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今回の投手育成コラムでは、ピッチャー用のグラブについて少し書き進めてみたいと思います。小学生であればまだそれほどこだわる必要はないと思うのですが、ピッチャーとして野球を続けていきたいというレベルにある選手であれば、グラブを買い替える際はピッチャー用グラブを選択された方が良いと思います。

ピッチャー用グラブはシールドとして使おう!

ピッチャー用グラブと言っても、キャッチャーミットやファーストミットのように特殊な形をしているわけではありません。一般的なピッチャー用グラブは少し大きめに作られています。これはグラブの中のボールの握りを隠すという意味もあるのですが、それ以上に強烈なピッチャーライナーが飛んできた際、大きめのグラブをシールドとして使うという役割があります。

プロ野球選手の中では、守備に自信がある投手は少し小さめのグラブを使っている選手もいますが、一般的にはやはり大きめのグラブを使う投手の方が多いと思います。軟式野球ではそれほど強烈なピッチャーライナーはないと思いますが、硬式野球のピッチャーライナーは非常に危険ですので、大きめのグラブを選んだ方が無難だと思います。

硬式野球の場合は購入するメーカーにも注意しよう!

そしてウェブに関しては、ピッチャー用として売られているものでクロスウェブになっているものはまずないと思いますが、オールラウンド用などのグラブを選ぶとクロスウェブになっていて、グラブの中が外から見える状態になっています。するとグラブの中の指の動きを見られてしまいますので、オールラウンド用を選ぶとしても、ピッチャーをやる可能性がある選手はクロスではなくタータンウェブや一枚革など、グラブの中が見られないようになっているウェブのグラブを選ぶようにしてください。

それとシニアリーグなどの硬式野球の場合、メーカーにも注意する必要があります。未だに厳密なのかはわかりませんが、一部のリーグでは、いくつかのメーカーのグラブが使えないケースもあるようです。理由は「リーグとしてそのメーカーの安全性を確認できないから」という名目があるようですが、推奨されていないメーカーのグラブを使っても危険ということはありません。ちゃんと丁寧に作られています。でも硬式野球に進む場合は、購入する前に念のためチームに推奨されているメーカーを確認された方が良いと思います。馬鹿げたルールではありますが、日本球界にはそのようなルールのようなものが未だに存在しているようです。

グラブはやはりオーダーメイドで購入するのがベスト

ピッチャー用グラブにも、縦綴じと横綴じの2種類があります。僕は個人的には縦綴じの大きめのグラブが好きで、20年ほど前、Mizunoで初めてオーダーしたピッチャー用グラブはまさに縦綴じの大きめのものでした。しかし10年ほど前にローリングスでオーダーメイドしたピッチャー用グラブは縦綴じのやや小ぶりサイズのもので、守備重視でオーダーしました。

グラブは一生ものです。しっかりと正しいメンテナンスをすれば、10年でも20年でも良い状態で使い続けることができます。そう考えると、本気で長く野球を頑張りたいと考えているのでしたら、ちょっと奮発してオーダーメイドした方が良いと思います。既製品よりも1~2万円以上高くなると思いますが、型、サイズ、カラー、ネームなどなど、世界で1つだけのグラブを作ることができますので、野球に対するモチベーションもさらにあがるのではないでしょうか。

ちなみにグラブにはサイズがあるわけですが、このサイズは手のサイズというわけではなく、グラブの全長のことです。既製品は手を入れる中のサイズはほぼすべて同じサイズですので、より自分の手のサイズにフィットしたグラブが欲しいという場合は、やはりオーダーメイドで手の型を取ってもらって作ってもらうのがベストです。そしてもちろん自分の手のサイズにフィットしたグラブの方が、守備も上達します!

