「コンディショニング」と一致するもの

今回の投手育成コラムでは、投手の爪と手のケアについて少し書いてみたいと思います。硬式野球をされている選手であれば、比較的爪についても考えている選手も多いと思いますが、軟式野球の場合、あまり爪について考えることはないのではないでしょうか。

特に投手は深爪注意!

まず爪は、深爪はしないでください。爪の先に1~1.5mm程度白い部分を残して爪を切ってください。ここで白い部分を残さず深く切ってしまうと、指先にボールがかかりにくくなります。指先にボールがかかりにくくなるということは、それだけボールの回転数も減り、球威の低下にも繋がってしまいます。

そしてベストなのは爪切りではなく、利き手の人差し指と中指だけでも毎日ヤスリで磨いて整えることです。プロ野球のピッチャーではこれを毎日している選手も少なくありません。爪用のヤスリを使って(オススメはガラス製)、この2本の指の爪をきれいに丸く整えるだけでも指先にボールがバランスよくかかり、バックスピンを増やすための要素となっていきます。ちなみにこの部分は硬式も軟式も同様です。

補強にはマニキュアやボンドがオススメ!

軟式野球の場合、それほど爪が割れてしまうことはないと思います。しかし硬式野球の場合、球威が上がれば上がるほど爪が割れやすくなります。ですので割れないようにするケアも必要です。一番シンプルなのは透明マニキュアを塗ることですが、僕の場合マニキュアでなく、タミヤなどのプラモデル用の透明ボンドを塗っていました。もちろんこれも人差し指と中指だけに塗れば十分なのですが、プロ選手の中には10本の指すべてに塗っている選手もいました(笑)

爪は、もちろん伸びているほど割れやすくなります。短ければ割れにくいわけですが、しかし短いと指先にボールがかかりにくくなります。ですので少しだけ伸ばした上でケアをしていく必要があるわけです。ちょっと手間ではありますが、この手間がパフォーマンスをアップさせてくれますので、手間をかける価値は十分にあります。

乾燥した手では良いボールは投げられない!

最後は保湿です。やはり手がカサカサで乾燥していると爪も割れやすくなりますし、ボールも滑りやすくなります。夏場に手が乾燥する選手は少ないと思いますが、秋から春にかけての気温が低い時期に手がしっとりしている選手はいないと思います。さらに手袋を長時間付けていたりすると、手はあっという間に乾燥してしまいます。

爪が割れないようにする、そしてボールが滑らないようにするためにもハンドクリームは必須です。カサカサの手にロジンをつけても大きな効果はありませんので、ロジンの前に、まずは手をしっかり保湿しておくことが重要です。カサカサの手でボールを投げてすっぽ抜けてしまえば、デッドボールを当ててしまう危険性も高まります。そういう意味でもやはりケアは大切だと思います。

ということで、今回は冬場の投手の手のケアについて書いてみました。爪や手のコンディションを整えることで、冬場でも回転数の多い質の良いボールを投げられるようにしましょう!

疲労がたまっている時はしっかりと休むという勇気も必要です。高校野球などでも休みなく毎日練習をしているケースが多々あるようですが、上達を目指すためには効率的とは言えません。「疲れているなぁ」と実感できる程度の疲れがある時は、年代を問わずしっかり休んでまずは疲れをとるべきです。

疲れた状態で練習を続けても怪我をするだけ

疲れがたまっている状態で練習をしても、体が疲れている状態を前提にした動作になってしまうんです。ベストコンディション時の動作とはもちろん異なり、疲れている前提の動作を体が覚えてしまいパフォーマンスがなかなか上がらなくなる、というケースもあります。練習は何のためにするかと言うと、いつでもベストコンディションでベストな動作をできるようにするためです。

ベストな動作を試合で取っていけるからこそ、ベストピッチングを見せられるようになります。しかし体に蓄積疲労があると、体が重い状態で動作を繰り返すことになり、少しずつ動作のバランスを崩し、パフォーマンスが低下するだけではなく怪我にも繋がってしまいます。これがコンディションを整えないと怪我をしやすいという1つのメカニズムです。

コンディショニングが選手やチームを強化する

コンディショニングとは非常に重要です。例えば10年くらい前、埼玉西武ライオンズのコンディショニングチームは他球団と比べるとまだまだ脆弱なものでした。そのため故障者も続出し、戦力が整わないシーズンも少なくありませんでした。しかし近年のライオンズはコンディショニングチームを強化し、故障者がほとんど出なくなりました。主力がベストコンディションを維持しやすくなり、怪我やパフォーマンス低下のリスクも軽減し、リーグ2連覇という偉業を達成したわけです。

