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野球肘になる変化球と、野球肘にならない変化球

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なぜ変化球を投げると肘を痛めるのか?!

野球肘になる変化球と、野球肘にならない変化球

野球肘の原因が変化球にあるとはよく言われることですが、これは正解であると同時に不正解でもあります。正しい投げ方をすれば変化球で肘を壊すことはありませんし、正しい投げ方ができていなければ多投しなくても変化球によって肘を痛めてしまいます。

スライダーにしてもシュートにしても他の球種にしても、ストレートとまったく同じ腕の振りで投げられれば肘を痛めることはありません。もちろんそのためにはまず、ストレートを肩肘を痛めにくい良いフォームで投げられるようになっている必要があるのですが💦

正しい変化球のリリースポイント

ストレートの腕の振りで、肩関節が内旋過程からニュートラルになった瞬間、手のひらがほぼ下を向いた状態でボールリリースを迎えられるのが、本当に正しい腕の振り方をした時のストレートのリリースです。しかし手のひらが捕手と向き合って正面を向いた状態でリリースしている場合、球種問わず肘の内側を痛めやすくなります。

まず前者の良いフォームになっていて、ニュートラルになる90°手前で抜くようにリリースするとカーブ、45°手前で切るようにリリースするとスライダー、30°前後手前ならカッターになります。逆にニュートラルになって肩関節が内旋過程ではなく、実際に内旋状態なった瞬間にリリースするとシュートになります。

このように腕の振りはストレートとまったく同じで、どこでリリースするかによってボールにさまざまな回転を与えて投げるのが変化球なんです。間違っても肩関節を外旋させたり、肘を回内・回外させたりしてボールに横回転を与えることはしないでください。あっという間に肘が痛くなります❗️

ちなみにリリースするポイントに関しては、握り方によってのみコントロールしていきます。例えば人差し指を浮かせて、中指の薬指側の面を縫い目にかければ、自然と90°手前でボールは抜けるようになり、縦に大きく割れるドロップを投げることができます。

握り方を変えても上手く変化球を投げられない場合は、肩肘を柔らかく使うことができていないはずです。逆に正しいフォームが身に付いていればスローイングアームの力みもなくなっていき、自然と肩肘を柔らかく使って投げられるようになります。

野球肘と変化球に関する結論

要するに正しい投げ方さえできていれば、小学生が変化球を投げても肘を痛めることはない、ということです。例えばドロップという球種はストレートよりもずっと球速が遅いため、正しいフォームで投げればストレートよりも肩肘にかかる負荷は小さくなります。そのためアメリカではドロップは"セーフティカーブ"と呼ばれているんです。

プロコーチとして僕がオススメしたいのは、ドロップを正しいフォームで投げられるようになり、投球をドロップから始めることで肩肘を柔らかく使う投げ方で慣らし、その後で速いボールを投げ込んでいくという流れのキャッチボールです。肩肘を柔らかく使えていると、ストレートの伸びもアップしていくはずです。

とにかく野球肘にならないようにするためには、まずはストレートを正しいフォームで投げられるようになる、ということです。しかし少年野球の指導現場のほとんどは内旋型トップポジションを子どもたちに教え込んでいて、変化球を投げなくても肘に負荷のかかる投げ方の子が本当に多いんです😭

ですので僕が作った『投球障害予防改善法ビデオ』を、本当に一人でも多くの野球指導者に見ていただきたいと思うわけなのです!

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スライダーとは、カーブとは異なり途中まではストレート

スライダーとは?と問われたら、僕は必ず「途中まではストレートで、ある地点から球に曲がり始める変化球」という感じで答えます。スライダーとカーブはまったく別物であり、カーブはリリースした瞬間から変化がはじまっていきますが、スライダーは途中まではストレート軌道であるべき球種です。

スライダーはとにかく、リリース後にどれだけ長くストレート軌道を維持できるか、が鍵になってきます。このストレートである時間が短ければ短いほど、バッターからすると球種を見極めやすくなりますし、バットも合わせやすくなります。

数種類のフォークボールを簡単に投げ分ける方法

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フォークボールにもメリットとデメリットがある

フォークボールを投げられると投球の幅が一気に広がります。しかしスライダーやカーブと比べると、フォークボールの難易度はやや高いんです。その理由はやはり、特殊な握り方にあるのではないでしょうか。

そしてフォークボールはその習熟度が低かったり、多投し過ぎると肘への負荷が大きくなる変化球としての知られています。良い投げ方で多投しなければそう簡単に肘を痛めることはないと思いますが、しかし習熟度が低い投手は要注意です。

野球の教科書:フォークボールの持ち方、必要な握力などを徹底解剖!

