「変化球」と一致するもの

野球肘になる変化球と、野球肘にならない変化球

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なぜ変化球を投げると肘を痛めるのか?!

野球肘になる変化球と、野球肘にならない変化球

野球肘の原因が変化球にあるとはよく言われることですが、これは正解であると同時に不正解でもあります。正しい投げ方をすれば変化球で肘を壊すことはありませんし、正しい投げ方ができていなければ多投しなくても変化球によって肘を痛めてしまいます。

スライダーにしてもシュートにしても他の球種にしても、ストレートとまったく同じ腕の振りで投げられれば肘を痛めることはありません。もちろんそのためにはまず、ストレートを肩肘を痛めにくい良いフォームで投げられるようになっている必要があるのですが💦

正しい変化球のリリースポイント

ストレートの腕の振りで、肩関節が内旋過程からニュートラルになった瞬間、手のひらがほぼ下を向いた状態でボールリリースを迎えられるのが、本当に正しい腕の振り方をした時のストレートのリリースです。しかし手のひらが捕手と向き合って正面を向いた状態でリリースしている場合、球種問わず肘の内側を痛めやすくなります。

まず前者の良いフォームになっていて、ニュートラルになる90°手前で抜くようにリリースするとカーブ、45°手前で切るようにリリースするとスライダー、30°前後手前ならカッターになります。逆にニュートラルになって肩関節が内旋過程ではなく、実際に内旋状態なった瞬間にリリースするとシュートになります。

このように腕の振りはストレートとまったく同じで、どこでリリースするかによってボールにさまざまな回転を与えて投げるのが変化球なんです。間違っても肩関節を外旋させたり、肘を回内・回外させたりしてボールに横回転を与えることはしないでください。あっという間に肘が痛くなります❗️

ちなみにリリースするポイントに関しては、握り方によってのみコントロールしていきます。例えば人差し指を浮かせて、中指の薬指側の面を縫い目にかければ、自然と90°手前でボールは抜けるようになり、縦に大きく割れるドロップを投げることができます。

握り方を変えても上手く変化球を投げられない場合は、肩肘を柔らかく使うことができていないはずです。逆に正しいフォームが身に付いていればスローイングアームの力みもなくなっていき、自然と肩肘を柔らかく使って投げられるようになります。

野球肘と変化球に関する結論

要するに正しい投げ方さえできていれば、小学生が変化球を投げても肘を痛めることはない、ということです。例えばドロップという球種はストレートよりもずっと球速が遅いため、正しいフォームで投げればストレートよりも肩肘にかかる負荷は小さくなります。そのためアメリカではドロップは"セーフティカーブ"と呼ばれているんです。

プロコーチとして僕がオススメしたいのは、ドロップを正しいフォームで投げられるようになり、投球をドロップから始めることで肩肘を柔らかく使う投げ方で慣らし、その後で速いボールを投げ込んでいくという流れのキャッチボールです。肩肘を柔らかく使えていると、ストレートの伸びもアップしていくはずです。

とにかく野球肘にならないようにするためには、まずはストレートを正しいフォームで投げられるようになる、ということです。しかし少年野球の指導現場のほとんどは内旋型トップポジションを子どもたちに教え込んでいて、変化球を投げなくても肘に負荷のかかる投げ方の子が本当に多いんです😭

ですので僕が作った『投球障害予防改善法ビデオ』を、本当に一人でも多くの野球指導者に見ていただきたいと思うわけなのです!

鵜呑みにはできない竹内樹生投手の130km/hという球速

130km/hを投げる小学生・竹内樹生投手の投球フォーム分析

2022年12月27日、北海道日本ハムファイターズジュニアの竹内樹生投手が大会史上初のノーヒットノーランを達成しました。僕もこの試合のピッチングを少し映像で拝見したのですが、確かに体格や投げているボールは6年生とは思えないレベルでした。

スポーツ紙によればこの試合の最速は130km/hだったそうです。ただしこの130km/hという数字を鵜呑みにすることはできません。もちろん一般の野球ファンにはこの結果を喜んであげて欲しいのですが、僕個人のプロコーチとしての意見は、実はそれほど高い評価ではありません。

確かに6年生としては素晴らしいと思います。普通の6年生であれば100km/hを超えるボールを投げるだけでも大変なのに、竹内投手は130km/hを投げているのです。これはもう本当に素晴らしいし、このまま怪我なく野球を続けて欲しいなと思っています。

ですがまず、神宮球場というのは球速が出やすい球場ということを忘れてはなりません。2022年の時点で神宮球場が、どのポイントで球速を測っているのかは分かりません。10年前に比べるとスピードは出にくくなっているとは思うのですが、それでもおそらくは18.44mの中間よりも僅かに投手よりで計測しているような印象です。

ということは小学生の16mという距離の場合、竹内投手の130km/hという球速は初速で計測された可能性が非常に高いと思います。おそらく3ヵ月後に中学生になって18.44mになった際、ボールは打者の手元でけっこう失速しているはずです。竹内投手の投げ方は、そのようなボールになってしまう投げ方をしているんです。

