「ピッチングモーション」と一致するもの

大谷翔平投手MVP

満場一致でア・リーグMVPに選出された大谷翔平投手

2021年、アメリカンリーグのMVPは満場一致で大谷翔平投手が選出されました。本当にこれは快挙と呼ぶに相応しい偉業だと思います。二刀流でこれだけ活躍するなんてことは、まさに前人未到のことだったと思います。

しかし大谷翔平投手の進化はまだまだこれからだと、僕はプロコーチとして考えています。もちろん今のままでも十分に凄いわけですが、しかしもっとレベルアップできる余地を投球動作からは見ることができます。

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体重=長打力は間違いでもあり正解でもある

プロ野球でもアマチュア野球でも、未だに体重が長打力に直結しているとしか考えていない方が多いようです。例えばプロ野球で言えば山川穂高選手や渡部健人選手、清宮幸太郎選手らは「体重が減ると長打力が低下する」と考えている選手たちです。

しかし日本ハムの新監督になられた新庄剛志監督は、清宮選手に対し即ダイエット指令を出しました。ダイエット指令に対し最初清宮選手は「長打力が低下する」という理由で渋っていたようですが、新庄監督の「今だってそんなに飛んでない」という言葉に言い返す言葉がなく、結局ダイエットをすることになったようです。

体重=長打力と考えられるようになったのは、細身だった落合博満選手が、あんこ体型に変えてからホームランを量産するようになった頃からだと思われます。落合選手自身、あんこ体型がホームラン増に繋がったと明言しているので尚更でしょう。

体重=長打力、これが100%間違っているというわけではありません。体重移動をするウェイトシフト打法で打つ場合は、ボールにぶつけられるエネルギーが大きくなるため、体重が重い方が飛距離がアップすることもあります。

ですがツーシームなどの速い変化球が全盛の現代野球では、体重移動をする打ち方は通用しません。野球のレベルが上がれば上がるほど通用しなくなります。

その理由はウェイトシフト打法だと頭が大きく移動してしまうからです。そしてツーシームやスプリッターなどの速い変化球は、頭を移動している真っ最中に変化してくるため、それらの変化球を正確に捉えることが非常に難しくなってしまうんです。

現代野球では中学生レベルでもツーシームやカッターを投げてきますので、やはり中学生に上がるまでにステイバック打法を身につけておくことが重要だと言えます。

打率と長打力を兼ね揃えた選手はスマートな体型の選手ばかり

体重移動に頼らないステイバック打法をマスターしている選手は、しっかりと引き締まった体を維持しつつ長打力も兼ね揃えています。松井秀喜選手、大谷翔平選手、柳田悠岐選手、坂本勇人選手、浅村栄斗選手などなどは、プロ入り後にステイバックをマスターした選手たちで、見た目は細身でスマートで、打率とホームラン両方で良い数字を残すことができています。

僕自身プロ野球選手のサポートや、子どもたちの個別レッスンをする際は、ウェイトシフトにこだわりがある場合以外は、ステイバック打法の指導のみを行っています。なぜなら、その方が圧倒的に成績が向上するからです。

ちなみにウェイトシフトにこだわりがある場合は、コーチングやレッスンをお断りするケースが多くなります。なぜならウェイトシフトであれば、僕じゃなくても指導できるコーチはいくらでもいるからです。

僕がレッスンをしている小中学生の中には、シーズン打率が.400以上の子が大勢います。みんな僕のレッスンを受けて、ウェイトシフトからステイバックに変えた子たちです。そして小柄でも細身でも、長打力アップに成功しています。

軟式野球の場合はボールに回転をかけられないため、非力な選手が長打力をアップさせることは難しい場合もあるのですが、硬式野球の場合は細身でも小柄でも女子でも飛距離をアップさせることができます。技術を身につけられれば、体重など関係なく長打力をアップさせることができるんです。