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背番号と名前入りのオーダーピッチャー用グラブ。ウェブはこだわりの野球ボール型。

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これが縦綴じグラブ。二遊間用などの守備重視のグラブは横綴じになっています。

角度をつけようとして、腕を上へ上へと上げようとしている投手をたまに見かけます。もちろんオーバーハンドスローによって腕が上がっていくのは問題ないわけですが、問題なのは、肘を伸ばして上へ上げようとしてしまっている場合です。これをやってしまうと肩肘を痛めやすくなりますし、ボールの回転数を増やすこともできないため、伸びのあるストレートを投げることも難しくなります。

肘を伸ばし切るとデメリットしか生じない

長身の外国人投手のように、股関節を使いこなした上でリリースポイントを上に上げていければいいのですが、しかし股関節の動作を置き去りにしてしまうと、いくら角度をつけても勝てる投手にはなれません。過去、プロ野球にもそのようなピッチャーが大勢いました。肘を伸ばし切ってしまうと球質は向上しませんし、簡単に肩肘を痛めてしまいます。

肘を伸ばし切るという意味ではオーバーハンドスローに限ったことではないわけですが、肘を伸ばし切ってしまうと肩関節の内外旋を適切に行うことができなくなるんです。肩関節は正しい順番で内外旋しなければ球質はアップしませんし、怪我もしやすくなります。しかしこの順番が逆だったり、そもそも内外旋させていなかったりという選手が90%以上です。僕の個別レッスンを受けた選手たちで、この内外旋が最初から最適だった選手はポジション問わず1%以下です。

リリースは指先ではなく指の付け根で制御する

ボールの回転数を増やし、さらにすっぽ抜けにくくするためには、リリース時に使う指の付け根の弾性力を上手く使っていく必要があります。指先で弾くのではなく、実際には指の付け根の関節でリリースを制御していくんです。しかし肘を伸ばし切って腕を必要以上に上げてしまうと、この弾性力が使いにくくなってしまうんです。その結果ストレートはお辞儀をするようになり、ボールもすっぽ抜けやすくなります。

そしてボールがすっぽ抜ける状態が続いていくと、今度は体が自然とリリースポイントを、本来のリリースポイントよりも遅らせてボールが抜けないようにし、その結果今度は引っかかりやすくなっていきます。さらにはリリースが遅れれば遅れるほどボールはシュート回転していきます。つまり肘を伸ばし切ってリリースに角度をつけようとしても股関節主導の動作になっていなければ、デメリットしか生じないということになります。

上半身を傾けて腕を上げていく動作が正解

もしどうしてもリリースに角度をつけたいのであれば、まず股関節主導の動作であることが前提となりますが、上半身をリーディングアーム側のスクロールによって、リーディングアーム側に大きく傾け、その動きによってのみ腕を上げるようにしてください。決して腕の動きで腕を上げようとしてはいけません。

上半身をリーディングアーム側に傾ければ傾けるほどスローイングアームは上がっていくわけですが、しかし傾けるためには下半身のスタビリティと強靭な体幹が必要になってきます。ただ傾けるだけではパフォーマンスはアップしません。オーバーハンドスローとアンダーハンドスローに関しては、他の投げ方以上に下半身の踏ん張りが必要になりますので、踏ん張りが弱い選手には難しいと言うことができます。しかしオーバーハンドスローはバックスピンの角度を垂直に近づけやすくなりますので、難しくても、空振り三振をたくさん奪りたい投手にとっては挑戦する価値は十分にあると思います。

ボールの回転数を増やすのに非常に重要な役割を果たしているのが手首です。回転数を増やしたり、ボールが抜けにくくするためには、人差し指と中指の付け根の弾性力を使う必要があるわけですが、この弾性力、手首が立っていないと使うことができなんです。

今だに手首を使って投げる動作が指導されてしまう

日本では今だに「スナップスローは手首を使ってピュッと投げる」動作だと勘違いされています。この指導によって選手たちは手首を曲げながら投げる動作を覚えてしまい、そして一度この動作を覚えてしまうと、直すのに途方もない時間が必要となってしまいます。ですのでもし今だに「手首を使って投げなさい」と指導してしまっている方は、今すぐやめてください。手首は使っちゃダメです。

それは投手だけではなく、捕手・内野手・外野手すべて同じです。手首を使ってしまうとボールの回転数は増えませんし、すっぽ抜けやすくなります。スナップスローとは、テイクバックをせずに捕球後すぐにトップポジションに持ってきて投げる投げ方のことです。一方テイクバックをする投げ方のことをフルアームスローと言います。この点を絶対に間違えないようにしてください。

