「変化球」と一致するもの

ページ更新日:2022年10月15日

タイミングを取れない打者がノーステップ打法で陥りやすい落とし穴

ミート力をアップさせるためには、タイミングの取り方も上手くなっていく必要があります。バットを出したいところに出してスウィートスポットでボールを捕らえたとしても、タイミングが合わなければ力強い打球を打っていくことはできません。

そしてタイミングを上手く取れない選手、もしくはタイミングを取るのが上手くない選手を指導する監督コーチが陥りがちな落とし穴があります。それはタイミングを取りやすくしようとして、選手たちにノーステップ打法で打たせてしまうことです。しかしこれは逆にタイミングをまったく取れなくなってしまいます。

右バッターの場合は左足、左バッターの場合は右足でリズムを刻んだり、踵をタップすることによってタイミングを計ります。この動作のことをタッピング、もしくはステップオンと言います。そして実際にステップしていく動作によって最終的なタイミングを合わせていきます。

つまりノーステップ打法で打とうとすると、タイミングを取るための動作を省略してしまうことになり、逆にタイミングを取ることが非常に難しくなってしまうんです。

ノーステップ打法では打球は飛ばない

プロ野球選手でもメリットを得にくいノーステップ打法

バッティングは「動」から「動」でスウィングしていかなければなかなか上手くいきません。しかしノーステップ打法だと、「静」から「動」のスウィングになりやすいため、タイミングを合わせにくくなるだけではなく、エネルギーを効率的にインパクトに伝えていく動作の難易度も高くなってしまいます。つまり上半身に頼ったスウィングになりやすい、ということですね。

プロ野球選手にも何人かノーステップ打法に取り組んだ1軍レベルの選手がいましたが、最終的にはそのすべての選手がステップをする打ち方に戻しています。

ノーステップ打法に挑戦したプロ野球選手のほとんどがステップする打ち方に戻したということは、ノーステップ打法にはそれほどのメリットはなかったということです。メリットが多ければ、当然彼らもノーステップ打法を続けていたはずです。

ノーステップ打法でメリットを得られるタイプの選手とは?

これは7〜8人の僕のレッスンを受けてくれた生徒さんたちから聞いたお話なのですが、彼らはレッスンを受ける前はバッティングの基礎が身についていなかったことから、中高の野球部でほとんどヒットを打てずにいました。

すると監督から強制的にノーステップ打法に変えさせられてしまったそうです。ちなみに7〜8人の中高生の生徒さんたちはすべて違う学校に通う選手たちですので、もちろんノーステップ打法を強制した監督もすべて違う方です。

ノーステップ打法というのは、打てない選手が打てるようになるために取り組むべき打ち方ではありません。逆に打てていない選手は絶対にノーステップ打法は避けるべきです。ではどういう選手ならノーステップ打法でメリットを得られるのでしょうか?

上半身の筋力、下半身の筋力が共に鍛え抜かれていて、特に体幹の鍛え方が凄まじく、さらにその体幹を使いこなせるタイプの選手であれば、ノーステップ打法でメリットを得られることもあります。

言い方を変えると、タイミングを外されたとしても圧倒的なパワーによって、詰まっても先っぽでも強い打球を打ち返せるタイプの筋骨隆々の選手です。メジャーリーグでは、中南米の選手が圧倒的なパワーによってノーステップ打法で打つ選手が少なくありませんが、それでもノーステップ打法よりも、スモールステップ打法の方が近年はメジャーリーグでも主流です。

ノーステップ打法のメリットは、ステップをするという動作を省略する分、より長くピッチャーのボールを見て打つことができるという点です。そのためコースや球種の見極めは少しだけやりやすくなります。しかしスウィング速度が速くない場合は、ボールを長く見た分振り遅れやすくなりますので、やはりメリットがあったとしてもそのメリットを活かすのは難しくなります。

中田翔選手やT-岡田選手もこのあたりのメリットを求めてノーステップ打法に取り組んでいたと思うのですが、今ではふたりともステップをする打ち方に戻しています。中田選手やT-岡田選手のようなパワーがあっても、中南米の選手のようにノーステップ打法のメリットを得続けることはできませんでした。

ステップはタイミングを取るための必須動作

ノーステップ打法に取り組んでいるアマチュア選手は少なくはないと思います。ノーステップ打法では動作が減ることによって目線の位置の移動を最小限に抑える、という効果も期待することができるわけですが、野球のプロコーチである僕個人としてはオススメしたい打法ではありません。その理由はやはり、何らかのメリットがあったとしても結果的にはタイミングが取りにくくなってしまうためです。

非軸足を上げる動作というのは、タイミングを取るための動作です。つまりノーステップ打法というのはタイミングを取るための動作を省いてしまうことにより、タイミングを合わせにくくなってしまうわけです。タイミングとは、非軸足をタップしたり上げたりする動作によって、まず投手のタイミングに入っていきます。投手のタイミングに入っていくことができたら、今度はシンクロさせたタイミングを、自分のタイミングに誘導することによって、自分の好きなポイントで打てるようにバットを出していきます。

