「コンディショニング」と一致するもの

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の言葉の罠

「プロ野球選手もみんなやっている」という魔法の野球指導法の罠

近年、「プロ野球選手がみんなやっているから正しい」という魔法の言葉を使って選手を納得させるコーチやトレーナーが非常に多い印象です。実際僕の生徒さんの中にも、プロトレーナーやプロコーチから同じ言葉を言われたという選手が多数います。しかし「プロ野球選手がみんなやっている」=「正しい」という図式はまったく成り立ちません。

僕の投球フォーム指導法は、マスターすればパフォーマンスが上がるだけではなく、肩肘の怪我を減らすこともできます。これは医学的にも解剖学的にも正しい動作であり、野球選手を専門的に診ているスポーツ整形外科の先生やPTさんたち、柔道整復師のみなさんからもお墨付きをいただいています。

その指導法に関しては僕が監修しているビデオ『野球肩野球肘予防改善法・徹底解説ビデオ』をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、今プロで活躍している選手たちの多くは、野球動作を科学的に理解していないコーチたちの指導を受けてきたわけです。

例えば僕の場合、トップポジションに関しては内旋型トップポジションではなく、外旋型トップポジションを推奨し指導しています。内旋型トップポジションは肘の内側を怪我しやすく、肩にも負担がかかります。一方外旋型トップポジションで投げられれば、肩肘への負荷を高めることなく投げ続けることができます。

と言ってももちろん、常識外の球数を投げたり、疲労した状態で投げてしまえばどんなフォームだったとしても肩肘を痛めてしまいます。しかし常識内の球数や、極度の疲労状態で投げているわけではない場合、正しい形の外旋型トップポジションから投げられれば、まず肩肘を痛めることはなくなります。

これは僕が勝手に推奨している理論というわけではなく、人間の体の構造上、解剖学的に唯一の正しい投げ方となります。僕はプロコーチとして、理論を伝えられないことは絶対に選手たちに伝えることはしません。ですので「プロ野球選手たちもみんなそうしている」という説明で終わってしまう指導をすることも絶対にありません。

毎年数多くの選手が肩肘を痛めているプロ野球の現状

近年、高校生の生徒さんからちょくちょく言われることなのですが、高校の野球部で見てくれているプロトレーナーに、僕が指導した外旋型トップポジションだと肩肘を痛めやすいと言われた選手が複数人いるんです。

ちなみに肩を痛めやすいと言われただけで、なぜ痛めやすいのかという理論の説明は受けていない選手ばかりです。そして言われたことと言えば共通して「プロ野球選手はみんなこの形(内旋型トップポジション)から投げている」という説明だけだったそうです。

内旋型トップポジション 外旋型トップポジション

確かにその通りです。プロ野球選手のほとんどは内旋型トップポジションから投げています。これは確かな事実です。でもよく考えてみてください。毎年、一体何人のプロ野球選手たちが肩肘を痛めていますか?もし内旋型トップポジションが肩肘に負荷のかからない正しい投げ方なのだとすれば、プロ野球選手たちが肩肘を痛めることなど決してないはずです。

しかし12球団を見渡してみると、同年で1球団で4人も5人も肘の手術(トミージョン手術、TJ手術)を受けていたりします。「プロ野球選手がみんなそうしているから正しい」という論拠に乏しい指導をしているコーチ・トレーナーは、果たしてこの事実をどう考えているのでしょうか?とても気になるところです。

僕のレッスンを受けてくださっている選手の皆さんは僕のレッスンにより、「なぜ肩肘を痛めるのか?」「どうすれば痛めなくなるのか?」という点をしっかりと理解してくれていると思います。もちろん肩肘を痛めない投球フォームの習得には個々それぞれの時間がかかるわけですが、習得・未習得を別にすれば、どうすれば肩肘を痛めずに投げられるのかということを、小学生であっても理解してくれています。

プロコーチやプロトレーナーは「プロ野球選手がそうしているから正しい」と選手に伝えるのではなく、もっと解剖学的・医学的根拠に基づいて指導をすべきです。少年野球のボランティアコーチの方々にそこまで求めることはできませんが、しかしプロを名乗っているコーチやトレーナーであれば、そこまで学ぶことは義務だと思います。

コラム:野球肘とは?|内旋型トップポジションが野球肘を生み出す!