フォークボールに握力は必要なのか?!

僕がまだ肩を怪我する前のメインの持ち球はドロップとシュートとフォークボールでした。スライダーやチェンジアップ、シンカーやパームやナックルといった球種は一通り投げられたのですが、比較的自在に操れた球種がこの3つでした。ちなみに僕のスライダーは縦に曲がるヴァーティカルスライダーだったため、フォークボールを投げられればスライダーを投げる必要はほとんどありませんでした。

フォークボールの握り方はシンプルです。人差し指と中指を思いっきり開き、ボールの赤道付近にその2本の指を置いて挟みます。握力が重要、と言われることも多いフォークボールですが、僕の握力は50kg弱と比較的弱かったため、かなりの握力がないと投げられない球種、というわけではないと思います。重要なのはどれだけ回転数を減らせるかということであり、強く握ることではありません。回転数を減らしてストレート同様に投げるからこそ、ストレートが突然落下していくんです。つまりマグナス力を発生させない、ということですね。

手首を立てておかないと抜けやすいフォークボール

ストレートがすごく速いピッチャーの場合はスプリッターも効果的ですが、高校野球以上でストレートが140km未満の場合はスプリッターよりもフォークボールの方が有効です。ストレートが遅いピッチャーがスプリッターを投げても、落ちる幅が打者に見極められやすいためです。ですので130km台以下のピッチャーは、スプリッターよりもフォークボールの習得を目指した方が打者を抑えられるはずです。

フォークボールを投げる注意点としては、やはり手首をしっかり立てておくということです。投球時に手首を前後に曲げてしまうと、フォークボールはすっぽ抜けやすくなり、高めに浮くことも多くなるため、落ち幅があったとしてもバットが届くところに行ってしまいます。ですのでフォークボールを練習する際は、しっかり手首を真っすぐに立てた状態で投げるように注意してください。

下手な投手がフォークを投げると肘を痛める?!

さて、フォークボールを投げるヒントとしてもう1点。親指の位置やボールの握る場所をいろいろと変えてみてください。例えばボールの同じ場所を挟んでいたとしても、親指を置く場所を変えるとスライダーやシュート回転を加えられるようになり、カーブやシンカーのように曲がるフォークボールを投げることもできます。

フォークボールは人差し指と中指に力を入れすぎると連合反応により薬指と小指にも力が入りやすくなります。習熟度が低い投手はこの点をしっかり注意して練習をしてください。小指の筋は肘に繋がっているため、この指が力んでしまうと肘がロックされるようになり、肘を痛めやすくなります。どんなに落差があっても怪我をしては意味がありませんので、肘を痛めないようにこのあたりのポイントにも注意しながら練習をしてみてください。

投げ方を間違わなければシュートで肘を痛めることはない!

シュートには良い投げ方と悪い投げ方があります。僕は仕事柄プロ野球選手とお話をさせていただく機会も多いのですが、12球団の投手コーチや選手の中にも、シュートは肘を痛めるから避けている、という方がけっこう多いんです。

シュートは確かに投げ方を間違えると肘を痛めますが、しかしそれはスライダーもカーブも同じです。ですが投げ方さえ間違わなければ、シュートを投げることによって肘を痛める、ということにはなりません。

肘を捻ってシュートをかける投げ方は絶対にダメ!

まず、なぜ多くの方がシュートを投げると肘を痛めると思っているのかを考えてみましょう。その原因は単純で、リリース時に意図的に肘を内側に捻るような動作でボールにシュート回転を与えようとするからです。この投げ方ではシュートでもスライダーでも、どっち回転のボールであっても肘を痛めてしまいます。

変化球というのはどの球種に関しても絶対に肘や手首を捻ったり、無理やり回転を与えようとしてはダメなんです。仮にそうしてしまうと必ずストレートと違うフォームで投げることになってしまいます。すると野球のレベルが上がるほど球種が打者にばれやすくなりますし、球速が上がるほど肘を痛めるリスクも高くなります。

シュートには2種類の投げ方がある!

