近年、「プロ野球選手がみんなやっているから正しい」という魔法の言葉を使って選手を納得させるコーチやトレーナーが非常に多い印象です。実際僕の生徒さんの中にも、プロトレーナーやプロコーチから同じ言葉を言われたという選手が多数います。しかし「プロ野球選手がみんなやっている」=「正しい」という図式はまったく成り立ちません。
僕の投球フォーム指導法は、マスターすればパフォーマンスが上がるだけではなく、肩肘の怪我を減らすこともできます。これは医学的にも解剖学的にも正しい動作であり、野球選手を専門的に診ているスポーツ整形外科の先生やPTさんたち、柔道整復師のみなさんからもお墨付きをいただいています。
その指導法に関しては僕が監修しているビデオ『野球肩野球肘予防改善法・徹底解説ビデオ』をご覧いただければお分かりいただけるかと思いますが、今プロで活躍している選手たちの多くは、野球動作を科学的に理解していないコーチたちの指導を受けてきたわけです。
例えば僕の場合、トップポジションに関しては内旋型トップポジションではなく、外旋型トップポジションを推奨し指導しています。内旋型トップポジションは肘の内側を怪我しやすく、肩にも負担がかかります。一方外旋型トップポジションで投げられれば、肩肘への負荷を高めることなく投げ続けることができます。
と言ってももちろん、常識外の球数を投げたり、疲労した状態で投げてしまえばどんなフォームだったとしても肩肘を痛めてしまいます。しかし常識内の球数や、極度の疲労状態で投げているわけではない場合、正しい形の外旋型トップポジションから投げられれば、まず肩肘を痛めることはなくなります。
これは僕が勝手に推奨している理論というわけではなく、人間の体の構造上、解剖学的に唯一の正しい投げ方となります。僕はプロコーチとして、理論を伝えられないことは絶対に選手たちに伝えることはしません。ですので「プロ野球選手たちもみんなそうしている」という説明で終わってしまう指導をすることも絶対にありません。
近年、高校生の生徒さんからちょくちょく言われることなのですが、高校の野球部で見てくれているプロトレーナーに、僕が指導した外旋型トップポジションだと肩肘を痛めやすいと言われた選手が複数人いるんです。
ちなみに肩を痛めやすいと言われただけで、なぜ痛めやすいのかという理論の説明は受けていない選手ばかりです。そして言われたことと言えば共通して「プロ野球選手はみんなこの形(内旋型トップポジション)から投げている」という説明だけだったそうです。
確かにその通りです。プロ野球選手のほとんどは内旋型トップポジションから投げています。これは確かな事実です。でもよく考えてみてください。毎年、一体何人のプロ野球選手たちが肩肘を痛めていますか?もし内旋型トップポジションが肩肘に負荷のかからない正しい投げ方なのだとすれば、プロ野球選手たちが肩肘を痛めることなど決してないはずです。
しかし12球団を見渡してみると、同年で1球団で4人も5人も肘の手術(トミージョン手術、TJ手術)を受けていたりします。「プロ野球選手がみんなそうしているから正しい」という論拠に乏しい指導をしているコーチ・トレーナーは、果たしてこの事実をどう考えているのでしょうか?とても気になるところです。
僕のレッスンを受けてくださっている選手の皆さんは僕のレッスンにより、「なぜ肩肘を痛めるのか?」「どうすれば痛めなくなるのか?」という点をしっかりと理解してくれていると思います。もちろん肩肘を痛めない投球フォームの習得には個々それぞれの時間がかかるわけですが、習得・未習得を別にすれば、どうすれば肩肘を痛めずに投げられるのかということを、小学生であっても理解してくれています。
プロコーチやプロトレーナーは「プロ野球選手がそうしているから正しい」と選手に伝えるのではなく、もっと解剖学的・医学的根拠に基づいて指導をすべきです。少年野球のボランティアコーチの方々にそこまで求めることはできませんが、しかしプロを名乗っているコーチやトレーナーであれば、そこまで学ぶことは義務だと思います。
コラム:野球肘とは?|内旋型トップポジションが野球肘を生み出す!
一般的な整形外科の先生は筋肉や体の仕組みや治療法に関してはまさにプロフェッショナルです。お医者さんの医学的知見には僕らは太刀打ちできません。PTさんや柔道整復師の方々であっても、体の仕組み、リハビリ方法、コンディショニング法に関してはしっかり勉強されています。それぞれ国家資格ですからね。
でも「怪我をしにくい野球のフォーム」となると話は別です。もちろん野球を専門にされているスポーツ整形の先生などはフォームまでしっかりと勉強されているケースもありますが、そのような外科の先生は日本には数えるほどしかいらっしゃいません。そのため僕のようなコーチがお医者さん、PTさん、柔道整復師の方々に、肩肘を痛めにくいフォームの指導法のレクチャーを行なっているわけです。
僕のようなプロフェッショナルコーチは、医学的知見はそこそこしかありません。例えばお医者さんが使う専門用語をある程度理解していたり、レントゲン写真を見て異常を読み取る程度のことしかできません。ですが肩肘を痛めない理論的なフォームの指導や、痛めてしまった理由の解明に関してはプロフェッショナルです。このあたりに関しては僕はお医者さんにさえ絶対に負けることはありません。もちろんこの点だけですが。。。
「プロ野球選手がそうしているから正しい」という指導法は、これはプロコーチやプロトレーナーが行って良い指導法ではありません。これは週刊ベースボールで連続写真を見てフォームを学んでいるボランティアコーチの指導法です。ボランティアコーチであれば「プロ野球選手はみんなそうしている」という指導法が限界だとも言えますし、そうすることでしか説得力を増すことは難しいのかもしれません。
しかしプロコーチ・プロトレーナーであれば、やはり一冊1〜2万円、安くても一冊5,000円程度する野球肩野球肘に関する医学書を開き、プロ野球選手たちのどの動作が正しくて、どの動作が誤りなのかを理論的に学び、分かりやすく選手たちに伝える技術が必要です。
ハッキリ言って医学書は本当に高いです。都内であれば新宿の紀伊國屋、池袋のジュンク堂などに行くと医学書がズラッと並んでいるわけですが、安い医学書というものは存在しません。週刊ベースボールよりもページ数が少ないスポーツ医学の月刊誌であっても3,000円くらいします。
ですがプロコーチ、プロトレーナーであればそこに投資しなければどんどん時代に取り残されてしまいます。ちなみに野球技術に関しては常にアメリカから日本に入ってくるという順序のため、英語をある程度理解できれば、最新の野球技術に関する論文もチェックできるようになります。
僕ももちろん最新の技術を英語の論文や、アメリカのコーチのレクチャーなどから学んでいます。2024年で僕はプロコーチ歴15年目となるわけですが、それでも未だに学ぶことだらけです。僕は他のプロコーチよりも多く学んでいる自負がありますが、それでもまだまだ時代に追いつくのがやっとです。
話は長くなりましたが、とにかく言いたいことは、「プロ野球選手のフォームを見て学ぶ」というのはアマチュアのやり方です。プロは「プロ野球選手のフォームを観察して、どの動作が理論的に正しくて、どの動作が理論的に良くないのか」を理論的に理解し、さらに理論的かつ分かりやすく説明できなくてはいけません。
僕もまだまだ成長過程のプロコーチではありますが、他のプロコーチやプロトレーナーと話をしていると、「この人たちは最新の野球技術を学んでいないんだなぁ」と思うがしばしばあります。
ですのでもしプロコーチやプロトレーナーの指導を対価を支払って受ける場合は、ちゃんと理論まで説明してくれるかを先に確認するようにしてください。フォームに関して理論を説明できない方は、理論的に誤った指導をする可能性が高いため要注意です。せっかくお金を払って指導を受けるのですから、やっぱりちゃんとした理論を持った方に教わるのが一番です。
少なくとも「プロ野球選手がみんなやっているから」とか、その類の言葉ですべてを説明しようとするコーチには高いお金を支払わないようにしましょう。
]]>野球で「ボディバランス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?一聞すると体型のことのようにも思えますが、でもこれは体型のバランスの良さを表す言葉ではありません。
ボディバランスとは、「どんな姿勢や体勢になっても、自分がどっちを向いているかしっかり把握する」能力のことです。野球では野手のフィールディングでよく出てくるスポーツ用語ですね。
例えば内野手が捕球後にクルッと回ってから一塁に投げることがありますよね?この時ボディバランスが良ければ、クルッと回りながらも一塁ベースの方向を的確に把握することができるため、悪送球のリスクはほとんどありません。
逆にボディバランスが悪いとクルッと回っている最中に一塁ベースの方向が分からなくなってしまい悪送球してしまったり、回った後で一度止まって一塁ベースを確認してから投げなければならなくなります。つまりボディバランスが良くないと、アウトを増やしにくくなるということですね。
そしてこれは内野手だけではなく、外野手にも当てはめることができます。大飛球を背走しながら追って好捕したあと、ボディバランスが良ければすぐに正確な返球をすることができます。
しかしボディバランスが悪いと捕球後に体勢が崩れてしまったり、返球したい塁がどっちにあるのかが分からなくなってしまいます。いくら内野手が「バックサード!」などと指示を出していても、そのサードの方向が分からなくなってしまうため、好捕しても結局投げるまでにワンテンポ置くようになってしまいます。