僕はお医者さんに野球フォームの指導法を指導するコーチ

一般的な整形外科の先生は筋肉や体の仕組みや治療法に関してはまさにプロフェッショナルです。お医者さんの医学的知見には僕らは太刀打ちできません。PTさんや柔道整復師の方々であっても、体の仕組み、リハビリ方法、コンディショニング法に関してはしっかり勉強されています。それぞれ国家資格ですからね。

でも「怪我をしにくい野球のフォーム」となると話は別です。もちろん野球を専門にされているスポーツ整形の先生などはフォームまでしっかりと勉強されているケースもありますが、そのような外科の先生は日本には数えるほどしかいらっしゃいません。そのため僕のようなコーチがお医者さん、PTさん、柔道整復師の方々に、肩肘を痛めにくいフォームの指導法のレクチャーを行なっているわけです。

僕のようなプロフェッショナルコーチは、医学的知見はそこそこしかありません。例えばお医者さんが使う専門用語をある程度理解していたり、レントゲン写真を見て異常を読み取る程度のことしかできません。ですが肩肘を痛めない理論的なフォームの指導や、痛めてしまった理由の解明に関してはプロフェッショナルです。このあたりに関しては僕はお医者さんにさえ絶対に負けることはありません。もちろんこの点だけですが。。。

「プロ野球選手がそうしているから正しい」という指導法は、これはプロコーチやプロトレーナーが行って良い指導法ではありません。これは週刊ベースボールで連続写真を見てフォームを学んでいるボランティアコーチの指導法です。ボランティアコーチであれば「プロ野球選手はみんなそうしている」という指導法が限界だとも言えますし、そうすることでしか説得力を増すことは難しいのかもしれません。

医学書は本当に高いけど、そこに投資するのがプロ!

しかしプロコーチ・プロトレーナーであれば、やはり一冊1〜2万円、安くても一冊5,000円程度する野球肩野球肘に関する医学書を開き、プロ野球選手たちのどの動作が正しくて、どの動作が誤りなのかを理論的に学び、分かりやすく選手たちに伝える技術が必要です。

ハッキリ言って医学書は本当に高いです。都内であれば新宿の紀伊國屋、池袋のジュンク堂などに行くと医学書がズラッと並んでいるわけですが、安い医学書というものは存在しません。週刊ベースボールよりもページ数が少ないスポーツ医学の月刊誌であっても3,000円くらいします。

ですがプロコーチ、プロトレーナーであればそこに投資しなければどんどん時代に取り残されてしまいます。ちなみに野球技術に関しては常にアメリカから日本に入ってくるという順序のため、英語をある程度理解できれば、最新の野球技術に関する論文もチェックできるようになります。

僕ももちろん最新の技術を英語の論文や、アメリカのコーチのレクチャーなどから学んでいます。2024年で僕はプロコーチ歴15年目となるわけですが、それでも未だに学ぶことだらけです。僕は他のプロコーチよりも多く学んでいる自負がありますが、それでもまだまだ時代に追いつくのがやっとです。

話は長くなりましたが、とにかく言いたいことは、「プロ野球選手のフォームを見て学ぶ」というのはアマチュアのやり方です。プロは「プロ野球選手のフォームを観察して、どの動作が理論的に正しくて、どの動作が理論的に良くないのか」を理論的に理解し、さらに理論的かつ分かりやすく説明できなくてはいけません。

僕もまだまだ成長過程のプロコーチではありますが、他のプロコーチやプロトレーナーと話をしていると、「この人たちは最新の野球技術を学んでいないんだなぁ」と思うがしばしばあります。

ですのでもしプロコーチやプロトレーナーの指導を対価を支払って受ける場合は、ちゃんと理論まで説明してくれるかを先に確認するようにしてください。フォームに関して理論を説明できない方は、理論的に誤った指導をする可能性が高いため要注意です。せっかくお金を払って指導を受けるのですから、やっぱりちゃんとした理論を持った方に教わるのが一番です。

少なくとも「プロ野球選手がみんなやっているから」とか、その類の言葉ですべてを説明しようとするコーチには高いお金を支払わないようにしましょう。

プロを夢見ても、プロになれる高校生・大学生は0.2%のみ!

