大谷翔平投手の投球動作分析〜常人では真似できなハイレベルな投球フォーム

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ページ更新日:2023年4月26日

股関節の使い方が上手いからこそ成り立つ大谷翔平投手の投球フォーム

今は日本プロ野球を代表する投手になった北海道日本ハムファイターズ(現エンゼルス)の大谷翔平投手。彼は二刀流という難しいことにもチャレンジしながら、なぜここまで素晴らしいパフォーマンスを発揮し続けられているのでしょうか?今回は大谷投手の投球動作を見ながら、その理由を紐解いていきたいと思います。

上の映像は2015年4月12日に、ホークス戦で先発をした際の大谷投手のものです。フォームは躍動感に溢れ、力強い素晴らしいボールを投げています。パッと見てすぐに見つけられる大谷投手の良いところとしてはまずは3つ、股関節の使い方、左脚を振り上げた際の安定した軸、コンパクトに振られる右腕があります。

股関節の使い方とコンパクトな右腕の振りは、実は完全につながっています。股関節というのは下半身と上半身をつなぐ唯一のポイントです。ここを上手に使えているからこそ、大谷投手は力みなく腕を鋭くしなやかに振ることができています。大谷投手は193cmという長身ですが、投球動作の大きな特徴として、この長身に頼らずに投げているという点が挙げられます。

ファイターズ時代の上の映像をご覧いただければ分かるように大谷投手は、長身投手特有の二階から投げ下ろすような投げ方ではなく、並進運動を上手に利用した真後ろから真ん前へボールを進めていく腕の振り方をしています。つまり腕が楕円軌道でコンパクトに振られているということであり、それを可能にしているのが深く上手に使えている両股関節なのです。

上半身の動きを安定させるためには、下半身でしっかりと踏ん張れている必要があります。この踏ん張りを可能にするのもやはり股関節です。大谷投手の場合は、まず三塁ベース側から投球動作を見てみると、並進運動時に右股関節がきれいな「く」の字(右股関節の外転)になっています。右脇腹のラインと右脚のラインで「く」の字を描く形になっていて、この「く」の字をきれいに描けるほど内転筋を効果的に利用することができ、上半身の突っ込みと開きを抑えられるようになります。さらには並進運動が突っ込んでいかなくなり、タメを使って球威を上げることもできます。

左股関節に関しては、左足部が接地したあとの回転運動が非常に鋭く良い動きになっています。投球動作における回転運動とは左股関節で行うもので(左投手は右股関節)、この回転運動は左足部接地時に並進運動が変身した姿です。つまり回転運動を鋭くするためには、並進運動を良い形にする必要がある、ということです。そしてその左股関節ですが、一塁ベース側から見ると投球後にはここも深く「く」の字(左股関節の屈曲:胸と左太腿が近付いていく動作)になっています。この形になることで左足部接地時の左股関節の衝突エネルギーを最大限に高めることができ、球速アップを実現しています。

とにかく軸が誰よりも安定している大谷翔平投手のフォーム

さて、ここで話を左脚を振り上げた際の軸に移したいと思います。大谷投手はこの軸が安定していると書きましたが、誤解してはいけない点として、一本足でバランス良くは立っていないという点に注目する必要があります。左脚を振り上げた際に、一本足でバランス良くオンバランス状態で立ってしまう投手をよく見かけますが、これでは投球動作が一時停止してしまうことにより、振りかぶったり、左脚を振り上げたことで作ったエネルギーがなかったことになってしまいます。ですので投球動作は絶対に一時停止させるべきではないんです。大谷投手のようにオフバランス状態で、左靴が地面から離れた瞬間が並進運動の開始タイミングになるべきなんです。

大谷投手の場合は左脚を振り上げるために、左足部が地面から離れた瞬間から並進運動が始まり、投球動作が一時停止することがありません。動作は進行し続けている上で、大谷投手は軸脚+上半身による軸が安定しているのです。軸が安定しているということは体のスピンが自然と鋭くなり、それに合わせ球速もアップしていきます。これは無駄な動作が少なくなることを意味し、無駄な動作が少ないということはパフォーマンスが安定しやすくなり、さらには無駄な動作により無駄な体力を消耗することもなくなります。