学童やリトルリーグを観察していても、毎年のように優勝争いに加わるチームは、他チームよりも長時間ストレッチングに時間を割き、子どもたちの疲労を抜くことと疲労をためないことを重要視しています。野球肩野球肘に関しては、動作指導を行えなければ減らすことは難しいわけですが、しかしそれ以外の要因での怪我のリスクを減らせるだけでも、子どもたちの上達速度はアップするようになります。

疲れはたまる前に抜くのが効率的

どこか少し痛い、疲れがたまっている、風邪気味、というようなコンディショニングで練習をしても良い効果は望めません。例えば咳を1回すると100メートル前後走っただけの体力を消耗するとも言われています。また、咳やくしゃみをしながら練習をしても、良い動作で動き続けることは不可能です。野球の練習というのは良い動作の再現性を高めるために行うものですので、良い動作を取り続けられないコンディションで練習を続けても、良い動作を身に付けることはできません。つまり技術的に上達することはできません。

疲れている時はしっかり休んで疲れを抜く。これは上達するためには不可欠なアプローチです。「疲れているけど頑張ろう」も良いのですが、重要なのは毎日休みなく練習をすることではなく、良い動作を続けてそれを体に覚えさせられるかどうかです。ですので良い動作を続けられない程度の疲れがある日、もしくは練習をしていてそのような疲れが出てきたら無理することはなく、しっかり休むようにしましょう。疲れはたまればたまるほど抜きにくくなり、逆にたまり切っていない疲れはすぐに抜けてくれます。ですので疲れはたまる前に抜く、ということを心掛けながら日々の練習に取り組むようにしてみてください。

筋肉ばかりに目をやってしまう野球選手も多いと思いますが、一流の選手たちは内臓にもしっかりとケアを行き届かせています。例えば涌井秀章投手などは投球後、筋肉だけではなく、トレーナーに腸のマッサージもしてもらっています。筋肉ばかりに目をやっても、内臓のコンディションが悪ければ実はその筋肉もまったく活きてこないんです。

タンパク質の過剰摂取は要注意

野球選手が内臓の不調を招く最たる原因はプロテインです。適量であればまったく問題ないわけですが、未成年のうちから飲み始めてしまったり、全体の栄養バランスに対しタンパク質の摂取が過剰になっていたりすると、内臓を壊しやすくなります。壊さないにしても、内臓の不調を招いてしまうことはスポーツ選手としては致命的です。

まず胃についてお話をすると、ここでは食べ物が少し消化され、口から入った菌を殺菌してからそれらを他の内臓に送り出すという役割を持っています。つまり胃が不調になると菌に感染しやすいということですね。また初期段階の消化能力が低下すると、他の器官で栄養が吸収されにくくなります。

すい臓、肝臓、十二指腸、小腸、大腸の役割とは?

次にすい臓は消化液やホルモンを分泌し、血糖値をコントロールする役割を担っています。そして肝臓やすい臓で分泌された消化液は十二指腸に流され、そこで本格的に消化されます。そして十二指腸では再び殺菌が行われます。ちなみに肝臓は、小腸で吸収された栄養素を全身に運ぶ役割を担っています。つまり日常的にお酒を飲んで肝機能を低下させてしまうと、必要な栄養素が全身に行き届かなくなる、ということです。

十二指腸で消化されたものは、小腸で栄養が吸収され、肝臓から全身に送られます。ちなみに乳酸菌は小腸の活動を改善してくれます。小腸で栄養が吸収された残りは大腸に送られ、そこで水分吸収が行われます。ビフィズス菌はここ、大腸の活動を改善してくれます。つまりビフィズス菌をヨーグルトなどから摂取しておき、大腸の調子を整えておけば水分吸収力も安定し、熱中症予防にも繋がるというわけですね。

プロテインは良薬にも毒にもなり得る

タンパク質などの栄養素は小腸で吸収されます。プロテインなどでタンパク質の摂取過剰になってしまうと、内臓の機能が低下し、小腸での栄養素の吸収率も下がり、効率よくタンパク質を吸収して質の良い筋肉を作ることも難しくなってしまいます。そしてそこで仮にタンパク質の摂取量を増やしてしまうとさらに内臓機能は低下し、内臓を壊す方向へと進んでいってしまう危険性があります。

プロテイン=悪ではありません。スポーツで筋肉を酷使した後は、通常よりも少し多めのタンパク質を摂って筋肉のコンディショニングを行う必要があります。問題なのはプロテインを摂取しすぎてしまうことや、若年齢から飲み始めてしまうということです。スポーツ選手にとって必要不可欠なプロテインも、摂取しすぎてしまうと逆に毒になってしまう、ということですね。そうならないように、ぜひ気をつけてください。