文章にすると結構長くなりますが、実際には長くても2〜3秒の間に起こる動作です。ここでノーステップで打とうとすると、ただ単純に投手のボールが飛んでくるのを待つ作業のみとなり、投手のタイミングに入っていきにくくなります。もちろん中にはノーステップの方がタイミングを合わせられる、という選手もいるかもしれませんが、非常に稀なケースで、僕自身はプロコーチ人生で一度もそのような選手に出会ったことはありません。

大谷翔平選手の打ち方を見ながら考えるノーステップ打法

大谷翔平選手はノーステップ打法だと話されている野球解説者(元プロ野球選手)の方もいらっしゃいますが、大谷選手のバッティングフォームを見る限りでは、小さなステップをしており、ノーステップ打法ではありません。ノーステップどころか、踵を使って3〜4回以上小刻みにステップオンして、長い時間を使って自分のタイミングを投手のタイミングに合わせ、そのタイミングを自分のタイミングに引き寄せながら打っています。

ノーステップ打法というのは、基本的にはステップはせずにいきなり体重移動から始める打ち方のことです。しかし大谷翔平選手の場合は踵を使ってステップオンを繰り返し、そこから踵だけを浮かせて小さくステップして、スタンスの幅を変えることなくタイミングを計っています。つまりこれはノーステップ打法ではなく、スモールステップ打法です。野球指導者の方は特にこの2つを混同しないように注意が必要です。

ノーステップ打法ではない大谷翔平選手の打撃フォーム解説

タイミングを合わせられない打者は2ステップ打法を試そう!

バッティングというのはタイミングを合わせる作業です。タイミングさえ合ってしまえばかなり高い確率でスウィートスポットにボールをぶつけていくことができます。逆にタイミングを外されてしまうと、スウィートスポットにボールが当たったとしてもバットは力負けして凡打となってしまいます。

ピッチャーはとにかくバッターのタイミングを少しでも外そうと様々な策を講じてきます。バッターはそんな中でタイミングを合わせていかなければならないため、なかなか正確に打っていくはできません。だからこそプロ野球でさえ3割打てれば一流と言われているのです。

でもこのタイミングを合わせやすくする方法があるんです。それは2ステップ打法です。2ステップ打法で最初に有名になった選手はベーブ・ルース選手ではないでしょうか。ベーブ・ルース選手は打つ際に、投手のタイミングに入って行きやすいように2ステップ踏んでからバットを振り始めていました。

ベーブ・ルース選手が活躍した戦前は、当然ですが「80年代ボール」と呼ばれるスプリッターやチェンジアップの存在はなく、主な変化球はインカーブとアウトカーブくらいでした。球種が少なかったという時代背景もあり、ステップオンよりもタッピングの回数が少ない2ステップ打法であっても、タイミングを合わせやすくなったというわけです。

2ステップ打法で打率.393をマークしたベーブ・ルース選手

ベーブ・ルース選手の年間最高打率をご存知ですか?1923年に152試合に出場し41本塁打を打ち、打率は何と驚異の.393!しかしこれだけ打ってもこの年は、ベーブ・ルース選手は首位打者を獲得することができませんでした。1923年はデトロイト・タイガースのハリー・ハイルマン(タイ・カッブの教え子)が.403打って首位打者になっています。

近年は特にアマチュア野球指導者の間でノーステップ打法の指導が流行っていたりもしますが、ノーステップ打法で成績を向上させられるケースは非常に稀です。音楽をやっている方なら分かると思いますが、みんなで演奏を始める前には「1、2、3、4!」とカウントしてタイミングを合わせますよね?「1、2!」で始めるよりは、「1、2、3、4!」と4カウント取った方がタイミングを合わせやすくなります。

バッティングのリズムと同じで、ノーステップよりは1ステップ、1ステップよりは2ステップの方がタイミングを合わせやすくなります。ポイントは上半身でタイミングを合わせるのではなく、下半身でタイミングを合わせる動作を行うという点です。上半身でタイミングを合わせようとすると手が打撃フォーム全体を主導しやすくなり、手打ちになりやすいので注意が必要です。

もしタイミングを合わせられなくて打率がなかなか上がらない選手がいましたら、ぜひベーブ・ルース選手のように2回ステップする打ち方に挑戦してみてください。ノーステップ打法よりも遥かにタイミングを合わせやすくなるはずです。

ノーステップ打法よりも先に取り組むべきはステイバック

なかなかヒットを打てない選手に関しては、ほぼ間違いなくバッティング動作の基礎が身に付いていないはずです。ですのでその段階では絶対にノーステップ打法には走らずに、まずはステイバックモーションの習得を目指しましょう。

ノーステップ打法というのは応用中の応用ですので、基礎が身に付いていない選手がノーステップ打法に変えても、99.9%の確率で打てるようにはなりません。それどころか、ただ当てるだけのバッティングになってしまいます。もちろん0.1%を求めて取り組んでいただくのは選手個々の自由であるわけですが、しかしもし僕が生徒さんにノーステップ打法に関する相談をされた場合は、プロコーチとして一旦その生徒さんを立ち止まらせて、まず本当に必要な基礎が身についているかどうかを確認します。

僕の経験上、ノーステップ打法に取り組もうかどうか考えている選手から相談を受けた時、その選手(小学生〜高校生)に、バッティングに本当に必要な基礎動作が身に付いていたケースは皆無でした。

ですのでノーステップ打法に取り組む前に、まずはしっかりとしたバッティングの基礎動作を見直すようにしてください。もしご自身では分からない場合は、僕がレッスンをしているオンデマンドレッスン動画をご覧になってみてください。バッティング理論や動作改善法を小学生にも大人にも分かりやすくレッスンしています。

カズコーチのレッスン動画
ノーステップ打法のメリット・デメリットを徹底解説!

