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年々増え続けて行く盗撮被害

女子競技だけでなく、甲子園でもよく問題になるのが悪質なカメラマンによる盗撮です。甲子園であればチアリーダー、オリンピックであればビキニのようなウェアを着た女子アスリートが盗撮され、それを性的な目的としてインターネットなどにアップロードされる被害は減らないどころか、年々増え続けています。そしてその手口も年々巧妙になっているようです。盗撮は本当に卑劣な行為でしかありません。

盗撮を楽しむ人間からすれば「性的対象となりうるウェアを着るのが悪いし、客席から写真を撮ることは犯罪ではない」という言い分なのでしょう。しかしこれは当人たちの性格同様に捻くれた論理です。

チアリーダーたちは毎日練習やトレーニングを頑張って、甲子園などで選手たちを応援する旗振り役を務めています。このチアリーダーたちの努力は球児同様です。ちなみにアメリカなどではチアリーディングはものすごくアクロバティックで、全国大会ともなると本当にアスリートとまったく変わりません。

ビキニのようなウェアを着ている女子アスリートにしても、少しでも良い数字を出すためにそのような限りなく空気抵抗が小さいウェアを着ているんです。何も盗撮してもらいたいから短いウェアを着ているわけではありません。彼女たちは肌の露出が多いウェアを着ることによって誰にも迷惑をかけていないし、誰かを不快にしているわけでもありません。しかし盗撮カメラマンはただただ迷惑でしかありません。

チアにしてもアスリートにしても弛まぬ努力を続け、パフォーマンスによって人々に勇気や希望を与えています。僕自身ダーリャ・クリシナという選手の大ファンで、昔から彼女のジャンプに魅了されています。彼女のジャンプを見るためだけに競技場に行ったことだって何度もあります。そして最近発売されたばかりの彼女の本も読みました。

例えばファンからしたら、大好きな女子選手の写真が性的な目的で使われることは本当に許せません。でもこれは変態カメラマンだけに限ったことではありません。スポーツ紙やテレビカメラだって、「そんなアングルから撮る必要はない!」というショットを頻繁に出して来ます。さすがにNHKの甲子園中継ではそんなショットはないとは思いますが、僕が寝ずに見てしまう世陸の中継などでは、けっこうそのような悪質なショットがあります。

甲子園で汗を流しながら一糸乱れぬ振り付けを見せて選手たちに勇気を与えているのは、当然ですが全員高校生です。大の大人が何十万円もするような高価な望遠レンズを使って彼女たちを盗撮するという行為には、本当に怒りしか感じません。盗撮されているのが自分の娘さんだったらどうでしょうか?

僕は野球場で、実際にチアを盗撮しているカメラマンに注意をしたことがあります。デジタル一眼レフなので、ちょっとモニターを覗けばどんな写真を撮っているのかが分かります。「そういうの撮るのやめろよ」と言うと、逆ギレされました。ですのでスマホで盗撮犯の顔写真を撮り、警備員に確認してもらい追い出してもらいました。

もしかしたら僕が関係者として球場にいたからだったかもしれないのですが、でも警備員も追い出すのに慣れているようでした。恐らく地方大会であっても、そういう変態カメラマンが後を断たないのでしょう。

盗撮の心配をしながら本領を発揮することなんてできない!

例えばお酒を買う時はIDの提示を求められることがあるわけですが、競技場でも「撮影したデータを確認させていただくことがあります」という内容に強制的に同意させた上で入場してもらう、という対処も必要なのではないでしょうか。

僕が大好きな陸上でも、女子アスリートの盗撮被害は大きな問題になっています。アマチュアカメラマンだけではなく、テレビ局のカメラにも選手たちから苦情が入っているほどです。

果たして「今盗撮されているかもしれない」と心配ながら、女子アスリートたちは実力を発揮することができるでしょうか?中にはそれが大きなストレスになって、実力を発揮できないまま敗退してしまった選手だっていたはずです。

女子野球の場合は肌が露出するようなユニフォームではないため、そのような盗撮被害はほとんどないとは思います。ですがチアリーダーに関しては、野球場ではもう長い間被害者となり続けています。高野連はこれに対してもしっかりと対処して行く必要があるのではないでしょうか。しかしここまでのところ、何らかの対処がなされたという話は聞きません。

僕の生徒さんの多くの方はご存知の通り、僕は野球肩経験があるため自分で野球をプレーすることはありません。というよりは、やりたくでもできません。そのため自分では幅跳び選手としてスポーツを楽しんでいるのですが、そこで知り合った女子アスリートたちと話していると、やはり盗撮被害を実感している選手は多いようでした。

甲子園のチアリーダーと話したことはほとんどないのですが、しかし高校生では被害にまったく気付くことができないというケースも多いのではないかと考えられます。16〜18歳くらいの高校生では、球場にはそういう変態カメラマンが大勢いるなんていう発想を持つことはできないと思います。だからこそこのような盗撮は悪質極まりないとしか言いようがないのです。

望遠レンズの持ち込みは許可制にすべきかもしれない

今回のコラムは野球技術とはあまり関係のない内容でしたが、しかしコーチとして球場に行くと実際に感じられた、気分がとても悪くなる悪質な行為としてご紹介させていただきました。選手たちの姿を撮影しながら、時々チアリーダーの元気な姿を写すことはまったく問題ないと思います。しかし変態カメラマンのレンズはチアリーダーにしか向けられていないのです。

お酒を買う時にIDをチェックされるように、球場で望遠レンズを使っていたらIDチェックをするというルール作りも必要なのではないでしょうか。はっきり言って高校野球のチアリーダー盗撮に関しては、ほとんど無法地帯であるように見えます。だからこそ高野連はもっと実効性のある明確なルールをチケット販売時に設けるべきだと思います。

個人的には望遠レンズの利用はID提示必須の許可制にすべきだと思います。そしてチアリーダー、女子アスリートたちの被害をなくすためにも、盗撮には罰則を設けるべきです。例えばディズニーランドでは、著しくルールを破った人は一生涯ディズニーランドに出入り禁止になるのだそうです。

野球場や競技場もこれくらいの措置を施して欲しいものです。盗撮カメラマンにチケットを購入してもらえなくても、大会運営にはまったく差し障りもないと思います。

昨年以降はコロナ禍の影響で僕も野球場には行けていないのですが、このパンデミックが収束したら、悪質なカメラマンに気分を害されることなく球場で仕事ができる日が来ることを願うばかりです。

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ベースのサイズが38cm四方から、46cm四方へと拡大?!

