まだまだ無駄な動作が多い山川穂高選手の打撃フォーム

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山川穂高

器用さこそが山川穂高選手最大の弱点

埼玉西武ライオンズ山川穂高選手は、なぜ急に打てなくなってしまったのでしょうか。数字的な頂点は初めてシーズンを通してレギュラーとなった2018年の打率.281、本塁打47本で、翌年は43本塁打を放つも打率は.256と低迷し、2020〜2021年は4番の座を大ベテランである中村剛也選手に明け渡してしまいました。それどころか2021年は下位打線を打つことも多くなりました。

山川選手は、中村剛也選手の打ち方を参考にしたとプロ入り前後の頃に話していましたが、実際のバッティングメカニクスはかなり違います。「フォームの見た目」は似ている部分もありますが、メカニクスとしては別物だと言って良いと思います。

山川選手の特徴はなんと言っても器用さです。あの大きな体で書道やピアノをたしなむ選手で、手先の器用さは球界随一とも言えるのではないでしょうか。しかしこの器用さが山川選手の弱点になっているのだと僕はプロコーチとして見ています。

頭の位置を大きく動かして打つ山川穂高選手のフォーム

山川穂高選手のバッティングフォームは非常に無駄が多いんです。例えば誰が見てもパッと分かるところを見るだけでも、始動とスウィング時の重心の高さが全然違います。平たく言うと、頭の上下の移動が大きすぎるんです。これだけ目線を上下に大きく動かしてしまえば、縦の変化球をしっかり見極めることは物理的には不可能です。

人間の目は横に並んでいるため、もともと縦の動きを目で追うのは得意ではありません。その上これだけ頭を上下させて目線にブレが生じてしまえば、魔球のようなフォークやスプリッターがなくても、平均的なチェンジアップやカーブ、ヴァーティカルスライダー(縦スラ)でも十分打ち取ることができます。

それでも好調時は2年間ホームランを量産できたわけです。それは手先の器用さと、まだデータがそれほど確立していなかったことが理由ではないでしょうか。しかし2年連続ホームラン王になった選手は、11球団が徹底マークしてきます。その中でストロングポイントとウィークポイントが明確になっていき、バッテリーからすると「間違わなければ打ち取れる」という打者にされてしまったのでしょう。

プラトーではなく、スランプが山川選手の現状

山川選手は将来的には三冠王を目指したいと発言しています。しかしその直後から成績が低迷し始めたわけですが、さすがに3割打ったことがない打者が三冠王を口にしてはいけなかったと個人的には思っています。

しかし大志を抱くことは良いことです。山川選手には一度口にした三冠王という言葉を大切にして、来季はライオンズの背番号3に見合う数字を残してほしいと思います。

それと山川選手は2020年のシーズン前にバッティングフォームをマイナーチェンジしているのですが、もしかしたらそれによってフォームを崩してしまい、上手くタイミングを取れなくなってしまったのかもしれませんね。

山川選手の現状はブラトーではなく、明らかにスランプです。以前は見せられてたパフォーマンスができなくなっているのが現状で、決して上達が頭打ちしているわけではありません。

一度崩れたフォームや感覚を取り戻すのは容易ではありませんが、来季はなんとか再起を期待したいですね。そのためにも山川選手は器用さに頼るのではなく、フォームからもっと無駄な動作を省いて、もっとピッチャーのタイミングに入っていきやすく、ボールも正確に見極められるフォームに修正していくことが大切だと思います。

まだまだ理論的ではない山川選手の打撃フォーム

今季の山川選手のフォームを見ていても、下半身が出遅れていることが多いんです。特に軸足です。軸足はバッティングフォームを動かしていくための最初の歯車として使います。つまり軸足は、軸になる足なのではなく、軸を動かすための足、ということになります。

ホームランを打っている時でさえ、この軸足の動きがやや遅れていて、上半身主導のスウィングになっていることがほとんどなんです。これは本塁打王になった時にも言えたことなのですが、やはり上半身の器用さに頼ってしまっている分、下半身主導のモーションになっていないことが山川選手の成績低迷に繋がっているのではないでしょうか。

山川選手と中村剛也選手の違いは、僕は熊澤とおるコーチの指導を受けた経験があるかないかだと思います。中村選手は駆け出しの頃、熊澤コーチにバッティング理論を叩き込まれたため、今見ても中村選手のフォームは非常に理に適っています。

一方山川選手は理論というよりも、フィジカル主導の「しっかり振り抜け」という指導が中心になっているようなので、細かい部分のメカニクスが、僕らのようなプロコーチの目から見ると雑に見えてしまうんです。

浅村栄斗選手などは、熊澤コーチがライオンズを退団した後も熊澤コーチの野球塾の練習場で個人指導を受けていました。それにより打点王を獲得できるまでに至り、イーグルスに移籍した今でもクリーンナップを打ち続けています。山川選手もここは一度フィジカルよりも、理論を叩き込むことが大切かもしれませんね。

バッティングは理論なしに語ることはできません。理論なくただバットを毎日何百回も振っているだけでは、「活躍し続けられる」一流選手になることはできません。山川選手はまだまだポテンシャルを持っている選手です。それを活かすためにも、今山川選手のバッティングフォームに必要なのは理論であると、僕はプロコーチとして確信しています。

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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