ノーステップ打法のメリット・デメリットを徹底解説!

体重移動をして頭を移動させずに打つことはできない!

長打力をアップさせるためには、まず根本的なミート力が不可欠です。ミート力が低ければバットにボールは当たらず、長打どころかヒットさえ生まれません。打率を上げるためにも、長打力を上げるためにも、やはりまずは基本的なミート力の向上が必要になります。

日本の少年野球で野球を教わると、99.9%は体重をボールにぶつけていく、体重移動をする打ち方を教え込まれてしまうと思います。しかし体重移動をする打ち方をして、頭をまったく移動させずにスウィングをすることは物理的に不可能なんです。

少年野球のコーチたちは体重移動をする打ち方を教えながらも、しきりに「頭を動かさずに打て」と言いますよね?でもこれはまさに矛盾した指導となります。

体重移動をしても頭を動かさずに打てる!でも!!

もちろん体重移動をしても頭を移動させずに振ることはできます。しかしそれだとガッツリ体重移動をすることはできず、頭を移動させずに打つためには体重移動を半分くらいに留めておく必要があります。でもそれだど、根本的に体重移動をして打つ意味がありません。

例えばインパクトの瞬間に、体が二等辺三角形に見えるバットスウィング、これを良しとする野球教則本も多数ありますが、スポーツ科学的にはこれは間違いです。ちなみにこれを良しとしている野球教則本で、その科学的根拠を述べているものは皆無です。

まず二等辺三角形で打ってしまうと、必ず股関節で軸(上半身と非軸脚を結んだライン)が折れ曲がってしまいます。そして軸が折れ曲がればスウィングは遅くなりますし、さらに軸が折れ曲がることにより短くなれば、スウィングに大きなブレが生じ、ミート力を低下させる原因となってしまいます。

ミート力を向上させたければ今すぐ体重移動はやめよう!

体重移動をする打ち方をウェイトシフト、体重移動をしない打ち方をステイバックと言います。今プロ野球でもメジャーリーグでも、毎年のように安定して好成績を残しているバッターのほとんどがウェイトシフトで打っています。しかし未だに体重移動をして打っているバッターは、例えアマチュア時代に輝かしい成績を残していたとしても、プロでは鳴かず飛ばずである選手が非常に多いんです。

正直なところ、アマチュア野球ではある程度は体格とセンスだけで通用してしまうことがあります。甲子園レベルでも然り。しかし99%の選手は体格やセンスに恵まれているわけではありません。ということはやはり、しっかりと科学的に正しい技術を身につけていかなければ安定した成績は残せない、ということになります。

言い方を変えれば、科学的に正しいフォームを身につけることができれば、体格やセンスは関係なく試合でたくさんのヒットを打てるバッターになれるということです。プロ野球でもいますよね?体格に恵まれていないのにヒットをたくさん打っているバッターたちが。

あなたも今すぐ体重移動をやめれば、細身でも小柄でも良いバッターになることはできます。ウェイトシフトではなく、ステイバックを身につけて打てるようになりましょう。

ステイバックで打てるようになると打率も長打力も急上昇!

僕の生徒さんの99.99%も、レッスン前はウェイトシフト、もしくは中途半端なウェイトシフトで打っている選手ばかりでした。そのためほとんどの選手がシーズン打率3割をマークしたことがなく、1〜2割台を行ったり来たりという成績でした。

しかし僕のオンラインレッスンによってウェイトシフトをマスターした生徒さんたちは、スウィング中に頭がまったく動かなくなり目線が安定し、軸回転も綺麗な一直線で安定してスウィング速度が速くなり、ミート力が向上するだけではなく、長打力アップにも成功しています。シーズン打率3割・4割も当たり前です!

例えば軟式野球チームに入っているこちらの小学生の、僕のレッスンを受ける前と、受けた後のスウィングを見比べてみてください。

まるで別のバッターのようですよね?レッスン前は打球が二塁ベースにも届かなかったのですが、レッスン後は打率も急上昇し、センターの頭を越える打球も打てるようになりました。もちろんビヨンドなしでです!

こちらの小学生がまさに、僕のレッスンによってステイバックをマスターすることができた選手のひとりです。

レッスン前はこれだけ基本ができておらず、ヒットもまったく打てなかった子でも、僕のレッスンを受けていただければこれだけフォームが良くなり、成績もみるみるアップしていくんです!
(ちなみに小学生だけではなく、草野球選手の生徒さんも多いんですよ)

ここまで読んだら、もう体重移動を続けようとは思いませんよね?