手首が寝てしまうと肩関節が内外旋できない

トップポジション〜アクセラレーション〜ボールリリースにかけての一連の動作の中では、手首はしっかりと立てておく必要があります。もちろんこれは最低限で、その前の段階から立てられればなお良いと思います。そもそも手首が立っていないと肩関節の内外旋が非常にやりにくくなってしまいますので、手のひらがずっと捕手方向を向いたままボールを加速させてしまう投げ方になってしまいます。

手のひらがずっと捕手を向いたままアクセラレーションを迎えてしまうと、極端な話、ボールをどこででもリリースできてしまうんです。すると抜けたり、引っかかったりしてしまいます。手首を立て、肩関節の内外旋はできる限り深く使い、アクセラレーションでは手のひらがボールリリースの瞬間だけ捕手の方を向くようにしていきます。するとストレートのリリースポイントは自ずと一ヵ所だけになっていきますので、制球力も安定するようになります。

矯正サポーターで手首を立てられるようになろう

トップポジション以降で手首が寝てしまう選手は、このサポーターのようなアイテムを使って矯正すると良いと思います。このサポーターを使って投げると、今まで手首が寝ていた選手はまったく上手く投げられなくなるはずです。しかし手首がしっかりと立っていれば、これを着けていても普通に投げることができます。回転数を増やすためにも、引っかかりや抜け球を減らすためにも、手首は立てて投げるということが非常に重要なんです。

ではなぜ日本でだけスナップスローを手首を使って投げる投げ方だと勘違いされてしまったのでしょうか?一説には野球のルールなどが英語で最初に日本に入ってきた際にそれを翻訳した人が、誤った翻訳をしてしまったからだと言われています。ちなみにルールブックにもスナップスローとは手首を使って投げる動作だと紹介されてしまっていますので、やはり誤訳が原因だったのでしょう。

ピッチャーのボールがシュート回転してしまうことにはいくつもの種類の原因があるわけですが、今回の投手育成コラムではシュート回転の修正をするために知っておく必要がある、トップポジションの作り方とシュート回転の関連について書き進めてみたいと思います。

トップポジションの形がシュート回転を加える?!

多くの少年野球チームでそう教えられてしまったり、そして市販されている野球教則本にもそう書かれていたりするんですが、トップポジション付近で肩関節を内旋させて、手のひらが外側を向くような形にしてしまう選手が非常に多いと思います。実際そう教わり続けた、という選手も多いと思いますし、僕自身子どもの頃にそのような指導を受けた経験があります。

しかしこの形のトップポジションは怪我のリスクを高めるだけではなく、ストレートをシュート回転させてしまう大きな原因にもなってしまうんです。トップポジション付近で手のひらを外側に向けてしまうと、親指が捕手方向を向く形になります。この形から腕を振りに行ってしまうと、リリース時にも親指が若干捕手側を向いた状態になりやすいんです。そしてこの状態でリリースしてしまうために、ボールにシュート回転が加えられてしまうんです。

投球動作を根本から見直す必要が生じるシュート回転

ちなみにトップポジションを肩関節の内旋状態で作ってしまうと、肘の内側(内側側副靱帯)を痛めやすくなり、さらには肩関節を腕のテコによって動かすような形にもなりやすいため、肩関節も痛めやすくなります。投球動作内ではテコの原理を使うことは非常に重要になってくるわけですが、しかしこの場所で使ってはいけません。

基本的にはシュート回転している時点で、良い投げ方ができていないと判断することができます。シュート回転やスライダー回転は調子の良し悪しで顔を出すものではなく、シュート回転しやすいフォームになっているからシュート回転になってしまうんです。ですのでもしシュート回転がよく顔を出してくる場合は、投球動作を根本から見直す必要があるかもしれません。

様々な弊害を生み出す内旋タイプのトップポジション

さて、もう一点付け加えておくと、トップポジションで手のひらを外側に向けてしまうと、ボールを握った親指が人差し指側にずれやすくなります。ボールの中心から親指が少し人差し指側に移動すると、それだけでボールにシュート回転が加えられてしまいます。そしてさらに大きく人差し指側にずれていくと、今度は縦スライダーの回転が加わってしまいます。

