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今回の投手育成コラムでは、フリーフットを作った後の非軸脚の動かし方、特にランディングについて解説してみたいと思います。まずランディングの善し悪しは球速に直結していきますので、非軸脚の振り上げは勢いよく高く上げる必要があります。

投手の非軸足の着地は、飛行機の着陸と同じ

非軸足を着地させる動作のことをランディングといういうわけですが、このランディングを、フリーフットを作った後、地団駄を踏むように真上から降ろしてしまっている投手をよく見かけます。しかしこのランディングは垂直方向から降ろしてはダメなんです。なぜならボールはキャッチャーミットに向かって投げたいので、エネルギーを真上から真下に向かって使っても、球速に良い影響を与えることはできないんです。

フリーフット後の非軸脚は、キャッチャーミット方向に向けて、斜め前方に向けてランディングさせていく必要があります。飛行機のランディング(着陸)とまったく同じですね。前方へ進みながら着地させていく動作です。ただし、飛行機はそのまま前へ走っていきますが、ピッチングの場合は斜め前方に向けて着地させつつも、ランディングしたその瞬間に急ブレーキをかける必要があります。ここでブレーキをかけられないと上半身が簡単に前に突っ込むようになります。

位置エネルギーは球速アップに直結していく

非軸足がランディングした際の衝撃のことを位置エネルギーを言います。この位置エネルギーが球速に直結していくんです。つまり位置エネルギーが強ければ強いほど、球速もアップしやすいということです。位置エネルギーを簡単に説明しておくと、物を上から落とす際は、低いところから落とすよりも、高いところから落とした方が、落とした際の衝撃は強くなります。この衝撃を位置エネルギーと呼びます。

そしてこの位置エネルギーを投球方向に使っていくためにも、非軸足はヘリコプターのように垂直にランディングさせるのではなく、飛行機のように前方に向かいながらランディングさせていく必要があります。そして踵から着地するのでもなく、つま先から着地させるのでもなく、足の裏全体を同時にランディングさせていきます。この点に関しては頭を浮かせながら着陸する飛行機とはちょっとだけ違ってきます。

ランディングが垂直方向に動くと上半身は突っ込む

フリーフットから並進運動を経てランディングを迎えていく一連の動作の中で、ランディングが垂直方向になりやすい形になってしまうと、膝が前に出るようになり、上半身の突っ込みを防ぐことができなくなってしまいます。上半身が突っ込めば球速は低下してしまいますし、リリースポイントも打者に近づけることができず、仮に速いボールを投げても打たれるようになってしまいます。

そうならないためにも、フリーフットからランディングにかけての一連の動作は遠回りさせることなくコンパクトに、そして勢いよく前方に向かいながらランディングさせ、ランディングさせたらその瞬間に非軸脚を完全にロックしてしまうことが大切なのです。このロックをかけることができないと、非軸脚は上半身を突っ込ませるための形になってしまうため、球速も制球力も低下します。そうならないためにも、今回お伝えした動作をできるように練習を繰り返してみてください。

近年、ストレートの質はスピードガンに表示される数字そのものではなく、回転数が非常に重要であることが適切に理解されるようになってきました。しかしだからと言って、回転数が多ければ万事OKという訳ではありません。回転数が多かったとしても、回転軸の傾きが大きければストレートの質はどんどん低下していってしまいます。

回転軸の傾きは5°程度がベスト

結論から言うと、ストレートの回転軸は左右に真っ直ぐ水平になっている状態が最高です。左右のタイヤを繋ぐシャフトと同じような状態ですね。この回転軸の角度によって回転数を増やすことができた時、ストレートの伸びを向上させられるようになります。つまりマグナス力が働き、ホップ成分が多いストレートになるということですね。

とは言え、完璧にタイヤのシャフトのような回転軸の角度にすることはなかなかできません。火の玉ストレートを投げていた全盛期の藤川球児投手の回転軸の傾きは5°程度で、これくらいの傾きがピッチングでは最上級の角度の抑えられ方だと言えます。

