佐藤輝明選手の体幹主導型打撃フォームを徹底分析!

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体幹が強いとすぐに分かる佐藤輝明選手の打撃フォーム

今回のスラッガー養成コラムでは、阪神タイガースのルーキー佐藤輝明選手のバッティングフォームを見ていきたいと思います。前半戦が終了した時点で打率.267、本塁打20本という数字は、ルーキーとしては本当に素晴らしいものだと思います。将来的にはタイトルを獲得することだってできるスター候補だと言えるでしょう。

佐藤輝明選手のバッティングフォームを見て、もっとも強く印象に残ったのは体幹の強さです。バッティングには下半身主導、体幹主導、上半身主導という主に3つの形があるわけですが、佐藤選手は大谷翔平選手に近い体幹主導のバッティングフォームになっています。ただ、技術レベルを見ていくと、ルーキーであるため当然ではありますが、大谷選手のレベルには至ってはいません。

大谷選手の場合は左股関節を右股関節があった場所にぶつけながら骨盤を回旋させていくという、非常に難易度の高いスウィングで打っているのですが、佐藤輝明選手の場合、股関節や骨盤の動かし方はまだまだそこには至っていません。

体幹が物凄く強いのだろう、ということはスウィングを見ればすぐに分かるほどなのですが、今後股関節や骨盤の使い方がもっとレベルアップしていけば、打率と長打力を同時に、さらに向上させることができるはずです。平たく言えば打率.350をマークしながらも、40〜50本打てるようなバッターになれる伸び代があるということです。

まだ打撃フォームに無駄が多い佐藤輝明選手

タイトルを獲得するにはまだそれほど高い技術は身に付いていない佐藤輝明選手ですが、打率と長打力を同時に向上させていくためには、ステイバックの習得を目指すべきでしょう。

現在はどちらかと言えばウェイトシフトに近いフォームで打っています。そのためスウィング中に頭の位置が大きく移動してしまい、この目線のブレがミート力の低下を招いています。

体が元気でそれほどの疲れもなかったオープン戦や開幕直後は、コンディションの良さでボールもよく見えていたのだと思います。しかし体に疲れが溜まり始めると、ステップをしながら頭の位置を大きく動かしてしまうフォームのデメリットが目立つようになり、打率も少しずつ下がってきています。

これが大谷翔平選手のようにステイバックで打てるようになると、頭の位置は自然と移動しなくなるため、体に疲れが出始めてもミート力が大幅に低下することがなくなります。すると年間を通して打率.300以上をキープできるようになります。

ステップ幅に関しては柳田悠岐選手に近いと思います。やや狭くして、体感の強さによって軸を強烈にスピンさせることにより、バットスウィングを速くさせているタイプです。187cmという長身も柳田選手と共通していますので、このステップ幅の使い方には間違いないと思います。長身選手にフィットした形になっています。

ただやはり、ステイバックの話になると柳田悠岐選手はマスターしている一方、佐藤輝明選手はまだまだステイバックをマスターしているというレベルには至っていません。連続写真を並べて、ある一部分だけを見るとステイバックになっているようにも見えるのですが、しかしスローモーション映像で細かく見ていくと、佐藤選手のフォームはステイバックと言い切れる形にはなっていないんです。


1:05くらいでスローモションを確認できます。

ピッチングフォームに無駄な動作が多いと制球力が乱れるわけですが、バッティングフォームに無駄な動作が多いとミート力が低下してしまいます。佐藤輝明選手と、他の左打ちの一流バッターたちのフォームを見比べると、佐藤選手にはまだまだ無駄な動作が多いんです。それが絶好調時以外で打率を下げてしまう要因になっています。

佐藤選手の場合、体を一度投手側に移動させてウェイトシフト(体重移動)の動作を入れてから、体重を軸足側に僅かに戻しながらのスウィングになっています。これが今現在の佐藤輝明選手のウィークポイントだと言えるでしょう。体が元気な時はこの余分な動作が入っていてもバットを振り切ることができたのですが、疲れが溜まり始めると、この余分な動作によって1テンポ遅れるようなフォームになってしまい、差し込まれることが徐々に増えて行ったように見えます。

もし将来的にこの動作をなくすことに成功し、ステイバックの形をもっと高めていくことができれば、佐藤輝明選手は大谷翔平選手や柳田悠岐選手と同じレベルのバッターに進化することができるでしょう。

