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助走をつけられる野手の肩への負荷は確かに小さい

野球肘のリスクは投手だけではなく全ポジションにある!?

時々、野球肩野球肘はピッチャー以外は心配いらないと勘違いされている親御さんがいらっしゃいます。「肩肘を痛めないようにうちの子にはピッチャーはやらせない」と考えている親御さんも一定数いらっしゃるようですが、これは間違いです。

確かに球数という面を考えればピッチャーが一番肩肘を痛めるリスクが高いわけですが、しかし他のポジションであってもキャッチボールからノック、ボール回しなどの練習をトータルで考えると、かなりの球数になっていきます。

ステップによって助走をつけてから投げられる内外野手の場合は、肩への負荷を多少抑えることはできると思います。しかし肘への負荷に関しては、本当に正しい投げ方が身についていなければ、助走しながら勢いをつけて投げたとしても負荷を抑えることはできません。

つまり野球肘に関しては、どのポジションも平等にリスクがあるということです。

野手よりも肩への負荷が大きくなりやすい投手

投手の次に肘を痛めやすいのは、2010年以降の僕の生徒さんたちの割合だけで見るならば捕手です。

捕手は試合ではピッチャーの次に球数が多くなり、二塁送球などはほとんどステップせずに投げる必要があります。そのために投げ方が良くないと、あっという間に肘を痛めてしまいます。

肩に関しては、まだステップワークが0ではない分投手よりは負荷は小さくなると言えます。しかし肘への負荷は、投げ方が良くなければスナップスローであっても抑えることはできません。

ちなみに投手がステップするモーションはステップワークとは呼びません。これは厳密にはストライディングと呼び、ステップワークとは別物なんです。ステップは、やはり両足を動かす必要があります。しかし投手の場合は非軸足のみを前に出していきますので、これはステップ"ワーク"とは呼ばないわけです。

ステップワークがない分、投手の場合は肩関節の動きが大きくなりやすく、科学的に本当に正しいフォームが身に付いていない場合、すぐにインナーマッスルを痛めてしまうタイプの野球肩になってしまいます。

野球肘のリスクは全ポジションにある

しかし、肩肘に負荷のかかりにくい科学的に本当に正しい投げ方というものが存在しています。これは体の使い方としては医学的にも正しい動作になるため、たくさんボールを投げても常識の範囲内の球数であれば肩肘を痛めることはほとんどなくなります。

この科学的に本当に正しい投げ方については、投球障害予防改善法-徹底解説ビデオで2時間44分かけて分かりやすくレッスンしていますので、詳しくはビデオをチェックしてもらえたらと思います。

結論として、野球肩野球肘は投手だけに起こるものではありません。野球肩に関しては投手が一番なりやすいわけですが、野球肘に関しては、投げ方が悪ければ全ポジションにリスクが伴います。

しかし僕のレッスンビデオを見ていただき、丁寧に時間をかけて動作改善をしてもらえれば、たくさんボールを投げても肩肘を痛めにくい投げ方を身につけられるはずです。ぜひ親御さんにこのビデオを見ていただき、親御さんがコーチになってお子さんに教えてあげて欲しいなと思います😊

完治させてもフォームを直さなければ野球肘は必ず再発する?!

野球肘/内側・外側・肘頭の割合

一般的に野球肘は下記のような割合だとされています。

  • 内側型野球肘/60%以上
  • 外側形野球肘/20%程度
  • 肘頭形野球肘/3%程度
このように、肘の内側を痛めてしまうタイプの野球肘が圧倒的に多いんです。肘の内側には内側側副靱帯というものがあるんですが、この靭帯に外反ストレスがかかってしまうことで野球肘を発症しやすくなります。

MLB公式球の革質が変わり、トミー・ジョン手術が減る?!