中学野球で多いのですが、体重を増やすために子どもたちに練習の合間に、ドカベンを食べさせる指導者がいます。これは栄養学的にも、生理学的にも、野球技術的にも完全に間違った指導法です。特に夏場にこれをやってしまうと熱中症のリスクを大幅に高めてしまいます。

まだまだ科学的根拠のある野球教則本が少ない現状

野球界にも、そろそろ科学的根拠のある野球教則本が増えると良いのですが、そのような本は野球を科学的に勉強されたトレーナーさんたちが数冊出している程度で、元プロ野球選手らの本の中では、ほとんど皆無と言えます。

体重移動をすると頭の位置は必ず移動するのですが、それなのに体重移動を指導しながら「頭を移動させずにバットを振ろう」というチグハグなことが書かれている元プロ野球選手監修の野球教則本もあります。

スポーツはもはや科学の時代です。日本球界でもトラックマンなどでデータを取るようにはなりましたが、ピッチングモーションやバッティングモーションの指導に関しては、まだまだほとんどの指導現場で非科学的な指導が行われています。

親交のある元プロ野球の打撃コーチ何人かに話を伺っても、プロ野球12球団でも非科学的な指導やメニューが組まれていることがほとんどとのことでした。

野球指導者たちはそろそろ科学的に野球技術を学び、体型に関わらず選手たちを上達させられる指導スキルを身につける必要があります。

しかしそのような野球指導者が現場にはほとんどいないため、僕らのように科学的に野球動作を学んだプロフェッショナルコーチの野球塾が今なお必要とされているわけなのです。

コーチングとティーチングの違い

藤浪晋太郎投手の不調の原因

今回の投手育成コラムでは、コーチングへの組み方について少しお話してみたいと思います。小中学生チームのボランティアコーチの場合、理論的にコーチングできる方というのはほとんどいらっしゃいません。強豪硬式チームであっても、経験則だけで指導してしまっている監督・コーチが大半ではないでしょうか?

コーチングに於いて経験則というのは、実はあまり役に立ちません。経験値は必要なのですが、経験則というのは役に立たないことがほとんどです。と言いますのは、A君で上手く行った指導法で、B君も同じように上手く行くことはまずないからです。なぜならA君とB君は性格も体格も選手のタイプも違うからです。

これが仮に一卵性の双子であったとしても同様です。双子であっても性格や嗜好というものは違ってくることがほとんです。コーチの役割というのは知っていることをただ伝えるだけではありません。目の前の1人の選手にとって、今一番必要なことを見極めた上で伝えていき、選手を上達へと導いていくことが役割です。

知っていることを判で押したようにただ繰り返すのはコーチングではなく、ティーチングです。コーチングはあくまでも、目の前にいる1人に対し個別の指導を当てていく作業です。つまりA君が目の前にいたなら、A君の現状をしっかりと把握した上で、今もっとも足りていないことを見極め、それを補っていくサポートをします。そして同時にA君の長所も見極め、それを伸ばしていくこともコーチの役割です。

藤浪晋太郎投手に必要なのはスケール効果の克服

例えば近年、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手(現オークランドアスレティクス)が不振に苦しんでいます。果たしてタイガースの投手コーチは藤浪投手に対し適切なコーチングを行えていたのでしょうか。経験則だけでコーチングをしてしまってはいなかったでしょうか。

もし僕が藤浪投手のパーソナルコーチングを担当するのなら、真っ先に考えるのはスケール効果についてです。藤浪投手のパフォーマンスを不安定にさせている最大の要因はスケール効果にあると僕は考えていますので、まずはスケール効果の影響を最小限に抑えられるフォーム作り、厳密に言えば運動軸を体の外側に出し、慣性モーメントを小さくするためのコーチングから始めていくと思います。

その上で彼の長い四肢を活かして、左股関節の使い方を改善することにより、リリースポイントをもっと打者に近付けエクステンションを伸ばし、少し力を抜いても簡単にバッターを差し込むことのできるストレートを作り上げていこうとすると思います。あくまでも僕ならば。

このように、コーチングというのは目の前の選手のウィークポイントとストロングポイントをしっかりと見極めて、ウィークポイントを補いながら、同時にストロングポイントを伸ばしていく必要があります。しかしこの作業は経験則だけでは行えません。ピッチングモーションのバイオメカニクスをしっかりと学び、モーションのすべての細かい動作を理論的に説明できる知識が必要です。

コーチはメモ魔になることが重要!