小学生相手にムキになるなとも言われてしまいそうですが、しかし僕は野球動作改善のプロフェッショナルコーチですので、ここはしっかりと理論的に書いていきたいと思います。

エクステンションが非常に短い竹内樹生投手のフォーム

まず竹内樹生投手のフォームの最大の特徴は、クロスインステップです。踏み込んでいく右靴を真ん中よりも左側にランディングさせ、つま先もやや一塁ベンチの方を向いています。これは間違いなくクロスファイアーを意識してのフォームだと思うのですが、クロスインにしてしまうことで右股関節をほとんど使えていない状態にあります。

左投手の場合、ボールは右股関節の内旋屈曲で投げていくものなのですが、竹内投手の場合は右股関節ではなく、左肩の水平内転によってボールを投げてしまっています。この投げ方のデメリットとしては、肩関節の真ん中〜後方にかけて大きな外反ストレスがかかり、このあたりの筋肉、特に棘上筋を痛めやすいという点です。つまり野球肩になりやすいということです。

以前、花巻東高校の佐々木監督は左腕が入部したら必ずクロスファイアーで投げさせると仰っていました。ですがこれをさせるということは、佐々木監督は解剖学を解ってらっしゃらないということだと思います。まだスポーツ科学が発展する前は、日本でもクロスファイアーは大きな武器として周知されていました。

ですが僕のような野球動作改善のプロフェッショナルが登場してくると、クロスファイアーで投げると確かに打者は打ちにくくなるけど、それ以上に左肩にかかるストレスが非常に大きくなるということがスポーツ医学的に理解されるようになりました。そのため僕自身はプロコーチになった2010年1月以降、クロスファイアーに関しては僕の教え子たちには基本的にはやめるように言っています。しかしクロスファイアーをやめても、理論的に正しい投げ方をマスターするとちゃんと打者を抑えることができますし、肩を壊す心配もなくなります。

僕の教え子の中にももちろんサウスポーは大勢いて、野球肩野球肘に悩んでいる選手もたくさんいました。そしてその多くの左腕が指導者からクロスファイアーで投げるようにと言われていました。そのため僕のレッスンではまずクロスファイヤーをやめさせ、しっかりと股関節を使える体の構造に則ったフォームに改善させました。その結果球速や制球力も上がり、ほとんどの選手が肩肘の痛みから解放されました。
※ よほど悪化した状態の場合は動作改善だけでは野球肩野球肘を治すことはできません。

竹内投手は将来的には硬式野球に進むのだと思います。ですが体がまだ出来上がっていないうちから130km/hのボールを投げ続け、しかもクロスファイアーで投げ続ければ、近い将来必ず肩肘を痛めてしまうはずです。僕個人としては、竹内投手が投球障害を抱えるとすれば、肩の真ん中〜後方、もしくは肘の内側を痛める可能性が高いと見ています。

さて、竹内投手は右股関節の内旋屈曲ではなく、左肩の水平内転でボールを投げていることは上述した通りです。この投げ方をしてしまうと、エクステンションが非常に短くなってしまうんです。打者を差し込めるか否かは、ひとえにエクステンションの長さにかかっています。
※ エクステンションとはピッチャーズプレートからリリースポイントまでの距離のこと

これはアメリカの有名コーチであるトム・ハウス氏がリサーチしたものなのですが、打者を差し込めるか否かは球速ではなく、エクステンションの長さが重要であるというエビデンスが存在しています。つまり球速が遅くてもエクステンションが長ければ被打率は向上し、球速が速くてもエクステンションが短い投手は被打率が悪くなります。

竹内樹生投手の場合、右股関節の内旋屈曲が非常に浅いため、エクステンションが非常に短いんです。おそらくリリースポイントは顔の横あたりに来ているのではないでしょうか。130km/hのボールなんて見たことがない小学生を相手に、16mの距離からそのボールを投げれば、もちろんエクステンションなど関係なくなかなか打つことはできないでしょう。

しかし3ヵ月後に18.44mになった時、エクステンションが短いと130km/h以上のボールを投げたとしても、中学2〜3年生の打者ならば普通に打っていくことができます。

竹内投手の今後の課題は肩肘を痛めにくいフォームを身につけることと、エクステンションを長くして力を抜いて投げても打者を差し込めるようになることだと思います。ちなみに現時点の竹内投手のスローイングアームの使い方は非常にタイトで、緩い変化球を投げにくいフォームになっています。そしてタイトであるということは肘もロックされやすくなるということで、仮にフォークボールやチェンジアップの習得を目指した時、肘への負荷は他の投手以上に大きくなってしまうはずです。

プロコーチとして気になるのは竹内樹生投手の初速と終速の差

続いて右膝について見ておきましょう。竹内投手の右膝はランディングした瞬間、ほぼ足首の真上付近まで来てしまっています。これは上半身主体の投げ方をする投手の典型的な形です。プロでもなかなか1軍で活躍できない投手の中にもこの形の選手が多数います。この右膝の使い方をしてしまうと必ず上半身は突っ込んでしまいます。実際竹内投手のフォームは上半身が突っ込み、体も開き気味です。