手が小さい小学生は特に親指が人差し指側に来やすいわけですが、もしボールがどうしても失速してしまう場合は、球威が問題なのではなく、縦スライダーの回転が加えられて下に曲がっている可能性も考えられます。トップポジションとは、投球動作の中では最も重要なポジションです。そのトップポジションの作り方を間違えてしまうと、このような様々な弊害が生じてきてしまいますので、注意が必要です。

ストレートの球質(伸び)は回転数だけではなく、回転軸の角度が非常に重要ということを、投手育成コラムでは幾度か書いてきました。どんなに回転数が多かったとしても、回転軸が傾いてしまうとストレートの伸びが向上していくことはありません。ストレートの球質を向上させるためには、回転軸を可能な限り左右まっすぐに、水平にする必要があります。

回転軸は車のシャフトをイメージしよう

車のタイヤをつなぐシャフトをイメージしてください。このシャフトが曲がっていると、タイヤはスムーズに回転することはなくなり、車の性能を活かすこともできなくなります。ピッチャーが投げるストレートも、このシャフトのようにきれいに真っ直ぐになっている必要があるんです。

もちろん完璧に横一文字にすることは難しいわけですが、どれだけそこに近づけられるかが重要なのです。具体的にはこの軸の傾きが5°程度だと、マグナス力というホップ要素を最大限高められるようになり、伸びのある空振りを取れるストレートを投げられるようになります。逆に傾きが10°を超えれば超えるほどマグナス力は低下し、ストレートは失速しやすくなります。

肩関節を使えば使うほど回転軸は傾いてしまう?!

ではどうすればこの回転軸を横一文字にしていけるのでしょうか?その答えは股関節が握っています。ボールを持っている間はほとんど肩関節を水平内転させずに、非軸脚側の股関節の内旋動作だけでボールを加速させられるようになると、バックスピンの回転軸の傾きを最小限に抑えられるようになります。

逆にスローイングアームをメインに使って回転数を増やそうとすると、回転軸は必ず大きく傾くようになり、シュート回転やスライダー回転になってしまいます。そしてシュート回転やスライダー回転が加わってしまうと、これはもうストレートとは呼べなくなりますので、伸びを追求することもできなくなってしまいます。

サイドハンドスローが最強の投げ方?!

僕は常々、股関節を最良の形で使いこなせているサイドハンドスローが最強であると選手たちには伝えています。もちろんサイドハンドに転向しましょう、という話ではなく、あくまでもスポーツ物理学的な話としてなわけですが、サイドハンドスローで股関節を最良の形で使えるようになり、きれいなバックスピンストレートを投げられるようになると、ストレートの伸びとスピードガンの数値を同時に向上させられるようになります。

日本ではなぜか「サイドハンドスロー=良くない投げ方」と認識されることが多いのですが、そんなことはありません。メジャーリーグでも多くのスピードボールピッチャーはサイドハンドスロー、もしくはロースリークォーターで投げています。ビッグユニットこと、世界最強投手だったランディ・ジョンソン投手もサイドハンドスローでしたね。サイドハンドスローは体軸と運動軸を重ねて使いやすくなるため、ボディスピンを最も鋭くしやすいんです。だからこそ股関節を使いこなすことさえできれば、サイドハンドスローが最強の投げ方であると言うことができるわけなんです。

並進運動(並進移動)というのは、体の複数の個所が同じ速度で、水平方向に移動していく動作のことを言います。しかし多くのピッチャーが並進運動ではなく、ただの横移動になってしまっています。ただの横移動とは、例えば非軸脚だけが先行してしまうような形です。並進運動がただの横移動になってしまうと、適切な回転エネルギーを得られなくなり、腕力に頼らなければ球速をアップさせられないフォームになってしまいます。

並進運動=回転運動

意外と知られていないことではありますが、ピッチャーの場合、並進エネルギー=回転エネルギー、という図式が成り立つんです。並進エネルギーは、フリーフットで振り上げた非軸足を着地させた瞬間に回転エネルギーに変身します。つまり並進運動が良い形になると非軸脚側股関節による回転運動も良くなり、並進運動の形がイマイチになると回転運動も同様にイマイチになってしまうんです。