プロを夢見ても、プロになれる高校生・大学生は0.2%のみ!

将来プロ野球選手になることを夢見て毎日練習を頑張っている選手は非常に多いと思います。しかし夢見る前に、プロ野球選手になるということは想像以上に難しいという現実を知っておく必要があります。

人並みや、人よりは多いという程度の練習量ではとてもプロにはなれません。人の2倍も3倍も努力することによって、初めてプロ野球の門戸を叩けるようになります。

では一体どれくらいの選手がプロ野球選手になれるのでしょうか?2023年の場合、プロ志望届を提出した高校生・大学生は316人いました。この中で実際に2023年度のドラフト会議で指名された高校生・大学生は育成指名も含めて85人です。つまりプロ志望届を提出できるという非常に高いレベルにある高校生・大学生であっても、実際にドラフト指名を受けるのはわずか27%でしかないということになります。

そして残念ながらプロのスカウトマンの目には一切留まらず、プロ志望届を出すことさえ叶わなかった選手などを含めると、高校生・大学生の野球部員はだいたい全国で53,000人前後となります。その中の85人となると、プロ野球選手になれる確率は0.2%にしかなりません。

日本一合格するのが難しいと言われる大学のひとつ、東京大学の合格率がだいたい24%ですので、0.2%がどれほど大変な数字なのかがよく分かりますね。

ドラフトでプロ側が指名できるのは12球団の合計で最大120人まで

ここでプロ野球のドラフトについて少し説明をしておきたいと思います。ドラフト会議に於いて、12球団の合計で指名できるのは最大120選手までとなります。すべての球団が指名を終えた段階で120人に満たない場合は、希望球団だけがさらに指名をしたり、育成選手ドラフトに参加することができます。

高校生・大学生の場合はプロ志望届を提出している選手のみ指名が可能で、社会人や独立リーグの場合はプロ志望届はなく、どの選手でもドラフト指名することが可能です。ただしドラフト会議までに「うちの球団はあなたを指名する可能性があります」ということを伝えずに、当日になって突然指名してしまうと、そのプロ球団と指名を受けた選手が所属するチームとの信頼関係が壊れてしまうことがあり、実際にそうなってしまったケースは過去に幾度もありました。

ちなみにセ・リーグのとある球団と、大阪にあるとある野球名門校の間では近年信頼関係が完全に壊れてしまい、その球団がその学校の生徒を指名をしたいと思っても、学校側が難色を示す状態が続いています。こうして一度壊れてしまった信頼関係は、修復するのに10年20年を要することもあるため、プロ球団側では近年、強行指名は極力避けようとする動きがあります。ただ、それでも強行指名をして最終的には入団合意に至らないというケースが未だ散見されます。

プロになりたければ、まずは最低限柔軟性を高めよう!

僕も2010年以降、本当に多くの「プロ野球を目標にしている選手」のコーチングをしてきました。そして実際にプロ入りを成し遂げた選手も何人もいます。

「将来プロ野球選手になりたい」と相談された時、僕がプロコーチとしてまず確認するのは柔軟性です。なぜなら高校・大学でいくら好成績を残していたとしても、柔軟性に乏しい選手は怪我をしやすいし、伸びしろも小さいため、スカウトマンたちもリストには入れないことがほとんどだからです。

その世代で、誰よりも凄い選手になることは誰にでもできることではありません。しかし高い柔軟性を得ることは誰にでもできます。よほどやり方を間違わない限り、柔軟性は誰でも必ずアップさせることができます。

もし毎日ストレッチングをしているのになかなか柔軟性がアップしないという場合は、やり方を間違えている可能性が高いため、僕のようなしっかりとした理論を学んでいるコーチの指導を仰ぐべきです。ちなみに柔軟性やストレングスという分野であれば、どこの駅前にもあるジムのトレーナーさんに聞いてもちゃんと教わることができるはずです。NESTA-PFTなどの資格を持っているトレーナーならなお安心です。