竹内投手の体格は178cm/75kgだそうですが、現状ではこの体格に頼って速いボールを投げているという評価になります。もちろんそれでも初速130km/hを投げられるということは本当に凄いことなのですが、しかし質の良い130km/hかと問われれば、そうではないというのが僕の正直な意見です。

小学生としてのすべての試合を終えたら、竹内投手の周囲にいる関係者の方々には、ぜひ竹内投手の初速と終速を18.44mで計測して欲しいなと思います。現状、この差はかなり大きいはずです。理想としては3km/h以下、悪くてもその差は5km/h以下に抑えていきたいのですが、果たして竹内投手の初速と終速の差はどれくらいになるのでしょうか。

初速と終速差が大きくても、16mであれば失速する前にキャッチャーミットに収まります。しかし18.44mになるとそうはいきません。しかも上述の通り右膝がかなり前に流れているため、傾斜のある大人用のマウンドではもっと体が突っ込むようになり、この突っ込みを改善できなければトップポジション付近からの加速時に、肩関節の前方にも外反ストレスがかかりやすくなります。

現時点では球数も多くないし、ボールもJ号で軽いため、肩肘の負荷は最小限に抑えられていると思います。しかしこれがM号や硬式球になった時、ボールは大きくなり重くもなります。それによって増幅させられる体への負荷を竹内投手の現時点でのフォームでは軽減させられないはずです。

本当に素晴らしい資質を持つ竹内樹生投手

6年生で130km/hを投げられるなんて本当に素晴らしい資質です!だからこそ僕はプロコーチとして、竹内投手には絶対に怪我をして欲しくないと願っています。しかしそのためには解剖学をしっかりと理解しているコーチのもとで動作改善をしていく必要があります。今のフォームのままではいずれ肩肘を痛めるでしょうし、中学2〜3年生、そして高校生になった時に通用しない投手になってしまいます。

竹内投手も周囲の大人たちも、ノーヒットノーランや130km/hという結果には絶対に慢心すべきではありません。竹内投手のフォームは他の投手が真似しても問題ない良いフォームではありません。とは言えすべてを短期間で直していくことは難しいので、ぜひ1つ1つ正しいスポーツ科学や解剖学に則って、焦らずにゆっくりと動作改善をしていって欲しいなと思います。

こんなに素晴らし資質を持った選手なのですから、周囲の大人は絶対に彼が怪我をしないように見守ってあげる必要があります。そのためにもまずは股関節を適切に使った投げ方の習得は必須です。股関節を使えれば肩肘に頼らずに済みますし、逆に現時点のように股関節を使えていなければ、肩肘に頼って投げるしかなくなります。

ちなみにもう少し付け加えておくと、竹内投手のフォームは上半身と下半身が上手く連動していません。さらにボールリリースの瞬間の形を見ると、地面からの反力も得にくく、下半身のエネルギーもボールリリースに伝わりにくい形になっています。そして投手はオフバランスで投げたいところを、オンバランスに投げてしまっていて、ヒップファーストフォールを作れないモーションにもなっています。

竹内樹生投手のフォームを細かいところまですべて語っていくと、ちょっとものすごい長さのコラムになってしまいそうなので、今回は僕が気になった大まかな部分だけをご紹介しておきたいと思います。

それにしても16mの距離から130km/hのボールを投げられたら、相手の小学生打者は本当に怖いでしょね!しかもクロスファイアーで投げているため、左打者はなおさら怖さがあると思います。

こんな素晴らしい資質を持った竹内樹生投手には、いつかファイターズジュニア出身選手としてファイターズのエースになって欲しいなと僕は願っています。

ページ更新日:2022年10月23日

山本由伸投手の投げ方は本当にアーム式なのか?!

山本由伸のフォーム分析

オリックスバファローズの山本由伸投手のフォームは、アーム式だと言われることがよくあります。確かにテイクバックからコックアップにかけて一度肘を伸ばす動作を入れているため、一見するとアーム式のようにも見えます。しかし実際にはアーム式ではない、というのがプロコーチである僕の意見です。

アーム式かそうでないかを見分けるポイントは、トップポジションからボールリリースにかけてのフェイズでどれだけ肘が伸びているのか、という点です。山本由伸投手の場合、コックアップの最終盤ではすでに肘が曲がっていて、肘が伸ばされた状態で腕を振っているわけではありません。そのためアーム式ではない、と言えるわけです。

山本由伸投手のフォームの特徴としては、重心をややお尻側に落としているという点ではないでしょうか。通常はもっと力が入るように重心はお腹側に置きますが、山本投手の場合はややお尻側に落ちています。通常この動作が良い、と言うことはできず、僕自身選手をコーチングする際に重心がお尻側に落ちていたら直させるようにしています。

おそらく2021年シーズンからだと思いますが、山本投手のこの重心が真ん中寄りに戻って来ていると思うんです。その分フォーム全体のバランスが良くなり、ストレートの伸びと変化球のキレが昨季以上に増しているように見えました。