ボディバランスというのは、三半規管が司る能力です。三半規管とは耳の奥にある、バランスを取るための器官ですね。
一般的には自律神経が乱れると三半規管の機能が低下してしまいます。そして三半規管の機能が低下すると、上述したような野球のプレーにおけるデメリットだけではなく、車酔いしやすくなったり、目眩を起こしやすくなります。
そして自律神経というのは、規則正しい生活をしていないとあっという間に乱れてしまい、悪化すると自律神経失調症になってしまいます。そしてそこまで悪化してしまうと、自律神経を良いコンディションに戻すのに本当に時間がかかってしまいます。
野手がフィールディングで良いプレーを見せるためには良好なボディバランスが必要であり、良好なボディバランスを維持するためには、規則正しい生活をして自律神経が乱れないようにする必要があるわけです。
平日は学校があるから早寝早起きだったとしても、週末はスマホを見ながら夜更かしして朝起きられないという生活を続けてしまうと、自律神経は乱れやすくなります。
例えば欧米にはサマータイム制度があり、春夏と秋冬では時計が1時間ズレます。この1時間のズレによって自律神経を乱してしまう人がかなり多く、現在ではサマータイム制度の廃止に向けて検討する国も増えてきています。
ちなみに三半規管は、後ろ向きで歩いたり走ったり、ミニハードルを跳んだりすると機能を向上させることができます。アスリートだけではなく、車酔いしやすい人や、目眩を起こしやすい人にも効果的ですので、ぜひ部屋の中で周りを気をつけながら後ろ向きで歩いたり跳んだりしてみてください。
自律神経が乱れてしまうと同時に三半規管の機能も低下し、ボディバランスも崩れてしまいます。そうなると野手がファインプレーできる確率がグンと下がってしまうため、アスリートは身体を鍛えるだけではなく、このような繊細な器官を整えることにも注視していく必要があるわけです。
ちなみに自律神経は、夜間にスマホやテレビなどからブルーライトを浴び続けてしまうと結果的に乱れることもあるため、夜間はスマホのブルーライトをオフにする機能を使ったり、せめて寝る前の2時間程度はテレビやスマホなしで過ごすようにしましょう。
あとは寝る2時間前というタイミングでストレッチングやトレーニングをしてしまうと、交感神経と副交感神経の作用が逆になってしまい、その結果自律神経が乱れ、ボディバランスも崩れるという結果に繋がることもあります。ですので寝る直前は血行が良くなることはあまりせず、なるべく心拍数が上がらない過ごし方をすると良いと思います。
そういう意味では、寝る直前のお風呂もベストとは言えないわけです。シャワーならほとんど問題ないと言えますが、湯船に浸かるとそれによって血行が活発になるため、入眠しにくくなることがあるため要注意です。
ボディバランスを良くして、野手としてファインプレーを連発できる選手になるためにも、普段の生活から十分注意しながらコンディションを整えていくよう心がけてください。
今回のビデオでは、ボディバランスという観点から制球力アップについてのレッスンをしています。そしてボディバランスを向上させるためには三半規管を上手く使っていく必要があります。
三半規管というのは内耳にあって、回転運動や加速運動を感知するためのものなのですが、これが上手く機能することによってボディバランス能力が向上していきます。
]]>将来プロ野球選手になることを夢見て毎日練習を頑張っている選手は非常に多いと思います。しかし夢見る前に、プロ野球選手になるということは想像以上に難しいという現実を知っておく必要があります。
人並みや、人よりは多いという程度の練習量ではとてもプロにはなれません。人の2倍も3倍も努力することによって、初めてプロ野球の門戸を叩けるようになります。
では一体どれくらいの選手がプロ野球選手になれるのでしょうか?2023年の場合、プロ志望届を提出した高校生・大学生は316人いました。この中で実際に2023年度のドラフト会議で指名された高校生・大学生は育成指名も含めて85人です。つまりプロ志望届を提出できるという非常に高いレベルにある高校生・大学生であっても、実際にドラフト指名を受けるのはわずか27%でしかないということになります。
そして残念ながらプロのスカウトマンの目には一切留まらず、プロ志望届を出すことさえ叶わなかった選手などを含めると、高校生・大学生の野球部員はだいたい全国で53,000人前後となります。その中の85人となると、プロ野球選手になれる確率は0.2%にしかなりません。
日本一合格するのが難しいと言われる大学のひとつ、東京大学の合格率がだいたい24%ですので、0.2%がどれほど大変な数字なのかがよく分かりますね。
ここでプロ野球のドラフトについて少し説明をしておきたいと思います。ドラフト会議に於いて、12球団の合計で指名できるのは最大120選手までとなります。すべての球団が指名を終えた段階で120人に満たない場合は、希望球団だけがさらに指名をしたり、育成選手ドラフトに参加することができます。
高校生・大学生の場合はプロ志望届を提出している選手のみ指名が可能で、社会人や独立リーグの場合はプロ志望届はなく、どの選手でもドラフト指名することが可能です。ただしドラフト会議までに「うちの球団はあなたを指名する可能性があります」ということを伝えずに、当日になって突然指名してしまうと、そのプロ球団と指名を受けた選手が所属するチームとの信頼関係が壊れてしまうことがあり、実際にそうなってしまったケースは過去に幾度もありました。
ちなみにセ・リーグのとある球団と、大阪にあるとある野球名門校の間では近年信頼関係が完全に壊れてしまい、その球団がその学校の生徒を指名をしたいと思っても、学校側が難色を示す状態が続いています。こうして一度壊れてしまった信頼関係は、修復するのに10年20年を要することもあるため、プロ球団側では近年、強行指名は極力避けようとする動きがあります。ただ、それでも強行指名をして最終的には入団合意に至らないというケースが未だ散見されます。
僕も2010年以降、本当に多くの「プロ野球を目標にしている選手」のコーチングをしてきました。そして実際にプロ入りを成し遂げた選手も何人もいます。
「将来プロ野球選手になりたい」と相談された時、僕がプロコーチとしてまず確認するのは柔軟性です。なぜなら高校・大学でいくら好成績を残していたとしても、柔軟性に乏しい選手は怪我をしやすいし、伸びしろも小さいため、スカウトマンたちもリストには入れないことがほとんどだからです。
その世代で、誰よりも凄い選手になることは誰にでもできることではありません。しかし高い柔軟性を得ることは誰にでもできます。よほどやり方を間違わない限り、柔軟性は誰でも必ずアップさせることができます。
もし毎日ストレッチングをしているのになかなか柔軟性がアップしないという場合は、やり方を間違えている可能性が高いため、僕のようなしっかりとした理論を学んでいるコーチの指導を仰ぐべきです。ちなみに柔軟性やストレングスという分野であれば、どこの駅前にもあるジムのトレーナーさんに聞いてもちゃんと教わることができるはずです。NESTA-PFTなどの資格を持っているトレーナーならなお安心です。
もしあなたが将来プロ野球選手を目指して頑張っているのなら、体が硬いうちは「プロ野球選手になりたい」と言ってはダメです。これではただの夢物語に終わってしまいます。
もしあなたが将来本気でプロ野球選手になりたいと考えているのであれば、まずは最低限のこととして、柔軟性を高めていきましょう。正しいやり方を続ければ、一年以内に180°開脚だってできるようになるはずです。ちなみに千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手はちゃんと180°開脚ができる選手です。
スカウトマンたちは「世代ナンバー1」はもちろんのこと、世代ナンバー1じゃなくても、伸び代がある選手を探します。例え甲子園に縁がなくても、地方大会で2〜3回戦までしか進めなかったとしても、そこに伸びしろを感じられる選手がいればドラフトで指名することがあります。実際、伸びしろが感じられれば軟式野球や準硬式野球のチームからドラフト指名することだってあります。
「まさかの指名漏れ!」と書かれる高校や大学のスター選手が毎年いますよね?そのような選手は基本的には伸びしろが少ない、もしくは怪我に弱いことが原因で指名を避けられている可能性があります。あとは右利きの右投げ左打ちの野手も指名を避けられる傾向が高くなります。
そしてスカウントマンたちはグラウンドで目当ての選手を視察した後、必ず校門付近で他の生徒たちに声をかけ、目当ての選手の人柄をリサーチします。もしそこであまり評判が良くない場合は、これもまた指名漏れの原因になります。
また、近年はスカウントマンたちもSNSをしっかりチェックするようになっており、もし過去の投稿で良からぬ内容があると、これもまた指名漏れの原因となってしまいます。ですのでSNSの利用法には十分注意するか、もしくはやらないのがベストです。
実は僕自身、ドラフト候補選手のスカウティングリポートを作ることがあります。プロ野球のスカウントマンに依頼され、怪我をしやすいフォームになっていないかや、怪我をするならどのような怪我をする可能性が高いかなどをリポートにします。
実際そのリポートの中で僕は、ある選手に対し「この選手はすぐに肘を痛めるだろう」というリポートを書きました。そしてこのリポートによってその球団は指名を回避したのですが、他の球団がその選手を指名しました。その結果プロ1年目ですぐに肘を痛め、その後トミージョン手術を受けて、今現在プロでは鳴かず飛ばずの状態です。