もしあなたが将来プロ野球選手を目指して頑張っているのなら、体が硬いうちは「プロ野球選手になりたい」と言ってはダメです。これではただの夢物語に終わってしまいます。

もしあなたが将来本気でプロ野球選手になりたいと考えているのであれば、まずは最低限のこととして、柔軟性を高めていきましょう。正しいやり方を続ければ、一年以内に180°開脚だってできるようになるはずです。ちなみに千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手はちゃんと180°開脚ができる選手です。

「まさかの指名漏れ!」と言われる選手は実はまさかではない事実

スカウトマンたちは「世代ナンバー1」はもちろんのこと、世代ナンバー1じゃなくても、伸び代がある選手を探します。例え甲子園に縁がなくても、地方大会で2〜3回戦までしか進めなかったとしても、そこに伸びしろを感じられる選手がいればドラフトで指名することがあります。実際、伸びしろが感じられれば軟式野球や準硬式野球のチームからドラフト指名することだってあります。

「まさかの指名漏れ!」と書かれる高校や大学のスター選手が毎年いますよね?そのような選手は基本的には伸びしろが少ない、もしくは怪我に弱いことが原因で指名を避けられている可能性があります。あとは右利きの右投げ左打ちの野手も指名を避けられる傾向が高くなります。

スカウトマンたちが見ているのはプレーだけではない!

そしてスカウントマンたちはグラウンドで目当ての選手を視察した後、必ず校門付近で他の生徒たちに声をかけ、目当ての選手の人柄をリサーチします。もしそこであまり評判が良くない場合は、これもまた指名漏れの原因になります。

また、近年はスカウントマンたちもSNSをしっかりチェックするようになっており、もし過去の投稿で良からぬ内容があると、これもまた指名漏れの原因となってしまいます。ですのでSNSの利用法には十分注意するか、もしくはやらないのがベストです。

実は僕自身、ドラフト候補選手のスカウティングリポートを作ることがあります。プロ野球のスカウントマンに依頼され、怪我をしやすいフォームになっていないかや、怪我をするならどのような怪我をする可能性が高いかなどをリポートにします。

実際そのリポートの中で僕は、ある選手に対し「この選手はすぐに肘を痛めるだろう」というリポートを書きました。そしてこのリポートによってその球団は指名を回避したのですが、他の球団がその選手を指名しました。その結果プロ1年目ですぐに肘を痛め、その後トミージョン手術を受けて、今現在プロでは鳴かず飛ばずの状態です。

近年はドラフト指名に於いてもバイオメカニクスなどのスポーツ科学が用いられる機会が少しずつ増えてきています。僕はまさにそのバイオメカニクスの専門家であるため、ピッチングフォームやバッティングフォームを見れば、「この選手はここを怪我しやすい」ということがすぐに分かります。

このコラムのまとめ

プロ野球はあくまでもビジネスです。費用対効果が望めなさそうな選手をドラフト指名することはありません。球団が選手に支払う契約金と年俸は投資ですので、その投資に見合うと思われる選手だけがドラフト指名されます。

そして上述の通り、特に柔軟性に乏しい選手は確実に指名リストから外されますので、もしあなたが将来プロ野球選手になりたいと考えているのであれば、できる限り柔軟性を高めておきましょう。と言ってももちろん、バレリーナほどの柔軟性は必要あります。普通に180°開脚をして胸を床につけられればそれで十分です。

もし誰にでもできる柔軟性の向上に難しさを感じるようであれば、プロ入りの夢は諦めた方が良いでしょう。プロ野球選手はアスリートです。アスリートは自らの身体を武器にして稼ぐ必要があります。その武器となる自らの身体を向上させることに後ろ向きな選手は、仮にプロに入れたとしてもすぐに戦力外となるでしょう。

ちなみにプロ入り後、10年以上プロでプレーできるのは全選手のうち40%のみです。それ以外は10年未満、早ければ2〜3年で戦力外通告を受けています。松坂大輔投手も引退された際に言っていましたね。「自分の身体への投資は惜しまないでください」と。投資するのは何もお金だけではありません。プロになる前は、とにかく時間という資産をできる限り身体のメンテナンス、コンディショニングに対して投資していくようにしましょう。そうすればどんどん伸びしろを広げられるはずです。

完治させてもフォームを直さなければ野球肘は必ず再発する?!