ただし山本投手には、重心がお尻側に落ちている形を上手く利用できる高い技術があります。通常であれば重心がお尻側に落ちていると力が入りにくくなり球威は大幅に低下してしまいます。

しかし山本投手の場合はお尻側にやや落ちた重心を上手く使い、アクセラレーションフェイズ(トップポジションとボールリリースの間の加速フェイズ)で体軸と運動軸を分離させているんです。この体軸と運動軸の分離こそが、山本由伸投手の伸びのあるストレートを生んでいるというわけです。

運動軸と体軸の分離に関しては、僕の野球教則ビデオの中で詳しく解説していますので、そちらをご視聴いただければ幸いです。

体軸と運動軸を分離させている山本由伸投手のフォーム

体軸と運動軸を分離させて使えるようになると、リリースポイントと運動軸のラインを限りなく近付けられるようになります。すると求心力を使えるようになり、鋭いボディースピンを生み出し、ストレートの回転数を増やせるようになります。

そしてストレートの回転数が増えれば、力一杯投げなくてもストレートが伸びる(ホップ要素が増える)ようになり、簡単にバッターを差し込めるようになります。ボールがスウィングプレーンの上を通過する空振りも増えます。

ちなみに体軸と運動時を分離させている投手の代表例は西口文也投手、ランディ・ジョンソン投手らです。プロ野球やメジャーリーグでも、本当に一部の投手しか身につけられない非常に高いレベルの技術です。

ではなぜ体軸と運動軸を分離させることができるのか?一言で片付けるならば、筋トレに頼っていないことが最大要素ではないでしょうか。山本由伸投手はほとんど筋トレはしません。ちなみに西口文也投手も現役時代はほとんど筋トレをしませんでした。

筋トレに頼らず、投げるのに必要な筋力と強さを投げる動作により鍛えているため、持っている筋肉のほとんどをピッチングフォームの中で活かせるようになります。

余分な重量がない分体を自在に動かすことができ、体軸と運動軸を分離させるという高い技術を身につけられるようになるわけです。もし山本投手が筋トレに頼った球威アップを目指していたならば、求心力ではなく遠心力で投げるピッチャーになってしまい、沢村賞レベルの投手になれたかどうかは誰にも分かりません。

そしてこの技術を身につけるためには、右投手の場合、骨盤を一塁側にスライドさせながらスピンさせるという技術が必須となります。この技術を身につけるためには股関節周りの強度・柔軟性・可動性が必須となり、これらの要素がどれか1つでも欠けてしまうと習得することはできません。ちなみに山本投手の股関節のコンディションはどれをとっても抜群です。

エースに相応しい態度を貫く山本由伸投手

2021年スワローズとの日本シリーズで、山本投手が登板した試合で味方がエラーをしてしまった場面がありました。このエラーがなければもしかしたらその試合の流れはオリックスバファローズに行っていたかもしれません。

このような大事な試合の局面で味方がエラーをしても、山本投手はガッカリした姿を一切見せませんでしたし、味方のエラーにイラつくような表情を見せることさえありませんでした。このような態度も西口文也投手と共通しています。

西口投手も味方のエラーに嫌な顔を見せることはしない投手でした。そのためライオンズナインは西口投手が登板する試合ではいつも「西口さんを勝たせよう!」と一丸となっていました。山本投手もおそらくチーム内では、そう思われているエースなのではないでしょうか。

山本由伸投手と伊藤智仁投手の相違点

フォームに関しての話をさらに付け加えるならば、肩甲骨の使い方がとても深くて素晴らしいと思います。この肩甲骨の使い方に関しては、少年野球でもどんどん真似していくべきだと思います。
(スポーツ科学を勉強されていない方が教えるのは難しいとは思いますが)

肩甲骨はフローティングといって、どの方向にも動かすことができる骨なんです。山本投手の場合は投球時に左右・前後・上下を満遍なく使っているように見えます。そして肩甲骨を使えていることにより、肩関節そのものの使用率を軽減させ、肩への負荷を減らせているようにも見えます。

肩甲骨が柔らかい投手の代表格と言えばなんと言っても伊藤智仁投手だと思うのですが、山本由伸投手と伊藤智仁投手の違いは体軸と運動軸の分離の有無にあります。伊藤智仁投手のフォームは、体軸と運動軸は分離されていません。

そのため求心力ではなく、遠心力を使ったピッチングフォームになっており、もともとルーズショルダー気味だった肩への負荷を軽減させることができず、伊藤智仁投手は肩痛肘痛に悩み続けていました。

一方2021年、現時点での山本由伸投手のフォームは求心力を使えているため、ローテーターカフという肩関節に4つあるインナーマッスルへの負荷が高くなるフォームにはなっておらず、よほどの投球過多や勤続疲労が出て来ない限りは、簡単に肩を痛めることはないのではないでしょうか。痛めたとしても軽症で済むと思います。

山本由伸投手のフォームを作り出した槍投げトレーニング

山本由伸投手はウェイトトレーニングは一切やらないそうなのですが、槍投げトレーニングは行なっているのだそうです。僕もプロコーチとして投手たちに、槍投げのような体の使い方でボールを投げるフォームの指導を2010年以降続けています。