初速と終速の差が小さいとストレートに伸びが生まれる

この回転軸の傾きが10°以上になっていくと、水平から遠ざかれば遠ざかるほどマグナス力が低下し、伸びのないストレートになってしまいます。伸びがないストレートとは、初速と終速の差が5kph以上になってしまうストレートのことです。例えば初速160kphだったとしても、終速が150kphだったとすれば、これは非常に打ちやすいボールになってしまいます。

一方初速130kphで、終速が128kphだったとすれば、このストレートは上述した初速160kphのストレートよりも遥かに打ちにくいストレートとなります。初速と終速の差が小さければ、130kphという球速であっても簡単にバッターを振り遅らせることができます。ホークスやメジャーで活躍する和田毅投手のストレートは、まさにこの類の質の高いストレートだと言えます。

回転数と回転軸の改善は上半身では行えない

回転軸の傾きを5°程度で抑え、そこからさらに回転数を増やすためには非軸脚側の股関節の動かし方が何よりも重要となります。この股関節を適切に動かさなければ肩関節の内外旋も良い形になってくれることはなく、回転軸は大きく傾いてシュート回転やスライダー回転となってしまい、まったく伸びのないストレートになってしまいます。ちなみにこの股関節を適切に使えるようになると、サイドハンドスローから投げてもストレートはきれいにバックスピンするようになります。

つまり小手先で回転軸や回転数を改善しようとしてもできないということです。踏み込んだ足を適切な場所で、適切な向きにした状態でしっかりと踏ん張り、非軸脚側の股関節を最大限の幅で内旋させられるようにならなければ、回転軸も回転数も改善されることはありません。ですので回転軸や回転数を改善させたい場合は、まずは踏み込んだ足の踏ん張りと、非軸脚側の股関節が内旋している幅を確認するようにしてください。この2ヵ所が良い形でなければ、この2ヵ所を改善するだけでも回転軸と回転数を改善させられるはずです。

球速というのは、コツさえ理解することができれば比較的かんたんにアップさせていくことができます。しかし球速をアップさせられるフォーム、もしくは球速を低下させている原因を知ることができなければ、筋力を増やしても球速はすぐに頭打ちしてしまうでしょう。

球速をアップさせるための最初のコツ

球速をアップさせられるフォームを習得するコツ、それはまず支点を安定させるということです。右投手なら左股関節、左投手なら右股関節が支点として機能します。この支点のスタビリティ(安定感)が低下してしまうと、ボディスピン(軸の回転)が弱くなってしまい、スローイングアームを鋭く振ることが難しくなります。また、振れたとしてもブレが大きくなってしまい、球質が低下してしまいます。

では支点(股関節)はどうやって安定させればいいのでしょうか?ポイントは、非軸足をランディング(着地)させた瞬間から、支点となる股関節の位置を移動させずに使う、ということです。支点は位置を固定することで初めて支点として機能し始めます。しかしランディング以降で股関節の位置を移動させながら投げてしまうと、股関節を支点として使うことができず、腕力に頼った投げ方をせざるを得なくなってしまいます。

支点がブレれば軸も同時にブレる!

また、支点が移動してしまえば軸も同時に移動してしまいます。軸は、支点側のポイントは支点同様に移動させてはいけません。軸のエンドポイントが両側とも移動してしまうと、軸も軸として機能しなくなり、ボディスピンはどんどん弱くなってしまいます。

一般的には、球速をアップさせるためのコツを知ろうとするよりも、球速を低下させている原因を的確に見つけるコツを掴んでいった方が、球速はアップさせやすくなり。と言うよりは、球速が低下しにくいフォームを身に付けられます。

球速をアップさせる前にロスしない!

