ヤーキーズ・ドットソンの法則
試合前に、とにかくリラックスしようと試みる選手はけっこう多いと思います。しかし実は、リラックスし過ぎてしまうとパフォーマンスは逆に落ちてしまうんです。
例えばこんな選手いたりしませんか?緊迫した試合だとナイスピッチングやナイスバッティングを見せてくれるのに、大量リードしていたり、大量リードを許してしまった緊張感が少し途切れた試合になると、突如としてマウンドで崩れてしまったり、別人のように凡打を繰り返してしまう選手。
試合前に、とにかくリラックスしようと試みる選手はけっこう多いと思います。しかし実は、リラックスし過ぎてしまうとパフォーマンスは逆に落ちてしまうんです。
例えばこんな選手いたりしませんか?緊迫した試合だとナイスピッチングやナイスバッティングを見せてくれるのに、大量リードしていたり、大量リードを許してしまった緊張感が少し途切れた試合になると、突如としてマウンドで崩れてしまったり、別人のように凡打を繰り返してしまう選手。
今、テニスの大坂なおみ選手が試合後の記者会見を拒否したことが世界的に大きなニュースになっています。大坂なおみ選手の気持ちはよく分かります。ですが個人的には、記者会見を一方的に拒否すべきではなかったのかな、と思っています。
プロテニス界では、試合後の記者会見はルール化されています。これは大会に出場する一つの条件となっているため、やはり一方的な拒否というのはルール違反になってしまい、それに対しペナルティが課せられることは仕方がないことだと思います。
しかし大会運営側も、冷酷にペナルティを課したわけではないので、そこはスポーツファンとしては誤解すべきではありません。大会運営側も大坂選手のサポートをすると申し出てくれているわけで、決してルール違反をした大坂選手を突き放したわけではありません。
僕個人の意見としては、大坂選手は一方的な記者会見の拒否をする前に、運営側と協議し、記者会見を免除してもらう方向で調整した方がよかったのかなと思っています。そうすればここまで世界的問題としてニュースで扱われることもなく、大坂選手のストレスも軽減させられたのではないでしょうか。
大坂選手はうつ病を患っていたのだそうです。うつ病ということであれば、当然記者会見どころか、大勢の前で話すことだって辛いと思います。コート上であればテニスに集中することにより、メンタリティを維持できるのかもしれませんが、しかしラケットをおいた後は、大坂選手もひとりの人間にすぎません。コートでは見せられない弱さだって当然抱えているのでしょう。
うつ病と診断されているのであれば、大会運営側と協議すれば記者会見を免除してもらうことだってできたはずです。そうすれば罰金という形ではなく、賞金の減額という形に留まったり、次戦以降の出場権が危ぶまれることもなかったはずです。
ちなみにスポーツ選手のうつ病は、野球選手にも見られる症状です。特にストイックで、あまり人と話すのが得意ではない真面目な性格の選手によく見られる症状です。そのため野球選手にとっても、大坂選手の状況は決して他人事ではありません。
これは中高でよく見られるのですが、監督による酷い罵声や叱責によりうつ病になってしまう野球部員も少なくありません。そしてそれにより野球から離れてしまう子もかなり多いんです。また、プロ野球選手であっても同様で、現役時代にうつ病を患ってしまった選手は一人や二人だけではありません。
大坂選手の場合は今回は「拒否」という形になってしまったわけですが、これがベストではなかったとしても、拒否するという声を挙げたことは賞賛に値すると思います。
個人的には拒否する前に協議すべきだったと僕は考えるわけですが、しかし拒否をしたということは、もしかしたら協議しても受け入れられなかったのかもしれませんね。その結果、拒否するしか選択肢が残されなかったのかもしれません。
そして選手や保護者が協議の場を求めても、それを受け入れない少年野球や野球部の監督・コーチが日本には数え切れないほどいます。僕も中学時代に、実際そのような監督の下でプレーをした経験があります。このような状況を鑑みると、日本の野球界にはうつ病予備軍がたくさんいると言うこともできるのではないでしょうか?