実は槍投げトレーニングは、元プロ野球選手だった野球指導者の多くが肯定的には見ていないのですが、しかし僕のレッスンを受けた生徒さんたちの多くは、肩痛肘痛に悩まされることもなくなり、同時に球威球速のアップにも成功しています。

槍投げトレーニングは、ただ槍投げの動作を真似して投げれば良いというわけではないのですが、野球肩野球肘の予防や球速アップには非常に効果的なトレーニング法なんです。

ちなみに大谷翔平投手も、槍投げトレーニングではないのですが、槍投げトレーニングに近いトレーニングをファイターズ時代から続けています。

山本由伸投手の場合、下半身もやや槍投げ選手に近い使い方をしています。特に左膝による左太腿の動かし方ですね。普通の投手が左太腿を立てながら投げてしまうと制球力が低下してしまうのですが、運動軸とリリースポイントの幅が非常に狭い山本投手の場合、この動きにより制球力が低下しているということもありません。

並進運動中の左脚の使い方に関しては、マクシマム・インターナルローテーション・ストライディングといって、左股関節を外旋させるために、並進運動中に左股関節を内旋させる動作が入っています。これは田中将大投手にも共通する動作です。

この動作によりランディング付近での左股関節の外旋を深くし、その後の内旋動作のキレをアップさせてボディスピンを鋭くし、最速157km/hという球速に繋げています。このマクシマム・インターナルローテーション・ストライディングも、難易度としては非常に高いので、そう簡単に真似できるフォームではありません。

山本由伸投手のフォーム分析のまとめ

細かい部分を見出すととてもこのページには収め切れないわけですが、大まかな部分だけを見ていくと、山本由伸投手のフォームはだいたいこのような分析になってきます。

アーム式のようでアーム式ではなく、実際には非常に難易度の高い投げ方をしているのが山本由伸投手のフォームなんです。

「山本由伸がアーム式で沢村賞を獲ったのだから、アーム式は悪い投げ方ではない」と間違った認識をしている方も多いと思いますが、その場合は要注意です。実際、本当の意味でアーム式で投げたとしたら簡単に肩肘を痛めてしまうはずです。

山本投手のフォームはすぐにでも真似できそうで、実は真似することが非常に難しい超ハイレベルなメカニクスを持っています。もし山本由伸投手のフォームを真似してみたい場合は、まずは肩甲骨と股関節の使い方から真似するようにしましょう。

フォームの見た目そのままを真似しようとすれば、本当にアーム式で投げてしまう危険性もありますので、そのあたりは十分ご注意ください。

沢村賞を獲るほどの活躍を見せてくれた山本由伸投手のフォームには、沢村賞を獲れるだけのこれだけの理由があったわけなんです。山本投手には来季も沢村賞候補に挙がるような活躍を期待しましょう!

Liga Agresiva

球種制限に関しては僕の目は懐疑的です。

高校野球は甲子園大会ばかりが注目されがちですが、2015年に発足されたLiga Agresivaというリーグ戦が近年注目度を高めています。プロコーチの僕自身としては、Liga Agresivaの大半の理念を素晴らしいと感じています。

ですがこのリーグではカーブとチェンジアップしか変化球を投げることができず、変化球の割合も25%ほどに抑えるようにと決められています。僕は球数制限に関しては導入すべきだと考えているのですが、球種制限に関しては必要ないと考えています。

野球肘とスライダー

スライダーを投げると野球肘になりやすいというのは本当なのか?!

スライダーを投げると肘が下がったり、肘を痛めることが多いから投げない、というプロ野球選手たちがいます。ですが結論から言うと、正しい投げ方でスライダーを投げていれば肘を痛めるリスクを余分に高めることはありません。

スライダーを肩関節の外旋や、肘の回外によって投げてしまうとすぐに野球肘になってしまいます。特に肘の回外が加わっていると危険度は大幅に高まります。

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体重=長打力は間違いでもあり正解でもある

プロ野球でもアマチュア野球でも、未だに体重が長打力に直結しているとしか考えていない方が多いようです。例えばプロ野球で言えば山川穂高選手や渡部健人選手、清宮幸太郎選手らは「体重が減ると長打力が低下する」と考えている選手たちです。

しかし日本ハムの新監督になられた新庄剛志監督は、清宮選手に対し即ダイエット指令を出しました。ダイエット指令に対し最初清宮選手は「長打力が低下する」という理由で渋っていたようですが、新庄監督の「今だってそんなに飛んでない」という言葉に言い返す言葉がなく、結局ダイエットをすることになったようです。

体重=長打力と考えられるようになったのは、細身だった落合博満選手が、あんこ体型に変えてからホームランを量産するようになった頃からだと思われます。落合選手自身、あんこ体型がホームラン増に繋がったと明言しているので尚更でしょう。

体重=長打力、これが100%間違っているというわけではありません。体重移動をするウェイトシフト打法で打つ場合は、ボールにぶつけられるエネルギーが大きくなるため、体重が重い方が飛距離がアップすることもあります。