シュートには主に2種類の投げ方があります。まず1つ目はリリースポイントをストレートのリリースポイントよりも遅らせる投げ方です。ストレートのリリースポイントを少しだけ通り過ぎ、手のひらがやや外側を向いた状態でリリースを迎えることにより、ボールにシュート回転を与えられるようになります。

ちなみに肩関節を曲げながら(水平内転させながら)投げてしまう手投げの選手は、腕を強く振れば振るほど手のひらが相手と正対したポイントを通り過ぎたところで投げるようになり、ボールがシュート回転してしまいます。しかし投手が「意図して」この投げ方でシュートを投げても肘が不自然に捻られることはありませんので、痛めるリスクも最小限に抑えられます。ただし下半身の動作が安定しておらず、股関節をしっかり使いこなせていなければ、この投げ方では肘を痛めにくい良いシュートは投げられません。

自動的にシュート回転になる握り方を覚えよう!

もう1つのシュートの投げ方は、握り方を変えることによって自動的にシュート回転させていく投げ方です。ただしこの投げ方はすっぽ抜けやすいため、フォームの完成度が低い投手にはお勧めできません。しかし肘を痛めるリスクはほとんどなくなります。投げ方そのものは簡単で、ツーシームの握り方で人差し指を折り曲げて、その人差し指の指先でボールを押さえる握り方をするだけです(中指は普通の握り方のまま)。

この握り方でストレートを投げるように、右投手なら真ん中から右側、左投手なら真ん中から左側を狙って投げるだけでボールはシュートしていきます。ちなみに真ん中から反対側に投げてしまうとシュートはせず、ただの棒球になってしまうため要注意です。日本では小学生の変化球は肘を痛めるという理由で禁止されていますが、しかしストレートよりも球速が遅い分、投げ方を間違わなければ変化球によって肘を痛めることは実はないんです。でも大人が間違った変化球の投げ方を教えてしまうために、子どもたちが肘を痛めてしまうんです。

もし肘を痛めにくい良い変化球の投げ方を身につけたいようでしたら、ぜひ僕のオンラインレッスンを受けてみてください。わかりやすく丁寧に、理論的にレッスンさせていただきます!

カーブという球種にはいくつもの種類があります。普通のカーブ、タイトカーブ、パワーカーブ、スラーブ、スローカーブ、ドロップなどなど。投げる投手によって変わる十人十色の変化球と言ってもいいのかもしれません。今回はその中でも、ドロップというカーブについて少し書き進めてみたいと思います。

肩肘への負荷が最も小さいドロップ

ドロップとは縦に大きく割れるカーブのことです。岸孝之投手が得意とする球種ですね。ドロップという球種は正しい投げ方で投げることができれば、実はストレート以上に肩肘への負荷を小さく抑えることができるんです。その理由は単純で、トップポジションからボールリリースにかけてのアクセラレーションを半分しか使わないためです。

遅いボール=肩肘への負荷が小さい、とは言い切れないのですが、良い投げ方のドロップに関しては肩肘への負荷は非常に小さくなります。また、ドロップを投げるためには肘を柔らかく使わなければならないため、腕力に頼ったフォームではドロップは投げられないんです。つまりドロップを投げられるということは、肘を柔らかく使った良いフォーム、と判断することもできるわけです。

ドロップの投げ方

ドロップの投げ方は難しくはありません。中指の薬指側の側面を縫い目にかけて、人差し指はやや浮かせ、ストレートのリリースポイントの90°手前でリリースするだけです。するとボールはすっぽ抜けるようにしてリリースされ、一度やや上に投げ上げられます。しかしドロップにはトップスピンがかかっていますので、投げ上げられてもしばらくするとすぐに下に向かって曲がり始めます。

ストレートのリリースポイントの90°手前でリリースすると書きましたが、この時重要なのはトップポジションで肩関節がしっかりと外旋されていて、ボールリリースにかけて内旋させながらアクセラレーションを進められているか、という点です。肩関節はトップポジションからリリースにかけては、外旋過程の中で内旋されていき、ボールリリースでニュートラルになります。そしてリリース後に内旋過程の中でさらに内旋されていきます。