体重移動をする打ち方が、なぜ日本だけでここまで広がっているのかと言うと、時代は沢村栄治投手の頃に遡ります。当時も日米野球が行われていたのですが、この頃の日米選手の体格差はまさに大人と小学生ほどあって、日本人選手がまともにバットを振っても打球がまったく前に飛ばなかったんです。

そこで選手たちが考えたのが体重ごとぶつかっていくように打つ打ち方、つまり体重移動をするウェイトシフトという打ち方でした。この当時はアメリカ人選手もまださほど多くの変化球は投げていなかったため、ストレートに的を絞っておけば、体重移動をしてもある程度ヒットを打つことはできました。

以来、日本の野球界ではひたすら体重移動をする打ち方が教え込まれてしまうようになったんです。そしてこの体重移動をする打ち方の刷り込みこそが、日本人打者がなかなかメジャーリーグで活躍できない原因になっています。

ステイバックで打てると利き手をメインとして使える!

バットスウィングにおいては、両手は同時に均等に使うわけではありません。体重移動をするとボトムハンド(グリップの下になる手)がメインとして使われ、ステイバックだとトップハンドがメインになります。そして通常はトップハンドが利き手になります。

右打者のほとんどは利き手が右手、左打者のほとんどが利き手は左手だと思います。ステイバックで打てるようになると、反対の手よりも力があって器用な利き手をメインにしてバットを振っていけるため、正確性も飛距離も伸びやすくなるんです。

ちなみに両方の手を均等に力強く使ってしまうと、押されても負けない力強さはアップしますが、スウィング速度は大幅に低下してしまうため、打撃成績を向上させることは難しくなります。

バットスウィングが遅いと、かなり早いタイミングでバットを振り始めなければならないため、ボールの見極めも困難になり、選球眼も悪化してしまいます。

ミート力を向上させるためのまとめ

ミート力を向上させたければ、とにかく今すぐ体重移動はやめて、ステイバックモーションの習得を目指してください。しかし生兵法は怪我の元です。即席で受け売りの知識でマスターしようとすると、どこか間違った動作になってしまうケースが非常に多いため、僕のようなプロコーチのレッスンや、お近くの野球塾に通うようにされてみてください。

現状、少年野球チームや野球部の指導者がステイバックを科学的に理解しているケースはほとんどないと言っても過言ではありません。もちろん中にはしっかりと勉強され、正しく理解されている方もいらっしゃいますが、そのような勉強熱心な方は、少年野球や野球部の指導者の中にはほとんどいないと思っておく方が無難です。

ということで長くなりましたが、ミート力を向上させるためにはとにかくステイバックを身につけることが重要である、ということについてお話しさせていただきました。

数種類のフォークボールを簡単に投げ分ける方法

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フォークボールにもメリットとデメリットがある

フォークボールを投げられると投球の幅が一気に広がります。しかしスライダーやカーブと比べると、フォークボールの難易度はやや高いんです。その理由はやはり、特殊な握り方にあるのではないでしょうか。

そしてフォークボールはその習熟度が低かったり、多投し過ぎると肘への負荷が大きくなる変化球としての知られています。良い投げ方で多投しなければそう簡単に肘を痛めることはないと思いますが、しかし習熟度が低い投手は要注意です。

野球の教科書:フォークボールの持ち方、必要な握力などを徹底解剖!

フォークボールに握力は必要なのか?!

僕がまだ肩を怪我する前のメインの持ち球はドロップとシュートとフォークボールでした。スライダーやチェンジアップ、シンカーやパームやナックルといった球種は一通り投げられたのですが、比較的自在に操れた球種がこの3つでした。ちなみに僕のスライダーは縦に曲がるヴァーティカルスライダーだったため、フォークボールを投げられればスライダーを投げる必要はほとんどありませんでした。

フォークボールの握り方はシンプルです。人差し指と中指を思いっきり開き、ボールの赤道付近にその2本の指を置いて挟みます。握力が重要、と言われることも多いフォークボールですが、僕の握力は50kg弱と比較的弱かったため、かなりの握力がないと投げられない球種、というわけではないと思います。重要なのはどれだけ回転数を減らせるかということであり、強く握ることではありません。回転数を減らしてストレート同様に投げるからこそ、ストレートが突然落下していくんです。つまりマグナス力を発生させない、ということですね。

手首を立てておかないと抜けやすいフォークボール

ストレートがすごく速いピッチャーの場合はスプリッターも効果的ですが、高校野球以上でストレートが140km未満の場合はスプリッターよりもフォークボールの方が有効です。ストレートが遅いピッチャーがスプリッターを投げても、落ちる幅が打者に見極められやすいためです。ですので130km台以下のピッチャーは、スプリッターよりもフォークボールの習得を目指した方が打者を抑えられるはずです。

フォークボールを投げる注意点としては、やはり手首をしっかり立てておくということです。投球時に手首を前後に曲げてしまうと、フォークボールはすっぽ抜けやすくなり、高めに浮くことも多くなるため、落ち幅があったとしてもバットが届くところに行ってしまいます。ですのでフォークボールを練習する際は、しっかり手首を真っすぐに立てた状態で投げるように注意してください。

下手な投手がフォークを投げると肘を痛める?!