ですがツーシームなどの速い変化球が全盛の現代野球では、体重移動をする打ち方は通用しません。野球のレベルが上がれば上がるほど通用しなくなります。

その理由はウェイトシフト打法だと頭が大きく移動してしまうからです。そしてツーシームやスプリッターなどの速い変化球は、頭を移動している真っ最中に変化してくるため、それらの変化球を正確に捉えることが非常に難しくなってしまうんです。

現代野球では中学生レベルでもツーシームやカッターを投げてきますので、やはり中学生に上がるまでにステイバック打法を身につけておくことが重要だと言えます。

打率と長打力を兼ね揃えた選手はスマートな体型の選手ばかり

体重移動に頼らないステイバック打法をマスターしている選手は、しっかりと引き締まった体を維持しつつ長打力も兼ね揃えています。松井秀喜選手、大谷翔平選手、柳田悠岐選手、坂本勇人選手、浅村栄斗選手などなどは、プロ入り後にステイバックをマスターした選手たちで、見た目は細身でスマートで、打率とホームラン両方で良い数字を残すことができています。

僕自身プロ野球選手のサポートや、子どもたちの個別レッスンをする際は、ウェイトシフトにこだわりがある場合以外は、ステイバック打法の指導のみを行っています。なぜなら、その方が圧倒的に成績が向上するからです。

ちなみにウェイトシフトにこだわりがある場合は、コーチングやレッスンをお断りするケースが多くなります。なぜならウェイトシフトであれば、僕じゃなくても指導できるコーチはいくらでもいるからです。

僕がレッスンをしている小中学生の中には、シーズン打率が.400以上の子が大勢います。みんな僕のレッスンを受けて、ウェイトシフトからステイバックに変えた子たちです。そして小柄でも細身でも、長打力アップに成功しています。

軟式野球の場合はボールに回転をかけられないため、非力な選手が長打力をアップさせることは難しい場合もあるのですが、硬式野球の場合は細身でも小柄でも女子でも飛距離をアップさせることができます。技術を身につけられれば、体重など関係なく長打力をアップさせることができるんです。

中学野球で多いのですが、体重を増やすために子どもたちに練習の合間に、ドカベンを食べさせる指導者がいます。これは栄養学的にも、生理学的にも、野球技術的にも完全に間違った指導法です。特に夏場にこれをやってしまうと熱中症のリスクを大幅に高めてしまいます。

まだまだ科学的根拠のある野球教則本が少ない現状

野球界にも、そろそろ科学的根拠のある野球教則本が増えると良いのですが、そのような本は野球を科学的に勉強されたトレーナーさんたちが数冊出している程度で、元プロ野球選手らの本の中では、ほとんど皆無と言えます。

体重移動をすると頭の位置は必ず移動するのですが、それなのに体重移動を指導しながら「頭を移動させずにバットを振ろう」というチグハグなことが書かれている元プロ野球選手監修の野球教則本もあります。

スポーツはもはや科学の時代です。日本球界でもトラックマンなどでデータを取るようにはなりましたが、ピッチングモーションやバッティングモーションの指導に関しては、まだまだほとんどの指導現場で非科学的な指導が行われています。

親交のある元プロ野球の打撃コーチ何人かに話を伺っても、プロ野球12球団でも非科学的な指導やメニューが組まれていることがほとんどとのことでした。

野球指導者たちはそろそろ科学的に野球技術を学び、体型に関わらず選手たちを上達させられる指導スキルを身につける必要があります。

しかしそのような野球指導者が現場にはほとんどいないため、僕らのように科学的に野球動作を学んだプロフェッショナルコーチの野球塾が今なお必要とされているわけなのです。

フォークボールは肘を痛めやすい

球速が速いフォークボールの使い手は要注意!

変化球の中で、もっとも肘を痛めやすいのはフォークボールやスプリッターだと言えます。フォークボールの投げ方は特殊で、人差し指と中指を大きく開き、そこにボールを挟み込むことによってボールの回転数を減らし、ホームプレートの手前でボールを落下させていきます。

ストレートのアヴェレージ(平均速度)が速いフォークボールの使い手ほど肘を痛めやすくなります。プロ野球や、メジャーに渡った速球派のフォークボールの使い手のほとんども肘の手術を経験しています。

山川穂高

器用さこそが山川穂高選手最大の弱点

埼玉西武ライオンズ山川穂高選手は、なぜ急に打てなくなってしまったのでしょうか。数字的な頂点は初めてシーズンを通してレギュラーとなった2018年の打率.281、本塁打47本で、翌年は43本塁打を放つも打率は.256と低迷し、2020〜2021年は4番の座を大ベテランである中村剛也選手に明け渡してしまいました。それどころか2021年は下位打線を打つことも多くなりました。

山川選手は、中村剛也選手の打ち方を参考にしたとプロ入り前後の頃に話していましたが、実際のバッティングメカニクスはかなり違います。「フォームの見た目」は似ている部分もありますが、メカニクスとしては別物だと言って良いと思います。