この肩関節の使い方でドロップを投げられるようになると、肩肘への負荷はほとんどなくなります。また、上述したように肘を柔らかく使う癖付けを行うこともできるため、ストレートを含めた他の変化球を投げる際も、柔らかい肘の使い方で投げられるようになっていきます。

ドロップから始めるキャッチボール

良い投げ方のドロップは、ストレートよりも肩肘への負荷が小さいため、キャッチボールをドロップから始めることもオススメです。何人かのプロ野球のピッチャーにもこのことを伝えたところ、その中の数名はキャッチボールをドロップから始めるようになりました。そして肘の動きを柔らかくした後でストレートを投げ始めると、ストレートの回転の質も今まで以上にさらに良くなっていきました。

ストレートの鍵はバックスピンの質です。近年はメジャーでエース級の投手たちも、ツーシームよりもバックスピンストレートを重視するようになってきています。そしてドロップを投げられる肘の使い方ができると、そのバックスピンの質を大幅に向上させられるようになるわけです。

ドロップという球種はこのように、メリットがたくさんあります。挑戦しないための理由はありません。仮に試合で使える球種に育っていなかったとしても、日常的にドロップでキャッチボールをすることにより、柔らかい投球フォームを身につけられるようになります。もちろん小学生の野球肘を防ぐ効果もありますので、大人も子供もチャレンジしてもらえたらと思います。

フォークボールの原理というのは非常にシンプルです。投げるボールにバックスピンをかけないことにより、マグナス力という揚力を発生させず、空気抵抗と重力によってボールを落下させていきます。魔球にもなりうる球種ですが、しかし肘を痛めやすいので注意が必要です。


フォークボールの投げ方は、人差し指と中指を最大限開き、ボールの真横と反対側の真横にその2本の指を置きます。そしてサッカーの無回転シュートのようにボールにバックスピンを与えないようにリリースしていきます。このリリース時に手首を使ってしまうと余計な回転がかかってしまい落ちなくなるため、手首はストレートを投げる際と同様に、真っ直ぐな状態でロックしておく必要があります。

フォークボールは人差し指と中指だけで挟んで投げるボールなわけですが、しかしこの握り方のデメリットは、同時に薬指と小指にも力が入りやすいという点です。このデメリットは決して小さいものではありません。薬指と小指の筋というのは、肘関節に直結しているんです。つまり薬指と小指がロックされてしまうと、投球時に肘までロックされやすいということになり、ロックされた動きにくい状態で使わざるを得ないために、肘にかかるストレスが非常に大きくなってしまうんです。

また、フォークボールは肩関節の内外旋も浅くしてしまいます。するとトップポジションそのものも浅くなってしまい、手のひらがずっと正面を向いたままアクセラレーションフェイズを進むことになってしまいます。すると肘の内側にかかるストレスが大きくなり、内側側副靱帯を損傷しやすくなります。

フォークボールは投手にとってはまさに諸刃の剣です。魔球にもなりますが、怪我もしやすいんです。ですのでストレートが速い投手はフォークボールよりも、スプリッター(SFF)を選択した方が怪我予防という意味では良いかもしれません。ストレートが遅い場合はスプリッターは大きな武器にはなりませんが、速い場合はスプリッターもフォークボール同様大きな武器となり、しかも肘へのストレスもフォークボールよりは小さくすることができます。

球速が速ければ速いほど、フォークボールの肘への負荷は大きくなりますので、球速が遅い投手はフォークボール、速い投手はスプリッターという投げ分けをすると良いかもしれませんね。球速が遅ければ、フォークボールを多投しても肘にかかるストレスは最大限までは行きにくくなります。ぜひこの辺りも踏まえながら、フォークボールとスプリッターの選択をしてみてください。

実は最もホームランを打ちにくい球種はストレートなんです。硬式野球で、腕力ではなくて技術でバックスピンをかけてホームランを打ちに行った場合、質の良いストレートは最もホームランを打ちにくい球種になるんです。


結論から言います。なぜそうなるかと言いますと、質の良いストレートというのはバックスピンの角度・回転数が優れている球種ということになります。そしてピッチャーにとってのバックスピンというのは、バッターにとってはトップスピンとなります。バッターが飛距離を伸ばすためには打球にバックスピンをかける必要があります。しかしストレートという球種は、バッターにとってのトップスピンで飛んでくるため、バッターからすればその回転を真逆にしなければならないということになり、これは中途半端な技術ではなかなかできることではありません。