今回の投手育成コラムでは、野球選手の体脂肪率について書き進めてみたいと思います。体重と体脂肪率の管理に関しては、アスリートにとっては絶対に不可欠な要素となります。もし体脂肪率を測れる体重計をお持ちでない場合は、それほど高価な商品ではありませんので、1つ持っておいた方がいいと思います。


さて、まずは日本のプロ野球選手の話から始めてみたいと思います。実は日本のプロ野球選手の体脂肪率を研究した論文というのはほとんど存在しておらず、野球選手全体の平均値も正確に知ることはできません。しかし個人的にヒアリングをしてみると、一般的な選手だと10〜12%、体脂肪率が高い選手だと13〜17%、アスリート体型には見えない選手の場合は18%以上あるケースが多いようです。中にはキャンプイン初日には20%近い体脂肪率で、キャンプをこなしながら15%程度まで絞っていくという選手もいるようです。しかし15%だとしても、アスリートとして妥当な数値であるとは言えません。

これがメジャーリーグになると、体脂肪率を研究した論文が多々出てきます。それらを見ていくと、まずショートストップの平均体脂肪率が9.2%で、全ポジションの中ではずば抜けたアスリート体型であると言うことができます。逆に平均値が最も高かったのはピッチャーで14.7%でした。そして外野手全体が9.9%で、内野手だと11%という数値だそうです。

野球というスポーツは、ピッチャーに関しては試合中に走り回ることはほとんどありません。そして普段のトレーニングもアジリティ(敏捷性)よりも、スタミナトレーニングの方が多くなりますので、体内の筋肉量が野手よりも増えにくいという状況が考えられます。例えば投手であっても、900gのバットを毎日数百回振れば、平均体脂肪率は下がっていくはずです。さらに言えば、先発とリリーフとを比較しても、リリーバーの方が体脂肪率は低いと考えられます。

ただ、この数値を出した際のサンプルは全ポジション合わせて170人程度で、ピッチャーの絶対数はそれほど多くはありませんでした。もっと人数を増やして平均値を出していけば、13%未満になったのではないでしょうか。

このような数値を踏まえ、ピッチャーだったら体脂肪率は10〜12%台、内野手だったら9〜11%台、外野手だったら8〜10%台、という数字を目安としてコンディショニングを行なっていくといいと思います。ちなみにマリナーズのイチロー選手の体脂肪率は7.2〜7.4%という数字が公式に発表されています。そして2019年キャンプイン時、マリナーズで最も体脂肪率が低い選手はイチロー選手だったそうです。
今回はハンドグリップの紹介をしてみたいと思います。このアイテムをご存じないという方はほとんどいらっしゃらないと思います。ほとんどの方が使ったこと、もしくは見たことがあると思います。ですので商品そのものの紹介はする必要はないと思いますので、今回は使い方に関して少しお話ししてみたいと思います。

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僕もハンドグリップを日常的に愛用しています。写真のものが何KGのハンドグリップだったかは忘れてしまいましたが、結構強めだと思います。ハンドグリップでトレーニングをすると握力そのものと、前腕を鍛えることができるわけですが、実はもうひとつ、野球肘の予防にも活用することができるんです!

下の写真のようにハンドグリップを逆さまに持ってください。

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このように持って、小指と薬指だけで握ってください。ただ、これをやる時はたくさんはやり過ぎず、できれば弱めのハンドグリップでおこなってください。小指と薬指しか使いませんので、やりすぎるとあまり良くありません。

小指と薬指の筋というのは、実は肘に繋がっているんです。例えばボールを投げる際、小指と薬指に力が入っていると肘がロックされて、野球肘になりやすくなります。ですのでボールの握り方にも注意が必要です。

ですが良い握り方でボールを投げていたとしても、体のコンディショニングが上手くいっていなければ、肘がボールを投げた際の負荷に耐えられなくなってしまいます。そうならないように、小指から肘に繋がっている筋をあらかじめ強化しておく必要があるというわけですね。

ブランドにこだわらなければ、下手したら100円ショップでも買える価格だと思いますので、指全部用と、小指・薬指用の2種類の強度のハンドグリップを持っておくのも良いと思います。そして1000円前後出すと、強度を調整できるハンドグリップもありますので、そのタイプが1つあるととても便利だと思います。

使い方としてはカシャカシャ連続で何度も握ったり、数秒間グーっと握り続けたり、使う指を変えたり、いくつかのやり方がありますので、1つの握り方だけではなく、いくつかの握り方でトレーニングをしてみてください。

今回の投手育成コラムでは、グラブのメンテナンとコンディショニング方法を書いてみたいと思います。グラブやミットはメンテナンスをしっかり行ってあげれば、10年以上はへたらないまま使い続けることができるんです。


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これはわたしが2年以上ほとんど毎日仕事で使っているキャッチャーミットなのですが、これだけ使ってもメンテナンスを行っていれば、2年経ってもこんなにキレイなままなんです!おろし立てと言ってもきっと信じてもらえるのではないでしょうか?

