プロコーチとして未だに悩んでしまうこと
コーチングをしていて時々悩むのが、個性を生かすべきか、実を取るべきかという問題です。
個性はとても大切だと思うのですが、この個性で成績が上がっていないのならば、個性にこだわるべきではないというのが僕の基本的なスタンスです。
しかし難しいのは、その個性によるストロングポイントとウィークポイントが拮抗している場合です。
コーチングをしていて時々悩むのが、個性を生かすべきか、実を取るべきかという問題です。
個性はとても大切だと思うのですが、この個性で成績が上がっていないのならば、個性にこだわるべきではないというのが僕の基本的なスタンスです。
しかし難しいのは、その個性によるストロングポイントとウィークポイントが拮抗している場合です。
練習中にミスをした選手が笑顔を見せていたということで、阪神タイガースの2軍監督が選手たちを怒鳴ったという内容のニュースが伝えられました。しかし報道された側は、これを恥ずかしいことだと思わなければいけません。選手はもちろんですが、2軍監督は特に。
怒鳴るという行為はまったく指導の範疇には入りません。これはもう「自分には正す術がないから怒鳴るしかない」というような状態です。指導者として怒鳴るというのは、それほど恥ずかしいことだということを知る必要があります。大きな声を出すことと、怒鳴るというのはまったくの別物です。
ジャイアンツの2軍監督も選手を「小学生並み」と評したと伝えられていました。怒鳴るにしても、小学生並みと言うにしても、選手を発奮させたいが故のことだったのかもしれません。しかしこれらは一歩間違えば選手を壊してしまうことにも繋がります。自信喪失になったり、監督不信に陥ったり。
このようなプロ野球の指導者の姿を真似してしまう少年野球のお父さんコーチも多いはずです。「選手がミスをしたのに笑っていたら阪神の監督が怒鳴っていた」ということを、プロ野球の2軍監督がそうしたんだから正しいのだろう、と勘違いしてしまう阪神ファンのお父さんコーチも出てくるかもしれません。
そしてミスをした6年生を「3年生並みだな」と口にしてしまう巨人ファンのお父さんコーチだって出てくるでしょう。プロ野球というのは常に見られているということを意識する必要があります。巨人や阪神といった超人気球団ならなおさらです。
ミスをした選手が笑っていたら、怒鳴り散らしてわざわざ選手の反感を買うようなことをする必要なんてないんです。その選手たちの横に、ただ何も言わずに立ってその後の練習を見守っていればいいんです。
選手というのは子どもでもプロ野球選手でも「監督やコーチに見られている」ということに対してとても敏感です。例えば「監督はどうせ俺のことなんてちゃんと見ていない」と薄々でも感じてしまうからこそ、緊張感のないプレーをしてしまうわけなんです。ですので緊張感がない選手、集中力を欠いている選手に対しては、選手が「見られている」ということをヒシヒシと実感できる状況を作ることにより、怒鳴ったり罵声を浴びせたりすることなく改善させることができます。
百歩譲ってプロ野球なら「給料貰っているんだからもっとしっかりやれ!」と言うこともできます。しかし少年野球ではそんなニュアンスは一切通用しません。下手に怒鳴ったらそれだけで来週から来なくなる子だっているでしょう。そしてもしその子がチームで一番上手い部類の子だったら?
指導者というのは、ただ基本や技術を教えればいいというわけではありません。集中力が途切れやすい選手に対しては、集中力を維持しやすくなるスキルを教えてあげる必要があります。そして緊張感がない選手に対しては、緊張感を持って練習できる環境づくりをしてあげることが大切です。選手を怒鳴ったり愚弄したりしても、何も解決しません。
スポーツ(オリンピック)というのは戦争の代用として誕生しました。しかしスポーツと軍隊はまったくの別物です。いつまでも軍隊式のやり方をしていては、日本の野球界はますますアメリカと差が広がるばかりになるでしょう。
ちなみにアメリカのリトルリーグでは、親御さんから「この監督はしょっちゅう選手を怒鳴りつけて、理論的な指導をしていない」と通報があると、その監督はしばらく指導することができなくなります。「指導法を勉強してもう一度出直してこい!」とリトルリーグ連盟に言われてしまうわけです。
しかし日本では怒鳴り散らす指導を親御さんさえ認めてしまっていて、それが当たり前であるという雰囲気さえ未だに残っています。ですがこれは完全に間違った状態であると、日本中のパパママはそろそろ知っていくべきだと思います。
なぜメジャーリーグでは4シームストレートよりも、2シームストレートを好む投手の方が多いのでしょうか?この疑問を考える時、やはり大きな要素となってくるのは中4日というタイトなローテーションということになります。もしこれが中5日、もしくは中6日になってくれば、4シームストレートの使い手がメジャーでももっと増えてくるのではないでしょうか。
今回の投手育成コラムでは、コーチングへの組み方について少しお話してみたいと思います。小中学生チームのボランティアコーチの場合、理論的にコーチングできる方というのはほとんどいらっしゃいません。強豪硬式チームであっても、経験則だけで指導してしまっている監督・コーチが大半ではないでしょうか?