もちろん週末のボランティアコーチの皆さんにそこまで求めるのは酷だと思います。ですが本当に子どもたちを上達させたいのであれば、10分でも20分でも1対1のコーチングを行なっていくべきです。例えばチームに20人の子供達がいたとして、1人10分ずつみっちりマンツーマンでやったとしても4時間かかりませ。コーチが2人なら2時間、コーチが4人なら1時間で済みます。

そしてコーチは、とにかくメモを取ることが重要です。選手にとってコーチは少人数ですが、コーチにとって選手は少人数ではありません。ですので誰に何を伝えたかを覚えておくのはなかなか難しいものです。だからこそ、いつ誰に何をどのように伝えたのか、ということをしっかりメモをしておく必要があります。

今まで行ったコーチングを忘れている状態でまたコーチングを始めても、効率の良い指導は絶対にできません。そして子どもたちも「また同じこと言っているなぁ」と飽き始めてしまいます。飽きられないためにも「先週こういうことを教わったの覚えてる?まだできていないからもうちょっと時間を割いていこうか」と、コーチは言ったことをすべて覚えている、ということを選手に理解させる必要があります。そうすれば飽きられることなく、逆に「また同じ注意されないようにしなきゃ!」と緊張感を持ってくれるようになります。

結局のところコーチングというのは、どれだけ「コーチは僕のことをしっかり見てくれている!」と思ってもらえるかどうかなのです。「どうせ僕のことなんて大して見てない」と思われてしまっては、どんなに良い指導をしても効果は得られません。果たしてタイガース時代の藤浪投手の周辺はどうだったのでしょうか。僕には何とも言えないところではありますが、コーチやグラウンドに顔を出すOBは行きずりの指導をしてしまってはいないでしょうか。もし場当たり的なコーチングをしていなかったのであれば、藤浪投手がここまで長く不振に苦しむことはなかったはずです。

今回の投手育成コラムでは、ピッチャーの軸に関しお話しして見たいと思います。軸が安定しなければパフォーマンスが安定することもないわけですが、この軸を安定させるのがなかなか大変で、まずは足で土台をしっかりと安定させる必要があります。つまり踏ん張りの弱い選手は、軸を安定させることができないというわけです。


ではピッチャーの運動軸とはどこにあるのでしょうか?背骨?いいえ、違います。背骨は確かに体内に存在する体軸ではあるのですが、運動軸と必ずしも一致するとは限りません。ピッチャーにとっての運動軸は、右投げながら右肩と左股関節を結んだライン、左投げなら左肩と右股関節を結んだラインとなります。

サイドハンドスローの場合、この運動軸を立てたまま使うことができますので、比較的容易にサイドハンドスロー特有のメリットをパフォーマンス内に発揮させることができます。一方オーバーハンドスローやアンダーハンドスローの場合、運動軸を大きく傾かせて使う必要があるため、土台がしっかりと安定し、体幹を上手く使える選手でなければ良いパフォーマンスを発揮することは難しくなります。

ちなみにこの運動軸なのですが、体の外側に飛び出すこともあるんです。土台がしっかりと安定していて、体幹の使い方が非常に上手な投手の場合、この運動軸が利き腕側の体側の外側に飛び出すんです。するとスローイングアームが遠回りすることがなくなり、遠心力により肩関節に大きな負荷がかかることもなくなり、怪我をするリスクが軽減していきます。