球速をアップさせるコツは、まず球速をアップさせるその前に、球速を低下させないということです。球速が低下する原因が多数投球フォーム内にあるうちは、球速をアップさせたくてもなかなかアップしていかないはずです。ですのでまずは球速を低下させている原因を探すようにしてみてください。そうすれば球速をアップさせる前に、ロスしていた球速を取り戻せるはずです。

球速をアップさせるよりも、球速をロスしない、これこそが球速をアップさせるための最大のコツだと言えいます。でもロスしている原因を的確に見つけることができない選手がほとんどですよね?そういう場合はぜひ、僕のコーチングじゃなくても構いませんので、どこか有能なコーチが在籍している野球塾の門を叩いてみてください。そうすれば球速をロスしている原因と改善方法をすべて正確に教わることができるはずです。

ボールに角度をつけるために肘を高くして投げようとしている選手、いらっしゃいませんか?しかしこの時肘の上げ方を間違ってしまうと、角度をつけて球威のあるボールを投げられるようになるどころか、簡単に野球肩になってしまいますので注意が必要です。


右投手なら左肩・右肩・右肘(左投手なら左肘)を一直線で結んだラインは決して崩してはいけません。両肩を結んだライン、つまり肩線分の延長線上よりも肘が上に上がってしまうと、肩関節への負荷が非常に大きくなってしまいます。人間の体というのは根本的に、腕を肩よりも高く上げるようには設計されていないんです。そのため体が硬くなったり、歳をとったりすると痛くて腕が肩よりも上がらなくなることがあります。

肘の高さを上げてボールに角度をつける際は、両肩と肘を結んだラインの一直線は変えずに、背骨を強いスクロールによってリーディングアーム側に傾けることによって角度をつけるようにしてください。つまりオーバーハンドスローで投げる、ということですね。

両肩と肘を結んだラインが一直線ではない状態でボールを投げ続けてしまうと、簡単に野球肩・野球肘になってしまいます。ですので肘の高さは腕を上げることによって高くするのではなく、背骨をリーディングアーム側に傾けることによって高くするようにしてください。

ちなみに角度をつけようとしてさらに、肘を伸ばし切ってしまうとこれも故障の原因になりますのでご注意ください。

投球動作というのは、家と同じです。土台がしっかりしていない家は、強風やちょっとした地震でも崩れてしまいます。投球動作もまったく同じなのです。土台が安定していない投球動作では、土台以外の部分をいくら気をつけたとしても、根本的に投球動作が改善されることはありません。ですので根本的に制球力が向上したり、球速がアップすることもないわけです。


土台が安定しているかどうかをチェックする方法は簡単です。ボールを投げた後、非軸脚だけで5秒間安定して立てるかどうかです。そして立つ時の姿勢は、(1)顔は正面を向ける、(2)上半身と軸脚の太ももは水平にする、(3)軸足(足部)は最低限ベルトよりも高く、できれば頭より上にあげる。この3つの姿勢を揃えた上で、非軸脚側の股関節の上に乗っかるという意識で、投球後に5秒以上立ってみてください。

傾きながらの5秒や、ふらつきながらの5秒ではダメですし、バランスを取る練習にしてしまってもダメです。上記の姿勢で非軸脚側の股関節に乗っかるという意識で、ふらつかずに5秒以上立てるようになってください。この非軸脚が投球動作の土台になりますので、安定して5秒以上立てれば土台は安定していると判断して良いと思います。

そして5秒以上立てる非軸脚の形を作ることができると、体重移動を完了させられる動作環境も同時に整えることができます。逆に5秒立てない非軸脚では体重移動を完了させられず、中途半端な体重移動になってしまう分球速がアップすることもありません。そして土台が安定していなければ、その上で動かす運動軸も安定しなくなりますので、球速がアップしないだけではなく、軸がぶれる分制球力も低下することになります。

全力投球で5秒立つ必要はありません。8〜9割くらいの力加減で投げて5秒立てればOKです。5秒立てない選手であれば、余裕で5秒立てるようになるだけでもパフォーマンスは向上するはずです。ぜひ普段の練習に、この5秒立ちを取り入れてみてください。