山川選手の特徴はなんと言っても器用さです。あの大きな体で書道やピアノをたしなむ選手で、手先の器用さは球界随一とも言えるのではないでしょうか。しかしこの器用さが山川選手の弱点になっているのだと僕はプロコーチとして見ています。

頭の位置を大きく動かして打つ山川穂高選手のフォーム

山川穂高選手のバッティングフォームは非常に無駄が多いんです。例えば誰が見てもパッと分かるところを見るだけでも、始動とスウィング時の重心の高さが全然違います。平たく言うと、頭の上下の移動が大きすぎるんです。これだけ目線を上下に大きく動かしてしまえば、縦の変化球をしっかり見極めることは物理的には不可能です。

人間の目は横に並んでいるため、もともと縦の動きを目で追うのは得意ではありません。その上これだけ頭を上下させて目線にブレが生じてしまえば、魔球のようなフォークやスプリッターがなくても、平均的なチェンジアップやカーブ、ヴァーティカルスライダー(縦スラ)でも十分打ち取ることができます。

それでも好調時は2年間ホームランを量産できたわけです。それは手先の器用さと、まだデータがそれほど確立していなかったことが理由ではないでしょうか。しかし2年連続ホームラン王になった選手は、11球団が徹底マークしてきます。その中でストロングポイントとウィークポイントが明確になっていき、バッテリーからすると「間違わなければ打ち取れる」という打者にされてしまったのでしょう。

プラトーではなく、スランプが山川選手の現状

山川選手は将来的には三冠王を目指したいと発言しています。しかしその直後から成績が低迷し始めたわけですが、さすがに3割打ったことがない打者が三冠王を口にしてはいけなかったと個人的には思っています。

しかし大志を抱くことは良いことです。山川選手には一度口にした三冠王という言葉を大切にして、来季はライオンズの背番号3に見合う数字を残してほしいと思います。

それと山川選手は2020年のシーズン前にバッティングフォームをマイナーチェンジしているのですが、もしかしたらそれによってフォームを崩してしまい、上手くタイミングを取れなくなってしまったのかもしれませんね。

山川選手の現状はブラトーではなく、明らかにスランプです。以前は見せられてたパフォーマンスができなくなっているのが現状で、決して上達が頭打ちしているわけではありません。

一度崩れたフォームや感覚を取り戻すのは容易ではありませんが、来季はなんとか再起を期待したいですね。そのためにも山川選手は器用さに頼るのではなく、フォームからもっと無駄な動作を省いて、もっとピッチャーのタイミングに入っていきやすく、ボールも正確に見極められるフォームに修正していくことが大切だと思います。

まだまだ理論的ではない山川選手の打撃フォーム

今季の山川選手のフォームを見ていても、下半身が出遅れていることが多いんです。特に軸足です。軸足はバッティングフォームを動かしていくための最初の歯車として使います。つまり軸足は、軸になる足なのではなく、軸を動かすための足、ということになります。

ホームランを打っている時でさえ、この軸足の動きがやや遅れていて、上半身主導のスウィングになっていることがほとんどなんです。これは本塁打王になった時にも言えたことなのですが、やはり上半身の器用さに頼ってしまっている分、下半身主導のモーションになっていないことが山川選手の成績低迷に繋がっているのではないでしょうか。

山川選手と中村剛也選手の違いは、僕は熊澤とおるコーチの指導を受けた経験があるかないかだと思います。中村選手は駆け出しの頃、熊澤コーチにバッティング理論を叩き込まれたため、今見ても中村選手のフォームは非常に理に適っています。

一方山川選手は理論というよりも、フィジカル主導の「しっかり振り抜け」という指導が中心になっているようなので、細かい部分のメカニクスが、僕らのようなプロコーチの目から見ると雑に見えてしまうんです。

浅村栄斗選手などは、熊澤コーチがライオンズを退団した後も熊澤コーチの野球塾の練習場で個人指導を受けていました。それにより打点王を獲得できるまでに至り、イーグルスに移籍した今でもクリーンナップを打ち続けています。山川選手もここは一度フィジカルよりも、理論を叩き込むことが大切かもしれませんね。

バッティングは理論なしに語ることはできません。理論なくただバットを毎日何百回も振っているだけでは、「活躍し続けられる」一流選手になることはできません。山川選手はまだまだポテンシャルを持っている選手です。それを活かすためにも、今山川選手のバッティングフォームに必要なのは理論であると、僕はプロコーチとして確信しています。

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スライダーとは、カーブとは異なり途中まではストレート

スライダーとは?と問われたら、僕は必ず「途中まではストレートで、ある地点から球に曲がり始める変化球」という感じで答えます。スライダーとカーブはまったく別物であり、カーブはリリースした瞬間から変化がはじまっていきますが、スライダーは途中まではストレート軌道であるべき球種です。

スライダーはとにかく、リリース後にどれだけ長くストレート軌道を維持できるか、が鍵になってきます。このストレートである時間が短ければ短いほど、バッターからすると球種を見極めやすくなりますし、バットも合わせやすくなります。

球速が速くても勝ち投手になれなければ意味はない!