滑りやすいボールが増やしているMLBの野球肘

2021年の今季は、メジャーリーグで粘着物を使った不正投球が話題になりましたね。実際試合中に不正有無の確認をされるピッチャーもたくさん出ました。

このような不正投球は元々は暗黙の了解として実際に行われていたことでした。もちろん公に「やっている」と言われることはないわけですが、しかし投球が滑って死球が増えるよりはバッターとしてはましなわけです。

ただ、もちろん不正投球を実際に行っていたのはあくまでも少数派で、ほとんどのピッチャーはロジンバックのみを利用して投げていました。この点に関しては適切な理解が必要だと思います。

メジャーリーグやマイナーリーグで使われている公式球はなめしが甘く、日本プロ野球の公式球と比べると滑りやすい革質なんです。そして実は、この革質が野球肘を増やしているという考え方もできるんです。

気軽に肘の手術を受けるようになったメジャーリーガーたち

ボールが滑りやすいということは、それだけ強くボールを握って投げなければならなず、そして強く握るほど投球時に肘がロックされやすくなります。これが肘の内側、つまり内側側副靱帯に大きなストレスを与えるようになってしまうんです。

トミー・ジョン手術の失敗がほとんどなくなった現代では、アメリカのプロ野球選手たちは気軽にトミー・ジョン手術を受けるようになりました。ですがやはり手術は受けないに越したことはありません。

手術自体は成功だったとしても、怪我をする前のコンディションに戻れるという保証はなく、競技復帰までにも過酷なリハビリを行う必要があるためです。

滑りにくくなるメジャーリーグの公式球

ですがそこに新たなニュースがアメリカから届きました。今季2021年、マイナーリーグ3Aクラス数球団の今季最後の10試合で、滑りにくくなった新たな公式球が試験導入されるのだそうです。

不正投球が話題になった際、ダルビッシュ有投手ら多くのメジャーリーガーが反発をしたわけですが、それによりMLB機構が公式球の改良をスタートさせたのだそうです。そして仕上がってきた試作品を、現在3Aで試用しているのだそうです。

今はまだこの改良された公式球の数が少ないため、3Aの数球団でのみ試験されているようなのですが、生産が追いつき選手からの不評がなければ、来季以降は本格的にこの新たな公式球が導入されるようです。

ことごとく肘を痛めた日本人メジャーリーガーたち

ボールが滑りにくくなれば、ボールを必要以上に強く握って投げる必要がなくなり、それにより肘もロックされにくくなり、メジャーリーグでのトミー・ジョン手術の件数も今後減っていく可能性が予測されます。

日本から海を渡った投手たちも、これまで多くの選手が手術を受けていますね。松坂大輔投手、和田毅投手、藤川球児投手、ダルビッシュ有投手、大谷翔平投手、前田健投手と、錚々たる顔ぶれの選手たちが渡米後にトミー・ジョン手術を受けています。

もちろん日本で野球を続けていれば肘を痛めなかったと言い切ることはできないわけですが、しかし滑りやすかったメジャーリーグの公式球が肘への負荷を高めたことに関しては事実だと言い切れます。

僕もメジャーリーグの公式球でキャッチボールをしたことがあるのですが、やはりNPBの公式球と比べると滑りやすく、僅かに重くて僅かに大きく、少し投げにくいなぁという印象でした。

しかし来季以降はメジャーリーグの公式球も革質が変わるようですので、日本人選手たちも安心してメジャーリーグを目指したり、国際試合に出場できるようになりますね!

野球肘の原因となる最たるものは内旋型トップポジションにあり!

肘が痛くなったことのない60%の子に野球肘の兆候

埼玉県のあるスポーツ外科の先生が病院からエコー診察をするための機器をグラウンドに持っていき、一度も肘が痛くなったことのない少年野球選手の肘をエコーで診たところ、なんと約60%の子たちに野球肘の兆候が見られたそうです。

このリサーチでも分かるように、野球肘というのは痛くなった時が発症ではないんです。発症した瞬間に痛くなる子もいれば、発症して何年も経ってから急に痛み出す子もいます。そして発症から時間が経てば経つほど、野球肘の重度は重くなる傾向にあります。

そして野球肘はできるだけ早く見付け、できるだけ早く治療した方が治りやすくなります。こう考えると、肘が痛くなかったとしても、親御さんは一年に1回程度はお子さんの肘をスポーツ外科の先生に診てもらった方が良いと言えます。