さて、フォークボールを投げるヒントとしてもう1点。親指の位置やボールの握る場所をいろいろと変えてみてください。例えばボールの同じ場所を挟んでいたとしても、親指を置く場所を変えるとスライダーやシュート回転を加えられるようになり、カーブやシンカーのように曲がるフォークボールを投げることもできます。

フォークボールは人差し指と中指に力を入れすぎると連合反応により薬指と小指にも力が入りやすくなります。習熟度が低い投手はこの点をしっかり注意して練習をしてください。小指の筋は肘に繋がっているため、この指が力んでしまうと肘がロックされるようになり、肘を痛めやすくなります。どんなに落差があっても怪我をしては意味がありませんので、肘を痛めないようにこのあたりのポイントにも注意しながら練習をしてみてください。

投げ方を間違わなければシュートで肘を痛めることはない!

シュートには良い投げ方と悪い投げ方があります。僕は仕事柄プロ野球選手とお話をさせていただく機会も多いのですが、12球団の投手コーチや選手の中にも、シュートは肘を痛めるから避けている、という方がけっこう多いんです。

シュートは確かに投げ方を間違えると肘を痛めますが、しかしそれはスライダーもカーブも同じです。ですが投げ方さえ間違わなければ、シュートを投げることによって肘を痛める、ということにはなりません。

肘を捻ってシュートをかける投げ方は絶対にダメ!

まず、なぜ多くの方がシュートを投げると肘を痛めると思っているのかを考えてみましょう。その原因は単純で、リリース時に意図的に肘を内側に捻るような動作でボールにシュート回転を与えようとするからです。この投げ方ではシュートでもスライダーでも、どっち回転のボールであっても肘を痛めてしまいます。

変化球というのはどの球種に関しても絶対に肘や手首を捻ったり、無理やり回転を与えようとしてはダメなんです。仮にそうしてしまうと必ずストレートと違うフォームで投げることになってしまいます。すると野球のレベルが上がるほど球種が打者にばれやすくなりますし、球速が上がるほど肘を痛めるリスクも高くなります。

シュートには2種類の投げ方がある!

シュートには主に2種類の投げ方があります。まず1つ目はリリースポイントをストレートのリリースポイントよりも遅らせる投げ方です。ストレートのリリースポイントを少しだけ通り過ぎ、手のひらがやや外側を向いた状態でリリースを迎えることにより、ボールにシュート回転を与えられるようになります。

ちなみに肩関節を曲げながら(水平内転させながら)投げてしまう手投げの選手は、腕を強く振れば振るほど手のひらが相手と正対したポイントを通り過ぎたところで投げるようになり、ボールがシュート回転してしまいます。しかし投手が「意図して」この投げ方でシュートを投げても肘が不自然に捻られることはありませんので、痛めるリスクも最小限に抑えられます。ただし下半身の動作が安定しておらず、股関節をしっかり使いこなせていなければ、この投げ方では肘を痛めにくい良いシュートは投げられません。

自動的にシュート回転になる握り方を覚えよう!

もう1つのシュートの投げ方は、握り方を変えることによって自動的にシュート回転させていく投げ方です。ただしこの投げ方はすっぽ抜けやすいため、フォームの完成度が低い投手にはお勧めできません。しかし肘を痛めるリスクはほとんどなくなります。投げ方そのものは簡単で、ツーシームの握り方で人差し指を折り曲げて、その人差し指の指先でボールを押さえる握り方をするだけです(中指は普通の握り方のまま)。

この握り方でストレートを投げるように、右投手なら真ん中から右側、左投手なら真ん中から左側を狙って投げるだけでボールはシュートしていきます。ちなみに真ん中から反対側に投げてしまうとシュートはせず、ただの棒球になってしまうため要注意です。日本では小学生の変化球は肘を痛めるという理由で禁止されていますが、しかしストレートよりも球速が遅い分、投げ方を間違わなければ変化球によって肘を痛めることは実はないんです。でも大人が間違った変化球の投げ方を教えてしまうために、子どもたちが肘を痛めてしまうんです。

もし肘を痛めにくい良い変化球の投げ方を身につけたいようでしたら、ぜひ僕のオンラインレッスンを受けてみてください。わかりやすく丁寧に、理論的にレッスンさせていただきます!

「変化球」を英語で言えますか?

さて、皆さんは変化球を英語で言うことはできるでしょうか?Changing ball?もちろん違います。curve ball や two seams などはよく知られる変化球の種類の名前ですが、変化球という言葉そのものを英語で言うと、あまりピンと来ない方も多いかもしれません。

Breaking ball、この言葉を聞いたことがある方は多いと思います。これが変化球を表す英語です。curve ball や two seams などは、breaking ball の一種、ということになります。

Breaking ball とはその名の通り、途中まではストレートに見えていた球にブレーキがかかって、ボールが突然止まったように見えることから、ブレーキングボールと呼ばれています。Breaking ball という言葉が使われ始めた頃は、まだカーブ以外の変化球はほとんど開発されておらず、そのため breaking ball = curve ball と認識されるケースもありますが、これも特に間違いではありません。