以前の投手育成コラムで「長身じゃない方が投手としては大成しやすい」という記事を書きました。大谷投手の投球動作はまさに、長身投手が失敗しやすい形を見事に省いた良い動作であると言い切ることができます。冒頭でも書きましたが、長身に頼らない良いメカニクスによる投げ方、ということですね。

長身に頼った投げ方というのは腕を高く上げて二階から投げ下ろすようなイメージで投げたり、長い腕を使って遠心力を強くして投げるフォームのことです。阪神タイガース(現アスレティックス)の藤浪晋太郎投手の場合は未だに遠心力を使って投げてしまっているため、制球力もパフォーマンスも常に不安定な状態が続いています。

藤浪晋太郎投手はイップスではなく技術不足で不足するその技術とは?

大谷翔平投手と藤浪晋太郎投手のフォームの決定的な違いは軸の使い方にあります。軸には体軸(背骨)と運動軸の2種類があるのですが、体をスピンさせてボールを投げていく際には、この2つの軸を分離させるのが理想的です。大谷投手の場合はボールリリースで運動軸が体の右外に飛び出しており、遠心力ではなく求心力を使って投げています。

一方の藤浪晋太郎投手の場合はボールリリース時にも体軸と運動軸はほとんど同じ場所にあり、遠心力に頼って投げるフォームになっています。そして遠心力に頼ってしまうために肩関節のインナーマッスルが引っ張られてしまい、藤浪投手は時々肩の不調や肩痛に悩まされています。

そしてこの軸の使い方は股関節の使い方に依存してくるのですが、その股関節の使い方が器用で上手いのが大谷投手で、理想的な形では使えていないのが藤浪投手ということになります。大谷投手は股関節を非常に上手く使えているので、左骨盤を上手く左側に避けて、元々左骨盤があった空間に右骨盤を入れて軸をスピンさせています。この非常にレベルの高い技術を身につけているからこそ、大谷翔平投手は軸を体の右外に出すことにより慣性モーメントを小さくし、コンパクトな動きで鋭く腕を振るフォームを実現させています。

エネルギーの右側への逃がし方が非常に上手い大谷翔平投手

大谷翔平投手のフォーム

さて、大谷翔平投手のフォームはファイターズ時代とエンゼルス時代ではかなり変わりました。ファイターズ時代は下半身主導のフォームでしたが、メジャー移籍後は体幹主導のフォームに変わりました。大谷投手は2018年にトミージョン手術を受けているのですが、恐らくはこのリハビリ中に徹底して体幹を鍛え上げ、肩肘への負荷を最小限に抑えるフォームを身につけていったのでしょう。

体幹主導のフォームというのは、日本人選手にはなかなか真似できないものです。メジャーリーガーのようにアーリーワークなどでアマチュア時代から徹底してコアを鍛えていなければ実現できるフォームではありません。現にNPBのプロ野球選手の中でも、体幹主導の投球フォームから投げている投手はほとんどいません。

そして大谷翔平投手のフォームの特徴として、求心力で投げながらもエネルギーを上手く右側に逃がしているという点があります。これはメジャーリーグ移籍後に見せ始めたフォームなのですが、求心力を使ってボールリリースまではエネルギーがまったく右側に逃げていないのですが、リリース後はそれを上手く右側に逃がし体への負荷を抑えているように見えます。

これは恐らくメジャーリーグの粘土質の硬いマウンドに合わせたフォームなのでしょう。ファイターズ時代は左靴は左ハムストリングスによるプルバックモーションによって二塁側にクッと引き戻されていました。しかしエンゼルスのマウンドではリリース後に左靴を反時計回り(左側)に回すことによってエネルギーを上手く右側に逃がしています。

この動作はいわゆるフォロースルーの一環になるわけですが、下手な選手がこれをやろうとすると、どうしてもボールリリースで左脚が右側に大きく傾き、体重が上手く左股関節に乗らず、その結果股関節が最大限内旋しなくなり、肩関節の水平内転によって投げるようになってしまいます。その結果バックスピンの軸が傾いてしまい、マグナス力が小さくなり、失速して初速と終速の差が大きい打ちやすいボールになってしまいます。