肘頭インピンジメント

肘頭インピンジメントは上腕三頭筋が弱いとなりやすい

少年野球などでよく見られるインピンジメントは肩に多いのですが、しかしインピンジメントは肩だけではなく、肘にも起こるため注意が必要です。

インピンジメントとは衝突するという意味なのですが、肘の場合、トップポジション付近で肘を曲げ過ぎてしまい、肘が頭の高さで、手部が首の高さというフォームや、投球動作のどこかで肘を完全に伸ばし切る動作が入ってしまうと発症しやすい症状です。肘のインピンジメントの場合、「肘頭(ちゅうとう)インピンジメント」がほとんどだと思います。

野球肘とスライダー

スライダーを投げると野球肘になりやすいというのは本当なのか?!

スライダーを投げると肘が下がったり、肘を痛めることが多いから投げない、というプロ野球選手たちがいます。ですが結論から言うと、正しい投げ方でスライダーを投げていれば肘を痛めるリスクを余分に高めることはありません。

スライダーを肩関節の外旋や、肘の回外によって投げてしまうとすぐに野球肘になってしまいます。特に肘の回外が加わっていると危険度は大幅に高まります。

野球肩野球肘を自分で治す

野球肩野球肘を自分で治すのは、完治と言われた後で!

野球肩野球肘は自分で治すことができます。ただし、それをするのはお医者さんにしっかりと治療をしてもらい、「完治」と言われてからにしてください。

完治する前に無理して動いてしまうようなことがあると、治せるものも治せなくなってしまいますし、それどころか悪化してしまうことだってあります。

ですので「完治」と言われるまでは、動作改善をするにしてもスローモーションで、絶対に患部に負荷がかからない状態で行うようにしましょう。

フォークボールは肘を痛めやすい

球速が速いフォークボールの使い手は要注意!

変化球の中で、もっとも肘を痛めやすいのはフォークボールやスプリッターだと言えます。フォークボールの投げ方は特殊で、人差し指と中指を大きく開き、そこにボールを挟み込むことによってボールの回転数を減らし、ホームプレートの手前でボールを落下させていきます。

ストレートのアヴェレージ(平均速度)が速いフォークボールの使い手ほど肘を痛めやすくなります。プロ野球や、メジャーに渡った速球派のフォークボールの使い手のほとんども肘の手術を経験しています。

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松坂大輔投手の肘痛の原因は親指にあった?!

平成の怪物と呼ばれた松坂大輔投手も、いよいよ引退してしまいますね。なんとか200勝まで頑張ってもらいたかったのですが、体の方がもう限界だったようです。

松坂投手も肘を痛めた経験があるわけですが、僕はプロコーチとして、その原因はボールを握る際の親指の使い方の変化にあったのではないかと見ています。

球速が速くても勝ち投手になれなければ意味はない!

僕は2010年1月以来、プロコーチとしてプロ野球選手のパーソナルコーチングや、小学生から大人まで数え切れないほどのアマチュア選手のレッスンを行ってきたわけですが、球速に関しては「速いに越したことはない」というスタンスで、物凄く速いボールを投げなくても、怪我なく勝てる投手になれればそれで良いと考えています。

プロ野球を目指している選手であれば、高校・大学クラスなら150km前後のボールを投げられるようにするためのレッスンを行なっていきますが、160kmや165kmという、大谷翔平投手クラスの球速は必ずしも投げられなくても良いと考えていきます。その理由はやはり、怪我のリスクが高まるためです。

仮に文句のつけようのない完璧な投球フォームで投げていたとしても、球速が上がれば上がるほど肩肘への負荷は高まり、怪我をするリスクも比例して高くなってしまいます。

165kmを投げられたからといって、100戦100勝できるわけではありません。ロケットの異名をとったロジャー・クレメンス投手でさえも通算勝率は.658なんです。160km以上のボールを投げられても、10試合投げたら3〜4回は敗戦投手になってしまうんです。