投球動作は小さな動作がたくさん合わさって1つの投球動作になっていくわけですが、手前の動作が良くないと、そのあとの動作も悪くなってしまいます。そして並進運動が良い形ではなく、適切な回転運動をできない状態になってしまうと、非軸脚側の股関節が上手く内旋しなくなり、肩肘を使って投げざるを得なくなり、初速と終速差は大きくなり、球質が低下するばかりではなく、肩肘を怪我しやすい投げ方になってしまいます。

並進運動は股関節の外転運動のみで行う

では良い回転運動を作り出せる良い並進運動とは?答えは非常にシンプルです。軸脚側の股関節だけで並進運動を行う、ということです。これができるようになると、タメも作りやすくなり、流れるような美しい投球フォームも作りやすく、ランディング後(非軸足の着地後)の回転運動も良い形になりやすいんです。

普通に立った姿勢で、股関節だけを動かして、膝を伸ばした脚を、真横に水平まで上げてください。この動作を「股関節の外転運動」と言うのですが、ピッチングに於ける並進運動は、股関節の外転運動のみで作っていく必要があります。この時逆に、非軸脚を先行させて遠くに着地させようとすると、その非軸脚に上半身が釣られてしまい、上半身がすぐに突っ込むようになります。ですので非軸足の着地点は、軸脚股関節の外転運動だけで遠くに持っていく必要があるわけです。

股関節には柔軟性と強さの両方が不可欠

上述したような良い動作を取るためにも、柔軟性と強度の両方が備わった股関節が、ピッチャーにとっては必要不可欠となります。ここで仮に股関節が硬く、例えば開脚が130°にも満たないようなコンディションになってしまうと、股関節によって上質な並進運動をできなくなってしまいますので、並進運動ではなく、ただの横移動になりやすいんです。そうなってしまうと回転エネルギーも低下し、上半身に頼らざるを得ない投げ方になり、肩肘への負荷はどんどん大きくなってしまいます。

アスリートの股関節には柔軟性と強さの両方が必要です。柔らかくても弱ければダメだし、強くても柔軟性がなければ意味はありません。股関節を制する者がスポーツを制する、と言っても過言ではないほど、すべてのスポーツに於いて股関節というのは重要な関節となります。その股関節のコンディションを良い状態で維持し、なおかつ股関節だけで並進運動をできるようになると、連動して良くなっていく部分も増えていきます。ですのでまずは股関節の柔軟性と強さを維持し、その上で股関節を自在に動かせるようにトレーニングをしていってください。

今回の投手育成コラムでは、フリーフットを作った際の軸足に関して少しお話をしてみたいと思います。フリーフットというのは非軸脚を振り上げる動作のことで、右投手なら左脚、左投手なら右脚ということになります。


フリーフットを作った際、軸足の踵を支点にしてつま先が二塁ベース側に回ってしまう投手がたまにいますが、この動作はNGです。この動作を入れてしまうと体重移動がスムーズに行かなくなりますし、インステップにもなりやすいため、制球が安定することはありません。ですので踵を支点にしたこの動きは、すぐに改善された方がいいと思います。

ですが、つま先を支点にして踵が捕手側を向いていく動作に関しては、これは良い動きです。パッと見はほとんど同じ動き方なのですが、支点が踵になっているかつま先になっているかで、メカニクスは大きく変わってきてしまうんです。ちなみに支点が変わると軸足が動くタイミングも変わってきます。

つま先を支点にして踵を捕手側に向けられるようになると、体重移動がスムーズにいきやすくなるため、球速がアップしやすくなります。また、「インステップになりやすい」という状況も1つ回避することができますので、制球の安定化も期待できるようになります。

さらに細かいことを言うと、踵を支点にしてしまうとリリースポイントがほんの僅かなのですが打者から遠ざかってしまうんです。距離にしてボール半個〜1個分程度なのですが、この差は打者の手元で大きな違いを生み出してしまいます。リリースポイントが打者から遠ければ遠いほど、打者からすると打ちやすくなります。

同じようなつま先の向きが変わる動作でも、支点が踵かつま先かで本当に大きく変わってきてしまいます。ですのでもし今まで踵支点だった選手は、早急につま先支点の動きに改善していくべきだと思います。そうすればパフォーマンスも確実にアップすると思いますので、ぜひ試してみてください。

と言ってもなかなか難しいと思いますので、僕のコーチングを受けながらこのような細かい動作を覚えていきたい、という方はぜひ僕のコーチングを受けにいらしてみてください。お待ちしています!