野球肘/内側・外側・肘頭の割合

一般的に野球肘は下記のような割合だとされています。

  • 内側型野球肘/60%以上
  • 外側形野球肘/20%程度
  • 肘頭形野球肘/3%程度
このように、肘の内側を痛めてしまうタイプの野球肘が圧倒的に多いんです。肘の内側には内側側副靱帯というものがあるんですが、この靭帯に外反ストレスがかかってしまうことで野球肘を発症しやすくなります。

「頭を移動させずにバットを振りなさい」という指導から始めてしまうのはとても危険!

頭を移動させずに振ることを最優先にしてはダメ!

僕の生徒さんたちに話を聞いていると、少年野球や野球部などでは未だに「頭を移動させずにバットを振りなさい」という指導をしきりに行っている野球指導者がとても多いようです。

僕のレッスンを受けてくださっている方であれば、なぜこの指導法が良くないのかを理論的に十分理解してくださっていて、どうすれば頭を移動させずに良いスウィングができるようになるのかも分かってくれていると思います。

ルーズショルダーはインナリングで防ごう

ルーズショルダーはインナリングによって防げる!

野球肩になってしまう原因はいくつもあるわけですが、その中の一つとしてルーズショルダーというものがあります。ルーズショルダーとはその名の通り、肩関節が緩くなってしまっている状態のことです。

ルーズショルダーになると野球肩になりやすいのはもちろん、最悪の場合投球中に脱臼してしまうことも稀にあります。ですので肩が痛くてルーズショルダーだと診断された場合は酷くなる前に、肩のコンディショニングを丁寧に行っていく必要があります。

肘頭インピンジメント

肘頭インピンジメントは上腕三頭筋が弱いとなりやすい

少年野球などでよく見られるインピンジメントは肩に多いのですが、しかしインピンジメントは肩だけではなく、肘にも起こるため注意が必要です。

インピンジメントとは衝突するという意味なのですが、肘の場合、トップポジション付近で肘を曲げ過ぎてしまい、肘が頭の高さで、手部が首の高さというフォームや、投球動作のどこかで肘を完全に伸ばし切る動作が入ってしまうと発症しやすい症状です。肘のインピンジメントの場合、「肘頭(ちゅうとう)インピンジメント」がほとんどだと思います。

インピンジメント症候群

肩インピジメント症候群の原因

子どもたちのレッスンをしていると、インピンジメント症候群と診断されていることが本当に多いことに驚かされます。野球を始めてまだ1〜2年という子であっても、肩インピンジメントだと診断されている子もいます。

インピンジメントとは衝突という意味なのですが、野球肩の場合は、上腕骨が肩峰(けんぽう)という肩関節の天井部分に衝突してしまう症状のことを言います。そしてこれは腱板と呼ばれる棘上筋(きょくじょうきん)のコンディションが悪化することによって発生する症状です。

インナリング

野球肩を予防するインナリングというコンディショニング法

野球肩を予防するためにはストレッチングももちろん重要なのですが、ストレッチングをした上でもっと重要なのがコンディショニングです。このコンディショニングを怠ってしまうと、ストレッチングをしていくら関節の柔軟性があったとしても野球肩になることがあります。

ではコンディショニングとは?平たくいうと肩のコンディションを±0の状態に戻す作業のことです。例えばウォームアップ前の肩は温まっておらずマイナスの状態です。そして投げ終えたあとはプラスの状態になっています。これをコンディショニングによって±0に戻していくわけです。

体幹が強いとすぐに分かる佐藤輝明選手の打撃フォーム

今回のスラッガー養成コラムでは、阪神タイガースのルーキー佐藤輝明選手のバッティングフォームを見ていきたいと思います。前半戦が終了した時点で打率.267、本塁打20本という数字は、ルーキーとしては本当に素晴らしいものだと思います。将来的にはタイトルを獲得することだってできるスター候補だと言えるでしょう。