今回の投手育成コラムでは、球速をアップさせるための方法を少しお話ししてみたいと思います。球速をアップさせること自体はそれほど難しいことではありません。アップさせるための必要な技術というのは明確な理論で複数ありますので。難しいのはその技術を身につけられるかどうか、ということです。言い換えると、球速があまりアップしなかった過去のモーションを一度忘れて、良い動作を体に入れ直すことができるかどうか、ということになります。これができるかどうかであり、実は1つ1つの動作というのはそれほど難しくはないのです。


さて、それでは本題に戻ってテコの原理について話していきたいと思います。球速をアップさせるためには必要なモーションの1つとなります。野球用語で投げる側の腕をスローイングアーム、グラブ側の腕をリーディングアームと言います。テコの原理はリーディングアームが力点スローイングアームが作用点、そして軸が支点となります。ちなみに軸というのはスローイングアーム側の肩と非軸脚側股関節を結んだラインが投球・送球時の軸となります。軸は背骨ではありませんので注意が必要です。背骨を軸として使ってしまうと肘が下がりやすくなり、オーバーハンドスローでもサイドハンドスローでもボールにバックスピンを与えられなくなりますので、球質は大幅に低下します。

さて、投球時にテコの原理を使うことは非常に簡単です。リーディングアームをキャッチャーミットに向けて突き出す動作をエイミング、そこから巻き取る動作をスクロールと言うのですが、このスクロールを強くすることによって軸のスピン(ボディスピン)を鋭くし、スローイングアームの加速度をアップさせることによって同時に球速のアップを目指していきます。ちなみにこの時踏ん張りが弱く、股関節を上手く使えていない状態だと軸が安定しませんので、テコの原理も上手く作用しなくなります。

投球時のテコの原理とは、平たく言うと良いモーションによってリーディングアームで動作全体を強く引っ張る、ということになります。これが良い形で実現されていくと球速はアップしやすくなります。スローイングアームというのは、実はいくら一生懸命振っても球速アップには大きな影響は与えられないのです。なぜなら150キロのストレートを投げているピッチャーの手部の加速速度を計測しても、せいぜい110キロくらいだからです。120〜130キロのストレートを投げている際でも手部の速度はだいたい100キロ程度となります。

なので球速をアップさせるためにはスローイングアームを一生懸命振ることはもうやめて、まずはテコの原理を上手く使えているかどうかをチェックしてみましょう。もし自分でチェックの仕方がわからなかったり、間違ったやり方で練習することは避けたいという場合は、ぜひピッチングマスターコースに通ってみてください。

今回の投手育成コラムでは球速と回転に関して少しお話をしてみたいと思います。スポーツニュースではインパクトがあるため球速表示ばかりが報じられますが、しかし実際に重要なのは球速以上に回転の質なのです。


理想の回転とはもちろん垂直の回転方向でバックスピンをさせ、その回転数を少しでも多くすることです。ちなみに全盛期の松坂大輔投手のストレートが1秒間に41回転前後で、藤川球児投手が45回転くらいでした。これが一般的なプロ投手になると30〜35回転程度になります。つまり全盛期の藤川球児投手の回転数は、一般的な1軍レベルの投手よりも10回転も多かったということです。この回転数が火の玉ストレートの根源になっていたわけです。

では一般的なプロレベルのストレートを例に話を進めていきましょう。例えば150キロで35回転のストレートと、140キロで35回転のストレートとでは、どちらが打ちにくいと思いますか?普通に考えれば球速が10キロも違いますし、150キロというのは相当速いストレートになると思います。しかし実際に打者が打ちにくいのは140キロで35回転のストレートなのです。同じ回転数であれば、球速が遅いほど打者は差し込まれるようになります。

バックスピンというのはマグナス力という揚力を生み出し、ボールの下垂を防ぐわけですが、ここで重要なのは空気抵抗です。140キロと150キロとでは、150キロの方が空気抵抗はずっと大きくなります。つまりマグナス力(回転数)が同じであれば、球速が速いほど空気抵抗が大きくなり、初速と終速の差が広がることにより打者が打ちやすくなってしまうのです。さらに言えば、130キロで35回転であれば相当打ちにくいストレートになるということです。