野球のルールは年々進化していきますね。2021年の新しい取り組みとしては、アメリカのマイナーリーグでは今季からベースのサイズが15インチ四方(38cm)ではなく、18インチ四方(46cm)になるようです。

これは、ベースのサイズを広げることによって野手と走者の接触プレーによる怪我を減らすことが目的とされています。確かにこれは理に適ったルール変更であり、コリジョンルールの延長線にあるルール改変だと言えそうです。

マイナーリーグのこの変更で実際に接触プレーによる怪我を減らすことができたら、今後メジャーリーグや国際試合に適用されていき、日本でもベースのサイズが46cm四方へと拡大されていくのでしょう。

そして塁間が16cm狭くなるということは、盗塁の企画数が増えることも予想されています。しかし盗塁時、二塁ベース上での接触プレーは捕手の送球次第という面もあるため、本当にこれにより怪我を減らせるかどうかは、やはり実際に試してみないとわからないところですね。

王シフトが禁止となってしまう新ルール

ベースのサイズだけではなく、内野手は4人ともダート内にいることが守備の条件になるようです。ダートというのは内野の土の部分のことです(日本はダートのエリアはかなり狭いか、ないに等しい球場もあります)。そして二塁ベースを中心にして、左右どちらか一方に野手が3人以上守ることも禁止となりました。

つまり昔で言うところの「王シフト」はルール上不可になってしまったということです。もちろんこれもまずはマイナーで試されていくわけですが、ベースサイズはマイナー全クラスが対象でしたが、この守備に関するルールは、まずは2Aだけから始められていきます。

極端なシフトは見ているファンを興奮させることもあるわけですが、それが見られなくなるのは少し寂しいかもしれませんね。その極端なシフトを破ってヒットを打っていく、というのも魅力だっただけに。

牽制球は3回目がセーフならボークになる?!

そしてこれは1Aでの適用開始となるわけですが、左投手が一塁に牽制球を投げる際も、軸足を完全にピッチャーズプレートから外さなければならないというルールになりました。そして牽制球も2回までとなり、3回目を投げてセーフだった場合はボークになるそうです。

これは牽制球が多くなりすぎて試合時間が伸びることを防ぎ、さらには盗塁企画数を増やすことを目的としているそうです。ベースサイズと合わせて考えると、今季1Aでの盗塁企画数は大幅に増えていきそうですね。

ちなみにマイナーリーグのチーム数は一昨年までは160球団あったのですが、昨年はコロナウィルスによりすべて中止となってしまった影響で、120球団までチーム数が減ってしまいました。この残ったチームで行われる試合をより魅力的なものにするため、アメリカでは様々なルール改変が検討されています。

これらのルールは今後日本に入ってくる可能性も高いため、今のうちに「そういう可能性もある」ということを頭に入れておいた方が良さそうです。そうすれば突然ルール変更が行われても、戸惑うことなく新しいルールのもとでプレーできるはずです。

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併殺完成数の多さは何を意味しているのか?!

併殺を取った数が多いほど「良い二遊間」だと言われることが多いわけですが、これは数字的には間違った捉え方です。もちろん良い二遊間だから併殺を多く取れることもあるわけですが、しかし一般的には併殺数と二遊間の上手さは比例しません。

単純に投手陣のWHIP数値が悪ければ、ひっきりなしに走者が出塁していることになります。そしてほぼ常時一塁に走者を抱えている状況であれば、数字的には併殺を取れる可能性も高くなります。

ただし、本当に二遊間のレベルが低ければいくら走者がいても併殺を完成させることはできません。つまり併殺を完成させた回数が多いというのは二遊間の上手さを証明することがある一方、投手力の弱さの証でもあるわけです。

本当に上手い二遊間コンビの見つけ方

本当に価値のある併殺というのは、チーム防御率やWHIPの数値が良い状態で増えていく併殺完成数です。つまり投手陣があまり走者を出さない状況で増えていく併殺です。さらに言えばこの状況で併殺完成数を増やしていくためには、投手陣に内野ゴロを打たせる技術が備わっている必要もあります。

少ない併殺機会で確実に併殺打を完成させていく、これこそが本当に求められるべき併殺の完成のさせ方です。

小中学生ではなかなか併殺を完成させることは難しかったりもしますが、高校野球レベルになってくると上述したような理論がより顕著になっていきます。

また、プロ野球でも同じことが言えます。併殺完成数の多い二遊間は、その数値だけで上手いと言われることもありますが、ここで注目すべきはチーム防御率やWHIPです。

チーム防御率やWHIPの数値がリーグトップという状況で併殺完成数が多いのであれば、それは本当に二遊間の上手さを証明していると思います。

プロ野球を見る際も併殺完成数だけに注目するのではなく、ぜひチーム防御率とWHIPと併せて、併殺完成数を観察するようにしてみてください。そうすれば本当に上手い二遊間がどのチームにいるのかを知ることができるはずです。