しかし大谷投手の場合は左脚を僅かに右側に傾けながらも、体重をしっかりと左股関節に乗せていっています。これも簡単なようで非常に難しい技術なのですが、強靭な体幹、特に脇腹の強い筋肉が求められる動作です。例えば同じように軸の使い方が上手いイーグルスの岸孝之投手ですが、彼の場合は軸と股関節の使い方は非常に上手いのですが、脇腹に弱点があるため大谷投手のこの動作を真似ることはできません。

ですが岸投手の場合はボールリリース前後で、捕手から見ると左脚がきれいに垂直に立っているように見えます。この左脚が垂直になっているからこそしっかりと体重を左股関節に乗せ切ることができ、細身の体でも最速150km/h以上のボールを投げることができています。投球動作において股関節というのは、しっかりと重さが乗せられて初めてちゃんと機能してくれるようになります。逆に左股関節に体重を上手く乗せられないと股関節が機能しなくなり、どうしても肩肘に頼って投げざるを得なくなります。

日本時代とメジャー時代でかなり変わった大谷翔平投手のフォーム

大谷翔平投手のフォームでファイターズ時代からエンゼルス時代で変わった点はいくつもあるのですが、左太腿の使い方も随分と変わりました。これもメジャーの硬いマウンドに合わせての変更だったと思うのですが、ファイターズ時代の大谷投手の左太腿は、ボールリリース後もしばらくの間ほぼ水平状態にありました。しかしエンゼルス時代のフォームだとこの左太腿がかなり立っているのが分かります。

粘土質の硬いマウンドの場合、下半身主導で飛行機の着陸のように左靴をランディングさせてしまうと、体への負荷が大きくなります。僕自身はもちろんメジャーのマウンドで投げた経験はないわけですが、アメリカのブルペンでは試しに少しだけ投げさせてもらったことがあります。やはりかなり硬かったのですが、下半身主導で左足でしっかりとブレーキングして球速を出そうとすると、選手ではない僕程度の球速でもかなり下半身への負荷が感じられました。

これは上原浩治投手のフォームにも共通している点ですが、大谷投手もメジャーのマウンドに合わせて、飛行機型のランディングから、ヘリコプター型のランディング(と言っても完全に真上から真下というわけではありません)に変更したようです。ただ、上原投手の場合は巨人時代からヘリコプター型のランディングだったため、フォームそのものが最初からメジャーにフィットしていたと言えます。

大谷投手も最近では左太腿は立てて、地面を滑るように後ろから前へのランディングではなく、やや上から下にランディングするようなフォームに変えています。そしてリリース後は左つま先に重心を持っていくことにより上手く左靴を回し、この動作によって投球後に体内に残ったエネルギーを右側に逃がしています。ハッキリ言って、非常に難しい技術を取り入れたフォームだと思います。この大谷投手のフォームは、見た目は真似できたとしても、メカニクスまで真似できる選手はまずいないのではないでしょうか。

完全に力みがないとは言い切れない大谷翔平投手の右腕

そしてもう一点大きく変わった点として、スローイングアームの使い方があります。ファイターズ時代の大谷投手のスローイングアームは、いわゆる腕がしなって見えるような形にし、加速に入るのをワンテンポ遅らせてラギングバックを使って投げるフォームでした。しかしTJ手術を受けた後のフォームでは腕がしなって見える形にはあまりしておらず、まさに体幹主導で鋭くボディースピンさせ、そこに腕を付いて行かせるという動きになっています。

しかししなって見える形にはしていないとは言え、腕の使い方が硬いということもありません。逆に非常にしなやかであるとも言えないわけですが、それでもボールリリース後のフォロースルーに関しては比較的柔らかく腕を使っており、スローイングアームに力みがないために左腰を上手く叩くことができています。

球速をアップさせるためにはこの左腰を正しい高さで叩いていく必要があるのですが、スローイングアームが力んでいると上手く叩けなかったり、叩けたとしてもその反動で腕を弾き戻せなくなります。大谷投手の場合は比較的フォロースルーでは腕の力みはない方なのですが、叩いた後の手部の跳ね返り方が非常に小さいんです。ここで腕の力みがまったくない投手の場合、左腰を叩いた後は手部が顔の高さまで跳ね返っていきます。

このフォロースルーの動作を見る限りでは、まず叩く高さに関してはTJ手術後の方が良い高さになっています。逆にファイターズ時代はやや肘が下がることもあり(肉眼ではハッキリ分からない程度)、左腰よりもやや下のベルトの高さを叩いていることが多いようでした。そういう意味ではボールリリース時の肘の高さはメジャー時代の方が良いと言えるのかもしれません。