これが例えば「変化球投手」だと "breaking ball pitcher" という形になります。ぜひ覚えておいてください。

2000年代に入ってからでしょうか。配球は捕手任せというプロ野球のピッチャーが非常に増えてきたように感じられます。もちろん配球を組み立てるのは捕手の重要な役割の1つであるわけですが、しかし大事な配球を捕手に任せ切ってしまうのは少し違うと思います。

投げたい球種と投げるべき球種

もちろんバッテリーは試合に挑む前には入念な確認を行っています。捕手は投手の要望を聞き、基本的にはその要望を元に配球を組み立てていきます。ですがお互いの考えを100%理解し合うというのは、現実的には不可能なことです。そのため時には疑問を感じる配球や、意図を理解できたとしても投げたくない球種というものがあります。このように少しでも疑問を感じたのであれば、投手は首を横に振るべきです。

配球には、投手側からすると投げたい球種と、投げるべき球種というものがあります。投げたい球種というのはウィニングショットであったり、その日調子の良いボールということになります。一方投げるべき球種というのは、ここまでの布石や打者の傾向を踏まえた上での球種ということになります。エースになりたいのであれば、やはりこの2つの選択肢から自分で決断を下せる投手になる必要があります。

サイン交換をしなかったプロ野球のバッテリー

投手を活かすも殺すも捕手次第、と言ったりもしますが、結局は投手を活かすのは投手自身なのです。自分で自身の長所や短所、そして打者との相性をしっかりと把握していなければ、いくら捕手が良い配球を組み立てたとしてもその投手は勝てるようにはなりません。配球通りに投げるというよりは、投手が投げたい球種のサインを捕手に出させる、くらいの気持ちでなければエースになることなどできません。

ちなみにその昔、プロ野球にサインを交換しないバッテリーがいました。名前はあえて挙げることはしませんが、その投手はノーサインでストレートと変化球を好き勝手に投げていたんです。もちろんこれはベテラン投手が若手捕手を信頼していなかったからこそではあるのですが、しかしゴリゴリのエースというのはそれくらいであるべきなのです。自分の配球には自分ですべての責任を負う、それこそがエースのあるべき姿です。

マウンドからサインを出していた昭和の投手たち

ノーサインで色々な球種を投げてこられた捕手は大変だったと思いますが、しかしその捕手は、この経験がのちの捕手人生に活きていったとも語っています。野球の試合は9割方投手で決まってしまいます。投手が良ければ援護は1点でも勝てますし、投手が悪ければ10点取っても勝てません。投手が打たれると捕手が叱られる、というシーンもよく見かけますが、でも結局は打たれたのは投手です。捕手ではなく、捕手のサイン通りに投げてしまった投手が悪いのです。

昭和のプロ野球には、捕手にサインを出す投手たちもいました。マウンドから捕手に対してサインを出すんです。打者にバレそうなものですが、しかしサインの出し方は頻繁に変えていくため、相手がサインを解読した時にはもう別の出し方になっています。実は僕自身、マウンドで投げていた頃はマウンドからサインを出した試合も多々ありました。自分のボールには自分で責任を持つ、そういう気持ちで投げられるからこそ、少なくとも僕の場合は捕手からサインを出してもらう時よりも良い成績を残すことができました。そしてサイン通りに投げる時よりも、野球がずっと楽しく感じられました。アスリートであれば、ポジション問わずプレーは能動的であるべきだと、僕は常々考えています。

先発投手の球種は多ければ多いほど良い、と考えられていることもありますが、それは決して正しくはありません。もちろん7色の変化球を投げられて、その7球種すべてが完成品だとすれば文句のつけようもありませんが、しかしそうでない場合は球種の多さが武器にならないケースも多いんです。

165キロの直球だけでは中学生でも打てる

まず先発投手の球種は、ストレートを含めて3〜4個あれば十分だと思います。3球種だけでも十分先発投手として配球を組み立てることはできます。例えばかつてオリックスなどでエースとして活躍した星野伸之投手のストレートは130キロにも満たないくらいですが、変化球はカーブとフォークボールだけでした。それでもプロ通算176勝を挙げています。つまりボールのスピードも、球種の多さも勝つためには大きな要素ではない、ということです。

では何が必要なのか?一番重要なのは制球力であるわけですが、その次に重要なのは変化です。スピードの変化、コースの変化、配球の変化などです。極端な話、仮に165キロのストレートを投げられたとしても、それだけを投げていれば中高生でも打ててしまいます。しかし120キロのストレートであっても、緩急をつけてその120キロを140キロに感じさせれば、簡単にバッターを打ち取れるようになります。

同じ球種に多様な変化をつけよう

例えば80キロ台のドロップを投げた後に120キロのストレートを投げれば、打者はそれを130キロにも140キロにも感じてくれるようになります。さらに外角低めのストレートを投げた後に内角高めの対角線に同じボールを投げるだけでも、打者の体感速度はアップします。

つまり、いろいろな変化球で変化を付けようとするのではなく、同じ球種に変化を付けていくということです。速度、コース、曲がり方など、変化の付けようは多様にあります。例えばスライダーだけを見ても、外に逃げていくスライダーと、打者を仰け反らせてからストライクゾーンに入ってくるスライダーがあります。たくさんの球種を覚えようとする前に、スライダーを内外どこにでも投げられるようにするだけでも、配球の幅は大きく広がっていくんです。