さらにスローイングアームがコンパクトに振られていると制球力は飛躍的にアップし、バックスピンの角度も垂直に近付くため、伸びのあるストレート、もしくは返球をコントロール良く投げられるようになります。例えば全盛期の西口文也投手などがこのタイプで、遠心力ではなく求心力でスローイングアームを振ることができ、軸が体の外に飛び出すほどのピッチングモーションになっていました。だからこそあれだけの細身の体で150キロのボールを投げることができ、しかもほとんど怪我することなく21年間もプロ野球の第一線に立ち続けることができたわけです。

良いボールを投げるためには軸を安定させることが非常に重要です。しかしその軸を安定させるためには軸そのものの特性や現状を理解し、そしてそれを安定させるための方法を知っている必要があります。野球物理学をしっかりと学んでいるコーチであれば指導できる内容ですので、ぜひお近くでそのようなコーチがいる野球塾を探してみてください。もちろん東京の江戸川区までお越しいただければ、当野球塾で軸について深くコーチングすることも可能ですので、お気軽にご相談くださいませ。

下半身主導でボールを投げるためには、とにかく股関節を使える投球・送球動作を身に付ける必要があります。それは下半身で作り出したエネルギーはすべて、股関節を介して上半身に伝えられるためです。つまり股関節が使えていなければ、いくら下半身の筋肉を鍛えたとしても、下半身で作り出したエネルギーはすべて股関節で止まってしまい、結局手投げをするしかなくなってしまうんです。


特に重要なのは非軸脚側の股関節です。この股関節を最大限外旋させたあとで、最大限内旋させていくのが理想的な使い方です。そしてそれを可能にするためにいくつか必要なことがあるのですが、今回の投手育成コラムでは軸脚と、非軸脚側の股関節に関して少しだけ書いてみたいと思います。

まず軸脚に関してですが、しっかりと後ろに高く振り上がっていることが必要です。この軸脚の振り上げが低ければ低いほど、軸脚の重さで投球動作が後ろに引っ張られてしまい、体重移動を最後まで終わらせられなくなります。そして体重移動が最後まで終わらなければ、同時に股関節も最後まで使えなくなってしまいます。ですので軸脚は、スパイクが頭よりも高くなるくらい後ろに高く振り上げられるようになってください。

そしてもう1つ大きなポイントとして、ランディング以降、非軸脚側の股関節を移動させずに動かすということです。ランディングした瞬間の股関節の位置を変えず、その場で内旋と屈曲をさせていきます。ランディング以降股関節の位置が移動してしまうと、股関節を機能させられなくなってしまいます。ですので非軸脚側の股関節はランディング以降は完全に投げ終わるまで、移動させずにその場で内旋・屈曲させていってください。そのためにはもちろんハムストリングスの柔軟性が必要ですね。

これら2つの要素が揃わなければ、非軸脚側の股関節を最大限機能させられなくなってしまいます。もちろんこの2つだけできていれば良いというわけではないのですが、まずはこの2つが揃うことが絶対条件となります。ですので軸脚は後ろに高く振り上げ、非軸脚側の股関節はランディング後は移動させずに動かせるように、丁寧に繰り返し練習してみてください。

少年野球でトップポジションの形を指導する際、手を上に挙げて手のひらを外側に向ける形を指導している方は今だに多いと思います。しかしこの形でトップポジションを作らせてしまうとパフォーマンスが低下するばかりか、肩肘を痛めてしまうリスクを大幅に高めてしまうことにもなります。


なぜ日本の指導現場では今だに怪我をしやすいこのような形を指導しているのでしょうか?考えられる原因として挙げられるのは唯一、指導者の勉強不足です。指導者が人間の体の構造や解剖学、スポーツ物理学をまったく理解していないために、自分が教わってきた過去の経験則でしか指導できなくなってしまうのです。

もちろん大学に通って本格的に勉強する必要はありません。最低限の知識さえ頭に入れておけば、どのような動き方をすると肩肘を痛めやすいかを判断できるようになるはずです。手のひらを外側に向けるトップポジション、専門的に言い換えると肩関節を内旋させたトップポジションから投げてしまうと、リリースポイントに至るまでの加速期に肩関節が水平外転方向へと引っ張られてしまいます。そしてこれによって肩の中央から前面にかけての部分を故障しやすくなります。