近年はドラフト指名に於いてもバイオメカニクスなどのスポーツ科学が用いられる機会が少しずつ増えてきています。僕はまさにそのバイオメカニクスの専門家であるため、ピッチングフォームやバッティングフォームを見れば、「この選手はここを怪我しやすい」ということがすぐに分かります。
プロ野球はあくまでもビジネスです。費用対効果が望めなさそうな選手をドラフト指名することはありません。球団が選手に支払う契約金と年俸は投資ですので、その投資に見合うと思われる選手だけがドラフト指名されます。
そして上述の通り、特に柔軟性に乏しい選手は確実に指名リストから外されますので、もしあなたが将来プロ野球選手になりたいと考えているのであれば、できる限り柔軟性を高めておきましょう。と言ってももちろん、バレリーナほどの柔軟性は必要あります。普通に180°開脚をして胸を床につけられればそれで十分です。
もし誰にでもできる柔軟性の向上に難しさを感じるようであれば、プロ入りの夢は諦めた方が良いでしょう。プロ野球選手はアスリートです。アスリートは自らの身体を武器にして稼ぐ必要があります。その武器となる自らの身体を向上させることに後ろ向きな選手は、仮にプロに入れたとしてもすぐに戦力外となるでしょう。
ちなみにプロ入り後、10年以上プロでプレーできるのは全選手のうち40%のみです。それ以外は10年未満、早ければ2〜3年で戦力外通告を受けています。松坂大輔投手も引退された際に言っていましたね。「自分の身体への投資は惜しまないでください」と。投資するのは何もお金だけではありません。プロになる前は、とにかく時間という資産をできる限り身体のメンテナンス、コンディショニングに対して投資していくようにしましょう。そうすればどんどん伸びしろを広げられるはずです。
]]>2023年8月も末に近づき、MLBのシーズンも佳境に差し掛かっているタイミングで、大谷翔平投手は再び肘を痛めてしまったようです。当初はただの疲労と発表されていましたが、精密検査をした結果、痛みはないものの靭帯への損傷が見つかったようです。
僕は以前に書いたコラム『大谷翔平投手の肘を守っているモータス社製のバンド』や『大谷翔平投手の投球動作分析〜常人では真似できなハイレベルな投球フォーム』でも指摘して来たわけですが、大谷翔平投手のフォームは、決して肩肘に負荷のかからない良いフォームになっているとは言えません。
モータス社のエンジニアは以前、前回大谷投手が肘を痛めた際、大谷投手のフォームに肘を痛めた原因があるという証拠は見つからなかったと話していました。しかし僕個人としてはモータス社のバンドは信頼していません。以前も書きましたが、モータス社が何を根拠にこのようなことを言っていたのか、僕にはまったく分かりません。
大谷投手の現在のフォームは、トップポジション付近で肩関節が内旋している形になり、腕の加速期に肘の内側に外反ストレスがかかるフォームになっています。明らかにそのような動きが見られるのに、モータス社はこの事実をまるで無視し、自分たちの製品のおかげで大谷投手が肘を守れているような言い方をしていました。
肘の故障というのは主に、「外反ストレスの強さ+球速アップによる負荷の増加+負荷に耐えられるストレングス+疲労度」というこれらのバランスによって引き起こされます。これらのバランスが崩れ、体のストレングス(強度)が負荷に耐えられなくなってくると、肘の故障が発生するリスクが急激に上がって来ます。これはメジャーリーガーでもリトルリーガーでも同様です。
しかし外反ストレスの強さというのは、フォーム改善によって限りなく0に近付けていくことが可能です。現代では、肩肘を痛めない科学的にしっかりと根拠のある投げ方がすでに確立されているんです。
このように大谷翔平投手が肘を痛めると、多くの野球解説者がこぞって「二刀流はやめるべき」だと言い始めます。しかし僕はそうは思いません。なぜなら大谷投手は仮に二刀流じゃなくても、投手専任だったとしても、今のフォームでは遅かれ早かれ肘を痛めていたと思われるからです。
打者に専念すべきという声も多いようですが、しかしメジャーリーグで15勝できる投手に投手を辞めさせる理由などあるでしょうか?僕は野球動作のプロフェッショナルコーチとして、大谷選手は自らが望む限りは二刀流を辞めるべきではないと考えています。
今大谷選手に必要なのは投手を辞めることを考えることではなく、肘の負荷がかかりにくいもう一段上のレベルのフォームの習得を目指すことです。これは、トップポジションで肩関節を外旋させられるようになれば解決します。
もちろん言うのは簡単なわけですが、今後大谷選手が怪我なく投げられるようにするためには、フォームのマイナーチェンジは不可欠だと思われます。
僕のように野球のフォームを科学的に分析できるだけの勉強をしているプロフェッショナルコーチであれば、100人いれば100人とも現在の大谷投手のフォームは肘の内側に外反ストレスがかかっていることにすぐに気が付くはずです。アメリカでももちろんそれに気付いていたプロフェッショナルコーチはいたはずです。
今回大谷投手が再手術を行うかどうかは未定のようです。とりあえず今季の残りは打者に専念するとのことでしたが、もしエンゼルスに今季の勝機が少ないのであれば、今季はもうここで治療に専念させても良いのかなとは個人的には思っています。しかしFA市場での今後の評価の問題もあり、恐らくは簡単に休むという判断はできないのでしょう。
ちなみに大谷投手はショートアームによる投げ方も導入しているのですが、ショートアームの大きなデメリットとして、テイクバックでサイレントピリオドを発生させにくいという点があります。サイレントピリオドを発生させられないと、投球時の肩肘への負荷は高まりやすくなります。
僕個人としては、メジャー時代のフォームよりも、ファイターズ時代のフォームの方が肩肘に負荷がかかりにくい投げ方だったと考えています。ですがメジャーに移籍してからフォームがどんどん変わっていき、ファイターズ時代よりも肘に負荷がかかっていると思われるフォームになっていきました。
その一つがショートアームによる投げ方であるわけですが、これはもしかしたらメジャーのやや傾斜がキツくて粘土質の高いマウンドに合わせた投げ方なのかもしれません。実際大谷投手はこのマウンドに合わせるため、メジャー移籍後は下半身主導ではなく、体幹主導のフォームに変えています。
もちろん体幹主導のフォームが良くないというわけではありませんが、重心に関して言えば、ファイターズ時代よりもエンゼルス時代の方が高くなっていることは確かです。その分肩関節の水平内外転の角度が深くなり、肘の内側に外反ストレスがかかっている時間もやや長くなっています。
元プロ野球の解説者の方々は、「怪我をしたから二刀流は辞めるべき」と短絡的に主張するのではなく、もっと野球ファンにも分かりやすいく、なぜ怪我をして、どうすれば怪我をしなくなるのかというところまで解説してくれるようになると良いですね。
元プロ野球選手の解説者がそこまで解説してくれれば、ただのコーチである僕なんかがこうして説明するよりもずっと分かりやすいと思うんです。ですので結果論だけであれこれ言うのではなく、解説者の方々には、ぜひもっと理論的に解説をしてもらいたいなぁと個人的には期待しています。
いずれにせよ、大谷投手は今回の怪我が完治してまた来季投げ始めても、まったく同じフォームのままではまたいつか必ず肘を痛めてしまうはずです。そうならないように、大谷投手は野球のフォームを科学的に分析し、適切にコーディネートできるパーソナルコーチと契約をし、リハビリしている最中にしっかりとフォームのマイナーチェンジを済ませておく必要があると思います。
トップポジションで肩関節を最大外旋状態に持っていける前提のフォームに修正していければ、肘の内側の外反ストレスを大幅に軽減させることができるはずです。その結果、二刀流だろうとなんだろうと肘の怪我はしにくくなり、周囲の雑音もかき消していけるようになるはずです。
大谷投手は日本球界だけではなく、世界中の野球人・野球ファンにとっての至宝です。だからこそ少し投げるのをお休みできる今こそ、肘痛を再発させないためのフォームを見直す良い機会となるのではないでしょうか。
]]>今年の夏の甲子園から、暑い日の試合では5回裏終了時に10分間クーリングタイムが設けられるようになりました。ちなみにクーリングタイムとは、5回が終わったら選手は全員ベンチ裏に下がり、そこにあるドリンクを飲んだり、冷たいタオルで体を冷やしたりできる時間のことです。
そしてクーリングタイム終了1分前から、選手はベンチ前でウォーミングアップを開始できるのだそうです。どうしてここは1分前限定にしたのかは僕には分かりませんが、きっとクーリングタイム中に一部の選手がベンチ前にいると、クーリングタイムをしていることをアピールできないためではないでしょうか。
このような新しいことに挑戦することは歓迎すべきですが、しかしこれは「白いスパイクを履いてもOK」問題同様、根本的な熱中症対策にはなっていません。スパイクが黒かろうが白かろうが、暑いものは暑いんです!
学生の夏休みに大会を行いたい、という事情以外で、何か8月に大会をしなければならない理由でもあるのでしょうか?高野連は頑なとして夏の甲子園を、秋の甲子園に変えようとはしません。
確かに夏休みじゃなければ、学校全体で甲子園球場まで応援しにいくことは難しいと思います。しかし実際にプレーをする選手たちの健康や命を考えれば、そんなこと他愛もないこととは言えないでしょうか?