佐藤輝明選手のバッティングフォームを見て、もっとも強く印象に残ったのは体幹の強さです。バッティングには下半身主導、体幹主導、上半身主導という主に3つの形があるわけですが、佐藤選手は大谷翔平選手に近い体幹主導のバッティングフォームになっています。ただ、技術レベルを見ていくと、ルーキーであるため当然ではありますが、大谷選手のレベルには至ってはいません。

大谷選手の場合は左股関節を右股関節があった場所にぶつけながら骨盤を回旋させていくという、非常に難易度の高いスウィングで打っているのですが、佐藤輝明選手の場合、股関節や骨盤の動かし方はまだまだそこには至っていません。

体幹が物凄く強いのだろう、ということはスウィングを見ればすぐに分かるほどなのですが、今後股関節や骨盤の使い方がもっとレベルアップしていけば、打率と長打力を同時に、さらに向上させることができるはずです。平たく言えば打率.350をマークしながらも、40〜50本打てるようなバッターになれる伸び代があるということです。

まだ打撃フォームに無駄が多い佐藤輝明選手

タイトルを獲得するにはまだそれほど高い技術は身に付いていない佐藤輝明選手ですが、打率と長打力を同時に向上させていくためには、ステイバックの習得を目指すべきでしょう。

現在はどちらかと言えばウェイトシフトに近いフォームで打っています。そのためスウィング中に頭の位置が大きく移動してしまい、この目線のブレがミート力の低下を招いています。

体が元気でそれほどの疲れもなかったオープン戦や開幕直後は、コンディションの良さでボールもよく見えていたのだと思います。しかし体に疲れが溜まり始めると、ステップをしながら頭の位置を大きく動かしてしまうフォームのデメリットが目立つようになり、打率も少しずつ下がってきています。

これが大谷翔平選手のようにステイバックで打てるようになると、頭の位置は自然と移動しなくなるため、体に疲れが出始めてもミート力が大幅に低下することがなくなります。すると年間を通して打率.300以上をキープできるようになります。

ステップ幅に関しては柳田悠岐選手に近いと思います。やや狭くして、体感の強さによって軸を強烈にスピンさせることにより、バットスウィングを速くさせているタイプです。187cmという長身も柳田選手と共通していますので、このステップ幅の使い方には間違いないと思います。長身選手にフィットした形になっています。

ただやはり、ステイバックの話になると柳田悠岐選手はマスターしている一方、佐藤輝明選手はまだまだステイバックをマスターしているというレベルには至っていません。連続写真を並べて、ある一部分だけを見るとステイバックになっているようにも見えるのですが、しかしスローモーション映像で細かく見ていくと、佐藤選手のフォームはステイバックと言い切れる形にはなっていないんです。


1:05くらいでスローモションを確認できます。

ピッチングフォームに無駄な動作が多いと制球力が乱れるわけですが、バッティングフォームに無駄な動作が多いとミート力が低下してしまいます。佐藤輝明選手と、他の左打ちの一流バッターたちのフォームを見比べると、佐藤選手にはまだまだ無駄な動作が多いんです。それが絶好調時以外で打率を下げてしまう要因になっています。

佐藤選手の場合、体を一度投手側に移動させてウェイトシフト(体重移動)の動作を入れてから、体重を軸足側に僅かに戻しながらのスウィングになっています。これが今現在の佐藤輝明選手のウィークポイントだと言えるでしょう。体が元気な時はこの余分な動作が入っていてもバットを振り切ることができたのですが、疲れが溜まり始めると、この余分な動作によって1テンポ遅れるようなフォームになってしまい、差し込まれることが徐々に増えて行ったように見えます。

もし将来的にこの動作をなくすことに成功し、ステイバックの形をもっと高めていくことができれば、佐藤輝明選手は大谷翔平選手や柳田悠岐選手と同じレベルのバッターに進化することができるでしょう。