野球指導者ライセンス

ようやく重い腰を上げた全日本野球協会

ようやく野球界が動き始めたようです。2020年11月の話ではあるが、BFJ(全日本野球協会)が「U-12指導者資格コース」を設けることを発表しました。これは本当に必要なものだったと思うし、僕自身、実際に受けられる段階になったらもちろん受験したいと考えています。

実は指導者ライセンスに関しては、もう10年以上前から導入すべきだと考えている野球関係者も、僕を含めちらほら出てきていました。日本の場合、プロ野球からのトップダウンになるケースが多いのですが、しかしプロ野球OBの多くがライセンス制度の導入に肯定的ではなかったんです。そのため野球界では、サッカー界のような指導者ライセンスへの取り組みが大幅に遅れていました。

しかしそれがようやく、2020年11月に始動が宣言されたわけです。これは僕らのように野球指導に関するスキルをしっかりと学んだ上でコーチングをしているコーチたちにとっては、本当に歓迎すべき大きな出来事です。

日本のスポーツ界には未だに暴力や暴言を指導の一環とする「勘違い指導者」が数え切れないほどいます。中でも競技人口が多いのに指導者ラインセンス制度の導入が大幅に遅れていた野球界では、そのような勘違い指導者の人数が桁外れに多いんです。

監督コーチが暴力暴言によって選手を傷つけていることもよくニュースになっていますし、選手間の暴力によって廃部に追い込まれてしまった名門野球部もあります。

日本ではスポーツと暴力の結びつきが非常に強いわけですが、これはスポーツ指導という観点においては100%間違いであると言い切れます。

連盟が乱立し過ぎている日本の野球界

今回ようやく指導者ライセンス制度の導入に向けた取り組みが始動されたわけですが、しかし簡単には行かないでしょう。その理由は日本の場合、野球連盟が乱立し過ぎているからです。

日本野球機構、高野連、シニアリーグ、ポニーリーグ、ボーイズリーグ、リトルリーグ、軟式野球連盟などなど、他の野球先進国と比較すると連盟の数が多過ぎるため、なかなか統制を取ることができないわけです。ちなみにアメリカの場合、小学生世代の野球はリトルリーグ連盟一本です。

球数制限1つ取るだけでも、導入までに本当に長すぎる時間が要されたことは野球関係者の記憶にも新しいと思います。

今回はU-12に対する指導者ライセンスの導入のみ始動されたわけですが、これはつまり小学生世代を任される指導者に対するライセンスの発給ということになります。

実は一部都道府県では、すでに独自のライセンス的なものを導入しているところもあり、野球指導者はその講習を受けなければならない状況も出てきていました。本来であれば全国一斉にやっていかなければならないわけですが、しかし一部からでも始まりつつある状況は、歓迎すべきものです。

ライセンス制度の成功に不可欠な野球界の常識の見直し

このライセンス制度の導入が上手くいけば、今後はコーチングに必要なスキルをまったく勉強していない方は監督・コーチとしてベンチ入りできなくなるのだと思います。

こう書いてしまうと、ライセンス制度が本当の意味で成り立つまではかなりの時間が必要になってくるような気もしますね。例えば基本的にベンチ入りできるのは監督と、2人のコーチだけになるわけですから、極端な話をすると、ベンチ入りしないボランティアコーチは今まで通り練習で暴力暴言を使うことができる、ということになってしまいます。

ライセンス制度を本当に意味のあるものにするためには、ライセンスを持っていない人物は野球指導の現場に介入してはいけないという明確なルール作りとルールを破った際のペナルティも同時に必要になってくるのではないでしょうか。

また、少年野球や中学野球も今後は、最小限の大人だけでも運営できるシステムに変えていく必要があります。例えばお茶当番などはまったく必要ないと僕は考えています。お茶当番は監督コーチの飲み物まで用意しなければならないわけですが、そんなものは自分たちで用意すべきです。

そして必要以上に保護者に負荷のかかる送迎に関しても、どこの家庭にも車や週末に運転できる大人がいるわけではありません。ですので送迎協力に関しても最低限で済むように、大幅に越境していくような遠征をしないで済むようにしていくためのブロック体制の整備も必要になってくるでしょう。

つまり何が言いたいかと言うと、ただライセンスを発給するだけのシステムを作っても、ライセンス制度は生かされないということです。ライセンス制度を本当に意味のあるものにしていくためには、野球界では常識とされてきた他競技における非常識を、今後はなくしていくという流れも不可欠になってくるのではないでしょうか。

夏の甲子園が始まろうとするとここ数年よく話題になるのがカット打法ですね。カット打法は1つの技術だとは思いますが、僕個人としてはカット打法に対しては肯定的ではありません。やはり多くの場で議論されている通り、そしてアンパイアが宣告した通り、ヒットを打ちに行かずに投手の球数を増やすことを目的にカットしていくというのは、スポーツマンシップからは逸脱し、フェアではないと思うからです。

投手だけではなく、打者にも球数制限を

高校野球のローカルルールでは、カット打法だとアンパイアが判断した際、警告をしてもまだカット打法を続けた場合、アンパイアはスリーバントを宣告することができるんです。このルールはけっこう昔から存在しているものだったと思うんですが、良いルールだと思います。恐らく数年前にカット打法で有名になった高校球児は、このルールの存在を知らなかったのではないでしょうか?