それならば体への負荷を減らし、パワーピッチングをしなくても勝てる投手を目指した方がプロ野球には近づくことができます。もちろん球が速いと「球速は天性。コントロールはこれから何とでもなる」と考えるスカウトマンもいるわけですが、そこからドラフトにかかって本当に活躍した投手というのは、数え切れないほどのそのような投手たちの中で、僕の知る限りでは石井一久投手くらいだと思います。

その他の球速だけで制球力がない投手たちは、プロ入り後に怪我をしたり、変化球とのコンビネーションを使えなかったり、ほとんどの投手が鳴かず飛ばずのままユニフォームを脱いでいます。

野球は陸上のような個人種目ではありませんので、170kmを投げられたとしても、チームを勝利に導くピッチングができなければ意味がありません。

110kmを投げられたとしても、小学生は投げるべきではない!

もちろん最低限の球速というのは必要だと思います。プロ入りを目指す高校生・大学生であれば、150km前後は必要ですし、小学生であれば90km以上は投げられた方がいいでしょう。

しかしたまに見かける110kmくらいのボールを投げられる小学生投手たち。僕もそのような小学生投手の情報はある程度は追跡調査をしているのですが、多くの子たちが中学・高校で肩肘を痛めてしまい、中には野球を辞めてしまった子もいました。小学生で110kmを投げられたとしても、結局は怪我で甲子園の夢も、プロ野球の夢も潰えてしまったわけです。

いくら110kmを投げられたとしても、小学生は小学生です。まだ体は出来上がっていないし、その球速を投げた際の衝撃に耐えられる体の強度もありません。ですのでいくら良い投げ方をしていたとしても、その後肩肘を痛めてしまったとしても不思議はないわけです。

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の育成方法は素晴らしいと思います。プロ入り前は超高校級のストレートを投げていたわけですが、プロ入り後は球速は抑えさせ、5年後に165kmの球速を投げても怪我をしない体づくり、フォーム作りを徹底させています。

プロコーチとしての僕の考えは、小学生には、いくら110kmを投げられたとしても投げさせるべきではないということです。110kmを投げさせるのは、体が強くなり始める中学生に入ってからで十分です。

一般的な目安としては、6年生で90〜100km、中三で120〜130km、高三で140〜150kmという感じでステップアップさせていけば、十分プロ野球のスカウトマンの目に留まっていきます。プロ野球選手になりたいのであれば、体を壊すようなピッチングをさせてはいけません。高卒でプロ入りするのか、大卒でプロ入りするのかということを逆算しながら、体の強さに合わせてストレートのアヴェレージを調整していく必要があります。

近年は小中学生でもガンガン筋トレをして目先の球速を追い求めてしまっていますが、怪我をせずに勝てる投手を目指すということを目的にするのであれば、そのやり方は間違いだと断言できます。

やはり一番は、まずは科学的に怪我をしにくい理想的な体の使い方を覚えるべきです。球速はそのフォームと体の強さを手にすれば自然とアップしていきます。逆に球速がアップしないということは、フォームのどこかにおかしな部分があるということです。

小学生の時はボールが速かったのに、中学生になって体が大きくなったら球速が低下してしまったという多数の選手が僕のレッスンを受けにきます。その場合、小学生時代のフォームの動画を見させてもらうと、腕っ節だけで投げているケースが大半です。すると中学生になって手足が長くなると、腕っ節が扱いにくくなってしまい、フォームを崩して球速が低下してしまうケースが多々あります。

そうならないように、やはり投球フォームは科学的に野球動作を学んだ指導者に見てもらうべきです。身近にそのようなコーチがいるのがベストですが、実際にはほとんどいないと思いますので、そのような場合は僕のようなプロコーチから、科学的根拠のあるレッスンを受けていただくのがベストです。

僕の動作改善に関するレッスン内容のすべてには、科学的根拠があります。科学的根拠なしに、経験則だけで生徒さんをレッスンすることは100%ありません。そして科学的根拠があるからこそ、本気でレッスンを受けていただければ誰でも必ず上達することができるわけなのです。