例えば和田毅投手のストレートなどはこの種の球質となります。そのために130キロ台のストレートでも空振りを多く奪うことができたのです。ちなみに和田毅投手は、私と同じようなパーソナルコーチと契約しており、そのコーチのアドバイスによりハイレベルのパフォーマンスを実現させられています。

これが例えば140キロで35回転と、150キロで40回転であればもちろん後者の方が打ちにくくなります。回転数が増える分マグナス力が大きくなり、空気抵抗に負けにくい状態になるためです。

もし野球が陸上のような個人競技であれば、1キロでも速いストレートを投げることが重要になると思います。しかし投手の仕事は速いボールを投げることではなく、アウトカウントを増やすことです。そう考えるならば、実は球速アップよりも回転量と回転の質を向上させる方がはるかに重要なのです。

なお回転量と回転の質を向上させるためには、非軸足側の股関節の使い方が重要となり、ここを適切な形で使えていないと回転数はなかなか増えていきませんし、回転軸も垂直からどんどん遠ざかってしまい、スライダー回転に近づいてしまいます。ちなみにバックスピンストレートはオーバーハンドスロー、スリークォーター、サイドハンドスロー、アンダーハンドスローのどの投げ方でも投げることは可能です。ただし、股関節を適切に使えていることが条件となります。

当野球塾のピッチングマスターコースでは、股関節を使い方を改善することによって球質を最適化するという内容のコーチングを行なっています。ストレートの回転の質、回転数を向上させたいという方は、ぜひピッチングマスターコースに通ってみてください。

球速アップは投手であれば誰もが望むことだと思います。150キロのボールを投げられないよりは、投げられた方が良いのは当然です。150キロを投げられる投手の140キロと、140キロしか出ない投手の140キロとでは球質も大きく変わり、もちろん前者のストレートの方が打者は厄介に感じるようになります。


世の中には球速アップを唱う教則本や教則DVDが数え切れないほど市販されています。わたしもそのうちのいくつかを過去に拝見させてもらったことがありました。いや、でもそれにしても教則DVDは高いですね!球速アップに関する情報商材というものもあるそうですが、中には数万円するものもあるようです。

それらを拝見しとにかく気になった点は、球速をアップさせることばかりが述べられており、怪我をしにくい投げ方が詳しく解説されているものは、わたしが手に取った物の中では皆無でした。それどころか、怪我をするリスクが高いフォームを教えているものも数多くありました。元プロ野球選手が監修しているものも同様でした。きっと引退された後もスポーツ指導には絶対不可欠な解剖学や物理学などを勉強せずに書かれたのでしょう。しかし野球を続ける上で最も大切なことは怪我をしないということです。例え球速がアップしたとしても、怪我をしてしまっては無意味です。

筋肉の鍛え方、スローイングアームの振り方などで確かに球速は多少アップさせることができます。しかしそこに頼ってしまうとスローイングアーム側の肩肘に大きな負荷がかかる投げ方になってしまい、野球肩・野球肘になるリスクを高めてしまいます。これはコーチングの中でもお伝えさせていただいていることなのですが、実は怪我をしにくい良い投げ方こそが、最も球速・制球力がアップしやすい投げ方なのです。

当野球塾ではそのためのフォーム作りを、小学生から大人まで徹底してコーチングしています。ちなみにまだ癖が染み付いていない小学生世代が、動作改善の速度は一般的には最も速くなります。年代が上がるほど時間がかかるようになるのが一般的です。

当野球塾に通い出してから肩や肘に痛みが出なくなったという選手が大勢います。しかしこれは決して凄いことではなく、コーチング中に教わったことを普段の練習で正しく復習してもらえれば、誰にでも起こることなのです。

球速アップで重要なのはストップモーションであり、腕を振る強さではありません。150キロのストレートを投げた際のスローイングアームが振られる速度は、速くても110キロ以下です。つまりいくら一生懸命腕を強く振ったところで球速はほとんど変わらないのです。