「集中力」という言葉は野球指導の場だけではなく、勉強や仕事、普段の生活の中で頻繁に使われる言葉です。でもあまりにも使い古されてしまっているためなのか、そもそも「集中力とは何なのか?」ということを明確に説明できる方は少ないのではないでしょうか?
「もっと集中しろ!」と言う野球指導者ほど、集中力というものを理解していないということは明白です。もし集中力というものを理解していたならば、「もっと集中しろ!」という言葉など出てこないはずです。
普通のお父さんお母さんがお子さんに対し「もっと集中して勉強しなさい」と言うことは、別に変える必要はないと思います。さすがに普通のお父さんお母さんが野球心理学・運動心理学を含めた心理学を勉強する必要はないと思いますので。
しかし他人の子どもを預かる野球チームや野球部の監督・コーチとなれば話は別です。繰り返しますが、他人の子どもを 預かって野球指導をするわけですので、ここでは運動心理学に関する最低限の勉強は必須です。
もしあなたのお子さんが、まったく勉強もしていないような他人に「もっと集中しろ!」「もっとちゃんと捕って投げろ!」なんて怒鳴られていたら、逆にそのコーチを怒鳴ってやりたくなりませんか?僕ならそうなります。
ではここで改めて、集中力とはいったい何なのか、という定義について書いておきたいと思います。
集中力とは、思考回路が同時に対応できる複数の物事や思考の中から、一つだけを選び出して、その一つを明確かつ鮮明に捉え、その選び出したものに対しての行動の質を高めるためのものです。
つまり集中力が途切れている状態というのは、選択肢の中から何を選べばいいのかが分かっていない状態のことです。分からないから選べない。選べないから集中できない。これが集中力が途切れるメカニズムです。
集中力が途切れている選手に対しては、まず今どのような選択肢があるのかを伝えてあげる必要があります。そしてその中から何を選ぶのが一番良いのかということと、その理由を伝えてあげることにより、集中力を外的に高めてあげることができます。
ちなみに心理学的には「頑張ったらご褒美をあげるね」というやり方よりも、「これをあげるから頑張りなさい」と先にご褒美をあげた方が作業効率が良くなることが分かっています。
例えば被験者の前にクッキーを置いたとします。「宿題が終わったらクッキーを食べて良いからね」と伝えたグループと、「クッキーを食べながら宿題をしなさい」と伝えたグループでは、後者の方が作業効率が良くなります。これは世界中の心理学者が実験によりほとんど同じ結果を得ています。
ただしこれはあくまでも平均値であり、100%そうなったというわけではありませんので、そこは前者の方が効率がよくなるタイプの子には、前者のやり方を取り入れていくという見極めと柔軟性も必要です。
野球はとにかくメンタルが非常に重要なスポーツです。そのメンタルを強化するためのスポーツ心理学者の役目というのは、集中力の途切れをできるだけ少なくできるように選手をサポートすることです。
集中力の途切れというのは0にすることはできません。ですので、できるだけ少なくする、という取り組み方がベターになるわけです。
野球だけではなく、あらゆる場面で役立つと思いますので、ぜひ一度集中力に関してじっくりと考えてみてください。
今回は野球心理学(運動心理学)について少しお話をしてみたいと思います。「野球の練習をする」ことというのは、運動心理学的には「運動技能を高める」ために行う「運動行動」というふうに表現します。
運動技能というのは「スピード」「コレクトネス(正確性)」「フォーム」「スタビリティ(安定感)」の4種から成り立ちます。そしてこの4種は、競技によって割合が変わってきます。
例えばサッカーの場合は、ドリブルからシュートする場合はスピードが最重要視されます。しかしPKからシュートしていく場合はスピードよりもコレクトネスが重要です。同じ競技であっても場面によって4種の重要性が変わってきます。
一方野球の場合、バッティングであれば正しいフォームのスタビリティを高めることにより、ハイスピードでコレクトネスを高めていくことができます。つまりバットを速く正確に振るためには、「フォーム」の「スタビリティ」が重要だということです。
野球指導者としてまず適切に理解しなければならないのは、「運動技能」と「運動技術」の違いです。これを混同してしまったり、まったく理解していない状態で指導しようとしても、選手を最短距離で上達に導くことはできません。