このミットをどのようにメンテナンスしているかと言うと、まず使った後は汚れを落とすために毎日ブラッシングをします。汚れ落とし用のブラシはブタの毛のブラシを使います。この作業だけは使った日は毎回欠かしてはいけません。

汚れ落とし用のリキットやクリームを使っている方もいると思いますが、個人的にはあまり使う必要はないかなと思っています。固く絞った濡れタオルでも落ちないような汚れなら使ってもいいかもしれませんが、グラブがそんな風に汚れることもまずないと思います。そして何より余分なリキットやクリームを使ってしまうと革が吸い込んでしまう水分が多くなってしまい、グラブがどんどん重くなることによって使いにくくなってしまいます。

オイルは月に1回で十分です。オイル選びのポイントは、グラブと同じメーカーを選ぶと言うことです。オイルとグラブの革には牛と馬の2種類あり、牛革のグラブには牛脂オイルを、馬革のグラブには馬脂オイルを使うのがベストです。オーダー品でない限りは、同じメーカーを選んでおけば牛は牛、馬は馬で揃うはずです。

最近は馬革のグラブは減ったと思うのですが、馬革のグラブの場合には馬脂を使うわけですが、もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、馬油(マーユ)には殺菌効果がありますので、グラブにカビ菌などが繁殖するのを防いでくれる効果があります。ちなみにわたしが使っているオーダー品の投手用グラブは馬革なのですが、馬油のおかげなのか、もう20年以上経ちますが今も現役で使うことができています!

オイルをタオルやスポンジを使って塗っている方もいると思いますが、これはやめた方が良いと思います。その理由は、オイルが染み込んだタオルやスポンジには雑菌が繁殖しやすいためです。つまり使い古したタオルでオイルを塗ってしまうと、タオルに繁殖した雑菌がグラブに移ってしまい、グラブがカビやすくなってしまうのです。ですのでオイルは指に直接付けて、指でグラブに塗り込むやり方をお勧めします。もちろん毎回新品のタオルやスポンジを使えば雑菌問題は解決しますが、経済的ではないと思います。

右利きの場合、最初は右の指にオイルをつけて表面に満遍なく塗っていきます。それが終わったら左の指にもオイルを付けて、手を入れるグラブの内面にもオイルを塗っていってください。ちなみにオイル塗りは、湿度が高くない晴れた日に行ってください。雨の日や湿度の高い日にやってしまうと、革の水分がなかなか抜けてくれず、重いグラブになってしまい、水分過多のグラブはへたりやすくなります。

さて、オイルを塗ったらまたもやブラッシングです。今度は馬の毛のブラシを使って、優しく撫でるようにサッサッサッとブラッシングをしてください。馬ブラシのこの作業を行う理由は、余分な油分を馬の毛で吸い取るためです。また、オイルを塗った後で馬毛でブラッシンを行うと、革に独特な光沢が出るようになります。

馬毛でブラッシンをしたあとは、グラブハンマーの出番です。最近はスポーツショップでも1000〜2000円くらいで売られていますが、持っていなければボールでもOKです。ただし、ハンマーと違って疲れるとは思います。グラブハンマーを持っている場合はそれを使ってグラブを型付けしていきます。一番良い音でパンッ!と鳴る場所を、そこにボールが入りやすいようにグラブハンマーで叩いていきます。

オイルを塗って型付けもできたら、あとは手の甲あたりに空いている隙間にフックをかけて、一晩屋内にぶら下げて乾燥させてください。ちなみにわたしはクローゼットにUSBのミニ扇風機を常時回したままにし、そこに持っているグラブやミットをすべてぶら下げています。

革製品は、湿度が低すぎても高すぎてもダメです。40%をキープするのが理想です。30%を下回ると革がひび割れやすくなり、60%を越えると今度はカビやすくなります。ちなみにもしカビてしまった場合は、グラブを分解して手で優しく丸洗いしてください。革を適切に乾燥させた後にまた組み立てれば、また使えるようになります。

さて、乾燥させた後はグラブなら中にソフトボール大のボールを入れて、型が崩れないようにホルダーや紐を使って保存します(キャッチャーミットの場合は硬式球2つ)。グラブの場合、中に入れるのは野球ボールではダメです。野球ボールでは小さ過ぎてグラブが折れてしまいます。そして一度折れた革は元には戻せませんので、折れないようにソフトボール大のボールを入れておきます。100円ショップに行くと発泡スチロールのソフトボール大の工作素材が売っていますので、それをご利用されると良いと思います。