僕は2010年1月以来、プロコーチとしてプロ野球選手のパーソナルコーチングや、小学生から大人まで数え切れないほどのアマチュア選手のレッスンを行ってきたわけですが、球速に関しては「速いに越したことはない」というスタンスで、物凄く速いボールを投げなくても、怪我なく勝てる投手になれればそれで良いと考えています。

プロ野球を目指している選手であれば、高校・大学クラスなら150km前後のボールを投げられるようにするためのレッスンを行なっていきますが、160kmや165kmという、大谷翔平投手クラスの球速は必ずしも投げられなくても良いと考えていきます。その理由はやはり、怪我のリスクが高まるためです。

仮に文句のつけようのない完璧な投球フォームで投げていたとしても、球速が上がれば上がるほど肩肘への負荷は高まり、怪我をするリスクも比例して高くなってしまいます。

165kmを投げられたからといって、100戦100勝できるわけではありません。ロケットの異名をとったロジャー・クレメンス投手でさえも通算勝率は.658なんです。160km以上のボールを投げられても、10試合投げたら3〜4回は敗戦投手になってしまうんです。

それならば体への負荷を減らし、パワーピッチングをしなくても勝てる投手を目指した方がプロ野球には近づくことができます。もちろん球が速いと「球速は天性。コントロールはこれから何とでもなる」と考えるスカウトマンもいるわけですが、そこからドラフトにかかって本当に活躍した投手というのは、数え切れないほどのそのような投手たちの中で、僕の知る限りでは石井一久投手くらいだと思います。

その他の球速だけで制球力がない投手たちは、プロ入り後に怪我をしたり、変化球とのコンビネーションを使えなかったり、ほとんどの投手が鳴かず飛ばずのままユニフォームを脱いでいます。

野球は陸上のような個人種目ではありませんので、170kmを投げられたとしても、チームを勝利に導くピッチングができなければ意味がありません。

110kmを投げられたとしても、小学生は投げるべきではない!

もちろん最低限の球速というのは必要だと思います。プロ入りを目指す高校生・大学生であれば、150km前後は必要ですし、小学生であれば90km以上は投げられた方がいいでしょう。

しかしたまに見かける110kmくらいのボールを投げられる小学生投手たち。僕もそのような小学生投手の情報はある程度は追跡調査をしているのですが、多くの子たちが中学・高校で肩肘を痛めてしまい、中には野球を辞めてしまった子もいました。小学生で110kmを投げられたとしても、結局は怪我で甲子園の夢も、プロ野球の夢も潰えてしまったわけです。

いくら110kmを投げられたとしても、小学生は小学生です。まだ体は出来上がっていないし、その球速を投げた際の衝撃に耐えられる体の強度もありません。ですのでいくら良い投げ方をしていたとしても、その後肩肘を痛めてしまったとしても不思議はないわけです。

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の育成方法は素晴らしいと思います。プロ入り前は超高校級のストレートを投げていたわけですが、プロ入り後は球速は抑えさせ、5年後に165kmの球速を投げても怪我をしない体づくり、フォーム作りを徹底させています。

プロコーチとしての僕の考えは、小学生には、いくら110kmを投げられたとしても投げさせるべきではないということです。110kmを投げさせるのは、体が強くなり始める中学生に入ってからで十分です。

一般的な目安としては、6年生で90〜100km、中三で120〜130km、高三で140〜150kmという感じでステップアップさせていけば、十分プロ野球のスカウトマンの目に留まっていきます。プロ野球選手になりたいのであれば、体を壊すようなピッチングをさせてはいけません。高卒でプロ入りするのか、大卒でプロ入りするのかということを逆算しながら、体の強さに合わせてストレートのアヴェレージを調整していく必要があります。

近年は小中学生でもガンガン筋トレをして目先の球速を追い求めてしまっていますが、怪我をせずに勝てる投手を目指すということを目的にするのであれば、そのやり方は間違いだと断言できます。

やはり一番は、まずは科学的に怪我をしにくい理想的な体の使い方を覚えるべきです。球速はそのフォームと体の強さを手にすれば自然とアップしていきます。逆に球速がアップしないということは、フォームのどこかにおかしな部分があるということです。

小学生の時はボールが速かったのに、中学生になって体が大きくなったら球速が低下してしまったという多数の選手が僕のレッスンを受けにきます。その場合、小学生時代のフォームの動画を見させてもらうと、腕っ節だけで投げているケースが大半です。すると中学生になって手足が長くなると、腕っ節が扱いにくくなってしまい、フォームを崩して球速が低下してしまうケースが多々あります。

そうならないように、やはり投球フォームは科学的に野球動作を学んだ指導者に見てもらうべきです。身近にそのようなコーチがいるのがベストですが、実際にはほとんどいないと思いますので、そのような場合は僕のようなプロコーチから、科学的根拠のあるレッスンを受けていただくのがベストです。

僕の動作改善に関するレッスン内容のすべてには、科学的根拠があります。科学的根拠なしに、経験則だけで生徒さんをレッスンすることは100%ありません。そして科学的根拠があるからこそ、本気でレッスンを受けていただければ誰でも必ず上達することができるわけなのです。