また、内旋状態のトップポジションから投げようとすると、肘を下げなければボールをリリースできなくなってしまいます。その結果インナーマッスルに大きく負荷がかかり、野球肩になってしまいます。また、肘が下がった状態では質の良いボールを投げることもほとんど不可能になり、スライダー回転しやすくなります。よく言われるナチュラルスライダーというのは、実は非常に肩を痛めやすい投げ方によって生み出される球種なのです。

時々他の有料野球塾のコーチの方と交流をすることがあるのですが、過去数十人のコーチの方々とお話をしてきた中で、肩肘を痛めにくい投球動作を解剖学的に理解されているコーチはたった1人しかいらっしゃいませんでした。ちなみに野球選手を専門的に治療しているスポーツドクターでもそういう投げ方を理解されている方はほんの一握りしかいらっしゃいません。実際野球選手の治療を担当されているドクターやスポーツ指導の関係者が集まるセミナーでも、故障しやすい投球動作が推奨動作として指導されていました。

当野球塾のピッチングマスターコースでは、肩肘を痛め難くなおかつパフォーマンスを向上させられるピッチングモーションの指導を2010年1月からずっと続けています。受講生の中で、受講後に肩肘の痛みが出なくなったという選手はポジション問わず数え切れないほどいらっしゃいます。つまりコーチがしっかりと解剖学を理解していれば、肩肘を痛めにくい投げ方を指導することは難しいことではないのです。あとは選手が努力をしてその動作をマスターできるかどうか、という問題のみとなります。

このようなことを考えると、選手よりもコーチたちに当野球塾に通ってもらいたいと強く思うばかりです。コーチが当野球塾でしっかりとした指導スキルを身につけることができれば、そのコーチがいるチームの選手は全員当野球塾同様の指導を無料で受けられるということになります。しかし現段階ではそのようなコーチは少年野球チームではほとんど皆無であるため、高い受講料を払っていただき当野球塾に通っていただくしかないというのが現状です。

子どもたちの肩肘の怪我を大幅に減らすためにも、やはり野球界にもプロアマ問わず、指導者ライセンス制度が早急に必要なのではないかと、常々思ってしまうのであります。

今回の投手育成コラムではワインドアップ、ノーワインドアップ、セットポジション、クイックモーション、プラントレッグの違いについてかんたんに解説をしてみたいと思います。


まずワインドアップというのは両腕を頭の上に振りかぶってモーションをスタートさせる投げ方です。ノーワインドアップは振りかぶらないこと以外は、ワインドアップとほとんど同じです。

セットポジションはあらかじめ両足をプレートと平行にセットした状態から投げ始めます。クイックモーションはセットポジションとほとんど同じですが、盗塁を防ぐために非軸脚をほとんど上げずに素早く投げます。

最後にプラントレッグというのはあらかじめ足を大きく開いた状態でセットし、非軸脚はもちろん振り上げず、ステップもほとんどせずに投げます。

ピッチングモーションのポイントは、どれだけ股関節を上手に使えるかどうかにあります。股関節を使えない投げ方=手投げと言い、専門的には手投げのことを「骨盤回旋不良」と言います。ワインドアップがもっとも股関節を深く使うことができ、クイックモーションやプラントレッグでは股関節の使い方が非常に難しくなります。

時々制球力を良くするためにワインドアップではなく、セットポジションで投げるように指導するコーチがいますが、これは間違いです。制球力は股関節の動作を改善することによりスローイングアームの動き方をコンパクトにし、良くしていきます。つまりワインドアップで制球力が悪い投手は、セットポジションに変えても根本的に制球力が改善することはありません。

それどころから股関節の使い方が浅くなってしまう分手投げになりやすく、小手先でコントロールする悪い癖がつき、それによって投球時に肘がロックされやすくなり、肘を痛めてしまいます。