シートベルトをせずに車に乗っていると想像してください。その車が対向車と正面衝突してしまったとしましょう。シートベルトをしていなければ、凄い勢いでドライヴァーは前方へと飛ばされてしまいます。この物理メカニズムと、球速アップのメカニズムはまったく同じなのです。

自分が乗っている車が自分のステップする側の脚、対向車が地面、ドライヴァーがボールです。車同士が勢い強くぶつかるほど、ドライヴァーも勢い良く吹っ飛ばされてしまいます。ピッチャーであれば、ステップする足の着地(位置エネルギー)が強くなり、その脚が鋼鉄の車体のようにハードに、上半身を突っ込ませないためのつっかえ棒として機能すれば、ボールが前方へと飛んでいく勢いを簡単にアップさせることができます。つまり球速がアップするということですね。

球速アップというのは必ず下半身の動作を主体にし目指していく必要があります。そうしなければ必ず肩か肘を痛めてしまいます。肩は消耗品、などとはよく言いますが、それはあくまでも肩に負担がかかる投げ方をしているからです。しかしそうではなく、肩肘への負荷が少ないフォームで投げていれば、よほどの投球過多でない限りは簡単に肩肘を痛めることはありません。

当野球塾ではとにかく怪我をせずにパフォーマンスをアップさせられる投げ方の指導を、2010年1月以来続けています。肩肘を痛めた経験がある方、もしくは今後痛めないように良いフォームを身につけたい方は、迷わずに一度、当野球塾の無料体験コーチングを受けにいらしてください。

球速アップとは現在最速120キロを、最速130キロにすること。この考え方は間違いです。もちろん数字的に、もしくは言葉的には間違っていません。しかし野球のスキルアップという観点からすると、この「考え方」は間違いです。正しくは、現在全力で投げて120キロの球速を、80%の力で投げられるようにすること。これこそが球速アップの正しい考え方であり、当野球塾でも変わらずに貫いている点でもあります。


ダルビッシュ有投手の言葉を借りるならば、筋肉量を増やし、少ないエネルギー量で筋出力を上げて球速アップを図る。これも球速アップの一つの方法ではありますが、当野球塾に於いては筋肉には頼らず、あくまでも技術向上により小さい出力でも球速をアップさせられる流れでコーチングを行なっています。

ストレートというのは数ある球種の中で、肩肘にかかる負荷は最も大きくなります。その理由は単純に、球速が一番速いからです。例えばストレートを100球投げるとかなり疲れますが、セーフティカーヴとも呼ばれるドロップを100球投げてもそれほど疲れません。体の構造に乗っ取った適切な動作でボールを投げられれば、実は変化球を投げても肩肘にかかる負荷は大きくならないのです。逆に体の構造に反した動作で投げてしまうと、変化球を一切投げていなくても簡単に肩肘を痛めるようになってしまいます。

肩関節は上下内外転、水平内外転、屈曲・伸展、内外旋と様々な動きができるわけですが、この中で投球時に使うのは内外旋のみです。セット(もしくはワインドアップ)からテイクバックに向かう際に、肘を肩線分上に入れるために少しだけ外転動作が入りますが、これは慣性(振り子の原理)によって行います。それ以降ボールを握っている間は内外旋動作しか使いません。

そしてこの内外旋には正しい順番があります。セットポジションから数えていくと外→内→外→内という順番になります。ですが少年野球の指導現場のほとんど99%は、2つめの外、つまりトップポジションを外旋ではなく内旋させるように教えてしまっているんです。本屋さんで売られている一般的な野球教則本の多くにも、体の構造に反した動き方が説明されてしまっています。

結論として何を言いたいのか?それはいくら筋肉量を増やしたところで、そこに技術がなければ意味はないということです。いくら筋肉を増やして球速をアップさせたとしても、怪我をしやすい投げ方をしていてはまったく意味がありません。