5月頃からコンディショニングに課題が見え始めた佐藤輝明選手

そして佐藤選手の長打力の秘訣は体幹の強さだけではなく、フライングエルボーも大きく影響しています。フライングエルボーとは、テイクバックで左肘(右打ちなら右肘)を肩の高さまで上げる動作のことなのですが、この動作がバットスウィングをより加速させ、強烈なインパクトを生み出しています。

また、このフライングエルボーを二段階で使っていて、その動作がラギングバック(割れ)をさらに強くしています。下手な選手がフライングエルボーで打つとラギングバックを上手く作れずに、差し込まれやすいフォームになる危険性もあるのですが、佐藤輝明選手の場合は、少なくとも体が元気な状態である時はラギングバックがとても強くなっているように見えます。

ただ、シーズンが進んでくると5〜6月くらいからこのラギングバックが少し弱まったようにも見えました。考えられる原因としては疲労により筋肉に僅かな硬さが生じてしまったか、シーズン前の体幹の強さを維持できなかったことなどが考えられます。

そう考えると佐藤選手のフィジカルでの課題は他の若手選手同様に、今後如何にして良いコンディションを長続きさせられるか、ということになってくるのでしょう。シーズン中にもしっかりと体幹を鍛え続けて、最善のコンディショニングをしていければ、調子が良い時期をもっと長くしていけるはずです。

佐藤輝明選手を封じるにはこんな配球が効果的!

開幕直後は、相手バッテリーも佐藤選手に対しどう攻めれば良いのかということを試行錯誤していたと思います。特にオープン戦では「このコースは打てるのかどうか試しに投げてみよう」という配球も多かったため、この考え方の配球により、打たせてもらったホームランも多かったはずです。

しかし打席数が増えれば増えるほどスコアラーの分析も正確性を増していき、佐藤選手の得意なコース、苦手なコースもかなりシェアされ始めてきました。

後半戦になれば配球はさらに厳しくなっていくでしょう。その時苦手なコースは今年は捨てるのか、それとも苦手なコースも対応できるようにしていくのか、という選択はとても重要になってきます。個人的にはまだ1年目であるため、「まずは打てるコースに来たらしっかりと振り抜く」という考え方でいいと思います。そうすれば打率.280前後で30本塁打くらい打てるのではないでしょうか。

佐藤輝明選手は、低めよりも高めを打ちに行った時の方がスムーズなスウィングを見せています。それはローフィニッシュが多いフォームから見ても明らかです。そう考えるとバッテリーからすると、真ん中から低めに落ちていくチェンジアップやフォークボールを振らせにくる配球が今後はさらに増えてくるのではないでしょうか。

際どいコースでカウントを整えた後で、ややシュート回転させたチェンジアップを真ん中から落としていく、というのが佐藤選手を封じるには最も効果的であるように見えます。

仮に佐藤選手が完璧なステイバックで打てていたとしたらこの配球もそれほど効果はないと思うのですが、今は体重移動をしている時にまだ頭の移動が大きくなっているため、この配球が絶大な効果を発揮していくはずです。

長身でリーチが長いため、フォークボールを真ん中にストンと落としていくよりは、シュート回転させた右投手のチェンジアップが有効になるはずです。フォークボールやスプリッターを真ん中に真っ直ぐ落として行っても、掬い上げることができてしまうのが佐藤選手の身長です。

伸び代がまだまだある完成されていない佐藤輝明選手

今現在はまだ日本代表レベルの技術には至っていない佐藤選手ですが、上述した通りまだまだ伸び代がある選手です。もうすでに完成された大卒選手ではないため、シーズンオフなどは柳田悠岐選手ら一流の左打ちの選手に弟子入りし、ステイバックをマスターすると良いかもしれませんね。

プロ野球チームの打撃コーチは、まだまだステイバックを理論的に指導できないコーチが多いんです。これは実際に12球団の中で打撃コーチを務めている方々と実際にお話をさせていただいて実感したことです。

阪神タイガースの打撃コーチがどうなのかは僕には分からないのですが、しかしもし打撃コーチ、もしくは今後契約していくであろうパーソナルコーチからステイバックを理論的に教わり、習得することができれば、佐藤輝明選手はさらに大きく進化していけるはずです。

この伸び代をしっかりと観察しながら、僕もプロコーチの一人として佐藤輝明選手のバッティングフォームを見続けてみたいと思います。1〜2年後にまた佐藤選手について書いたら、きっと進化した姿をここでお伝えできるのではないでしょうか。楽しみですね!