それともプレーをする選手に命の危険を侵させてまで、甲子園にはブラバンの演奏やチアリーディングが必要なのでしょうか?少なくとも僕はプロコーチとしてそうは思いません。一番大事なのはプレーをする選手たちの健康であり、甲子園は常に選手ファーストで開催されるべきなのです。
クーリングタイムが導入された2023年夏の甲子園。大会初日の試合からすでに、クーリングタイム直後に選手が熱中症で足をつって倒れ込み担架で運ばれたり、そこまで行かなくとも足をつったり、足に違和感を感じたりして途中交代した選手が続出しています。
つまりクーリングタイムは熱中症対策として何の役にも立たなかったということです。ちなみに大会初日の兵庫県の気温は37度だったそうですが、この気温というのはあくまでも日陰で計測されたものです。天気予報の気温表示はすべてそうなのですが、これは日陰に温度計を置いて計測された数字です。
では陽を遮るものが何もないグラウンドではどうなってしまうのか?直射日光レベルだと、軽く50度を超えます。
上の写真は、数年前に真夏の野球場で計測したものです。朝10時の時点で直射日光レベルでは45度を超えており、この1〜2時間後、50度を超えていきました。ちなみに僕のデジタル温度計は55度までしか計測できないため、55度以上になるとエラー表示のみになります。そのため直射日光が実際にはどれだけ高温になったのかは正確に測ることはできませんでした。
一般の方は天気予報を見て、「今日の甲子園は37度かぁ、暑そうだなぁ」と考えると思うのですが、実際にはグラウンドレベルの気温は午前中でも軽く45度を超えて、時間帯によっては50度以上になります。球児たちは、そんな過酷な状況下でプレーさせられているんです。
クーリングタイムは今大会でかなり注目されていた、高野連が自信を持って導入した熱中症対策だったわけですが、結局のところは大会初日からまったく役には立ちませんでした。
そもそも選手たちは攻撃中には水分補給をしたり、冷たいタオルを首に当てたりしていて、わざわざクーリングタイムを設けなくても、クーリングタイム中に行ってくださいと言われていることは普段からすべて行っています。つまり現場を知る人間から見ると、クーリングタイムは実にトンチンカンな熱中症対策だったわけです。
高野連がどうしても8月に甲子園を開催したいと言い張るのであれば、少なくとも炎天下での試合開始は避けるべきです。まず8時頃、暑くなる前に1試合やって、夕方とナイターで1試合ずつの一日3試合制が現実的だと思います。
もちろんそれだけだと、だいたい2週間で大会が終わることもなくなり、阪神タイガースとしては大変だと思いますが、その間は大阪ドームやほっともっとフィールドを使って貰えばいいと思いますし、そこは12球団で協力し合うべきだとも思います。
例えばプロ野球のオールスターなんてほとんどドームで行われるのですから、7月下旬じゃなくても8月上旬でも良いわけです。オールスター休みを8月上旬に持っていけば、少なくとも一週間くらいはタイガースも死のロードに悩まされることはなくなります。
とは言え夏の甲子園を一日3試合制にした場合、タイガースが甲子園を使えなくる期間が少し長くなるか、ベスト8以降は朝は甲子園、夜はタイガース戦という形で共有することになると思います。
日本人は、炎天下で頑張る球児たちを美談として応援したいという気持ちがあるのだと思いますが、これが成り立ったのは20年前までです。現代では炎天下でのプレーは命に関わります。実際、毎年多数の人が熱中症で命を落としています。ちなみにアメリカでは以前、日本の夏の甲子園が「炎天下で高校生にプレーを強いる虐待」として報道されたことがありました。
もし日本人が心から球児を応援したいという気持ちを持っているのであれば、まずはやはり高校野球ファンが「炎天下の甲子園でなんて観戦できない!球児の健康を考えろ!」と声をあげて欲しいなと思います。何せ我々野球の専門家であるプロフェッショナルコーチたちがいくら意見をしても、高野連はまったく耳を貸してくれませんので。
高野連は非営利団体であるわけですが、しかし実際には利権がないわけではありません。例えば夏の甲子園大会を主催しているのは朝日新聞社であり、センバツを主催しているのは毎日新聞社です。もし高校野球を完全に非営利にしたいのであれば、甲子園大会は新聞社ではなく、高野連のみが主催者となるべきです。
しかしそれをやろうとしないから、高野連は何も満足に決めることができないし、何か一つ決める時でも数ヵ月〜数年かけて検討します。つまりいつでも新聞社に伺いを立てながらじゃなければ何も決められないのが高野連ということです。
そして高野連は天下り先にもなっていると言われていますので、やはり血の入れ替えは必要なのではないでしょうか。例えば野球という競技に非常に理解を示してくれていた鈴木大地前スポーツ庁長官などに高野連を託せば、間違いなく高校野球を選手ファーストの競技に変えてくれるはずです。
今後、甲子園大会で死者が出ないという保証はありません。選手はもちろん、関係者やスタンドのファンの中にさえ、熱中症による死者を出すことは許されません。それを確実なものにするためにも、やはり夏の甲子園は11〜16時台の試合は避けるべきだと僕は考えているわけです。
]]>これは野球塾、野球部、少年野球チームすべて共通なのですが、どんどん上達できる子と、なかなか上達できない子というのは、その言動に明確な違いがあります。
上達できない子には、その典型的な言動がよく見られ、上達できる子もやはり、同じようにその典型的な言動がよく見られます。つまり言い方を変えると、上達できる子の言動を先に知ることにより、それを少しずつ上達できないタイプの子にやらせていくと、上達できないタイプの子でも、少しずつ上達できるタイプの子に変わっていくことができるということです。
これは何も、性格を変えるという大袈裟なことではなく、単純に言動を少し変えれば良いだけなので、挑戦する意欲があれば誰にでもできることです。
ですがすごく恥ずかしがりだったり、反抗期だったりすると、やれるはずなのにやらない、やれないというケースもあります。恥ずかしがりの場合は少しずつ時間をかけて慣らしていけば良いのですが、反抗期の場合は何かフックになるものをコーチが与えてあげなければ、なかなか上手くいかないケースが増えてしまいます。
ちなみにこのフックというのは、反抗期である選手に「あれ?この人は俺のことをひょっとしたら分かってくれるのかな?」と、少しでも興味を抱かせる何かのことです。
フックとなる何かの一例
ただし1の「その選手の特徴を一瞬で見抜き言い当てる」というのはプロコーチにしかできないことですので、一般のコーチが無理に言い当てようとすると、逆に反感を買ってしまうことがありますのでご注意ください。
伝え方に関して言えば、周囲の大人は「〜しなさい」と、Do itという文章で物事を伝えてくることが多いと思います。これをLet's do itにして「〜してみよう」と言い換えるだけで、その言葉がすっと相手の耳に入っていくようになります。
これはコーチングをする際の鉄則の一つでもあるため、もし親御さんでもいつも「〜しなさい」と頭ごなしに言ってしまっている場合は、言い方をLet's do itや、Let's try itに変えて伝え直してみてください。すると相手も聞く耳を開きやすくなります。
さて、話を上達できる子とできない子の特徴に戻したいと思います。まず上達しにくい子の典型的な言動ですが、とにかく「はい」と言ってくることです。こちらが何かと言うと必ず「はい」と返事をして来ます。
これは一見とても良いことのように思えたりもするのですが、経験のあるプロコーチが見ると、しっかり理解をしたという意味の「はい」と、何も考えずに条件反射的に言った「はい」はすぐに見分けがつきます。
今の「はい」はきっと条件反射的に言っただけで、多分話は理解していないな、と思い、「じゃあ今教わったことを自分で説明してみて」と言うと、案の定まったく説明できないことがほぼ100%です。
僕のコーチングでの信条の一つに、「身体で覚える前にまずは頭で理解させる」というものがあります。一般的な野球塾だと、とにかく手取り足取り動きだけを教えていくことがほとんどです。この場合、確かにその動作は僕のレッスン同様に選手たちはその動作をできるようになっていきます。しかし問題はそのあとです。
身体だけで動きを覚えようとすると、確かにその場ではできるようになることも多いのですが、一日二日、一週間二週間、一ヵ月二ヵ月、一年二年と時間が経過していくと、時間が経てば経つほど教わった時の正しい動作を身体で正しく思い出すことができなくなります。
ですが身体だけではなく、頭でもしっかりその動作を理解しておくと、その正しい動作が少しずつ崩れて来た時、選手自身で「そう言えばあの時、この動作はこんなイメージで動くと良いって言われたなぁ」というふうに、正しい動作への具体的な修正方法を思い出すことができ、なんとなくではなく、理論的に崩れた動作を自分自身で正しい動作に修正できるようになります。
だからこそ僕の野球塾のレッスンでは身体の動きでだけではなく、頭でもしっかりと正しい動作を理解してもらうようにしているんです。
そして上達できないタイプの子の場合、何か動作を説明させると「ここがこうなって、こっちがこうで」というように、ノートに書いてもまったく意味がない言葉で説明することが多いんです。
ですので選手に自分でも説明させる際には、必ずノートにそのまま書ける具体的な言葉で説明させるようにしましょう。そして主語を抜かして説明する子も多いため、必ず正しい主語を使わせて説明させるようにしてください。主語があやふやだと、のちのちそれがどの動作の説明だったのかが分からなくなってしまいます。
すべて挙げるとキリがないのですが、上述したことは上達できないタイプの子には非常によく見られるケースですので、指導する側にある方はぜひ覚えておいてください。
逆に上達できるタイプの子は、こちらから何かを聞くと、必ず自分で少し考えてから回答します。例えば同じ「はい」という回答にしても、上達できない子は即答するのに対し、上達できる子は数秒自分でしっかりと考えてから「はい」と答えて来ます。
また、分からないことを分からないままにはしません。上達できない子の場合、本当はまったく理解できていないのに、「すべて理解できたかな?」と聞いても「はい」と即答して来ます。しかし上達できるタイプの子は、こちらが理解の確認を入れる前に、「ここが分かりませんでした」というふうに聞いて来ます。これはとても大切なことです。
野球塾のレッスンは時間制です。永遠にレッスンをし続けられるわけではありません。僕の場合は1枠30分のレッスンになるのですが、この時間制限があるため、レッスンをしていても教えた内容のすべてを再確認していくわけにはいきません。そんなことをしていたらレッスンがまったく進まなくなってしまいます。
だからこそ一番良いのは、選手自身が分からなかった時にしっかりと「分かりませんでした」と伝えてくることなのです。そうすれば僕らコーチからすると、「分かりませんでした」と言って来たところだけを再確認すれば良いだけになるので、時間を浪費することなくどんどんレッスンを進めていくことができます。
そして上達できる子はしっかりとメモを取りながら話を聞きます。僕のレッスンでは伝えることがとても多いため、必ずメモを取りながら話を聞いてもらうのですが、上達できないタイプの子は最初のうちは、メモを取るように言ってもまったく書くことができません。
そのような場合は僕が画面に説明を書き、それをそのままノートに写してもらいます。そして何月何日に何をノートに書いてもらったのかはこちらですべて記録しているため、何かを思い出してもらう時は「何月何日のノートを開いてください」と言えば、一瞬で復習態勢に入ることができます。
逆に上達できるタイプの子は、要点をしっかりとメモしていくことができます。例えば僕の説明を一言一句漏らさずメモをしていくと、これもやはり時間の浪費になってしまいます。ですがそうではなく、上達できるタイプの子は大事なキーワードを上手く抜き出し要領良くメモを取っていくことができます。