それとグラウンドでのグラブの置き方ですが、小指と親指の側面を地面に付ける形で立てて置きます。間違ってもグラブが折れてしまうような状態では置かないでくださいね。ペシャンコに潰れたグラブでは、ボールは上手くグラブ内には収まってくれません。イメージとしては、ボールを中に吸い込んでくれるようなグラブになるよう型付けし、その型を維持する必要があります。

最初から柔らかいグラブを使っていない限り、本当に型付けができるまでには2年くらいかかります。一方最初から革が柔らかくなっているグラブの場合は、自分の好みで型付けをすることができませんので、下手な選手だとグラブに振り回されるようなフィールディングになってしまうと思います。ですのでできれば革がカチカチな状態から、時間をかけてグラブを育てていくのが最善だと思います。カチカチでも、半年くらい使えば試合で使える程度の柔らかさにはなりますので、それまでは古いグラブと併用されるのが良いと思います。

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それともう1点、グラブを長持ちさせるためには、ピッチャー以外は守備用手袋を必ず使った方が良いと思います。ピッチャーに関しては守備用手袋は使えないのですが、夏場は守備用手袋が、汗が革に染み込まないようにしてくれます。ですので夏場などはアンダーシャツのように、1日に数回守備用手袋を取り替えるとグラブの革を長持ちさせることができます。ちなみに汗が染み込んだグラブはすぐに色褪せてしまったり、臭くなるので要注意ですね。

グラブはとても高い商品で、軟式用でもしっかりした作りのものは2万円前後しますし、硬式用なら4〜5万円することもあります。ですので少しでも良い状態で長持ちさせるためにも、メンテナンスは欠かさないようにしてください。ちなみにわたしのこのミットはアメリカのスポーツショップで購入した硬式用なのですが、日本円で2万円くらいだったと思います。それでも150キロ以上のボールを受けてもまったく問題ありません!

パフォーマンスをアップさせるためには、しっかりと重心を落としておくことが重要です。重心が高ければ踏ん張りが弱くなり、踏ん張りが弱ければ下半身で動作を安定させることができず、手だけでボールを投げなければならない状態になり、制球力も球速もアップさせることはできません。


重心を下げたり、踏ん張ったりする動作がまったくわからない小中高生も多いようです。友だちと相撲や押し相撲をしたことがないという選手も多いようです。やはり小学生の頃に友だちと相撲などをして遊び、重心を下げて踏ん張るという動作を体で覚えておくことが野球にとっても重要だと感じられます。

では投球動作に於いて重心はどのように下げるかと言いますと、エッジングという動作を使います。エッジングとは軸足の靴の裏の、内側の角(エッジ)を使う動作のことです。かんたんに言えば、靴をパタッと倒して内踝を地面に着けていくような動作のことです。

このエッジングという動作は軸脚側の股関節で行います(足首は使いません)。背骨は垂直を維持したまま股関節を外転させることにより、並進運動をしながら靴をパタッと倒していきます。振り上げた非軸足のランディング(着地)と同じタイミングで深くエッジをかけられるのがベストです。この動作によって適切な高さまで最大限重心を下げていくことができます。

そして非軸足がランディングした後はその足でしっかりと踏ん張り、体重もすべて非軸脚側の股関節へと移し切り、エッジをかけた軸足をターンバックモーションへと進めていきます。このターンバックモーションを良い形で行えると、エッジングで低くした重心を、低いまま使っていけるようになります。逆にターンバックモーションが良い形にならないと、せっかく良い形でエッジをかけられたとしても、重心を上げながら投げることになりますので、ボールは上ずるようになります。

重心を下げる作業も、踏ん張る作業も股関節で行います。スポーツは走る動作も、跳ぶ動作も、相撲もサッカーも野球も股関節の使い方が何よりも重要なのです。だからこそ広い股関節の可動域を維持する必要がありますし、股関節が硬い選手は手投げをするしかないため、制球力も球速も思うように向上することがないのです。

毎日のストレッチングでコンディショニングしていくことも大切ですし、頑張って良い動作を続けることによって関節と筋肉を良い動作にフィットさせ、可動域を向上させていくことも大切です。一番やってはいけないのは、自分の体の硬さに投球動作を合わせてしまうことです。これをやってしまうと、何もかもが遠回りになってしまいますので注意が必要です。

冬季になると、毎年のようにチームで行なわされる走り込みについてのご相談をいただきます。走り込みにはどのような効果があり、どれくらい行うのが適切なのか、などのご質問をコーチングを受けている選手の親御さんからたくさんいただきます。今回のコラムでは走り込みについて解説していきたいと思います。