投手の球数制限が議論される際、必ず机上に乗るのがカット打法なわけですが、投手に球数制限を設けるのなら、打者にもファール制限を設けてもいいと思います。例えば8球ファールになったらスリーバント失敗と同じ扱いにする、という感じで。仮に8球という制限が打者にもあるのなら、投手の球数を増やすためだけのカット打法を戦術として採用する選手もいなくなると思います。

1イニング15球以内が投手の理想

相手投手を疲れさせることは、戦略としては非常に大きなウェイトを持っています。でも球数を投げさせるためにカットし続けるというのは、やはり違うと思います。投手を疲れさせたいのであれば、走者が常に盗塁の仕草を見せたり、打者がセーフティバントの構えを見せて投球後に投手を軽く走らせたり、そのような攻撃に繋がる可能性のある戦術であればフェアなやり方だと思います。

投手の1イニングあたりの理想の投球数は15球です。仮に3ボールで8球ファールで粘られることがあると、それだけで11球になってしまいます。1人の打者に10球以上投げてしまうと、6回90球、7回100球ちょっとという目安がどんどん崩れていってしまいます。連打を打たれたり、四球で自滅しているのならば球数が増えても文句は言えませんが、しかしストライクゾーンの打てるボールをファールエリアに打ち続ける行為は、やはり戦術としてはちょっと姑息かなと感じてしまいます。

カット打法は攻撃という扱いにはならない

そもそもカット打法ができるということは、ある程度のバッティングスキルはあるということであり、フェアゾーンに打ちたくてもファールにしかならないという状況とは異なります。投手のボールが力強くてなかなかフェアゾーンに飛ばせない状況であれば仕方ありませんが、しかし平均的なストライクゾーンのストレートでファールを打ち続けるというのは、これはもはやヒッティングと呼ぶことはできなくなります。

打者の目的は攻撃です。つまりヒットを打ったり、ヒットにならなかったとしても走者を次の塁に進めるバッティングが打者の目的のはずです。しかし投手に球数を投げさせるためのカット打法は攻撃にはなりません。何十球カットしてファールを打ったとしても、走者は次の塁には絶対に進めませんし、得点する機会を拡大させることもできません。例え走者が盗塁をしたとしても、ファールになった時点で走者は前の塁に戻らなければなりませんので。ですのでやはりカット打法というのは上述したルールの存在からも、採用してもいい戦術とは言えないと思います。

2009年1月以降、1350人以上のマンツーマンコーチングを僕はしてきた訳ですが、ここまで経験してくると、上達できる選手とできない選手を初見で比較的かんたんに見極められるようになります。そして「この選手は上達しにくいかもしれない」と判断した場合は、より注意深くケアをしたりします。では上達できる選手とできない選手の差とは?

上達できる選手の特徴

まず上達できる選手は、コーチング開始時間の20〜30分前に来てウォーミングアップをして、体がしっかりと動く状態を作ってからコーチング開始時間を迎えています。これは季節は関係ありません。寒くないからウォームアップはしなくても大丈夫、という理屈はありません。寒かろうが暑かろうがしっかりとウォームアップをして、筋温を上げて、関節がよく動く状態にしておく必要があります。学校の体育の授業でも、ウォームアップをせずに授業に入っていくということはまずあり得ないと思います。それと同じなんです。ですが上達できない選手の大半は時間ギリギリ、もしくは少し遅れて来て、いきなり投げ始めたり打ち始めたりしてしまいます。しかしウォームアップをせずに、体がフレキシブルになっていない状態では、良い動作を取ることはできません。

そして上達できる選手は、難しい技術を習得するための方法を考えることに時間を割きます。例えばできない状態で同じ動作をただ繰り返すのではなく、「今の動作はどうでしたか?」と頻繁に僕に聞くことによって、自分で思い描いている動作と、実際の動作を擦り合わせていきます。もちろん聞かれなくても僕から選手には伝えるのですが、それでも上達できる選手というのは、僕が伝える以上に能動的に聞いてきます。

上達できない選手の特徴

一方上達できない選手の特徴としては、できない言い訳を探すのが上手、という点があります。仕事や学校が忙しい、練習する場所がない、練習する時間がない、できているのか自分ではわからない、などなど。そして何よりも、コーチが伝えたことを正しく記憶していないケースが非常に多いんです。正しい動作が頭に入っていなければ、仮に毎日何時間も練習したとしてもその動作をできるようにはなりません。重要なのは練習した回数ではなく、質なのです。練習の質が良ければ、難しい動作であっても必ずできるようになります。

そしてすぐにできるようにならない動作をやりたがらない、という傾向もあります。コーチとしては、正しい動作ができていないからやるように伝えるわけですが、少しでも難しく感じるとその動作に対してすぐに前向きではなくなってしまう選手というのは、上達速度が上がらない傾向にあります。そして1つ1つの動作に於いて、あまり考えずに動いている選手も多いようです。何も考えずに練習しても上手くなることはありません。

上達できない練習を続けても意味がない

できない動作をできないままにしていては、いつまで経っても上達することはありません。ですのでできない動作は、どうすればできるようになるのかを考えていく必要があります。例えば体が硬くてできないのなら、ストレッチングの時間を今までの2倍に増やしてみたり、動き方を具体的にイメージできない場合は、そのイメージが明確になるようにコーチに質問をしてみたりビデオを撮ってみたり、何回繰り返してもできるようにならなければ練習方法を再考してみたり。

とにかく、いくら練習をしてもできるようにならなければ、その練習方法を正しいと言うことはできません。上達できる選手というのは、上達できない練習をいつまでも続けることをしませんし、ある動作がいつまで経ってもできないようなら、コーチになぜできないのかをチェックしてもらったり、自ら取り組み方を変えてみたりと、変化をつけることができます。

一方上達できない選手は、小学生であっても大人であっても、できるようにならない練習をいつまでも飽きるまで続けてしまう傾向があります。しかしこのやり方はまさに不正解ですので、3日間一生懸命練習してもまったくできるようにならなければ、練習内容に変化をつけるように工夫してみてください。基本中の基本動作を除けば、変化をつけられる練習メニューがほとんどだと思います。ですのでまずは正しい動作を記憶(もしくはメモ)しているかどうかを確認し、その上で上達できない練習メニューに変化をつけるように工夫をしてみてください。そうすれば少なくとも、仮にまだできるようにならなかったとしても、違う結果が出てくるはずです。その様々な結果を増やすことができると、改善方法も見つけやすくなります。ですのでぜひこのやり方を試してみてください。