要点を上手く抜き出してメモをする練習は、人の話を聞いてすぐに理解する能力を養うことができます。ですので野球選手に限らず、子どもでも大人でも理解力を高めたい方はぜひ日常的に上手くメモを取る練習をすると良いと思います。
ちなみに最近はテレビを観ていても、YouTubeを観ていても、ほぼ確実に喋っている内容の字幕が出ていますよね?耳が聞こえない方向けの字幕ではなく、カラフルな文字で絶対に目が行ってしまうような目立つ字幕です。
このカラフルな字幕は実際には画面の人が喋っていることと同じなのですが、これだけ目立つ色で字幕を付けてしまうと、嫌でも字幕を目で追ってしまうようになります。しかしこれが人の理解力を低下させる一因になっているんです。
日常的に字幕を見ながら話を聞くことが習慣付いてしまっているため、目の前の人と字幕なしで(当たり前ですが)会話をしても、相手の話の内容がまったく頭に入ってこなくなってしまうんです。これはテレビやYouTubeの弊害と言って間違いありません。
自分の得意分野であったり、興味があることに対してはすでに理解が深まっているため、字幕なしでも理解することはできます。しかし学校の勉強であったり、野球塾で教わる新しい動作であったり、初めて聞くことや難しく感じることの場合、字幕なしでは理解度が大幅に低下してしまう選手が、子どもだけではなく、プロ野球選手の中にも大勢います。
だからこそ、仮にその場では理解し切れなかったとしても、あとで読み返して理解を深めたり、あとで改めて質問をするためにも、メモをすることが重要なんです。紙のメモでもデジタルメモでもどちらでも良いと思います。
僕の場合はレッスンではMac、iPad、iPhoneとすべてAppleプロダクツを使っているため、Appleのメモアプリを使っています。デジタルメモなので、キーワードを入力するとあっという間に過去に書いたをメモ検索することができてとても便利です。
話をまとめるとだいたい以下のような感じになります。
一番良いのは本人や親御さんが、「あれ?レッスンを受ける前ってこんなに理解力あったかな?」という感じで、気付かないうちにいつの間にか理解力が高まっていることです。理解力は押し付けによって伸ばせる要素ではないため、やはりロングテール的にじっくりと時間をかけていくことが大切なわけです。
そういう意味でも僕のレッスンでも、6ヵ月コースよりも1年コースでじっくりとレッスンを受けている子の方が、上達しやすいタイプの子に変わりやすく、その後もどんどん上達していけるようになります。そのため僕の野球塾では1年コースが圧倒的に人気があるコースとなっています。
今までなかなか上達できなかった子は、上記のポイントを1つずつ抑えていくだけでも、必ず上達しやすいタイプの子に変わっていくことができます。ですので親御さんやチームで指導される方は、決して焦って押し付けることなくサポートしてあげてください。
]]>選手以上に情報のアップデートが必要なのがコーチであるということは、プロフェッショナルコーチの間ではすでに常識になっています。野球理論やトレーニング理論は年々アップデートしていかなければ、どんな選手でも上達させることができるコーチになることはできません。
ただ、少年野球や野球部などのいわゆるボランティアコーチにそこまで求めるのは酷という見方ができるのも事実です。僕らのようなプロフェッショナルコーチであれば情報の常時アップデートはプロとしての義務でありながらも、同時に日々苦もなく自然と行なっています。
でもボランティアコーチや教員コーチの場合、コーチである以前に会社勤めや教員としての業務があります。それ以外の個人的な時間を長時間使って勉強するというのは、なかなか大変なことだと思います。
ですが僕らのように対価をいただいてレッスンをしているコーチの場合は、情報の常時アップデートができない場合はすぐに周回遅れになってしまい、選手を上達させることができないコーチになってしまいます。その結果、元プロ野球選手の野球塾であってもあっという間に廃業に追い込まれてしまいます。
プロトレーナー、元プロ野球選手、元高校球児、元大学野球などなど、現代ではさまざまな肩書きを持った方々が日本全国で野球塾を展開しています。ちなみに僕自身は怪我により、選手としては高校一年生の春までしかプレーすることはできませんでした。高校時代は右肩のリハビリに明け暮れ、高校卒業後に選手としての道は完全に諦め、プロコーチになるための勉強を始めました。
僕自身が13年ほど、野球とはまったく関係のない職に就きながらプロコーチになる勉強、修行をしていたので、その大変さは身を持って知っています。生半可な覚悟では続かないと思います。
だとしても、プロコーチだろうがボランティアコーチだろうが、選手にとってはどちらも同じコーチです。ですのでボランティアコーチだったとしても、できる範囲で情報のアップデートはしていく必要があります。
ではなぜそんなに頻繁に情報のアップデートが必要なのでしょうか?その理由は簡単で、野球動作理論にしろトレーニング理論にしろ、日進月歩で進化し続けているからです。その進化に付いて行けないと、令和なのに昭和に取り残されたようなコーチになるしかありません。
例えばバッティング技術だけを見ても、10年前まで常識だったことが現代ではそうではなくなり、10年前にはなかった理論が現代では確立されていたりもします。野球理論やトレーニング理論は、5年10年経つとガラッと変わってしまうこともありますので、スポーツ科学のメッカとも言えるアメリカの最新理論に対し常にアンテナを張っておく必要があるわけです。
ちなみに理論というのは誰にでも通用しなければなりません。例えば魔女のホウキは空を飛んで移動するのにはとても便利ですが、でも魔女しかホウキに乗って空を飛ぶことはできません。しかし科学によって作られた飛行機は、飛行機が空を飛んでいるメカニズムなどまったく知らなくても、誰でも飛行機に乗って空を飛んで移動することができます。
この魔法と科学の違いのように、僕がレッスンするような科学的根拠に基づいた動作指導法であれば、どんなレベルのどんなタイプの選手でも上達させることができます。ですが選手時代に身につけたセンスや経験則を主に指導するコーチの場合、その指導内容と選手との相性が合わないケースも多々あります。
プロ野球でも、監督やコーチが代わった途端に活躍するようになる選手がいますよね?このケースなどはまさにその典型で、相性の良いコーチと運良く出会えると、自らの能力を一気に開花させられることがあります。
でも例えば野球動作を科学的に学んだ千葉ロッテマリーンズの吉井理人監督のような方であれば、選手個々にフィットした指導法の引き出しをたくさん持っていますので、どのような投手でもレベルアップさせることができます。
吉井監督のように、プロ野球選手・メジャーリーガーとして圧倒的な実績がある方が野球科学・トレーニング科学を学ぶと、まさに鬼に金棒だと思います!
コーチとして一番やってはいけないことは、「俺が子どもの頃はこうやって教わった」という考え方を前提にして選手を指導してしまうことです。これは指導ではなく、知識の押し付けでしかありません。
根性論にしても、根性というものを心理学的に理論立てて説明できないコーチは、決して根性論を選手に押し付けるべきではありません。そもそもスポーツ心理学を学んでいる方であれば、根性論を前提にすることもないとは思いますが。
すべての選手に通用する万能の指導法など存在しません。もちろん投げる・打つに関しての基本に関しては共通するわけですが、基本以外の指導に関しては選手が100人いたら、100通りの指導法をコーチは用意する必要があります。
僕は双子の選手を指導した経験も豊富にあるのですが、一卵性の双子であってもその指導法は個々によって異なります。もちろん似てくるところもあるわけですが、しかし双子だからといって僕の指導内容が同一になることはありません。
僕の場合は選手個々のタイプ、レベル、人柄などに合わせて指導法や伝え方を変えています。もちろんこれは決して楽な作業ではありませんが、しかし僕は2010年1月の開校以来、ずっとマンツーマンにこだわって、このやり方を続けています。
その結果たくさんの生徒さんが12球団ジュニアトーナメントの最終選考に合格したり、甲子園に出場したり、六大学野球で活躍したり、プロ野球選手になったりしています。
僕の選手としての実績は上述の通り、野球肩により高校一年生止まりです。ですので他の一般的な野球経験者よりもプレー経験は乏しいとも言えます。しかし野球動作やトレーニング理論を科学的にしっかりと学び、その内容を常にアップデートし続けているため、そんな僕でも選手たちをどんどん上達させることができていますし、長年プロ野球選手のサポートも続けています。
そして選手たちが実際に上達を実感してくれているからこそ、2010年にスタートした僕の野球塾は、2023年になった今でも多くの生徒さんが通ってくれているんです。
もし今現在、どの野球塾に通おうかを迷っているようでしたら、野球動作やトレーニング理論を科学的に学んでいると思われるコーチがいる野球塾を選ぶようにしてください。「コーチが元プロ野球選手だから」「コーチに甲子園で活躍した経験があるから」という理由だけで野球塾を選ぶことは避けてください。
本気でもっと野球を上手くなりたいのであれば、必ず最新の野球理論やトレーニング理論を学んでいるコーチを探してください。ちなみに「ステイバックを教わることはできますか?」とか、「エクステンションはどうやって伸ばすのが適切ですか?」とか、「プライオメトリクスの正しいやり方を知りたいです」というふうに、専門用語を出して質問して、それに対し真摯に分かりやすく説明してくれるコーチは、ちゃんと勉強しているコーチです。
逆に「ステイバックは今流行っているのかもしれないけど、私は私のやり方での指導を続けています」という感じで、どうもお茶を濁すような受け答えをしてくるコーチは絶対に避けてください。引退後は野球塾で指導している元プロ野球のスター選手であっても、僕が実際にお話をさせていただくと、そのようなコーチは少なくありませんでした。
実際に僕がそのようなコーチとお話をする機会があると、科学的な野球用語やスポーツ理論用語がまったく通じないコーチが本当にたくさんいました。重要なのは練習アイデアの豊富さではなく、科学に基づいた理論をどれだけ持っているかどうかです。ここを見誤ってしまうと、高いレッスン料を払ってもあまり上達できない、という残念な結果になってしまうこともありますので、ぜひご注意ください。
そしてもしこのコラムを読んでくださり、僕のレッスンに少しでもご興味を持ってくださった場合は、お気軽にLINE(僕のLINEはこちらから友だち追加してください)よりお声掛けくださいませ。よろしくお願いいたします。
]]>僕が野球塾のレッスンで最も大切にしていることの一つに、野球塾でのレッスンが修了したあとでも上達し続けられる選手を育成する、というものがあります。これを可能にするのがアクティブリコールという作業です。アクティブリコールという言葉をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、これは野球用語というよりは、心理学用語に近い勉強法に関する用語です。
僕のレッスンも含め、他の野球塾でもやはり多いのが、レッスン中は上達できるんだけどレッスンが終わるとフォームがレッスン前のものに戻ってしまう、という悪循環です。フォームが元に戻るところまで行かなかったとしても、調子を崩した時にスランプを最短で切り抜けることができない、という選手が一定数います。
そんなもったいない状態を回避できる可能性を高めてくれるのが、アクティブリコールという作業です。アクティブリコールとは平たくいうと、学んだことを一定期間を置いたのち思い出そうとする作業のことです。この作業を繰り返すことによって記憶がどんどん脳や筋肉に定着していきます。