投手育成コラムもついに400本目となりました。なかなか尽きないものですね、書くことが。400本書いても、まだまだ書き足りていない投手育成に関することがたくさんあります。そんな中今回は、なぜ多くの投手が順手対決で内角を攻め切れないのか、という点について書き進めてみたいと思います。


順手対決というは右vs右、左vs左の対決のことです。内角に投げることができなければ、外角一辺倒の配球になってしまいます。アウトローは投手の生命線と言ったりもしますが、アウトロー一辺倒ではまず勝てる投手にはなれません。外角低めを活かすためには、内角高めを使わなければならないのです。いわゆる対角線配球ですね。内角高めを見せた後に外角低めに投げると、打者はそのボールを非常に遠く感じ、ストライクゾーンなのにボールだと思い、見逃すケースが増えてきます。最高峰の投球術は、2ストライク後に如何に見逃し三振を取れるか、ということになるわけです。

しかし多くの投手は子供時代に「もっと腕を大きく振りなさい」という指導を受けてきました。そのために腕を振る軌道が弧になってしまい、ハンマー投げのような投げ方になってしまっています。理想の投げ方はハンマー投げではなく、野球の場合は槍投げです。つまり投げたい方向の真後ろにテイクバックをし、そのまま、できるだけ弧を描かず、トップポジションからボールリリースまでをできるだけ直線で繋いでいく、という動き方です。この投げ方ができれば、死球を恐れることなく簡単に内角に投げ切れるようになります。

ただしこの投げ方は、トップポジションで肩関節が最大外旋状態にあることが条件となります。つまりトップポジションで、手のひらを二塁ベースに向ける内旋状態にしてしまうと、腕を遠回りさせるしかなくなる、ということです。最高のトップポジションの形は肩関節が外旋して手の甲が真上を向く形です。もしくは、最低限小指が後頭部を向いているトップポジションにしていく必要があります。

ですが多くのアマチュアチームでは、手のひらを二塁ベースに向ける真逆の動きのトップポジションが教えられています。この形にしてしまうとパフォーマンスが低下するだけではなく、肘が下がりやすくなるため、肩肘にかかるストレスも非常に大きくなります。

内角に投げ切るための直線的なアクセラレーションを作るためにも、肩肘へのストレスを最小限に抑えるためにも、トップポジションでは肩関節を外旋させていく必要があるわけなのです。

内角を攻められるピッチャーはエースになれます。しかし攻め切れなくても、内角を見せるだけでもある程度勝てる投手になれます。しかし内角をまったく使えないピッチャーは、野球のレベルが上がれば上がるほど、ことごとく打たれれるようになります。将来的に怪我なく、勝てる投手になるためにも、小学生のうちから良い投げ方を身につけておくことが大切になるわけなのです。もしそのような投げ方をわかりやすく教わりたい、という方はぜひコーチングのご依頼をお寄せくださいませ。お待ちしています。

上半身と下半身の使い方がどうしても逆になってしまう選手というのは、非常に多いと思います。つまり、本来であれば下半身主導でボールを投げなければならないところを、上半身主導で、腕力に頼って投げてしまっている、ということですね。この使い方が上下逆になってしまうと、実はスローイングアームの肩の内外旋が逆周りになりやすいんです。


ボールを投げるのに腕を振っている最中、肩関節の内外旋の順序が逆になってしまうと、簡単に肩や肘を怪我するようになってしまいます。とにかく正しい動き方は、トップポジションで最大外旋、リリースポイントでほぼニュートラル、フォロースルーで内旋状態、という順番が肩肘を痛めにくい正しい順序となります。