1つの変化球を2〜3年かけてじっくり育てよう

ダルビッシュ投手のように、どの球種をとっても一級品という場合は話は別ですが、しかしダルビッシュ投手と同じレベルにある投手など、プロ球界を探しても滅多にいません。だからこそ多様な変化球を中途半端に覚えるのではなく、1つの変化球を勝負球になるまでしっかりと育てることが大切なのです。一般的に1つの変化球をマスターするためには1軍レベルのプロピッチャーでも2〜3年かかると言われています。もちろん新しい球種を投げられるようにすること自体は簡単なのですが、その球種を自分のものとしてしっかり操れるようになるまでは、最低2〜3年はかかります。

2〜3年と言ったら、中高生であれば1つの変化球をマスターする前に中学野球、高校野球が終わってしまうことになります。だからこそいろいろな変化球に手を出すのではなく、「この球で勝負したい」という球種をじっくり腰を据えて育てていくようにしてください。リリーフピッチャーであればさらに、多くの球種は必要にはなりません。例えば究極な話をすると、マリアーノ・リベラ投手のように変化を付けたカッターのみを投げ続けるという配球でも成り立つんです。しかしそのためにはその勝負球が、しっかりと磨き上げられているということが必要になるわけですね。

2019年の後半戦、MLBと提携しているアメリカの独立リーグが革新的なルール変更を行うことになりました。それは打者走者の一塁への盗塁。今までは2ストライク後のみ振り逃げができるというルールでしたが、このルール変更が行われると、カウントに関係なく打者走者は一塁を狙えるようになります。

いくつもの弊害も予想できる一塁への盗塁

このルール変更が吉と出るか凶と出るかはやってみなければわかりません。挑戦する前から否定的な意見でチャレンジを妨げることはすべきではないと思います。でも確かに予想できる弊害は少なくありません。例えばパスボールやワイルドピッチは、これまでは基本的には走者がいなければそれほどケアする必要はありませんでしたが、今後は振り逃げができるカウント以外でもケアする必要があり、思い切って変化球を投げることが難しくなる可能性があります。

また、3フットラインの存在も再考が必要かもしれません。パスボールなどで一塁への盗塁をする場合、ファールエリアから一塁にボールが転送されるケースが多くなります。すると走者が仮に3フットラインを走ってしまうと、一塁手からすると送球と打者走者が重なるケースも多くなり、これはコリジョンルールの概念とは逆を行ってしまう形になります。

一塁に盗塁をすると打数はどうなるのか?!

さらに考えていくと、仮に打者走者が途中で盗塁を諦めた場合はどうなるのでしょうか?二盗であれば、一塁走者は一塁ベースに戻ることができます。しかし一塁への盗塁の場合、打者走者はホームプレートに帰塁することになるのでしょうか?それとも一度盗塁を企画したら、一塁ベース以外を目指すことはできなくなるのでしょうか。仮に振り逃げとまったく同じルールになるのであれば、打者走者はもう一塁ベースに向かって走るしかなくなるのでしょう。

しかし振り逃げと同じルールであるならば、一塁に盗塁すれば盗塁は記録されるのかもしれませんが、しかし記録上は三振になってしまうのでしょうか。それとも打数としては数えないのでしょうか。疑問として思い浮かぶことはこのように多々あるわけですが、でも新しいことにチャレンジすることは素晴らしいことだと思います。チャレンジしてみてイマイチだったら廃止してしまえば良いと思います。

デメリットばかりではない一塁盗塁という新ルール

しかし一塁への盗塁はデメリットばかりではないと思います。バッテリーは今まで以上にワイルドピッチやパスボールをケアしなければならないため、投球技術や捕球技術を今まで以上に向上させようとするでしょう。そして向上すれば一塁への盗塁を阻止できるだけではなく、すでに塁上にいる走者を無駄に進塁させるケースも減っていきます。

近年はバッターの進化ばかりがクローズアップされていますが、この新しいルールによってバッテリーも進化していくことができるのならば、このルールは決してデメリットばかりではないと言い切ることができます。例えばボールの回転方向を考えずにワイルドピッチを捕球しに行っていた捕手も、今後は回転の違いによるバウンド方向の変化もしっかり考えた上で捕球姿勢を作っていくようになるかもしれません。あまり好意的には受け止められていないこの新ルールですが、僕個人としてはとりあえず試してみる価値はあると思っています。

今回のスラッガー養成コラムでは、上から叩くようにして打つ癖をつけてしまうと、変化球を打てないバッターになってしまう、ということについて書き進めていきたいと思います。変化球を打てなくて悩んでいる選手は多いと思いますが、変化球の打ち方を知ろうとする前に、なぜ打てないのかという原因を改善させていく必要があるんです。

上から叩くと変化球を打てなくなる?!