例えば日本の携帯電話は11桁の数字からなるわけですが、この11桁の新しい数字を普通にサッと覚えることはとても難しいと思います。短時間は暗記できたとしても、数時間後には忘れてしまうことがほとんどではないでしょうか。
でも自分の電話番号を、サイトや書類に何度も繰り返し書いていくことによって、自然とその11桁の番号を覚えることができ、しかもその番号を使っている間にその番号を忘れてしまうこともありません。これはまさにアクティブリコールの好例の一つだと言えます。
サイトにしろ書類にしろ、そう頻繁に電話番号を書くわけではありません。書いたとしてもせいぜい1ヵ月に一度か二度ではないでしょうか。でもこの約1ヵ月というスパンがアクティブリコールにとっては重要なんです。
記憶というのは、例えば三日間連続である特定の11桁の数字を覚えようとするよりも、今日とりあえず一度覚えたら、二週間後、1ヵ月後に思い出そうとすることによって、その数字が脳に定着していきます。ちなみに脳や筋肉に定着していない短期記憶は、あっという間に覚えた内容がボヤけて行ってしまいます。
逆にしっかりと脳や筋肉に定着させた長期記憶に関しては、時間が経ってもそう簡単に忘れることはありません。例えば5年前まで使っていた電話番号を、今でもサラッと言えたりしますよね?これがまさに脳に定着された長期記憶であり、野球動作の習得もこのように、短期記憶から長期記憶に変換していきたいわけです。
ちなみに僕は、小学生の頃「今からキャッチボールしようぜ!」と頻繁に電話していた友だちの03から始まる家電の番号を未だに覚えています。僕が小学生だった1990年頃は、まだスマホどころか携帯電話さえほぼないに等しく、パソコンではなくワープロ全盛期でした(笑)
そんは話はさておき、僕のレッスンを定期的に受けてくださっている方ならピンと来ると思いますが、僕はある内容を指導したら、数週間後、数ヵ月後に必ず「これについては覚えていますか?」と質問をして、選手に答えてもらうようにしています。この作業がアクティブリコールであり、この作業を繰り返すことにより、まず正しいフォームの知識を脳に定着させていきます。
脳に定着された動き方の知識は、体でも体現しやすくなります。例えば正しいフォームの知識をアクティブリコールによって脳に定着させ、それをメンタルプラクティスによって頭の中で映像化していきます。すると頭の中で映像化させたフォームで、実際のグラウンド上でも投げたり打ったりしやすくなるんです。
そして良いフォームが身に付いたら、そのフォームが崩れかけた時に「この動作はどのように動くのが正しいか覚えていますか?」と質問をします。この時ただ動き方を説明させるだけではなく、なぜその動作が必要なのか、なぜ以前の動作では良くなかったのか、という理論まで説明させることが重要です。
例えばある動作を身につけられると球速がアップするとします。その場合、「この動作はこのように動くのが正しくて、これができるようになると、体のここをこんな風に使えるようになるから球速がアップします」という感じで選手に答えさせます。そして上手く答えられなかったらそこで復習をして、再度正しい知識を頭と体に入れていきます。
これがアクティブリコールという作業を取り入れている僕のレッスンの大まかな流れです。この作業を根気強く続けていくことにより、選手の頭と体に正しい動作が刷り込まれていきます。動作改善というのは、これまでの「良くなかった動作」という名の癖を、「良い動作」という名の癖で上書きしていく作業のことです。つまり大切なのはその場でできるようになることだけではなく、一年後も二年後も同様に良いフォームで投げたり打ったりできているか、ということなのです。
アクティブリコールによって正しい動作をしっかりと長期記憶に変換しておくと、レッスンが修了してしばらくして調子を崩した時、「そう言えばこんな時、レッスンでこんなことを教わって練習したら調子を取り戻したんだった!」と記憶を繋げられるようになり、自分で自分のコーチングができるようになります。
調子を崩した時に、よく今のフォームとヒットを打った時のフォームの動画を見比べることがありますが、この時重要なのはそのヒットを打った時のフォームが、たまたま出たヒットなのか、それともしっかりと理論的にも良いフォームで打てているヒットなのか、という点です。
もしそれがたまたま出たヒットだっとすれば、良いフォームで打っているとは限りません。逆に結果としてはアウトになっていたとしても、理論的に良いフォームで振っている打席の映像は、これは好例として保存しておくべきです。そして調子を崩した時にその映像を使いながら、僕のレッスンで教わったことを見直していくと、より早く不振から脱却できるようになります。
一方アクティブリコールなど一切気にせず、その場でできるようになることをまず最優先にし、理論など気にせず、手取り足取りで教えても、僕のレッスン同様その場ではすぐにできるようになったり、数日後の試合でも好結果を得られることもあります。しかしそこから時間が経てば経つほど、その正しい動作は少しずつ歯車が狂っていき、気がつくと実は教わったフォームとは違うフォームでプレーしていた、というケースも多々あります。
そこで再度手取り足取り教えてあげても、これは結局は短期記憶にしかならないため、また時間が経つとフォームが崩れてしまい、いつまで経っても好不調の波が大きい状態が続いてしまいます。つまり重要なのは崩れてしまってから教え直すことではなく、忘れてしまう前に正しいフォームを思い出して良いフォームを崩さないようにすることなのです。
良いフォームを短期間しか保てないのはとてももったいないので、やはり野球塾のレッスンでもコーチ側はアクティブリコールを取り入れ、頭と体に入れていく記憶をできるだけ早く、短期記憶から長期記憶に変換していきたいわけなのです。
ちなみに実際に記憶が定着されていくのは睡眠時ですので、質の良い睡眠を心がけることもアクティブリコールにとっては大切な要素となります。もし睡眠直前の2時間でブルーライトを浴びたり、血行をよくするストレッチングをしてしまったりすると睡眠の質が低下しますので注意が必要です。
ということで今回のコラムでは、僕の野球塾ではただ野球を教えるだけではなく、アクティブリコール作業を用いながら選手を指導している、ということについて書いてみました。もし僕のレッスンに少しでも興味を持っていただけたら、お気軽にLINE(僕のLINEはこちらから友だち追加してください)よりお声掛けください。
]]>僕自身、やっぱり納得いくまで野球をしたかったなという気持ちはありました。でも中学卒業後、高校の野球部に参加していた入学式の前日、僕は肩関節胞損傷というかなり痛い部類の野球肩になってしまいました。高校時代はずっと右肩のリハビリを続けていましたが、結局その肩が以前のようにボールを投げられるようにはなりませんでした。
僕は中学3年生の時点で125km/h程度のストレートを投げられるようになっていました。1978年生まれの僕らの世代にとっては、中学生の120km/h台というのはかなり速い部類で、全国を探しても130km/h以上を投げられる中学生などほとんどいませんでした。そんな時代でしたから、125km/hであっても当時としてはかなり速い方だったんです。
細身の体に対して速過ぎるボールを投げ続けた影響だったのかもしれません。肩を痛めて選手としての道は断たれ、高校卒業後の19歳くらいの時から野球動作に関する科学を学び始めました。そこから13年ほど野球とは関係ない仕事をしながら、野球に関する様々な科学を学び続け、2010年1月にあるプロ野球選手の自主トレをサポートする形でプロコーチデビューを果たし、念願だった転職を実現させました。
僕の野球塾はそこから始まったわけですが、その当時はまさかここまで長くできるとは思っていませんでした。この10年くらい、野球塾は引退したプロ野球選手たちが次々と開校していきました。しかしその中でもレッスンし続けられる野球塾はごく一部で、これまで本当に多くの野球塾が経営難で潰れてきました。そんな中でも僕の野球塾は今なお潰れる気配なく毎日選手を指導し続けられています。
僕のように目立った球歴を持たないのにこれだけ長く野球塾を続けていられるのは、やはりプロコーチになる前にしっかりと野球に関する科学を学んだことが一番だったと思います。フォームに関するバイオメカニクスや人体力学、解剖学、投球や打球に関する物理学、野球に関する医学、スポーツ心理学、栄養学などなど、コーチをする上で役立ちそうな科学はすべて学びました。
それに加え子どもたちを教え始める前、僕は複数の野球塾の見学にも行きました。いわゆるベンチマーキングです。他の野球塾がどのようなコーチングを行なっているのかをリサーチしたり、情報交換をしたりしました。そしてそこで気づいたのは、有料の野球塾であっても科学的根拠のないことを子どもたちに教えているところがすごく多いということでした。
有料の野球塾なのに根性論で指導をしていたり、少年野球チームやクラブチームの延長のような指導しかしていないところがとても多かったんです。もちろん中には科学的根拠の見える指導を行っている良い野球塾もありましたが、それを確信できるところは僕が見学に行かせてもらった中ではせいぜい1割程度でした。
そして野球に関する科学的用語を使って話そうとしても、その用語を補足なしで理解できるプロコーチもやはりほとんどいらっしゃいませんでした。中には、元プロ野球選手だったコーチなのですが、軸足のことを軸だと思っているレベルのコーチさえいました。しかし軸足は軸として機能することはありません。軸足は英語で言うと "pivot foot" と言います。意味は "旋回する足" です。そして軸は英語では "axis" と言って、pivot foot とはまったくの別物です。
元プロ野球選手たちの選手としての経験値は半端じゃありません。僕なんかに太刀打ちできるものではありません。しかしコーチとして必要なスポーツ科学への造詣の深さは、元プロ野球選手である野球塾のコーチたちは僕に太刀打ちできません。関東近辺では僕が知る限りでは、元西武ライオンズの熊澤とおるコーチくらいです。熊澤コーチは僕が尊敬するコーチの一人です。
ちなみにプロ野球チームでも活躍された有名トレーナーが主宰する野球塾も多いですよね。しかしご注意いただきたいのは、そのトレーナーの野球塾であっても、そのトレーナーから直接指導を受けることはできない、という点です。
多数の野球動作に関する本を出されているトレーナーの野球塾に通っていた僕のある生徒さんは、その野球塾では根性論ばかりを言われたと話していました。中学生である選手自身だけではなく、送り迎えをされていた親御さんもその指導法を見聞きしていましたので、間違いないかと思います。野球塾を主宰している有名トレーナー自身の知見はすごかったとしても、その野球塾で実際に指導に当たっていたのは大学生のアルバイトコーチだったそうです。
その生徒さんと親御さんは、高いレッスン料を払って根性論を聞きにきているわけではないという思いからその野球塾はやめて、僕のレッスンを受けるようになりました。ちなみにレッスン料は僕の野球塾よりもはるかに高額だったそうです。なぜ高額になるかと言うと、単純にその有名トレーナーのネームバリューと、充実した屋内練習場の設備の影響です。大した内容の指導を受けられなくても、設備が充実しているだけでレッスン料は高額になります。
しかし現在の僕の子どもたちへのレッスンはZOOMのみです。コロナ前は子どもたちにも対面でマンツーマンレッスンを行っていましたが、現在対面でコーチングを行なっているのはプロ野球選手のサポート時のみです。小中学生に関してはすべてZOOMレッスンで、生徒さんたちはみなさんご自宅のお部屋やお庭からレッスンを受けているのですが、僕のレッスン内容は科学的根拠が満載であるため、充実した屋内練習場などなくてもどんどん上達していきます!