しかし上半身主導で投げてしまうとこれが、トップポジションで最大内旋、リリースポイントでニュートラルから外れ、フォロースルーで外旋状態、というまったく逆の動きになってしまうんです。さらに非常に多いのが、大人のコーチが子どもたちに、肩関節を内旋させてトップポジションを作ることを教えてしまっているケースです。実は本屋さんで市販されている野球教則本の多くでもこのような動作が教えられているのですが、解剖学をまったく勉強されていない元野球選手が、ネームバリューだけで書かれてしまっているのだと思います。

肩関節の内外旋が逆になると、まずアクセラレーションで肘が肩線分まで上がらなくなります。つまり肘が下がるということですね。肘が下がっていれば肩関節にかかる負荷が大きくなってきます。そして肩関節がスムーズに内外旋できなくなると、今度は手のひらがずっと正対した状態でアクセラレート(加速)してしまうことになり、適切な順序の内外旋なしにアクセラレーションを迎えてしまうと、肘にかかるストレスが非常に大きくなります。つまり肩も肘も痛めやすい、ということです。

でもこれが、しっかり下半身を適切な動作で安定させて、腕力に頼ることなく投げられるようになると、実はスローイングアームというのは自然と良い動きの方にシフトしていってくれるんです。だからこそ僕のコーチングでは、下半身の使い方を徹底してコーチングさせていただいております。下半身が安定していないのに、小手先だけでスローイングアームの動きを改善しようとしても、良い動作が定着することはほとんどありません。必ず不安定な下半身に動作を引っ張られてしまい、良くない動作へとまたすぐに戻ってしまいます。

ですので野球塾に通っていなかったとしても、とにかくまずは下半身を適切な動作にし、土台をしっかりと安定させられるようにしてください。土台がしっかりと安定していれば、家同様、投球動作もちょっとやそっとでは崩れにくくなるものなんです。

軸足という日本語があります。軸足という言葉は野球のトレーニングにおいて多々登場する言葉ですね。聞いたことがない、という方はいらっしゃらないと思います。でも軸足って、実は軸としては使わないんです。


軸足を英語でいうと、ピヴァットレッグ、もしくはピヴァットフットと言います。ピヴァット(pivot)とは回すという意味です。つまりピヴァットレッグそのものを軸として回すのではなく、軸を回してあげる役割を担っている、ということです。ちなみに軸を英語で言うとアクシス(axis)と言います。

日本語では軸足という言葉が存在しているため、どうしても軸足を軸として使いたがってしまいます。しかし軸足を軸にして投げたり打ったりすることはできません。右ピッチャーの場合、右肩と左股関節を結んだラインが基本的な運動軸となります。そしてもっとレベルの高い動作ができるようになってくると、この運動軸が体の外に飛び出すようになります。すると慣性モーメントが小さくなり、肩肘にかかる負荷を大幅に軽減させることができ、野球肩野球肘にもならなくなります。

慣性モーメントが大きくなると、バックスピンが垂直からどんどん遠ざかってしまいます。つまり慣性モーメントに頼って投げてしまうと、初速は多少アップさせることができても、バックスピンのメリットを得にくくなるため、ストレートの質は低下してしまいます。伸びのないストレートになってしまう、ということですね。

慣性モーメントを小さくするためには、ランディング後の非軸足のスタビリティ(安定感)とリーディングアームによる力強いスクロールが鍵となります。そもそもランディング後の非軸足のスタビリティが低ければ、軸足を使って軸のスピン(アクシススピニング、ボディスピン)を鋭くすることはできません。そしてボディスピンが鋭くなければ、ボールの回転数が増えることもなく、ストレートはすぐに失速してしまいます。

逆にランディング後の非軸足のスタビリティが高くなれば、その他の動作のスタビリティも同時に高めやすくなり、動作改善もどんどん進んでいきます。ですので投球動作を見直す際は、まずランディング後の非軸足のスタビリティを高めるところから始める必要があるわけです。このスタビリティが低い選手の場合、ここを高めてあげるだけでもパフォーマンスは目に見えて向上していくはずです。軸と軸足を最良の形で使えるようにするためにも、まずはランディング後の非軸足のスタビリティをできる限り高められるようにしましょう。