なぜ上から叩くと変化球を打てなくなるかと言いますと、例えば右対右で投げられた外角へのスライダーを想定してみましょう。スライダーは捕手目線からすると、右下に向かって曲がっていきます。でももしこの時上から叩くようにして打ったらどうでしょうか?捕手目線ではバットが右上を向いているように見えるはずです。

つまり右下に向かうボールの軌道と、右上を向いているバットが十字に交差する一点のみでしか、バットをボールにぶつけていくことができなくなります。そのポイントを外してしまうと簡単に空振りをしてしまいますし、当たったとしてもボテボテのゴロになってしまいます。

スウィングプレーンはアッパー気味に!

でも上から叩くのではなく、体重移動をしないステイバック打法で、上半身を捕手側に傾けて、スウィングプレーンの角度をアッパー気味に下げていくと、右下に曲がっていくボールに対し、バットも右下を向くようになるんです。つまりボールの軌道のラインに、バットが重なるようになるんです。こうなることでヒッティングエリアが広くなり、空振りをするリスクを大幅に下げられるようになります。

さて、スラッガー養成コラムではよくアッパースウィングについて書いているわけですが、アッパースウィングと言っても、実はボールの軌道の下からバットを入れるわけではないんです。入れるまではボールの軌道の上からで、打った後にヘッドを振り上げていきます。打つ前にアッパーになってしまうと、キャッチャーフライや内野フライばかりになってしまいますので要注意です。

変化球の打ち方はいたってシンプル!

上から叩く打ち方にはメリットは1つもありません。軟式野球でさえもM号やJ号に変わってからは高く弾まなくなりましたので、高くバウンドする打球を打って、打球が跳ね上がっているうちに一塁ベースを駆け抜ける、という戦術は通用しなくなりました。

変化球の打ち方というのはシンプルで、バットのヘッドの角度をどれだけ下げられるか、ということが最大のポイントになってきます。でも勘違いしないでください。ヘッドを下げるわけではありません。バットと軸は直角の関係を維持しつつ、どれだけバットの角度を下げられるか、ということです。これを可能にできるのがステイバック打法の下半身の使い方というわけです。

カーブという球種にはいくつもの種類があります。普通のカーブ、タイトカーブ、パワーカーブ、スラーブ、スローカーブ、ドロップなどなど。投げる投手によって変わる十人十色の変化球と言ってもいいのかもしれません。今回はその中でも、ドロップというカーブについて少し書き進めてみたいと思います。

肩肘への負荷が最も小さいドロップ

ドロップとは縦に大きく割れるカーブのことです。岸孝之投手が得意とする球種ですね。ドロップという球種は正しい投げ方で投げることができれば、実はストレート以上に肩肘への負荷を小さく抑えることができるんです。その理由は単純で、トップポジションからボールリリースにかけてのアクセラレーションを半分しか使わないためです。

遅いボール=肩肘への負荷が小さい、とは言い切れないのですが、良い投げ方のドロップに関しては肩肘への負荷は非常に小さくなります。また、ドロップを投げるためには肘を柔らかく使わなければならないため、腕力に頼ったフォームではドロップは投げられないんです。つまりドロップを投げられるということは、肘を柔らかく使った良いフォーム、と判断することもできるわけです。

ドロップの投げ方

ドロップの投げ方は難しくはありません。中指の薬指側の側面を縫い目にかけて、人差し指はやや浮かせ、ストレートのリリースポイントの90°手前でリリースするだけです。するとボールはすっぽ抜けるようにしてリリースされ、一度やや上に投げ上げられます。しかしドロップにはトップスピンがかかっていますので、投げ上げられてもしばらくするとすぐに下に向かって曲がり始めます。

ストレートのリリースポイントの90°手前でリリースすると書きましたが、この時重要なのはトップポジションで肩関節がしっかりと外旋されていて、ボールリリースにかけて内旋させながらアクセラレーションを進められているか、という点です。肩関節はトップポジションからリリースにかけては、外旋過程の中で内旋されていき、ボールリリースでニュートラルになります。そしてリリース後に内旋過程の中でさらに内旋されていきます。

この肩関節の使い方でドロップを投げられるようになると、肩肘への負荷はほとんどなくなります。また、上述したように肘を柔らかく使う癖付けを行うこともできるため、ストレートを含めた他の変化球を投げる際も、柔らかい肘の使い方で投げられるようになっていきます。

ドロップから始めるキャッチボール

良い投げ方のドロップは、ストレートよりも肩肘への負荷が小さいため、キャッチボールをドロップから始めることもオススメです。何人かのプロ野球のピッチャーにもこのことを伝えたところ、その中の数名はキャッチボールをドロップから始めるようになりました。そして肘の動きを柔らかくした後でストレートを投げ始めると、ストレートの回転の質も今まで以上にさらに良くなっていきました。

ストレートの鍵はバックスピンの質です。近年はメジャーでエース級の投手たちも、ツーシームよりもバックスピンストレートを重視するようになってきています。そしてドロップを投げられる肘の使い方ができると、そのバックスピンの質を大幅に向上させられるようになるわけです。

ドロップという球種はこのように、メリットがたくさんあります。挑戦しないための理由はありません。仮に試合で使える球種に育っていなかったとしても、日常的にドロップでキャッチボールをすることにより、柔らかい投球フォームを身につけられるようになります。もちろん小学生の野球肘を防ぐ効果もありますので、大人も子供もチャレンジしてもらえたらと思います。