結論から言いますと、走り込みは必要です。ダルビッシュ投手や為末大さんなどは野球に走り込みは必要ないとコメントしているようですが、当野球塾では走り込みは必要なトレーニングだと考えています。ちなみにダルビッシュ投手や為末大さんの言葉は、親御さんから伺ったお話ですので、ダルビッシュ投手や為末大さんの言葉の真意はわたしにはわかりません。

走り込みは必要だと考えていますが、しかし走り込み過多は厳禁です。プロ野球選手のように体がしっかりと出来上がっているレベルの選手であれば、長時間走ってもフォームを崩さず走ることもできます。しかし小中学生の場合は走れば走るほどフォームを崩していき、崩れたフォームで走り続ければ必ずどこか怪我をしてしまいます。ちなみにわたしが以前お邪魔したとあるプロ野球チームの投手陣は、春季キャンプで5キロを楽に走れる投手が1〜2人しかいませんでした。その頃のそのチームはまさに12球団の中でも弱小チームでした。

フォームが崩れた状態で走り続けると、膝や腰を痛めやすくなります。特に小学生や中学1〜2年生という年代はまだ骨端線が固まっておらず、膝や肘などは特に痛めやすいんです。そして痛めた骨端線を放置してしまうと骨格が歪んだまま骨が成長してしまい、手術をしなければ治らないという状況にもなりかねません。

ちなみにスポーツ外科に精通されていないお医者さんの場合、ごく稀にですが、骨端線が原因の痛みを捻挫だと誤診してしまうケースが過去に多々ありました。すると治療方法が大きく変わってしまいますので、骨端線の不調を適切に治療することができず、この場合、生涯痛みを抱えてしまうケースもありますので、心配な場合はちゃんとしたスポーツ外科を受診するようにしてください。

走り込みはとにかく、適切なフォームで走れるだけの量以上は行わないことです。この冬に親御さんに聞いた事例では「3日で合計60キロ走らされた」「4時間走りっぱなしの練習をさせられた」「冬休みの間、毎日20キロずつ走らされた」というお話がありました。これらは小中学生という年代を考えると、明らかに過度な走り込みになります。

筋肉痛以外の痛みはすべて怪我です。現に上記のようなお話を聞かせてくださった親御さんのお子さんは膝痛、シンスプリント、足底筋膜炎、足首の捻挫、骨端線損傷などを患い受診したと仰っていました。つまりこれは必要なトレーニングではなく、ただのOTS(オーバー・トレーニング・シンドローム)であり、不必要な過度なしごきとなります。ちなみに運動心理学的には、しごきによりメンタルを強化することはできません。つまり根性をつけるために走り込みをさせるという考え方は、まったく非論理的で誤った考え方なのです。

過度な走り込みは実に非論理的で非科学的なしごきです。このような過度なトレーニングを選手に課す指導者は、まずは自分自身が選手と同じ量だけ走って見せるべきでしょう。するとまず動けないはずです。日本の少年野球チームの指導者のほとんどすべてはボランティアであり、指導法について勉強されている方は本当にわずかしか存在していません。アメリカの少年野球チームの場合はまったく異なり、よほどの初心者チームでない限りはわたしのようなプロフェッショナルコーチがチームに1人は在籍しています。そのため常に適切なトレーニングメニューで野球スキルを高めていくことができるんです。

なお走り込みを適切なフォームで適切な量をこなした時に得られる効果は、まずジョグのような有酸素運動であれば毛細血管を増やすことができます。激しい運動をした後というのは体が火照ると思いますが、この火照りは運動により毛細血管がたくさん切れて起こっているものなのです。

そして一度切れた毛細血管は再び繋がることはなく、新しく増やしていくしかありません。この毛細血管は筋肉などの回復力に大きな影響力を持っているため、有酸素運動により毛細血管をたくさん増やしておくほど、回復力が高まるという仕組みになっています。ただ、有酸素運動はジョグではなく、エアロバイクや自転車、エアロビクスなどでも行うことができます。ダルビッシュ投手は恐らく、有酸素運動はエアロバイクでも行えるため走り込みは必要ない、というニュアンスで話していたのではないでしょうか。

走り込みにはもう一つ大きな利点があります。それは走る動作というのは、体の連動を高めてくれるという点です。速く走るためには股関節を自転車のペダルのようにスピーディーに動かしていく動作が必要となります。つまり適切なフォームで走ることができれば、股関節のコンディショニングと強化を行うことができるんです。

股関節とは上半身と下半身の繋ぎ目であり、股関節が動かなければ、いくら下半身で踏ん張ったとしてもその力が上半身に伝わることはなく、下半身を鍛えていたとしても結果的に手投げになってしまいます。