特に小学生のように投球動作のスキルがまだ高くない場合、投手もキャッチボール中の野手もワインドアップで投げるべきです。股関節を上手に使うことができると肩肘を使って投げる必要がなくなり、野球肩・野球肘のリスクを軽減させることができます。

ちなみにワインドアップとノーワインドアップに関しては、どちらでも良いと思います。この2つに関しては自分自身がリズムを取りやすいフォームを選択すれば問題ありません。最初の構えの時に両靴がまっすぐキャッチャーの方を向いていて、振りかぶると同時に非軸足を一足分バックステップし、そこから軸脚側の股関節を90°開いて軸足をプレートにセットする形ができていれば、どちらを選んでも大差はありません。

ワインドアップでは股関節を深く使える分体全体を使えるようになり、プラントレッグに近付くほど股関節を深く使うことが難しくなります。股関節を使えない分、通常ワインドアップと比べると、セットポジションでは5km/h前後球速が低下してしまいます。ただしプロ選手でも一握りしかいない、股関節の使い方が非常に上手な投手であればワインドアップとセットポジションでの球速差はほとんど出ません。例えばダルビッシュ有投手などは、ほとんど球速差が見られない投手だと思います。

小学生選手の将来を考えるならば、やはり通常はしっかりと振りかぶり、股関節を深く使いやすいモーションで投げるべきだと思います。ただ、中にはセットポジションでないとリズムを作れない投手も稀にいます。そういう場合に関してのみは、セットポジションで股関節を深く使うための技術を、ちょっと難しいですが身につけていけば良いと思います。

質の良いボールを制球力良く投げるためには、とにかくまず最初にしっかりと踏ん張ることが重要です。踏ん張れなければ股関節を使ってボールを投げることはできず、股関節を使えなければ手投げをするしかなくなってしまいます。ここでも何度か書いたかと思いますが、股関節を使えていない投げ方=手投げ、ということになります。


その踏ん張りなのですが、体のどの部分を使って踏ん張るかと言えば実は股関節なのです。例えば踏ん張りを強くするためにタオルギャザーなどの足裏トレーニングをされている方も多いと思いますが、タオルギャザーで鍛えられる部位そのもので踏ん張ることはできません。あくまでも股関節で踏ん張り、それを補助するためにタオルギャザーで鍛えると考えた方が踏ん張りを強くすることができます。

股関節をどれくらい使いたいかと言うと、非軸足のつま先と骨盤が90°の関係になるくらい深く内旋させたいんです。これを可能にするためにはまずランディング後の非軸足が浮いたり回ったりしないよう、股関節に乗ってしっかりと踏ん張る必要があります。股関節に乗るというのはいわゆる体重移動のことです。体重移動とは上半身の重さを、軸脚側股関節から非軸脚側股関節に移動していく作業です。脚→脚ではなく、股関節→股関節ですので間違わないでください。

この体重移動を良い形で終えられると踏ん張りを強めやすくなります。そして体重移動を終わらせるためには、ランディング後の非軸脚が、体重移動を終わらせられる形状になっている必要があります。この時非軸脚が傾いていたり突っ込んでたりすれば体重移動を終わらせることができず、移動させてきた上半身の重さも逃げてしまい、結果的に踏ん張りも弱くなってしまいます。

ピッチングモーションとは、複数の細かい動作が集合して1つのピッチングモーションを作り上げています。そして細かい動作の1つ1つすべてがどこかに影響を与えており、極端な話をすると、キーとなる歯車(1つの細かい動作)が1つ狂ってしまうと、ピッチングモーション全体が狂ってしまうことも少なくありません。

歯車が狂ってしまった時、その狂いを最小限に抑えるためにもしっかりと踏ん張ることにより、土台を安定させておく必要があるわけです。土台さえ安定していれば、多少調子を落としたとしてもその原因を比較的早く改善させることもできます。ですが土台が安定していなければ、1つ狂っただけですべてが狂ってしまいます。

