやかく言う必要はないわけですが、しかし大谷投手のフォームを真似したいと思う子どもたちや、その親御さんたちのためにこのコラムを書き残しておきたいと思います。
遠心力ではなく、求心力で投げて打てている大谷翔平投手
大谷翔平投手の現在のフォームは投打共に求心力を使っているフォームとなっています。これは体幹がしっかりと鍛えられていて、その体幹を上手く使いこなせているレベルの選手、そしてそれに合わせ骨盤の使い方も上手い、といういくつかの条件が揃って初めてできるようになるフォームです。
野球動作の基礎が身についておらず、体の柔軟性も乏しい選手が大谷投手のフォームを真似しても、見た目は真似できてもメカニクスまで真似ることはできません。その結果求心力ではなく、遠心力で投げたり打ったりするようになり、パフォーマンスが向上しないばかりか怪我をしやすいフォームにもなりがちです。
難しい話をすると、大谷投手の運動時は体の外に飛び出しています。特にバッティングではそれが顕著で、柔軟性、強度、安定感、レベルの高い技術の習得などの条件が揃ってくると、これができるようになってきます。
ピッチングの場合は運動軸とボールリリースの間の幅が狭くなると制球力は安定し、ボールのスピンが増え、肩肘への負荷を抑えられるようになります。大谷投手の場合はそのようなフォームになっているわけですが、これは非常に難易度が高いモーションとなり、日本のプロ野球でもこれができている投手、打者は数えるほどしかいません。
大谷翔平投手にはサイ・ヤング賞とシルバースラッガー賞を同時に獲って欲しい!
大谷翔平投手は現在27歳で、これからまさに全盛期に入っていくわけですが、全盛期に入ってパフォーマンスがさらに強化された時、今後気になるのはその時の体への負荷をどれだけ軽減させられるか、という点です。
大谷投手の球速はまだ少し速くなるでしょう。しかし球速が上がるということは、それだけ体への負荷も大きくなるということです。27〜32歳くらいにかけての全盛期を怪我なくプレーし続けるためにも、成績的に余裕がある今のうちにそのあたりのマイナーチェンジをしておくと良いかもしれません。
しかしそんなことは僕が言うまでもなく、大谷投手自身が一番考えていることだと思います。あのような勉強熱心な選手に対し、僕のようなコーチが横から言うことなどほとんどありません。
今回コラムにした内容は上述した通り子どもたちや親御さんのためというものでした。ただし仮に大谷投手から助言を求められれば、僕ならばプロコーチとして今回のコラムのようなことを伝えると思います。もちろんこのコラムでは深く突っ込んだところまでは書いていないわけですが、もし専門的に聞かれたならば、今回のコラムのような内容の話を3〜4時間かけて科学的、理論的にお話しすると思います。
ずいぶん長いコラムになってしまいましたが、とにかく大谷投手のMVPの獲得は一ファンとして本当に嬉しいものでした!二刀流はやめるべきだと言う野球解説者も多いわけですが、僕は大谷投手が求める限り、この先もずっと二刀流で行くべきだと思います。
二刀流という価値観は、二刀流を本格的に経験したレベルの方だけがあれこれ言って良いことであり、それを経験していない野球解説者が無責任に「打者一本に絞るべき」などと言うべきではありません。
僕は大谷投手には近い将来、最多勝とホームラン王を同時に獲得してもらいたいと願っています。そしてそれどころか、サイ・ヤング賞とシルバースラッガー賞を同時に獲得してもらいたいとさえ思っています!!
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