2019年の後半戦、MLBと提携しているアメリカの独立リーグが革新的なルール変更を行うことになりました。それは打者走者の一塁への盗塁。今までは2ストライク後のみ振り逃げができるというルールでしたが、このルール変更が行われると、カウントに関係なく打者走者は一塁を狙えるようになります。

いくつもの弊害も予想できる一塁への盗塁

このルール変更が吉と出るか凶と出るかはやってみなければわかりません。挑戦する前から否定的な意見でチャレンジを妨げることはすべきではないと思います。でも確かに予想できる弊害は少なくありません。例えばパスボールやワイルドピッチは、これまでは基本的には走者がいなければそれほどケアする必要はありませんでしたが、今後は振り逃げができるカウント以外でもケアする必要があり、思い切って変化球を投げることが難しくなる可能性があります。

また、3フットラインの存在も再考が必要かもしれません。パスボールなどで一塁への盗塁をする場合、ファールエリアから一塁にボールが転送されるケースが多くなります。すると走者が仮に3フットラインを走ってしまうと、一塁手からすると送球と打者走者が重なるケースも多くなり、これはコリジョンルールの概念とは逆を行ってしまう形になります。

一塁に盗塁をすると打数はどうなるのか?!

さらに考えていくと、仮に打者走者が途中で盗塁を諦めた場合はどうなるのでしょうか?二盗であれば、一塁走者は一塁ベースに戻ることができます。しかし一塁への盗塁の場合、打者走者はホームプレートに帰塁することになるのでしょうか?それとも一度盗塁を企画したら、一塁ベース以外を目指すことはできなくなるのでしょうか。仮に振り逃げとまったく同じルールになるのであれば、打者走者はもう一塁ベースに向かって走るしかなくなるのでしょう。

しかし振り逃げと同じルールであるならば、一塁に盗塁すれば盗塁は記録されるのかもしれませんが、しかし記録上は三振になってしまうのでしょうか。それとも打数としては数えないのでしょうか。疑問として思い浮かぶことはこのように多々あるわけですが、でも新しいことにチャレンジすることは素晴らしいことだと思います。チャレンジしてみてイマイチだったら廃止してしまえば良いと思います。

デメリットばかりではない一塁盗塁という新ルール

しかし一塁への盗塁はデメリットばかりではないと思います。バッテリーは今まで以上にワイルドピッチやパスボールをケアしなければならないため、投球技術や捕球技術を今まで以上に向上させようとするでしょう。そして向上すれば一塁への盗塁を阻止できるだけではなく、すでに塁上にいる走者を無駄に進塁させるケースも減っていきます。

近年はバッターの進化ばかりがクローズアップされていますが、この新しいルールによってバッテリーも進化していくことができるのならば、このルールは決してデメリットばかりではないと言い切ることができます。例えばボールの回転方向を考えずにワイルドピッチを捕球しに行っていた捕手も、今後は回転の違いによるバウンド方向の変化もしっかり考えた上で捕球姿勢を作っていくようになるかもしれません。あまり好意的には受け止められていないこの新ルールですが、僕個人としてはとりあえず試してみる価値はあると思っています。

日本の野球部やクラブチームには、今だに不可解な指導が根付いているようです。例えば「上から叩け」「しっかりと体重移動をしろ」という前時代的なことを教え、さらにその指導に従わないと試合では使わないというケースも多々あるようです。当野球塾の受講生の中にも、そのような経験をしている選手は少なくありません。


まず上から叩けという指導は、これは軟式球がよく弾んでいた時代のやり方です。大学軟式野球では10数年前までは、上から叩いて高いバウンドのゴロを打って内野安打を稼ぐ、という戦法が通用していました。その時代の軟式球で大学生のパワーであれば、なかなか落ちてこない高いバウンドのボールを打つことができたからです。

しかし小中学生の力で上から叩いたところで、そこまで高いバウンドのボールを打つことはできません。ましてやJ号やM号はほとんどバウンドしませんので、叩きつけたところで高いバウンドのゴロを打つことは大人でも難しいと思います。それでも今日現在、今だに上から叩けと教え続けている監督・コーチが数え切れないほどいらっしゃいます。野球の勉強をまったくされていないのでしょう。

体重移動に関しても、体重移動をして打てば、ジャストミートできれば打球を遠くまで飛ばすことができます。ですが体重移動をしてしまうとジャストミートすることそのものが困難になりますので、当たれば飛ぶけどほとんど当たらない、という状況に陥ってしまいます。仮に「上から叩け」と「体重移動をしろ」という指導がセットになってしまうと、これはもうほとんど、選手にヒットを打たせないように指導している、としか言いようがありません。

塾生の中にも、僕からのコーチングによって体重移動をしない打ち方をマスターし、シーズンで3〜4割の打率を残せるようになったのに、その後チームの指導者から体重移動を強要され、まったく打てなくなってしまった、という選手が数名います。これは本当に悲しい出来事です。指導者が無知な故に、子どもたちの上達を阻害してしまっているのですから。

時代は間もなく令和に変わろうとしています。しかしほとんどの野球指導者の頭の中は、今だに昭和のままです。もしチームで今だに「上から叩け」「体重移動をしろ」と教わっている場合は、一度お近くの野球塾の門を叩き、現代の最新バッティング技術を学んだ方が良いと思います。技術のシフトチェンジは、成長すればするほど難しくなります。ですので正しいバッティングスキルは、小学生のうちにしっかりと身に付けておくことがベストです。しかし頭の中が昭和の指導者は、小学生チームに最も多いんです。ボランティアコーチでは仕方ないのかもしれませんが。