わたしはよく選手たちに「腕で走り、脚で投げるように」と指導します。走る動作というのはもちろん脚で行うものですが、その脚を動かす役割を担っているのが腕なのです。腕を適切なフォームで前後に大きく振ることができれば、脚は自然と腕の動きに連動していくようになります。そして連動しているということは、股関節も機能しているということになり、それができるようになると、脚の動きによって腕を動かしボールを投げる理想的な動作も身につけやすくなるんです。

野球のパフォーマンスはキネティックチェイン(運動連鎖)と言って、下半身を発端にしたエネルギーをどれだけ効率良くボール、もしくはバットに伝えていけるかが鍵となります。このキネティックチェインを最下部(つまり足部)から順番に上へ上へと繋げていくことができれば、筋肉をモリモリにしなくても速いボールを投げることができるんです。ただし速いボールを投げた時の衝撃に耐え怪我を防ぐため、ある程度の筋肉は必要となります。

さて、最後に適切なフォームで走るコツをお伝えしておきたいと思います。グラウンドには塁線が引いてあると思いますが、その白線の真上に両足を真っ直ぐ着地させながら走ってみてください。すると股関節をしっかりと使って走ることができます。インステップにもアウトステップにもならないように足を着地させて走ってみてください。

そして内股やガニ股にもなってはいけません。疲れてくるとどんどん内股やガニ股になって行ってしまいますが、その状態で走り続ければ必ず膝を痛めます。これは骨端線がしっかりと固まった大人でもそうですので、小中学生世代であればなおさらです。

両腕に関しては、スプリントの場合は肘を常に90°くらいに保って、脇を締め、肩甲骨を使って前後に大きく振っていきます。ジョグの場合も肘は90°くらいにし、大きく振る必要はありませんが、広がらないように前後に軽く振っていきます。

ちなみに小学生世代というのは一般的にはスタミナが大きく増えることはなく、逆にスプリントを強化することができます。あくまでも一般的な話ですが、短距離走が速くなるのは小学生世代までで、小学生のうちに短距離を速く走れるようにしておかなければ、中学生になっていきなり短距離走が速くなることはありません。ですので小学生世代が走り込みを行うのであれば長距離はせいぜい2キロくらい、走れる子でも5キロくらいにしておき、あとは盗塁練習のような20メートル走を10〜20本やるだけでも十分だと思います。

中学生世代の場合はスプリントトレーニングも速筋を養うという意味では重要ですが、この世代はスタミナを一気に伸ばせる世代となります。ですのでその日の最後のメニューとして3〜10キロ程度走るといいと思います。

走り込みを行う際の注意点は、必ず走る直前と走り終わりに脈拍を計ることです。走る直前と比べ、走り終わりでどれだけ脈拍が上がっているのか、そしてその後2〜3分ごとに脈拍を測り、どれくらいのペースで走る前の脈拍に戻るのかを計測してください。この作業によってスタミナと回復力がどれだけ高まっているのかを数値で確認できるようになります。

また、5キロ以上を走る場合は必ずペットボトルなどを持って走るか、もしくはコーチがいつでも水分補給できる環境を作っておく必要があります。冬季だからと言って水分補給を疎かにしてしまうと脱水症状を引き起こします。足をつるというのは脱水症状の初期症状ですので、つった時点でその日の運動は停止させ、しっかりと水分補給を行わなければなりません。

・・・・かんたんにまとめるつもりが、かなり長いコラムになってしまいましたね。これでもかなりかんたんにまとめたのですが、それでもまとめ切れないほど走り込みというのは奥が深く、有効なトレーニングなのです。ただし繰り返しますが過度な走り込みは逆効果で怪我を招くだけです。ですので指導者がしっかりと勉強をし、適切な走り込みのメニューを組むための知識を持つ必要があるのです。筋肉痛以外の走り込みの痛みはすべて怪我であり、それは100%指導者の責任であることを、走り込みをさせる指導者は頭に入れておく必要があるということを、決して忘れないでください。

投球時に肘が下がってはいけない、と知っている選手はほとんどだと思います。しかし現実的には肘が下がるしかない投げ方をしている選手がほとんどなのです。それは指導者が「腕をしっかりと振れ」と言ってしまうことも原因になっていると考えられます。


結論を言いますと、肩を水平内転させることによってボールを投げてしまうと、人間の体の構造上肘は必ず下がってしまいます。水平内転というのは、右投げの場合、右腕を真横に水平に上げてみてください。そこから腕を水平に動かし右手で左肩をタッチしてください。この時の右肩の動き方を水平内転と言います。

テイクバック付近で肩・肩・肘のSSEライン(ショルダー・ショルダー・エルボー)が一直線になったら、ボールを持っている間はこの一直線を維持し続けます。この一直線が崩れることを肘が下がっている、もしくは肘が上がっていると評価します。肘は肩線分(両肩を結んだ直線)の延長線上で一直線になっていることが求められます。