逆にドロップ(縦に大きく割れるカーブ)はバッターにとってのほぼバックスピン、スライダーも斜め回転で、バックスピンにやや近い角度で回転しながら飛んできます。そのためこの2つの球種は、バッター側からするとバックスピンをかけやすい球種ということになり、長打を打つのが比較的楽な球種、と言うことができるわけです。

ただし、ドロップの場合はバッターの目線を上下に大きく動かされてしまいますので、ミートをすることはスライダーよりは難しくなります。逆にスライダーが真ん中付近に入ってきた場合、これは完全なホームランボールとなってしまいます。スライダーはストレートよりはやや球速が落ちます。そのためミートポイントがストレートよりもやや前に出て行き、引っ張る方向への強打がしやすくなります。

ピッチャー目線から行くと、絶対に長打を打たれたくない場面は、実は変化球で勝負をするよりも、変化球を見せておいてストレート勝負をしに行った方が、実は長打になる可能性は低くなるんです。ただし、しっかりとバックスピンをかけた質の良いストレートを投げられている、ということが前提になり、中途半端なストレートでは簡単に打たれてしまいますし、変化球を活かすこともできなくなります。

きれいな4シームバックスピンストレートを投げられるようになり、回転数も増やせるようになってきたら、このようなことも考えながら配球をデザインしていくと良いと思います。配球というのはチェスや将棋と同じです。先の先の先の先まで考えながら次の一手を打っていかないと、場当たり的な中途半端な配球になってしまい、痛打される可能性を高めることになってしまいます。

カーブとスライダーを混ぜ合わせたような球種をスラーブと言ったりしますが、僕個人としてはカーブとスライダーというのはやはり分けて考えるべきだと思います。なぜかと言うと、その方がピッチングの幅を広げやすいからです。もちろんちゃんとしたカーブも、ちゃんとしたスライダーも投げられる上でスラーブを投げるのであればいいと思うのですが、スラーブだけとなると、幅は狭くなりがちです。


皆さんはカーブとスライダーの違いを厳密に説明することはできるでしょうか?両方とも横や縦に曲がる球種な訳ですが、この2つの球種には明確な違いがあるんです。

まずカーブというのは、ピッチャーの指先から放たれた瞬間から変化が始まる球種のことです。一方スライダーは、途中まではストレートの軌道で、ある一点を通過すると横に曲がり始める球種のことです。スライダーの場合、ストレート軌道の距離が長いほどキレがある良いスライダーということになります。バッターの手元まで行ってカクッと曲がるスライダーなら最高ですね。

さて、カーブという球種はトップスピンに近い回転をかけることによって進行方向に対するマグナス力を小さくし、ブレーキをかけながら落ちていくという変化を見せます。ですので英語ではブレーキングボールと言われることもあります。特徴としては中指の、薬側の腹を使って、縫い目を広く使ってボールを抜きながら回転をかけるという点です。

一方スライダーは指先を縫い目に斜めにかけ、ストレートのように投げて鋭いサイドスピンを与え、空気抵抗に勝つ勢いがなくなったポイントで、横方向へのマグナス力によって曲がっていくのが特徴です。

今回の投手育成コラムではカーブとスライダーの違いを少し解説してみましたが、文章だけだとちょっとわかりにくいですね。怪我をしない変化球の投げ方、キレのある変化球の投げ方をもっと教わりたいという方は、ぜひ当野球塾にコーチングを受けにいらしてみてください。

第二次世界大戦中、日本もアメリカもプロ野球選手たちの多くが兵士として戦争に駆り出されました。日本で言えば沢村賞として名が残る沢村栄治投手も戦地に赴き、ピッチャーだからという理由で手榴弾を投げ続けさせられ肩を壊し、以降ピッチャーとしてかつての球速を取り戻せないまま再び赴いた戦地で戦死しました。27歳という若さでした。


日本球界が沢村栄治というスター選手を失った頃、アメリカ球界ではナックルボールという新球を得ていました。アメリカ軍も戦地ではプロ野球選手たちに手榴弾を投げ続けさせたのですが、アメリカの場合、その手榴弾の大きさや重さを野球のボールに近づけるという工夫をしていました。