現代の最新バッティングスキルを身に付けたいという方は、ぜひお近くのマンツーマン指導の野球塾を探して足を運んでみてください。コーチングによってお金を得ているコーチであれば、すべての種類の最新野球スキルを学んでいるはずです。日本では今だに野球指導を受けるのにお金を払うことを良しとしない方が多いのですが、アメリカの少年野球ではまったく普通のことなんです。

アメリカのリトルリーグには、チームに1人、必ずリトルリーグ連盟からプロコーチが派遣されています。チーム練習でうまくいかなかった場合、もしくはチームメイトよりももっと上手くなりたい場合、お金を払うとチーム練習後にそのプロコーチのマンツーマンレッスンを受けることができるんです。小学生チームだけを見ても、このように日本はアメリカよりも20〜30年は遅れをとっているように、僕の目には映っています。

今年の選抜大会、習志野高校vs星稜の試合で、サイン盗みが大きな話題となりました。結論から言って、僕は流石にサイン盗みはなかったのではと考えています。大会ガイドラインにはもちろん記されていて、全チーム大会前に目を通しているはずです。そして99年以降、サイン盗みや紛らわしい動作は行わない、というガイドラインは高校野球では常識になっているはずです。しかも全国中継されている甲子園です。このような状況でサイン盗みは流石にしないのではないでしょうか。


星稜の監督さんは「証拠のビデオがある」と仰っていましたが、証拠があるのであれば提示すべきでしょう。今後その証拠を提示するのか、それとも穏便に事を収めるのかは現段階では何とも言えません。しかし本当に証拠能力のある証拠ビデオをお持ちなのであれば、これは習志野高校のスポーツマンシップに関わる大問題となり、この試合の習志野高校の勝利の価値もなくなってしまうというものです。ですので本当に習志野高校がガイドラインを破ったという証拠があるのであれば、習志野高校は然るべき処分を受けるべきですので、そのビデオを然るべき場所に提出すべきだと思います。

星稜の監督さんは、審判が協議した4回以降も習志野高校がサイン盗みを続けていたと仰っていますが、しかし審判団は二塁走者に注視した4回以降、疑わしい動きは見られなかったと断言しています。二塁走者の動きに関しては、きっと各テレビ局が徹底検証すると思いますので、そちらにお任せしたいと思います。

サイン盗みであったり、審判がジャッジをする前にベースコーチがセーフのジェスチャーをすることは、ガイドラインで禁止されています。ただ、厳密にルール化されているわけではありませんので、破ったとしても審判に口頭で注意される程度だと思います。

星稜の監督さんはしきりに習志野高校がサイン盗みを続けていたと仰っていますが、やはり僕は行なっていなかったと思います。疑わしい動きがあったとすれば、攻撃側でサイン確認を行っている際に、二塁走者が何らかの形で「了解」のサインを出し、それがサイン盗みを行なっていると思われてしまったのではないでしょうか。もちろん憶測でしかないわけですが、最も可能性の高い例としては十分考えられることだと思います。

さて、今回の出来事で僕の記憶に最も強く残ったのは、審判団がこの件について会見をした際、審判団が「星稜側から特別な要望が出ていない現段階ではサイン盗みはなかったというのが最終判断」と言った際、ある記者の「(再検証を)今までやったことがないからといって、ほったらかしにするんですか?」という言葉です。スポーツ担当記者のくせに、スポーツマンシップの欠片もない記者だなぁとガッカリしてしまいました。
イチロー選手が引退される日がついにやってきてしまいました。僕自身大好きな選手で、コーチになって以来、ずっとイチロー選手の打撃フォームや送球フォームの動作解析を続けてきました。ですが僕のコーチングの受講生たちにはいつも「イチロー選手の打撃モーションは真似しない方がいい」と言い続けてきました。

イチロー選手のモーションは非常に難易度が高いんです。イチロー選手のようなフォームで打つことはできても、普通の野球選手にはイチロー選手のようなモーションで打つことは難しくてできないと思います。体の柔軟性、幅広く使いこなせる筋肉、抜群の動体視力と鍛え抜かれた反射神経。それらがなければイチロー選手のモーションを真似することはできません。

背番号51は、きっと近い将来マリナーズの永久欠番になるのでしょう。ちなみにマリナーズで51番を背負った選手は2人しかいません。イチロー選手とランディ・ジョンソン投手です。

仮に、もし昨年も1年間プレーし続けていたら、もう少し長く現役を続けられたかもしれませんね。やはりほぼ1年間試合に出ないというブランクは、プロ選手にとってはまさに致命的だったと思います。生きたボールを打つための勘が鈍ってしまったのだろうなと、この春のイチロー選手のバッティングを見ていて僕はそう感じていました。

風邪をひいて1日休んだら、完全に元に戻すまでには3日はかかると言われているのがスポーツ選手です。でもイチロー選手は1日どころか、1年間試合に出ることができませんでした。決して体が衰えたわけではなく、打席で投手のボールを捕らえるための勘や感覚を元に戻せなかったのだと思います。体の衰えを引退の理由として語っている解説者の方も多くいらっしゃいますが、イチロー選手の体は30歳前後の一般的なプロ野球選手よりも、なお良い状態を維持できています。

個人的にはやはり51歳までプレーして欲しかった。でもイチロー選手の頭の中には、マイナー調整や日本復帰という言葉は一切なかったようです。僕はこのイチロー選手の哲学が好きです。一番上まで上り詰めたら、もう難易度を下げてまで野球を続けたくはないというプライド。