5月頃からコンディショニングに課題が見え始めた佐藤輝明選手

そして佐藤選手の長打力の秘訣は体幹の強さだけではなく、フライングエルボーも大きく影響しています。フライングエルボーとは、テイクバックで左肘(右打ちなら右肘)を肩の高さまで上げる動作のことなのですが、この動作がバットスウィングをより加速させ、強烈なインパクトを生み出しています。

また、このフライングエルボーを二段階で使っていて、その動作がラギングバック(割れ)をさらに強くしています。下手な選手がフライングエルボーで打つとラギングバックを上手く作れずに、差し込まれやすいフォームになる危険性もあるのですが、佐藤輝明選手の場合は、少なくとも体が元気な状態である時はラギングバックがとても強くなっているように見えます。

ただ、シーズンが進んでくると5〜6月くらいからこのラギングバックが少し弱まったようにも見えました。考えられる原因としては疲労により筋肉に僅かな硬さが生じてしまったか、シーズン前の体幹の強さを維持できなかったことなどが考えられます。

そう考えると佐藤選手のフィジカルでの課題は他の若手選手同様に、今後如何にして良いコンディションを長続きさせられるか、ということになってくるのでしょう。シーズン中にもしっかりと体幹を鍛え続けて、最善のコンディショニングをしていければ、調子が良い時期をもっと長くしていけるはずです。

佐藤輝明選手を封じるにはこんな配球が効果的!

開幕直後は、相手バッテリーも佐藤選手に対しどう攻めれば良いのかということを試行錯誤していたと思います。特にオープン戦では「このコースは打てるのかどうか試しに投げてみよう」という配球も多かったため、この考え方の配球により、打たせてもらったホームランも多かったはずです。

しかし打席数が増えれば増えるほどスコアラーの分析も正確性を増していき、佐藤選手の得意なコース、苦手なコースもかなりシェアされ始めてきました。

後半戦になれば配球はさらに厳しくなっていくでしょう。その時苦手なコースは今年は捨てるのか、それとも苦手なコースも対応できるようにしていくのか、という選択はとても重要になってきます。個人的にはまだ1年目であるため、「まずは打てるコースに来たらしっかりと振り抜く」という考え方でいいと思います。そうすれば打率.280前後で30本塁打くらい打てるのではないでしょうか。

佐藤輝明選手は、低めよりも高めを打ちに行った時の方がスムーズなスウィングを見せています。それはローフィニッシュが多いフォームから見ても明らかです。そう考えるとバッテリーからすると、真ん中から低めに落ちていくチェンジアップやフォークボールを振らせにくる配球が今後はさらに増えてくるのではないでしょうか。

際どいコースでカウントを整えた後で、ややシュート回転させたチェンジアップを真ん中から落としていく、というのが佐藤選手を封じるには最も効果的であるように見えます。

仮に佐藤選手が完璧なステイバックで打てていたとしたらこの配球もそれほど効果はないと思うのですが、今は体重移動をしている時にまだ頭の移動が大きくなっているため、この配球が絶大な効果を発揮していくはずです。

長身でリーチが長いため、フォークボールを真ん中にストンと落としていくよりは、シュート回転させた右投手のチェンジアップが有効になるはずです。フォークボールやスプリッターを真ん中に真っ直ぐ落として行っても、掬い上げることができてしまうのが佐藤選手の身長です。

伸び代がまだまだある完成されていない佐藤輝明選手

今現在はまだ日本代表レベルの技術には至っていない佐藤選手ですが、上述した通りまだまだ伸び代がある選手です。もうすでに完成された大卒選手ではないため、シーズンオフなどは柳田悠岐選手ら一流の左打ちの選手に弟子入りし、ステイバックをマスターすると良いかもしれませんね。

プロ野球チームの打撃コーチは、まだまだステイバックを理論的に指導できないコーチが多いんです。これは実際に12球団の中で打撃コーチを務めている方々と実際にお話をさせていただいて実感したことです。

阪神タイガースの打撃コーチがどうなのかは僕には分からないのですが、しかしもし打撃コーチ、もしくは今後契約していくであろうパーソナルコーチからステイバックを理論的に教わり、習得することができれば、佐藤輝明選手はさらに大きく進化していけるはずです。

この伸び代をしっかりと観察しながら、僕もプロコーチの一人として佐藤輝明選手のバッティングフォームを見続けてみたいと思います。1〜2年後にまた佐藤選手について書いたら、きっと進化した姿をここでお伝えできるのではないでしょうか。楽しみですね!

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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