大谷翔平選手が本塁打を量産できている理由を徹底解説!

 

運動軸が体の外に大きくはみ出る大谷翔平選手の打撃フォーム

正直にいうと、僕は大谷翔平選手がメジャーでここまでホームランを打てるとは思っていませんでした。シーズン25〜30本くらいは打てるのではないかとは思っていましたが、まさかホームランキングを争えるレベルで本数を積み重ねることができるとは、メジャー移籍した時には予想できませんでした。

その理由は技術的な面に加え、大谷選手が右投げ左打ちであるためです。大谷選手のようにステイバックで打つ打者の場合、メインで使われるのはトップハンドとなります。左打者の場合左腕となるわけですが、大谷選手は投げたり箸を持ったりするのは右で、利き手は右手となります。そのため利き手をメインとして使うことができなくなるため、長打力は松井秀喜選手を上回ることはないだろう、と以前僕は考えていたわけです。

ですがメジャーで活躍する大谷選手のバッティングフォームを観察すると、松井選手とは大きな違いがあることがわかります。それは運動軸がどれだけ体の外に飛び出しているか、という点です。松井選手も軸を体の外に出して打つことがあったのですが、大谷選手の場合はほとんどのヒットで軸を体の外に出して打っているんです。

スポーツをする際の軸は、体の柱となる体軸(だいたい背骨だと思ってもらって良いと思います)と、スポーツ動作をするための運動軸という2つの軸が存在します。バットを鋭く振っていくという動作は運動軸を使っていくわけですが、体軸を運動軸として使ってしまうとバットスウィングが遠回りしやすく、スウィング速度がアップしにくくなります。

しかし大谷選手の場合、運動軸が体の外に大きくはみ出ているんです。そのためあれだけの長身であるにもかかわらずバットスウィングが非常にコンパクトで、鋭い軸のスピンを可能にしています。この運動軸の体外へのはみ出し方が、松井選手よりも大谷選手の方が大きいんです。

下半身主導でも上半身主導でもない、体幹主導の大谷選手の打ち方

大谷選手のバッティングフォームを見ると、体幹の強さが人並み(普通のプロ野球選手)以上であることが伺えます。しかもその鍛え抜かれた体幹をものすごく上手く使っているように見えるんです。一般的にはバットは下半身主導で振っていくべきなのですが、大谷選手の場合は体幹主導で振っています。

体幹主導と言っても、決して上半身主導という意味ではなく、手打ちになっているわけではありません。難易度としては、非常に高いレベルのバッティングフォームで打っていると言えます。通常であれば軸足の回転によって、非軸脚股関節を内旋させることにより下半身主導のスウィングを作っていくのですが、大谷選手の場合は体幹主導で右股関節を内旋させています。

そのため、右股関節は深く内旋させられているのですが、軸足の始動に関しては通常よりもかなり遅れて動き始めます。体幹のスタビリティを非常に重要視する外国人選手にはよく見られる打ち方なのですが、日本人選手にはほとんど見られない打ち方です。

良い選手の真似をして上手くなろう!とは指導者がよく言うことですが、しかし大谷選手のフォームは、イチロー選手のフォーム同様に特殊なフォームだと言えます。そのためフォームの見た目は真似できたとしても、メカニクスまでは真似することはできないと思います。

ノーステップ打法と言われることもある大谷翔平選手のフォーム

大谷選手のフォームはノーステップ打法だと言われることも多いようですが、実際にはノーステップではなく、スモールステップ打法です。しっかりとステップをしていくことによってタイミングを計っています。

ウォーレン・スパーンというメジャーで363勝した名投手がいます。彼は「バッティングはタイミングがすべてだ。そしてピッチングの極意はタイミングを外すことだ」と語っていますが、大谷投手は右足のステップによってタイミングを計るのが非常に上手い選手です。このタイミングの取り方に関しては体幹は関わってこない部分ですので、どんどん真似していって良いと思います。

ウェイトシフト打法ではステップしていく際に生じる位置エネルギーをパワーに換算していくため、ステップをする動作でタイミングを計るということがやや難しくなります。そのためウェイトシフト打法は、ステイバック打法に比べるとタイミングを取りにくくなります。

バッティングはタイミングがすべて、と考えるのであれば、よりタイミングを取りやすいステイバックで打つことが理に適っていると言うことができます。また、大谷選手はテイクバックで間を作ることも上手く、ここでもタイミングを上手く計れているように見えます。

大谷翔平選手と松井秀喜選手の一番の違いは左肘の上げ方

大谷翔平選手の長打力を見ていくと、フライングエルボーの影響も大きいと言えます。フライングエルボーとはテイクバックした際にトップハンドの肘を肩の高さまで上げるフォームのことなのですが、日本では「脇が開くからダメ」という間違った指導をされるケースが多いんです。しかしフライングエルボーはバットスウィングを速くするためには非常に効果的で、海外のリトルリーグでは基本的にはフライングエルボーでテイクバックするように指導されます。

大谷翔平選手と松井秀喜選手には軸の使い方に違いがあると上述しましたが、最も違うのはこのフライングエルボーの有無です。松井選手は巨人時代はもちろん、ヤンキースに移籍してからもフライングエルボーにはしていません。もし松井秀喜選手がフライングエルボーを取り入れていたら、メジャーでも40本以上打てたかもしれませんね。

一方大谷選手はフライングエルボーを取り入れています。そのためバットスウィングの加速度をより高めることができています。体が万全という条件で大谷選手と松井選手を比較すると、このフライングエルボーの有無が本塁打数に影響していると言って間違いないでしょう。

ちなみにこのフライングエルボーというテクニックは、上半身主導で振ってしまうと差し込まれやすいスウィングになってしまいます。大谷選手の場合は体幹主導のスウィングで、深いフライングエルボーと体幹主導の始動によりラギングバック(割れ)を強くし、いわゆるタメを使って打つことができています。

ファイターズ時代から大幅に進化したエンゼルス時代の大谷選手

このように大まかな部分を見ていくだけでも、大谷翔平選手がいかにレベルの高いバッティングフォームで打っているのかがよく分かります。大谷選手のフォームを総合的に真似することは難易度が高すぎて難しいと思うのですが、部分的にであれば小学生であってもどんどん真似していくべきだと思います。

大谷選手は決して天性の才能だけで打っているバッターではありません。大まかな部分を上述した通り、バイオメカニクス(科学的フォーム分析)の観点でも理に適ったフォームで打っているバッターです。

ちなみに軸や体幹などの使い方に関しては、ファイターズ時代よりもはるかにレベルアップしています。ファイターズ時代のフォームを見る限りでは本塁打王は難しいだろうという僕の意見でしたが、リハビリ中に身につけたストレングスや難易度の高いフォームを改めて見ていくと、本塁打王になってもまったく不思議ではないバッターだなという考えに変わりました。

もしかしたら渡米した年齢も影響しているのかもしれませんが、大谷選手はメジャー移籍後にさらにレベルアップしました。日本人選手がメジャーでさらにレベルアップするためには、やはりもう少し早い年齢で渡米できるようになるのがベストなのかもしれませんね。完成形でメジャーに行くよりも、大谷選手のように伸び代を持った状態でメジャーに行った方が、アメリカで活躍できる確率は高まるのかもしれません。

✏️コラム著:Kaz(野球専門プロコーチ)
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