肩を水平内転させることによりボールを投げてしまうと、投球後に右手で左肩を触るような動きにならない限り、ボールリリース時に肘を肩線分の延長線上に維持することはできません。ただしSSEラインは一直線ではなく「く」の字になってしまいます。左投手であれば左手で右肩を触るような動きですね。

テイクバック付近でSSEラインを一直線にしたら、ボールを握っている間はこの一直線を維持し続けます。ではどこを動かすかと言うと、非軸足側の股関節です。右投げなら左股関節、左投げなら右股関節です。ランディング時に最大外旋させたこの股関節を内旋させていくことにより、手に握ったボールをキャッチャーミット方向に加速させていきます。

非軸足側の股関節を適切に動かすことができれば、肩関節を動かす必要がなくなり、テイクバック付近で作った一直線のSSEラインが崩れることもありません。そして肩を使わなければ肩への負荷は最小限に抑えることができ、野球肩になるリスクを大幅に軽減させることができます。

例えば工藤公康投手、山本昌投手、岩瀬仁紀投手らは股関節の使い方を当野球塾のコーチのような専門家に学び、そして股関節のコンディショニングを徹底して行なったからこそ肩をほとんど使わない投げ方を身につけることができたのです。だからこそ40代や50歳近くになっても現役を続けることができているのです。

指導者が選手に対し「腕をしっかりと振れ」と言ってしまうと、選手はどうしても肩を動かすことによって一生懸命腕を振るようになってしまいます。すると肩を水平内転させる投げ方が癖づいてしまい、野球肩のリスクを高めることになってしまうのです。

当野球塾では肩は使わず、股関節を使って投げることによって故障のリスクを軽減させ、制球力と球速をアップさせる投球動作の指導を行なっています。とにかく大事なのは、ボールは股関節で投げるということです。決して肩や腕力を使っては投げないでください。
トレーニングを毎日一生懸命行なっている選手は非常に多いと思います。筋力トレーニング、打撃、守備、投球、走塁などの技術トレーニングなどなど。一般的にほとんどの選手はトレーニングの重要性を理解しているのですが、コンディショニングの重要性を理解できている選手はほとんど見かけることがありません。

トレーニングとコンディショニングは同等に考えるべきです。例えば1時間トレーニングを行なった日は1時間コンディショニングをし、4時間トレーニングを行なった日は4時間コンディショニングを行うべきです。もちろんこれは理想であり、プロ選手でなければなかなかここまで時間を使うことはできないでしょう。しかし少なくとも4時間トレーニングを行なったら、最低2時間はコンディショニングに使いたいものです。

ストレッチングなどは、本を読みながらやテレビを見ながら、もしくは宿題をやりながらだって行うことができます。なにもストレッチングのみに集中して行う必要はないのです。

プロ野球でも怪我なく長年一線で活躍している選手は、とにかくトレーニング同様にコンディショニングも大切にしています。メジャーリーグなどで活躍された斎藤隆投手などは、ストレッチングだけで毎日2〜3時間使っていたそうです。だからこそ大きな故障を抱えることなくあの年齢まで一線で活躍し続けることができたんですね。

一方コンディショニングにはあまり注力せず、とにかくトレーニングばかり行なってしまう選手の場合は怪我をしやすくなります。クラブチームや野球部などはこのような状況であることが非常に多いように見受けられます。例えば野球部やクラブチームの練習を観察していると、朝一で集合して日が暮れるまで練習を続けているチームが多いようです。

これだけ長い時間をトレーニングに使ってしまえば当然ですが選手はクタクタになってしまい、練習の後にコンディショニングに取り組む元気など残っているはずもありません。チーム指導者はこのことをしっかりと理解すべきです。コンディショニングに使える時間がなくなり、低いコンディションで練習をしても効率は悪くなりますし、身につくはずの技術も身につかなくなり、さらには当然怪我をするリスクも跳ね上がってしまいます。

スポーツで最も大切なのは怪我をせずにプレーをし続けることです。どんなに上手になれたとしても怪我をしてしまっては意味はありません。しかし一般的なチーム指導者はそんなことなどまったく考えず、目先の勝利しか見ていないケースが大半です。もちろんそうではない指導者もたくさんいらっしゃるわけですが、しかし日本球界の現状ではそれはマイノリティーでしかありません。

本当に大切なのは目先の1勝ではなく、選手の一生です。これを逆に考えてしまう方は、将来のある子どもたちを指導する資格はないと自覚すべきです。そしてもし昨日までそのような考えで指導をしていたのならば、ぜひ今日から考えを新しくしていってください。大切なのは目先の1勝ではなく、選手の一生です。