運動技術というのは「Understand(分かる)」という形で身につけていくもので、運動技能というのは「Can(できる)」という形で身につけていくものです。
この2つを混同することなく、適切な順番で指導やレッスンをしていかなければ、上達を遠回りさせてしまうばかりです。まずは選手には「分かる」という形でインプットさせていき、分かった上で「できる」ようにするための練習法を伝えてあげる、という順番が重要です。
運動技術の習得なくして、運動技能の習得はない、ということです。もちろんこれは個人差もあります。分かっていなくても自然とできるようになる選手もいれば、分かったからこそできるようになる選手もいます。さらに言えば分かっていてもできない選手や、分かっているけどできない選手と、こちらも主に4種類のパターンが存在します。
非常に大事なのでもう一度繰り返しておきますが、指導者は「運動技術」と「運動技能」は絶対に混同させてはいけません。指導者がこれを「分かって」いなければ、選手が「できる」ようになることもない、ということになります。
ブルペンではコントロール良く投げられるのに、なぜか試合になるとブルペン通りにいかなくなる投手は意外と多いと思います。そうなってしまう原因はシンプルで、試合になると変数が増えてしまうからです。この変数に対応できないと、ブルペンでは良くてもマウンドでは崩れやすくなってしまいます。
ブルペンでは、基本的には視界にはキャッチャーしかいないと思います。もちろんコーチが審判の立ち位置に立ったり、チームメイトが打席に立ったりすることもあると思いますが、基本的にはキャッチャーしかいないことの方が多いと思います。そのため投手も的となるキャッチャーミットに集中しやすいんです。
一方試合のマウンドからはキャッチャーだけではなく打者、審判、バックネット、観客、サインプレーなどなど、とにかくたくさんの変数が出現してきます。例えば審判が立っているだけでもブルペンとは違う景色になりますし、その審判が自分の感覚と違うジャッジをしてきたら、それもまた気になり始めてしまいます。
ブルペンで審判役や打者役を立てて投げ込むのも1つの方法ですが、しかしその間、立ってくれているチームメイトは練習ができなくなってしまいます。なのでそのような状況を作ってブルペンで投げ込むことも1つの方法ではあるのですが、常にそのような形で投げ込むことはできません。それだったら、試合での思考方法を変える方が現実的です。
試合ではとにかく考えなければならないことがたくさんあります。一塁に走者が出ただけでも盗塁をケアしなければならず、やることが一気に増えてしまいます。一番良いのは、練習中や練習後に頭を使う練習をしておくことです。いろいろな状況を想定して、「こういう状況になったらこうしよう」、というパターンをたくさん用意しておくのです。このような準備をしっかりしておけば、どのような状況でも落ち着いてキャッチャーミットに集中できるようになります。
マウンドではとにかく冷静でい続けることが重要です。冷静な状態とは、テンションが低い状態のことではありません。冷静な状態とは、常に自分が置かれた状況と自分自身の状態を適切に把握できているということです。仮にテンションが低くてもそれができていなければダメですし、アドレナリン全開でテンションが最高潮になっていても、状況や状態をしっかり把握できていれば冷静だと言えます。
試合では変数が多くなるため、とにかく重要なのは投球前に、どれだけキャッチャーミットにだけ集中できる準備ができるかどうか、ということです。ただし、状況を無視してキャッチャーミットに集中してしまうと、盗塁され放題になったり、牽制球のサインを見逃したりしますので要注意です。色々な状況パターンをたくさん準備し、どのような状況でも対応できるようにしてください。そうすることによって油断なくキャッチャーミットに集中していけるようになり、ブルペン通りのピッチングがしやすくなります。ぜひこのあたりも意識しながら、普段の練習に取り組んでみてください。
マウンドに登る前って誰でも緊張しますよね。でもこの緊張を必要以上にほぐすことはないんです。緊張して心臓が高鳴ったり、手に汗をかいたり、体に少し力が入ってしまったり。これらは実はパフォーマンスにはマイナスにならないということが近年科学的に解明されています。