2017年01月13日
投手が体重を増やそうと考えた時に必要な注意点の数々
- 投手は体重を増やしすぎると股関節がタイトになり手投げになる?!
- 体重を増やすなら体脂肪率は増やさず、体の柔軟性維持が最優先!
- 体格に頼ったプレーを続ける限り、世界で通用する選手になれない?!
投手が筋肉量を増やすことには賛否両論ありますが、当野球塾では増やしすぎることには大きなメリットはないと考えています。筋肉トレーニングは確かに必要です。しかし筋肉量によってパフォーマンスをアップさせようとする考え方は、怪我に繋がる可能性が高くなると考えているため、そのようなコーチングは行なっておりません。
筋肉量を増やすと、確かに筋出力が高まり大きなパワーを発揮できるようになります。しかしいくら腕を鍛えて太くしたところで、150km/h以上のボールを投げる際の手部が移動する速度は速くても110km/h程度なのです。つまり「腕を全力で振る」という動作も、球速アップにはそれほど大きな影響はないというわけです。
球速アップは、あくまでも投球動作の技術によって行われます。腕力をつければ確かに見た目の初速はアップしますが、腕力投げではボールの回転数を増やすことはできないため、初速と終速の差が大きくなり、打者からすると初速がどんなに速くても失速する分、打ちやすいボールになってしまいます。
逆に投球動作の技術によって球速をアップさせられれば初速と終速の差はほとんど生じず、打者の手元で伸びる空振りを取れるストレートを投げられるようになります。
近年はプロ野球選手であっても技術以前に、体重を100kg以上にして腕力で球速をアップさせようとする選手が増えています。もちろん投球動作の高い技術を持っていれば話は別です。ですが技術なしにただ筋出力を高めるためだけに筋肉を増やし、必要以上に体重を増やしてしまうと、その重さによって股関節がタイトになってしまいます。
股関節がタイトになり動かしにくくなれば、当然肩肘を使って投げるしかなくなってしまいます。つまり手投げ、上半身投げと呼ばれる投げ方ですね。これでは根本的にパフォーマンスをアップさせることはできません。
股関節というのは上半身と下半身のつなぎ目であり、股関節の動きが悪ければ下半身で作り出したエネルギーを上半身に伝えることができず、結局は手投げになってしまうのです。
ですので筋トレによって体重を増やす際は、とにかく股関節の可動性を低下させないように気をつけてください。そもそも股関節は、トレーニングをしていない一般的な方の体重であってもタイトになってしまうんです。それが体重100kgともなれば、股関節への加重は想像以上に大きくなり、下半身と上半身のキネティックチェインを阻害する結果となってしまいます。
150km/h以上のボールは、体重70kgの投手でも投げることができるんです。楽天イーグルスの岸孝之投手や、西武ライオンズで活躍された西口文也投手は非常に細身の投手ですが、150km/hを超えるボールを投げることができます。若い選手で言えば今季からライオンズに加入した今井達也投手も細身ですが150km/h以上のボールを投げられる技術を持った投手です。
体重という意味では、野球ほど体脂肪率が高い選手が多いスポーツは珍しいのではないでしょうか。特に中学・高校野球の一部では、監督の指示でとにかく炭水化物をたくさん食べさせられるチームがあり、そのようなチームの選手は確かに体は大きくなるかもしれませんが、体脂肪率が高く怪我をしやすい状況が見受けられます。
体脂肪は筋肉よりも柔軟性がないため、スポーツのパフォーマンスに対してはほとんど好影響はありません。それどころか柔軟性が低い分体の可動性が低下し、怪我に繋がってしまうことも多々あります。そして無駄な体脂肪が多いほど股関節が硬くなりやすく、さらには膝への負担が大きくなってしまいます。
ですので、無闇に体重を増やすようなことはアスリートはプロアマ問わず避けるべきなのです。体重を増やすのであれば、まずは関節の可動性を確保し、その上で体脂肪率を増やさずに体重を増やすことが大切です。アマチュア野球がいつまでも体格に頼った野球をしている限り、日本の打者がメジャーリーグで普通に通用するようになる日はやってこないのではないでしょうか。
プロサッカー選手の長友佑都選手などは、ヨガにより体の柔軟性を維持した状態で体脂肪率の低い体づくりを行なっている選手です。野球選手と野球指導者は、もっとサッカー選手などの先進的な理論を実践している多種目を大いに参考にすべきだと当野球塾では考えています。



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