そして箱(屋内練習場)を持たない僕の野球塾のマンツーマンレッスン料は、場合によっては他の野球塾のグループレッスン料よりも安いことがあります。時々、僕は元プロ野球選手じゃないからレッスン料が安い、もしくは安かろう悪かろうと思われることもあるのですがそうではなく、僕の野球塾は箱を持たない分マンツーマンなのに安くなっているんです。
充実した設備は、ないよりはあった方が良いと思います。しかしそれによってレッスン料が高額になってしまってはいけません。そして野球塾のレッスンは、グループレッスンよりもマンツーマンの方がはるかに高い効果を得ることができます。もしグループレッスンとマンツーマンレッスンの選択肢があるのであれば、ご予算が許す限りは絶対にマンツーマンレッスンを選んでください。
グループレッスンは、一般的には5〜12人程度に1人のコーチが付くという割合が多いと思います。1クラスの生徒さんが5人前後であれば、少人数制レッスンと紹介されていると思います。
僕自身、この野球塾で一夏だけグループレッスンをしたことがありました。その時の生徒さんは4人でした。1クラス4人で1レッスン1時間だったのですが、たった4人であっても、選手全員の細かい動きを追い続けることは困難でした。もちろん全体的に動作を追うことはできるのですが、しかしマンツーマンをやっている時のように、選手の動きを完璧に追い続けることはできませんでした。
そのため選手が良くないフォームを取った時、それがその時がたまたまだったのか、それともいつもなのか、もしくは何割程度の割合なのかを把握することができません。さらにはその動作が常に出ているわけではない場合、僕がその動作に気づけないことだってあります。そしてそれはコーチングとしては致命的なミスとなってしまうこともあります。
僕は一般的には視野が広いタイプのコーチで、監督経験もあるのですが、監督としてはベンチから試合のすべての状況を常に把握することができました。しかし試合状況とコーチングはまったくの別物でした。選手個々のフォームをしっかり追い切れないことから、僕がグループレッスンを行ったのはその夏休み期間が最初で最後となりました。
野球塾の経営という視点で考えると、絶対にグループレッスンは行った方が実入りは良くなります。しかし僕は選手全員を上達させたいという強い思いがあるため、今後もマンツーマンにこだわってレッスンをしていくつもりです。
もし野球チームや他の野球塾で指導を受けていても、いまいち根拠に欠ける指導ばかりだと感じた時は、ぜひ一度僕のレッスンを受けてみてください。僕のLINEを友だち追加してもらえれば、体験レッスンが無料になるクーポンもプレゼントしています。無料レッスンですので受けて損することはありません。ぜひ一度僕の理論派レッスンを受けてみてください。
レッスン内容は超理論的ですが、でも小学生でも大人でもちゃんと理解できるように分かりやすくお伝えしています。小学生には小学生に合わせて、大人には大人に合わせて言葉を選びながらレッスンをしています。そして一度レッスンを受けてくれた方はその内容に非常に満足してくださり、70〜80%の方がその後もレッスンを受け続けてくださいます。
実際にレッスンを受けてくださった方からいただいたご感想もこちらの野球塾ページの感想欄でご紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
]]>今季からアスレティックスに移籍した藤浪晋太郎投手をイップスだと断定したメンタルトレーナーの阿部久美子先生や、その他野球関係者も多いようですが、これを言った方はイップスのメカニズムについてほとんどご存知ないと言えます。阿部先生にしてもメンタル面の専門家かもしれませんが、イップスの原因となる動作のメカニズムに関してはご存知ないのではないでしょうか?そこで僕はプロフェッショナルコーチとしてここで断言しますが、藤浪晋太郎投手はイップスではありません。
そもそもイップスとは何かと言うと、まったく投げたいところに投げることができず、キャッチボール相手もボールを捕ることができないような状態のことを言います。藤浪投手は確かに四球をたくさん出して試合を壊してしまうことがありますが、これはイップスではなく、ただの制球難です。
もし藤浪投手が本当にイップスだとすれば、ほとんどのボールがキャッチャーが捕球できないところに飛んでいってしまうはずです。しかし藤浪投手のボールのほとんどをキャッチャーは普通に捕球できていますので、これをイップスということはできません。
そしてイップスは野球をやめるまで治らないと信じている人も多いようですが、これも誤りです。どのように投げるとイップスの状態になるのかというのは、この10年くらいの研究ですでに多くが明らかになっています。そしてその原因動作を適切な方法で直すことにより、野球選手のイップスは治るものになってきました。
僕自身イップスに悩む選手をコーチングし、そのイップスをしっかりと治したことが多々あります。例えばある選手は高校時代からイップスに悩み、大学野球に進んでも治らず僕のコーチングを受けに来たのですが、初日にキャッチボールをすると、彼のボールは僕のキャッチャーミットがまったく届かないところにしか行きませんでした。これがイップスです。
上述した通り、藤浪晋太郎投手はイップスではありません。藤浪投手の場合、テイクバック、トップポジション、ボールリリースに再現性がないんです。分かりやすく言うと、常に微妙に違うフォームで投げてしまっているんです。ボールは、常に同じフォームで投げることによって常に同じところに投げられるようになります。
例えば外角と内角で投げ方を微妙に変えようとするピッチャーが多数いますが、これは制球難の原因になります。恐らくは藤浪投手もこれをやった経験、もしくはやらされた経験があるのではないでしょうか。藤浪投手の場合、内外角を投げ分けようとする際に、特にテイクバックからトップポジションにかけての動作が変わることが多いようです。
繰り返しますが、藤浪晋太郎投手はイップスではなく、ただフォームを崩しているだけです。藤浪投手はやはり、僕のようなコーディネート(動作調整)を行えるパーソナルコーチと契約すべきです。バイオメカニクスを理解していてそれを指導できるコーチであれば、藤浪投手の制球難をしっかりと直してあげられるはずです。
ちなみに藤浪投手はボールリリース前後で手首を背屈掌屈させる癖もあります。この動作のことを日本ではスナップスローだと勘違いされていることも多いのですが、ボールを投げるにあたり手首は絶対に曲げてはいけません。手首を使って投げてしまうと制球は絶対に安定しなくなりますし、そもそもボールの回転数が大幅に低下してしまいます。
Shintaro Fujinami, Wicked 89mph Splitter. 🤢 pic.twitter.com/XLfKAnm99L
— Rob Friedman (@PitchingNinja) April 8, 2023
藤浪晋太郎投手のフォームが安定しない主な原因の一つは、スケール効果にあります。スケール効果とは平たく言うと、高身長で手足が長くなるほど、その手足を上手く動かすことが難しくなる現象のことです。
そしてこのスケール効果は高身長の選手じゃなくても、中高生などで急に身長が伸びた選手にも一時的に見られます。このスケール効果を最小限に抑えて手足を思うように動かしていくためには、軸の使い方を改善する必要があります。特に197cmという高身長の藤浪投手の場合は。
藤浪投手は遠心力を使って投げるタイプの投手なのですが、しかしこれがフォームを崩す原因になっています。難しい話をすると投球時、体軸と運動軸は分離させて使うのが理想的です。これができているのが同じ高身長の大谷翔平投手や佐々木朗希投手です。
大谷投手と佐々木投手の場合、遠心力ではなく求心力を使ってボールを投げています。そのため体軸(背骨)と運動軸がしっかりと分離し、ボールリリースでは運動軸が体の右外に飛び出ています。そのため高身長で長い腕であっても遠心力や慣性モーメントに振り回されることなく、コンパクトにスローイングアームを振って投げることができています。その結果制球が非常に安定しています。
ちなみに同じ高身長でもダルビッシュ有投手の場合は少し特殊で、ダルビッシュ投手は高身長であるにも関わらず腕の長さと手の大きさが身長175cmの僕とまったく同じなんです。そのため求心力をそれほど意識しなくても、スローイングアームが遠心力に振り回されることがありません。
恐らく阪神タイガースの投手コーチたちは、体軸と運動軸に関しての理論をご存知ないのだと思います。だからこそこれだけ長期間指導してきても、藤浪投手のフォームを安定させることができませんでした。藤浪投手のテイクバックからトップポジションにかけての動作が安定していないことは上述しましたが、遠心力投法を求心力投法に根本的に変えていかない限り、いくらショートアームを取り入れたところで藤浪投手は今後もスケール効果に苦しみ続けるはずです。