大谷投手が採用しているショートアームの注意点

そしてもう一点注目しておきたいのはテイクバックです。ファイターズ時代の大谷投手は、テイクバックに入っていく動作の中で一度右肘をリラックスさせて伸ばし切る、投手特有のスローイングアームの使い方になっています。一方メジャー時代ではセットからテイクバックまでの間で肘を伸ばし切ることがないショートアームという動作になっています。

ショートアームは、腕がしなっているようには見えないスローイングアームの動かし方にフィットしたテイクバックへの入り方(セパレーション)です。大谷投手と藤浪投手が比較される際は、最近はよくこのショートアームという言葉が出てくるようですが、大谷投手はアクセラレーションフェイズ(トップポジションからボールリリースにかけての加速期)でのスローイングアームの使い方を、しなっているようには見えないタイプの動きに変えたため、それに合わせてショートアームをインストールしたのではないでしょうか。

ショートアームはメリットとして制球が安定したり、腕をコンパクトに振りやすくなるなどの利点がありますが、これはアクセラレーションフェイズでどのようなスローイングアームの使い方をしているかによって変わってきます。例えば逆に、腕がしなって見えるようなスローイングアームの使い方をしている投手がショートアームをインストールしてしまうと、しなっているように見えていた良い動作の利点を打ち消してしまうことがあります。

ですのでショートアームのメリットだけを見て、モーションの繋がりを無視してショートアームをインストールすることは危険だと言えます。ただし全体的に見えると腕がしなっているように見える、例えば岸孝之投手のような美しいスローイングアームの使い方をしている投手はプロアマでも非常に少ないと言えます。そう考えるとあくまでも全体的に見ると、ショートアームがフィットする投手の方が現実的には多いと言えるかもしれませんね。

大谷翔平投手のフォームに関するまとめ

最後にまとめておくと、大谷翔平投手のフォームは非常に難易度が高いフォームであると言えます。これは大谷投手にはその非常に高いレベルの技術を身につけることができる運動体力があるから可能なことです。スポーツではレベルが高い技術(運動技能)ほど運動体力が必要になってきます。そして運動技能+運動体力の合計を運動能力と呼び、運動能力によって実現するパフォーマンスや試合での成績を総して運動パフォーマンスと呼びます。これらはスポーツ心理学用語です。

プロ野球選手の中にも筋トレをまったく行わない選手がいます。例えば西口文也投手(現西武2軍監督)、中村剛也選手、山本由伸投手らは筋トレをしません。しかしメジャーリーグレベルになってくると、コアトレを含めた筋トレをまったくしない体づくりではなかなか通用しなくなってしまいます。

もちろん考え方として、パワーアップして球速を上げる目的で筋トレはすべきではありません。筋トレは、高いレベルの技術を身につけてパフォーマンスが高まり、どんどん上がっていく球速に体が耐えていけるように行うべきものです。もしくは高いレベルの技術を実現させるために行うべきものです。

しかし近年は高校の野球部でさえも筋トレ器具が充実しており、ガシガシ筋トレをしてガンガンプロテインを飲んで、筋肉を増やすことによって球速アップや長打力をアップさせようとする選手ばかりです。その結果中高生の腰椎分離症や肩肘痛が増える一方となっています。特に中高生打者の腰椎分離症の患者数の増加率は深刻なレベルです。

そういう意味では大谷翔平投手は筋トレで大きな体を作り上げていますが、その筋肉量によって球速を上げているわけではありません。あくまでも高いレベルの技術力によって球速を上げていっています。ここはアマチュア選手たちは、大谷選手の大きな体だけを見て誤解してはいけない点です。

とにかく大谷翔平投手の投球フォームは、プロコーチの僕から見ても本当にレベルの高いフォームであると断言できます。フォームの見た目は真似できたとしても、失礼な言い方をすると、メカニクスまではまず普通レベルのプロ野球選手では真似することはできません。でもそれだけレベルが高いことをやっているからこそ、大谷翔平投手は二刀流として、投手としても打者としても、そして人間としても一流であるわけなのですね。

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コラム筆者:カズコーチ@プロの野球コーチ
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