コーチングに於いて経験則というのは、実はあまり役に立ちません。経験値は必要なのですが、経験則というのは役に立たないことがほとんどです。と言いますのは、A君で上手く行った指導法で、B君も同じように上手く行くことはまずないからです。なぜならA君とB君は性格も体格も選手のタイプも違うからです。
これが仮に一卵性の双子であったとしても同様です。双子であっても性格や嗜好というものは違ってくることがほとんです。コーチの役割というのは知っていることをただ伝えるだけではありません。目の前の1人の選手にとって、今一番必要なことを見極めた上で伝えていき、選手を上達へと導いていくことが役割です。
知っていることを判で押したようにただ繰り返すのはコーチングではなく、ティーチングです。コーチングはあくまでも、目の前にいる1人に対し個別の指導を当てていく作業です。つまりA君が目の前にいたなら、A君の現状をしっかりと把握した上で、今もっとも足りていないことを見極め、それを補っていくサポートをします。そして同時にA君の長所も見極め、それを伸ばしていくこともコーチの役割です。
例えば近年、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手(現オークランドアスレティクス)が不振に苦しんでいます。果たしてタイガースの投手コーチは藤浪投手に対し適切なコーチングを行えていたのでしょうか。経験則だけでコーチングをしてしまってはいなかったでしょうか。
もし僕が藤浪投手のパーソナルコーチングを担当するのなら、真っ先に考えるのはスケール効果についてです。藤浪投手のパフォーマンスを不安定にさせている最大の要因はスケール効果にあると僕は考えていますので、まずはスケール効果の影響を最小限に抑えられるフォーム作り、厳密に言えば運動軸を体の外側に出し、慣性モーメントを小さくするためのコーチングから始めていくと思います。
その上で彼の長い四肢を活かして、左股関節の使い方を改善することにより、リリースポイントをもっと打者に近付けエクステンションを伸ばし、少し力を抜いても簡単にバッターを差し込むことのできるストレートを作り上げていこうとすると思います。あくまでも僕ならば。
このように、コーチングというのは目の前の選手のウィークポイントとストロングポイントをしっかりと見極めて、ウィークポイントを補いながら、同時にストロングポイントを伸ばしていく必要があります。しかしこの作業は経験則だけでは行えません。ピッチングモーションのバイオメカニクスをしっかりと学び、モーションのすべての細かい動作を理論的に説明できる知識が必要です。
もちろん週末のボランティアコーチの皆さんにそこまで求めるのは酷だと思います。ですが本当に子どもたちを上達させたいのであれば、10分でも20分でも1対1のコーチングを行なっていくべきです。例えばチームに20人の子供達がいたとして、1人10分ずつみっちりマンツーマンでやったとしても4時間かかりませ。コーチが2人なら2時間、コーチが4人なら1時間で済みます。
そしてコーチは、とにかくメモを取ることが重要です。選手にとってコーチは少人数ですが、コーチにとって選手は少人数ではありません。ですので誰に何を伝えたかを覚えておくのはなかなか難しいものです。だからこそ、いつ誰に何をどのように伝えたのか、ということをしっかりメモをしておく必要があります。
今まで行ったコーチングを忘れている状態でまたコーチングを始めても、効率の良い指導は絶対にできません。そして子どもたちも「また同じこと言っているなぁ」と飽き始めてしまいます。飽きられないためにも「先週こういうことを教わったの覚えてる?まだできていないからもうちょっと時間を割いていこうか」と、コーチは言ったことをすべて覚えている、ということを選手に理解させる必要があります。そうすれば飽きられることなく、逆に「また同じ注意されないようにしなきゃ!」と緊張感を持ってくれるようになります。
結局のところコーチングというのは、どれだけ「コーチは僕のことをしっかり見てくれている!」と思ってもらえるかどうかなのです。「どうせ僕のことなんて大して見てない」と思われてしまっては、どんなに良い指導をしても効果は得られません。果たしてタイガース時代の藤浪投手の周辺はどうだったのでしょうか。僕には何とも言えないところではありますが、コーチやグラウンドに顔を出すOBは行きずりの指導をしてしまってはいないでしょうか。もし場当たり的なコーチングをしていなかったのであれば、藤浪投手がここまで長く不振に苦しむことはなかったはずです。
今回の投手育成コラムでは、普段のトレーニングへの取り組み方について少しお話をしてみたいと思います。僕はこれまでプロコーチとして、プロアマ1000人以上のマンツーマンコーチングを行ってきましたが、その中で本当に上達する形で普段の練習ができている選手は、多く見積もっても20%程度でした。
子どもたちが肩肘を痛めてしまった時の責任は一体誰にあるのか?!それは当然チームの監督・コーチにあると思います。まず怪我をしにくい投げ方を指導するための勉強をしていない、そして子どもの体には負担が大き過ぎるほどの球数を投げさせている、という点は決して見逃してはいけないと思います。やはりいくらボランティアコーチと言えども、実際に子どもたちに動作を教えるという行動を伴っているのであれば、最低限の解剖学やスポーツメカニクスを学ぶべきです。それを学んでいないのであれば、経験則だけで子どもたちを教える行為は避けるべきです。
今回の投手育成コラムでは、上達速度をアップさせるための練習の取り組み方に関し少しお話をしてみたいと思います。多くの方が考えている通り、闇雲にただ毎日練習をしているだけでは、思うような練習効果を得ることはできなくなります。野球を始めたばかりであればそれでも上達はできますが、経験値が増えるほど、闇雲な練習では毎日何時間も行なったとしても、いつか頭打ちするようになってしまいます。
スポーツをしている限り、怪我のリスクが0になるということはありません。どんなに怪我をしにくい投げ方、打ち方を身につけていたとしても、打球を追い駆けて他の選手とぶつかって怪我をすることもあれば、勤続疲労によって怪我をしてしまうこともあります。