質の良いボールを投げるためにも、好不調の波を小さくさせるためにも、踏ん張ることによって土台を安定させることは非常に重要なことです。そして踏ん張りとは股関節で行う動作ですので、股関節が硬かったり弱かったりすれば、踏ん張りを強くさせることはできません。つまり股関節が硬い選手は自ずと手投げになってしまうということです。

ピッチングマスターコースではストレッチング方法もアドバイスしているのですが、年代問わず硬い選手は非常に多いです。そして股関節が硬い選手で「良い投げ方をしているなぁ」という選手はいません。

少年野球チームでもストレッチングをほとんどしないチームが多いそうです。練習後、試合後には最低限1時間くらいはチームでストレッチングをしたいものです。チームでストレッチングを教われないということもあり、ピッチングマスターコースでストレッチングのやり方を学んでいる選手も多いほどです。

踏ん張りを強くし、パフォーマンスをアップさせるためにも、股関節の柔軟性と強さは技術トレーニングよりも大切にしていただければと思います。
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今回ご紹介したいのはこれ、CASIOのEXILIMシリーズです。ちなみに現在わたしチーフコーチが愛用しているのはEX-ZR1000 というモデルで、少し前のモデルです。さらに言うと2010年以降、Littlerockheartでは4台ほどEXILIMを買い換えています。理由は撮影中に強風で倒れて壊れたり、運悪く悪送球が直撃して壊れたりと、わたしのミスによる故障ばかり。。。

EXILIMにはハイスピードシリーズというコンパクトデジカメのラインナップがあり、わたしが利用しているのもこのラインナップのひとつです。大きな特徴として、スーパースロー映像を撮影できる点と、30枚の連写ができるという点があります。これがあるからこそ、LittlerockheartではEXILIMのみを使い続けているのです。

他のデジカメにもスロー撮影モードや連写モードはあります。しかしEXILIMほどその機能が優れていて、充実しているデジカメはありません。まずスーパースロー映像ですが、正式にはハイスピードムービーということになります。野球中継で時々見られる超スローモーション映像は、まさにハイスピードムービーということになります。

1秒間に撮影できるコマ数は、通常のビデオ撮影だと30コマ(30fps)となります。しかしEXILIMでは最大1秒間に1000コマ(1000fps)まで撮影できるのです。つまり通常の映像の30倍ということですね。撮影したこれだけ多くのコマ数を、今度は1秒間に30コマで再生するため、超スローモーション映像になるという仕組みなのです。

通常の映像では近距離から撮影しても、リリースポイントやその角度、細かい動作まで目視でチェックすることはできません。そしてそれは、通常の映像をコマ送りにしても同じことです。なぜなら1秒間に30コマしか撮影できませんので、撮影しきれない部分が非常に多いのです。しかしハイスピードムービーであれば、動作のすべてを録画することができます。リリースポイントの位置だけではなく、指先がどのような向きでリリースを迎えているかや、ボールの回転も正確に目視することが可能となるのです。

ちなみにわたしのオススメは240fpsか、480fpsです。ほとんどは240fpsで細かく撮影することが可能なのですが、もしもっと細かいところまで見たいという時は、480fpsにされると良いと思います。なお最近ではiPhone6 でも240fpsのハイスピードムービーを撮影できますので、お持ちの方はEXILIMがなくてもiPhone6だけでも十分だと思います。

続いて連写モードについてですが、投球動作や打撃動作を撮影する分には十分すぎる機能を持っています。一度に最大30枚の連写ができますので、野球雑誌に掲載されているプロ野球選手の連続写真よりも、はるかに多くの写真を撮ることができます。あ、もちろん雑誌に載っているのはもっとすごい機能を持ったカメラで撮影し、その中から10枚くらいをピックアップした連続写真だと思います。