仮にイチロー選手が日本球界に復帰したら、打率3割前後は普通に打っていたと思います。日本人投手の平均球速はこの20年でほとんど変わっていません。しかしメジャーリーガーの平均球速は20年前と比べると10kph以上アップしているんです。目に見えた進化を続けているメジャーリーグと、明確に捉えられる大幅な進歩をあまり遂げていない日本のプロ野球。例えば高校球児が中学生チームに戻ってプレーをしたとしても、まったく面白くないわけです。高校生になったら大学野球やプロ野球を目指してこそ野球を本当の意味で楽しむことができます。

美学は人それぞれですが、僕は決して階段を降りなかったイチロー選手の哲学が本当に好きです。

僕がイチロー選手を初めて生で見たのは、西武ドームで初めて松坂大輔投手と対戦したあの伝説の試合でした。僕もその時西武ドームにいました。そして二度目はセーフコフィールド(現T-モバイルパーク)でした。

イチロー選手のバットを苦労して入手し、そのバットの研究をした日々が懐かしく感じられます。普通イチロー選手のバットをもらったら宝物にすると思うのですが、僕は自分で使うことによってそのバットの研究をすることにしました。コーチとしてのサガですね。今まで数え切れないほどのバットを試してきましたが、イチロー選手のバットほど芯が細いバットは振ったことがありませんでした。あのバットだからこそ、あの細身の体で軽々とスタンドインさせることができていたのだと思います。

バット1本取っても、イチロー選手のバットは普通の選手には使いこなすことは難しいと思います。イチロー選手のバットは篠塚選手のバットがベースになっているそうですが、非常に取っつきにくい性格を持ったバットなのですが、でも一度懐いてくれると完全な親友になれるタイプのバットです。ピアノでいうとYAMAHAではなく、Steinwayがまさにイチロー選手のバットのような性格を持っています。

イチロー選手のモーションは中途半端に真似すべきではないと冒頭で書きました。しかしイチロー選手の野球道具の扱い方に関しては、プロアマ問わず、すべての野球選手に見習って欲しいと僕は思っています。

イチロー選手、今まで本当にお疲れ様でした。そしてたくさんの感動をありがとうございました!!

WBCでの敗戦後、ダッグアウトで悔しさを隠すことなく吠えたイチロー選手の姿を、僕は生涯忘れないと思います。

今回のスラッガー養成コラムでは、バットそのものについて少しだけ解説してみたいと思います。皆さんはどれくらいバット用語をご存知でしょうか?意外と知らないバット用語もあると思いますので、ぜひこの機会に正しいバット用語を覚えてみてください。


まずバットには主に木製バット、バンブーバット(竹)、ラミバット(竹+メイプル)、金属バットという種類があります。試合で使うのは主に木製バットか金属バットではないでしょうか。木製バット以外はバットの全面を使ってヒッティングすることができますが、木製バットに関しては柾目(まさめ)しか使うことはできません。

木製バットで、木目の目がある面とその反対側の面で打ってしまうと、飛ばない上にバットがすぐに折れてしまうので注意が必要です。木製バットは必ず板目にメーカーのロゴが入っていますので、ロゴの面とその反対側の面は使わないようにする、と覚えておけばオーケーです。木製バットはそれ以外の柾目の2面を使うとしなるようになり飛距離がアップし、バットが折れることもほとんどなくなります。

続いてバレル。これはバットの一番太い部分一帯を指します。バレルの、ある1ポイントをスウィートスポットと呼び、そこで打つことで飛距離を伸ばせるようになります。スウィートスポットはバットによって少しずつ場所が違いますので、新しいバットを手にしたらまずバレルのどこにスウィートスポットがあるかを確認しておく必要があります。そうしなければ意図的にジャストミートさせることができなくなります。

木製バットの場合は上述の通り、スウィートスポットはバレルの柾目2面にしか存在しません。そしてスウィートスポットは芯と混同されることもありますが、バットの芯は鉛筆の芯と同じような形状で存在していると思ってください。金属バットの場合は中は空洞になっていますが、木製バットの場合は鉛筆の芯と同じイメージで大丈夫です。

そしてその芯ですが、芯が太いバットと細いバットが存在しています。芯が細いバットを使っている選手はほとんどおらず、プロの現役選手ではイチロー選手を含め数人なのではないでしょうか。芯の細いバットはジャストミートさせるのが難しくなるのですが、バットの扱い方が上手くなればなるほど、思い通りの打球を飛ばせるようになります。

しかし打撃技術の低い選手が芯の細いバットを使ってしまうと、ジャストミートしたつもりでも実際にはそうではないケースが増え、打率は下がってしまいます。そのためプロでも芯の細いバットを使う選手は僅かしかいないのです。

続いてはノブ。日本ではグリップエンドと呼ばれることもありますが、正式にはノブと言います。ドアノブのような形をしているためそう呼ばれます。ノブにもいくつかの形状があり、昔はツチノコバットという、ノブが異様に大きい特殊なバットも存在していました。今ではツチノコバットはオーダーをしないと入手できないと思います。

ちなみにグリップエンドというのは、グリップの一番ノブ寄りのところを指します。このクリップエンドもタイカッブタイプ(=フレアタイプ)などいくつかの形状があり、タイカッブタイプだとバットが扱いやすくなり、手首を故障しにくいという利点があります。

また、バットにはトップバランス、ミドルバランス、カウンターバランスの3種類があり、飛距離を伸ばしたければトップバランス、振りやすさを求めるならばミドルバランスという選び方をします。カウンターバランスに関してはほとんど選択肢はないと思いますが、バットの重心がグリップ寄りになる分振りやすくはなりますが、力強いヒッティングはしにくくなります。通常は重心がヘッド寄りにあるトップバランスか、真ん中寄りにあるミドルバランスからの選択になると思います。

そして最後にプラグ。これは金属バット特有の部品であるわけですが、バットのヘッドにはめ込まれているプラスティックのキャップのことです。プラグがない金属バットもありますが、プラグ付の場合、プラグの形状によってもバットの振り抜き感が変わってきます。

さぁ、みなさんはこれらバット用語をいくつご存知だったでしょうか?次バットを新調する際は、これらの用語を使って店員さんに相談をしてみると、「この人はなかなかのバット通だ!」と思ってもらえること間違いなしです!