逆に体の構造に則った投げ方ができれば、球速をアップさせられる多数の技術を身につけられるようになり、筋肉に頼らなくても球速をアップさせられるようになります。ただし筋力トレーニングは必要です。良い投げ方で球速がアップしてきたら、筋肉を増やすことによって速球からの負荷を軽減させる必要があります。つまり筋肉は球速アップの道具ではなく、アップした球速からの負荷に耐えるためのプロテクターというわけですね。

球速が目に見えてアップしてきたら、高校以降で本格的な筋トレを始めれば良いと思います。中学生のうちは体育の授業でやるような基本的な筋トレのみにし、体の成長を筋肉で縛りつけないことが大切です。そして小学生に関しては筋トレは必要ありません。小学生のうちは敏捷性がアップしやすいので、それに関連したトレーニングをメニューに加えていくと良いと思います。

当野球塾に通っている選手たちも、プロアマ問わず95%以上もの選手が肩関節の内外旋が逆、もしくは一部間違っています。そして内外旋以外の不必要な動作を多く入れてしまっていることで怪我のリスクを高め、パフォーマンスを低下させてしまっています。プロもアマも同様ということを考えると、やはり小学生のうちから正しい投げ方を身につけることが大切だと言えます。いえ、違いますね。小学生のうちに大人が誤った投げ方を教えないということが何よりも大切です。

このコラムでもこれまで幾度となく書いてきましたが、球速は筋力アップによって上げるものではありません。確かに筋力アップをすれば、良くないモーションで投げたとしても腕を振る動きを速くすることができ、球速をアップさせることはできます。しかし初速と終速の差は大きくなり、スピードガン上の速度は上がったとしても、打者が感じる体感速度は低下してしまいます。さらには腕主体で投げてしまうため、怪我のリスクも大きくなります。


では球速はどうやってアップさせるものなのか?球速をアップさせるメカニズムは車の急ブレーキと同じメカニズムです。車を100キロのスピードで走らせていたとします。すると突然人が飛び出してきて急ブレーキを踏みます。何とか歩行者の前では止まれたものの、しかしもしこの時シートベルトをしていなかったらドライバーはどうなるでしょうか?ご想像の通りです。フロントグラスを突き破り、すごい勢いで吹っ飛んでいきます。みなさんはそうならないように、シートベルトはちゃんとしてくださいね。

さて、車の急ブレーキと球速アップにどんな関係があるのか?ピッチャーの急ブレーキはランディング以降の非軸足で行います。並進運動を良い形で行って、ランディング以降で非軸足で急ブレーキをかけることができると、並進運動が急速な動きの回転運動に変身するんです。この鋭い回転運動が手に持ったボールを最大限加速し、球速がアップするんです。

ソフトボールのピッチャーをご存知でしょうか?球速をアップさせるために下から振ってきた手を太ももにぶつけて急ブレーキをかけます。手を太ももにぶつけるのとぶつけないのとでは、ソフトボールの球速は大幅に変わってきます。

野球のピッチャーの場合は腕は下半身よりも上部で振りますので、非軸足でブレーキングしていきます。非軸足の膝がランディング直後からすぐに伸びていってしまうピッチャーがいますが、これはブレーキングできていない動きですので球速はアップしません。また、このタイミングで膝が伸びてしまうとハムストリングスという大きな筋肉を球速に対して影響させられなくなります。

筋肉量はまったく同じだったとしても、今まで非軸足でブレーキングできていなかった投手ができるようになるだけでも球速はアップします。しかも腕を振るための腕の力を使う必要がありませんので、肩肘を痛めるリスクも軽減させることができます。さらに重心も上がりにくくなりますので、ストライクゾーンの低めに伸びのあるボールを投げられるようにもなるんです。

筋肉を増やしていくら球速をアップさせても、打者が打ちやすいボールではまったく意味がありません。投手の仕事は速いボールを投げることではなく、打者からアウトを取ることですので。もし今まで体格や腕力に頼ってファストボールを投げようとしていたならば、今日からはブレーキングによって自然と球速がアップする良い投げ方のマスターを目指して頑張ってください!