わたしが現在使っているEXILIMは前述の通りEX-ZR1000 というモデルなのですが、最新モデルを利用する必要はまったくありません。もちろん最新モデルだと最大の画素数であったり、その他Wi-Fi機能やSDカードが必要ないという機能もあるのですが、ハイスピードムービーと連写機能に関してはほとんど差はありません。ですのでAmazonなどでEXILIMハイスードカメラの旧モデルを購入しても、野球動作の撮影は十分こなすことができます。デジカメは新モデルが出ると、旧モデルはどんどん値下がりしていきます。ですのでオススメは、1〜2個前のモデルを購入することです。と考えると今はちょうど、わたしが愛用しているEX-ZR1000 を購入するくらいがタイミング的には良いのかもしれませんね。

EXILIMのハイスピードカメラシリーズは、もともとはゴルファーのために開発されたコンデジです。そのため大きな移動をせずに動作を取るスポーツの撮影に向いています。ゴルフのスウィング、バットスウィング、ピッチングモーションなど、定点撮影できるスポーツですね。オススメの撮影角度は投手の場合は真横と真後ろです。右投手であれば三塁側と二塁側、左投手であれば一塁側と二塁側。この2方向から撮っておくと、投球動作は非常に把握しやすくなります。

野球動作を論理的に作り上げていくためには、CASIOのEXILIMシリーズは強い味方になってくれます!わたし自身、これがなければまったく仕事にならないくらいです。野球選手がいるご家庭であれば、一家に1台あっても良いと思えるくらいです。なぜならこれはスポーツ撮影だけではなく、旅行や結婚式のスナップ写真、夕日や花などのネイチャー写真もとてもキレイに撮れるからです!

詳しい機能に関してはCASIOのオフィシャルページもご覧になってみてください。充実の機能のすべてをもっとわかりやすく説明してくれています。

EX-ZR1000 で撮影したハイスピードムービー

お辞儀しないストレートを投げるためにまず大切なのは、ボールに与えるバックスピンの角度を垂直に近づけることです。するとマグナス力(=マグヌス力、ボールを上へ持ち上げる揚力)が働くようになり、ボールが打者の手元でお辞儀しにくくなるのです。

お辞儀しないストレートを投げるためにはバックスピンの他に、ボールがジャイロ回転するジャイロボールというものがあります。ジャイロボールは確かに存在するボールではありますが、しかし現実的に使うことは非常に難しいと思います。その理由は単純で、140kmを越える球速でジャイロボールを意図して投げられる投手がいないためです。

球速をあまり出さないアンダーハンドスローやサイドハンドスローの軟投派であれば、ジャイロボールを試合で武器として利用することは可能です。しかしオーバーハンドスローやスリークォーターの投手が勝負に行った140kmを越えるストレートに、意図してジャイロ回転を与えることはほとんど不可能です。もちろん140kmのジャイロボールを発生させることは物理的には可能です。しかしマウンド上で野球のルールを守った投手がそれを実現させることは、ほとんど不可能に近いとTeamKazオンライン野球塾では考えています。

ですのでやはりお辞儀をしないストレートを投げるためには、どれだけ良い角度のバックスピンストレートを投げられるかにかかってくるのです。バックスピンの角度を垂直に近づけ、スピン数を増やしていくことができれば、今まではお辞儀していたストレートがお辞儀しなくなるはずです。

バックスピンを増やすピッチングモーションに関しましては他コラム記事にて多数書いておりますので、本記事では割愛いたします。

バックスピンを垂直に近づけるという作業には、一つ大きな注意点があります。垂直に近いバックスピンでボールを投げようとすると、カタパルト投法になりやすいのです。ボールリリースの手前で肘の移動が停止し、肘を展開することによってボールを投げようとする動作です。この動作を取ってしまっている投手は肘を前へ突き出して投げているように見えますので、分かりやすいと思います。

ボールの回転角度を改善し、ボールの回転数を増やすためには、適切な下半身の使い方により、適切なトップポジションを取っていくことが非常に重要です。これらを疎かにしてしまうと、その他の動作がすべて小手先に頼ったものになってしまいます。ですのでお辞儀をしないストレートを投げるためには、まずは下半身の動かし方とトップポジションの作り方を改善していくようにしてください。