突然ですが、わたしは甲子園大会というものがあまり好きではありません。もちろん甲子園を目指している球児を見ていると胸が熱くなりますし、試合を観ていてもどちらのチームも応援してしまいます。しかし甲子園大会というものに関しては好きではないのです。


まず一番の理由は女子選手がグラウンドに立つことが許されていないためです。例え男子よりも野球が上手な女子高校生がいたとしても、女子というだけで甲子園のグラウンドに立つことができないのです。これを性差別と言わずになんと言えば良いのでしょうか。ちなみにアメリカでは今年、女子プロ野球選手が男子プロ野球の試合に登板し勝ち投手になっています。もしアメリカで日本のように女子禁制などという馬鹿げたルールが存在していれば、間違いなく大きな問題になっているでしょう。

そして甲子園は、わたしは先日知り合いに教えてもらうまで知らなかったのですがサングラスの着用も禁止なのだそうです。これには驚きました!サングラスの着用を禁止する意味をまったく想像できません。「プロの真似事をして格好つけるな」とでも言いたいのでしょうか?

紫外線というのは、大半は角膜や水晶体で吸収されるのですが、2%程度は裸眼ではどうしても網膜まで到達してしまうのです。そしてこの紫外線が網膜を刺激し続けてしまうと白内障や角膜炎、翼状片を引き起こしてしまいます。夏の日差しはもちろん厳しいものになります。つまり真夏に裸眼で紫外線を浴び続けると、それだけ目の不調を引き起こしやすくなるのです。特に未成年の眼球は大人よりも弱いので、強い紫外線を浴び続ければ成長につれ目の不調も訴えやすくなり、視力の低下も早めてしまいます。

わたしのコーチングを受けていらっしゃる方であればご存知だと思いますが、わたしは日中の屋外ではほとんどずっとサングラスを着用しています。ちなみに愛用しているのはRay Banのアビエーター偏光レンズのサングラスです。紫外線を99.9%カットしてくれるので目も安心ですし、逆光でキャッチボールをしていても眩しくてボールが見えなくなる、ということもありません。わたしは普段から目の筋肉のトレーニングも毎日行なっているのですが、そのトレーニングとサングラスの効果もあり、今39歳ですが視力は未だにメガネ屋さんで測れるマックスです!

野球というスポーツは、高速で動く直径7センチ程度の小さなボールを追い駆けなければならないスポーツです。つまり他競技よりも遥かに視力の重要性は高いはずなのです。それなのに甲子園ではサングラスの着用が認められていません。これはなぜなのでしょうか?

夏の甲子園大会というのは、野球の本場アメリカでもごくごくたまに報道されます。しかしその内容は感動のドラマを伝えるものではなく、「炎天下で一人のピッチャーに100球も150球も投げさせて、これは虐待なのではないか?教育とは程遠い」といったニュアンスのものが多いんです。

予選を含めた甲子園大会は、選手を使い切る場になっては絶対にダメなのです。高校野球は選手を完成させる場でもなければ、監督が日本一を目指すと口にして良い場でもないはずです。「目指せ甲子園!」「目指せ日本一!」と口にして良いのは選手だけです。監督はあくまでも教育者という立場を貫くべきです。

そう考えると坊主頭厳守というのも可笑しな話です。教育者が選手たちをしっかり教育することができれば、坊主頭厳守にしなくても選手たちは清潔感のある髪型を維持するはずです。今時自衛隊ですら坊主頭厳守ではありません。もちろんサバイバル活動が必要なため坊主頭が利便的には良く、坊主頭の自衛隊員は多いわけですが、しかし隊や階級によっては坊主ではない自衛隊員も多くいます。

そもそも坊主頭が嫌で野球部に入らないという高校生が多いことを、高野連はどう捉えているのでしょうか?野球人口の減少に歯止めが利かないと皆さん口々に仰っていますが、高校野球がこのような時代錯誤なことをし続けていれば、それも当然だとしかわたしには思えないわけです。

甲子園大会の現状は、間違いなく若い選手の将来を多く奪ってしまっています。甲子園で活躍した投手たちで、プロ入り後もほとんど肩肘を痛めることなく投げ続けられている投手は果たして何人いるでしょうか?

選手として完成させるべきタイミングは、プロ入り数年後です。しかし日本の場合はそれぞれの年代で選手を完成させようとしてしまい、体に無理が生じ、その結果プロ入り後に伸びない選手が多くいるんです。学生野球の指導者は、決して選手を完成させようとしてはいけないし、それ以前に選手の体を守る義務があります。

ですが上述した通り、甲子園大会は選手を守るどころか、選手を酷使してばかりです。例えば夏の甲子園を8月ではなく、9月に行うだけでも現状は大きく変わるはずです。しかし日本の野球界はプロアマ問わず限りなく保守的です。常にトライ&エラーを繰り返し進化し続けようとするアメリカ球界とは似ても似つきません。

実はこのような理由もあり、わたしは2018年4月からはコーチングの拠点をアメリカに移す決意をしたわけなのです。来年以降は現在契約中のメジャーリーガーを中心にし、アメリカと中米のプロアマのパーソナルコーチングを行なっていきます。日本のトッププレイヤーがメジャーリーグを目指す心境とほとんど同じだと思っています。向上心のある野球界で、向上心の塊のようなハングリー精神旺盛な選手たちと一緒に仕事をしたいのです。