ですが形をまん丸にしたことで爆発しやすくなったようで、選手たちは野球のように豪速球を投げられず、手榴弾にあまり刺激を与えずに投げなければ自爆してしまう危険性もあったそうです。手榴弾をなるべく回転させることなく投げる方法を試行錯誤しながら見つけられたのがナックルボールの握り方でした。これにより手榴弾をほとんど回転させずに投げられるようになり、投げた直後に自分たちの近くで爆発することもなくなったそうです。

これがナックルボールが誕生した瞬間でした。戦後、選手たちは早速野球場で手榴弾を投げた時の握りでボールを投げ始めました。すると投げた本人にも予測できない曲がり方をし、キャッチャーでさえ捕球できない魔球となりました。そのためメジャーリーグでは今もナックルボーラーが投げる際は、ファーストミットのように幅の広いキャッチャーミットを使っています。

さて、ナックルボールを上手く投げるコツは、あまり山なりでは投げないということです。山なりに投げてしまうと進行方向に対する空気抵抗が小さくなってしまい、ボールが揺れなくなり、ただのスローボールになってしまいます。

もちろん球速が出ない分多少は山なりに投げないとキャッチャーまで届かないわけですが、この山なりを水平に近づけられるほど、ナックルボールは不自然に揺れるようになり、バッターがジャストミートできるかは運次第という魔球になります。

ですので球速を出せない投手がナックルボーラーになるよりは、本来は速いボールを投げられる投手がナックルボーラーになった方が、より打ちにくいナックルボールを投げられるようになります。ウェイクフィールド投手が投げていたナックルボールも、山なりになっていないから打ちにくかったわけですね。

戦争という悲しい過去が生み出したナックルボールではありますが、ピッチャーにとってはこのボールだけでも高額年俸を得られる魔球へと進化を続けています。日本のプロ野球ではナックルボーラーはほとんどいなくなってしまいましたが、メジャーリーグではまだサイ・ヤング賞投手がナックルボーラーとして活躍を続けています。

ナックルボールは肩肘への負荷が非常に小さいため、投手としての選手寿命も延びやすくなります。例えばディッキー投手は今年42歳で2桁勝利を挙げ、ウェイクフィールド投手も45歳まで現役を続けました。ライト投手は33歳ですが、これからあと何年投げ続けられるのか、今からとても楽しみですね!

フロントドアというシュートを投げる際の注意点

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広島カープに復帰した黒田博樹投手が投げていることで今、右投手が投げるフロントドアと呼ばれるシュートボールが注目されています。これはどのようなボールかというと、右対右の順手対決の場合、シュートボールを外角ボールゾーンからストライクゾーンに入れていくシュートのことです。バックドアというのは逆に、スライダーやカッターを内角ボールゾーンからストライクゾーンに入れていくボールです。ツーレーンピッチャーと呼ばれるタイプの投手が得意とする攻め方です。

日本球界ではストレートのシュート回転=欠点とみなされることがほとんどです。確かに意図しないシュート回転のボールは良くありません。なぜならそれは体が開いた状態か、リリースポイントが前後にずれている状態、もしくはその両方であるためです。しかし意図してシュート回転のボールを投げているのであれば、そのシュート回転のボールはフロントドアとして大きな武器となります。

黒田投手の場合はもちろんですが、非常に質の良い伸びのあるストレートを投げています。それとは別物として、外角のボールゾーンにシュート回転するストレートを投げていきます。これは意図したシュート回転のボールであって、シュート回転してしまったストレートとは異質のものです。

フロントドアというボールの存在を知ると、シュート回転していても良いと勘違いしてしまいそうですが、そうではありません。あくまでもしっかりとしたバックスピンストレートを投げられた上での、意図したフロントドアである必要があります。意図しないシュート回転のボールでは、どのコースでもシュート回転してしまいます。するとストライクゾーンの外角で勝負にいったボールが意図しないシュート回転により真ん中に入ってしまい痛打されてしまいます。

フロントドアと呼ばれるシュートボール(ツーシーム)はこれからはメジャーだけではなく、日本のプロ野球でも見る機会が増えるかもしれません。ですがそのボールが意図したものか、意図しないものかにより、黒田投手のような素晴らしい成績を収められるか、連打されて降格させられるかが決まってきてしまいます。ですのでフロントドアを活用するためには、まずはシュート回転しないバックスピンストレートをしっかり投げられるようになってください。