筋肉痛は怪我ではないけど無理をすべきでもない

今回は「野球選手と筋肉痛」について少し考えていきたいと思います。強度の高いトレーニングなどをすれば、現役選手であっても筋肉痛になることはあります。筋肉痛は決して怪我というわけではありませんが、しかしだからと言って無視をすべきでもありません。

通常筋肉痛は放っておいても2〜3日で治ると思います。しかし気をつけたいのは、筋肉痛は怪我とは言えないものの、痛いという事実に変わりはないという点です。痛いと感じている時点で、いつも通りのフォームで投げることはできません。ですので筋肉痛の中無理して投げるよりは、まずは筋肉痛をできる限り早く治すということを優先していくべきです。

下半身の筋肉痛であれば土台で踏ん張れない分、上半身で投げざるを得なくなってしまいます。逆に上半身が筋肉痛であれば可動域が狭まり、投球時に肘が下がる可能性が非常に高くなります。

筋肉痛ではフォームの再現性を高めることはできない

野球の練習で非常に重要なのは再現性を高めることです。つまり、いつでも「まったく同じ良いフォーム」で投げられるようにするということです。しかし筋肉痛の状態ではそれができなくなってしまいますので、筋肉痛の状態で投げ続けてしまうと、「筋肉痛があるという前提で投げるフォーム」を体を覚えてしまうことになります。つまり、良くないフォームを覚えるための練習になってしまう、ということですね。

動いていればまったく気にならない程度の軽い筋肉痛であれば、運動強度を落としてピッチングを続けても良い場合もあります。しかし投げたり打ったりする中で痛みを実感するレベルの筋肉痛の場合は、投球は一旦お休みして、まずはより早く筋肉痛を治すための有酸素運動などを重点的に行うのがベストです。

筋肉痛が嫌いで筋トレをしないプロ野球選手もいる?!

プロ野球選手の中には、筋肉痛を嫌うあまり筋トレを一切行わないという選手もいます。例えば埼玉西武ライオンズの中村剛也選手などはそのひとりです。野球で使う筋肉は、野球の動作で鍛えていく、という考え方ですね。

僕はプロコーチとしては、強度の高い運動にも耐えられるプロテクターを作るためには筋トレは必要だと考えています。球速をアップさせる目的で筋トレを行うべきではありませんが、動作改善によって球速がアップした時の衝撃に体が耐えられるように筋トレをしておくことは必要です。

しかし筋トレといってもダンベルを持ち上げるだけが筋トレではありません。例えば小学生の場合はピッチャーの球速は速くても100km程度だと思いますが、100kmのボールを打った時の衝撃にも耐えられるように、バッティングセンターでは時々120kmを打つ練習も取り入れる、というのも一つの筋トレの形です。

ピッチャーならば通常はJ号を使うところ、M号を少し力を抜いて投げることによって肩の筋肉を鍛えるというやり方もあります。スポーツショップに行くと通常よりもかなり重いトレーニング用の野球ボールも市販されていますので、そのようなアイテムを使うのも良いと思います。

トレーニングボール

また、筋肉痛の時はそのような重いボールを軽く投げることによって筋肉をほぐしてあげる、というコンディショニングも効果的です。軽く投げる動作であれば、その動作を筋肉が覚えることもないため、筋肉が間違った動作を覚えることによってフォームを崩してしまう危険性もありません。

ということで野球選手が筋肉痛になった場合は、まずはしっかりと有酸素運動を増やして早く治すというアプローチと、重いボールを使って筋肉をほぐしてあげるという作業が効果的ですので、筋肉痛の時は無理して投げるのではなく、これらのアプローチによってまずはコンディショニングを優先するようにしてください。