ただ、それでも調子が良い時は良いピッチングをすることができるでしょう。しかしこの調子の良さというのも藤浪投手の場合は再現性が低く、たまたまその試合は良いところでテイクバックとトップポジションがはまっていたに過ぎません。そしてそれを藤浪投手自身投げながら自覚できていないため、その調子の良さを持続することができないんです。
ちなみに遠心力投法を求心力投法に変えるためには、大幅なフォーム改造は必要ありません。股関節と骨盤の使い方を専門家がコーディネートしてあげれば、ある程度の期間のトレーニングで改善することが可能です。藤浪投手の場合、それができるコーチとの出会いがなかったというのも不運と言えるのかもしれません。例えば大谷投手には中垣征一郎コーチ、佐々木投手は吉井理人コーチとの出会いがあったように。
アスレティックスでは先発として数試合投げ、すでに先発失格の烙印を押されてしまっている藤浪晋太郎投手ですが、彼はここで終わるべきレベルの選手ではありません。彼は良いコーチとの出会いがあれば、必ず大化けし、スーパーエースになることだって可能です。
高校時代の藤浪投手のボールは、高校生ではなかなか打てないボールでした。そのため藤浪投手も打者を見下ろすようにして投げていました。そしてそれはプロ3年目くらいまでは続いていき、高卒でプロ入りし、最初の3年間は3年連続二桁勝利を挙げています。
しかしプロ入り4年目の2016年になると少し疲れが見えてきたり、肩痛にも見舞われ、プロの打者も十分に藤浪投手のボールにアジャストできるようになっていました。すると高校時代の勢いのままでは思うように勝てなくなり、藤浪投手も色々と考えるようになったのかもしれません。
そんな中起きたのが、時の金本知憲監督による161球の強制完投事件でした。その日の藤浪晋太郎投手はいつも以上に調子が悪く制球も乱していたわけですが、金本監督は懲罰的に藤浪投手に完投をさせました。しかし調子が悪い状態のフォームで投げ続けても、そこから試合中に突然フォームが良くなることはまず考えられません。この金本監督のやり方は、大切な選手を預かる指導者としては間違ったやり方です。
この場面での金本監督の義務は、調子が悪ければ早めに降板させて次の試合に向けて投手コーチにフォーム調整をさせたり、一度登板を飛ばしてミニキャンプを張らせるなどの行動です。決して懲罰的に感情に任せて完投させることではありません。しかし金本監督がそのような対応を取ってしまったことで、藤浪投手はさらにフォームを崩し、この年からほとんど活躍できなくなりました。2015年は一年で14勝を挙げた藤浪投手ですが、2016〜2022年では合計22勝しか挙げられていません。
金本監督は藤浪投手に懲罰を与え、阿部先生はイップスだと断定。そしてエモやんこと江本孟紀氏は走り込み不足だと言いました。しかし正解はそうではなく、桑田真澄氏が仰った通り単なる技術不足です。そしてその責任は、その技術をコーチングすることができなかったタイガースの監督・コーチにあったと言えます。だからこそ藤浪投手はチームのコーチだけに頼るのではなく、外部の野球科学を理解したプロフェッショナルコーチと契約すべきなんです。
もし藤浪晋太郎投手がスケール効果を克服するための技術を身につけられれば、藤浪投手は間違いなくスーパーエースへと変貌するはずです。ここで大切なのはイップスだと断定して上から無理矢理ふたを閉めてしまわないことです。上からふたをしてしまえば、藤浪投手自身「あぁ、俺はイップスだからダメなんだなぁ」というメンタルに陥ってしまいます。
ちなみにアメリカには、身長208cmのビッグユニットことランディ・ジョンソン投手の制球難を、遠心力投法から求心力投法に修正することにより大化けさせたトム・ハウスという名コーチがいます。最近はNFLの選手の指導を行うこともあるハウスコーチですが、藤浪投手は一度ハウスコーチに話を聞きに行っても良いかもしれませんね。
もしくは機会があれば、引退後は写真家・ドラマーとして活躍しているハウスコーチの教え子、ランディ・ジョンソン氏に会いにいっても良いかもしれません。同じようにスケール効果に悩んでいてそれを克服してスーパーエースになった人物ですから、藤浪投手にとって何かプラスになる助言をしてくれるはずです。ジョンソン氏とは一度日本でお会いしたことがあるのですが、とても気さくで人柄の良いビッグユニットでした。ですからきっと藤浪投手の相談も親身になって聞いてくれるはずです。
とにかく藤浪投手には決してこのまま終わってしまうのではなく、メジャーで二桁勝利を挙げて日本とアメリカの野球ファンを見返して欲しいですね!
]]>僕は2010年1月にマンツーマン専門野球塾を開校して以来、高校生に対するコーチングもたくさん行なってきました。しかし実感としては、高校生のコーチングは非常に難しいというイメージが強く残っています。小学生、中学生、高校生、大学生、社会人野球、草野球、プロ野球の中で、個人的には高校生が一番コーチングしにくいというのが実感です。
その理由として、まず高校の野球部はほとんど毎日活動があるため、レッスンを受けられる時間が非常に少ないことが挙げられます。本来であれば週7回部活動を行うことはできないはずなのですが、このガイドラインに従わずにほとんど毎日部活動を行なっている野球部がほとんどです。このような理由から、まず物理的に高校生のレッスンは非常にやりにくいんです。
恐らく他の野球塾や野球アカデミーでも同じような実感があり、高校生を受け入れている野球塾も数としては多くはありません。僕自身も最近は高校生の受け入れは基本的には休止しています。
僕の場合は高校生と大学生であれば、大学生の指導をすることの方が多く、レッスンも大学生の方がずっとやりやすいという印象を持っています。大学生の場合は仮に部活がほとんど毎日あったとしても、授業次第では毎週しっかりとレッスンを受けられる選手がほとんどだからです。
名門野球部ということで言えば、僕は慶應大学、早稲田大学、明治大学、立教大学、法政大学、東京大学、駒澤大学、亜細亜大学などなど、東京近辺の多くの野球名門大学の選手たちを個別指導してきました。そこには六大学リーグで活躍してプロ入りした選手たちも含まれています。
そして甲子園出場選手のレッスンも多数行ってきましたが、残念ながら高校生を指導して、その高校生が甲子園に出場できたケースは僕の野球塾では一件もありません。小中学生時代に複数年レッスンを受けてくれた子が高校に進み、甲子園に出場したケースばかりです。
詳しくはこれからまた書き進めていきますが、今後僕の場合においては、よほど受講に対し熱心な選手以外は高校生の受け入れは行わない予定です。
高校生のコーチングが難しいもう一つの理由として、プライドの高さが挙げられます。小学生・中学生時代もずっと野球をやってきて、高校でも毎日ガッツリ野球に取り組んでいることから、高校生は非常にプライドが高いんです。
そういう意味では大学生も同じでは?と思うところですが、大学生の場合はプライドの高さよりも、柔軟性が先行してきます。もちろんすべての高校生・大学生がそうというわけではないのですが、2010年以来の僕の野球塾においてはこの傾向が顕著に表れています。
高校生の場合は、今までやってきた理論や動作と違うことに対し拒否反応を示すケースが多いんです。例えば肘を痛めた選手がいたとします。その選手のフォームを見て、僕が肘が痛くなっている原因を指摘し、フォームの改善方法をアドバイスしていっても、「でも監督はこの投げ方が良いと言っています」という感じで、多くの場面で「でも」という言葉を使ってきます。
冷静に考えれば、そのフォームで野球肘になっているのだから、そのフォームを修正しなければまた肘が痛くなると分かります。しかし高校生の場合はその考えに至るケースが少なく、今までのフォームを少しでも変えていくことに拒否反応を示すことが多いんです。
一方大学生の場合は、肘が痛い、肩が痛い、球速が上がらない、制球力が上がらない、だからフォームを修正したいという考えで僕の野球塾の門を叩いてきます。そのため僕がたくさん伝えていく理論に対しても非常に貪欲で、一生懸命ノートを取ってくれる選手が多いんです。
逆に高校生の場合は、肘痛を治したい、肩痛を直したい、球速を上げたい、制球力を上げたい、というところで思考が止まってしまっている選手が多いようです。繰り返し言いますが、もちろん全員ではありません。しかし全体的に見るとそういう高校球児が僕の野球塾においては多いようです。
肘痛を治したいけど今までやってきたことは変えたくない。球速を上げたいけどフォームを変えたいわけじゃない。という考え方の高校生が多い印象です。高校生・大学生くらいになると、フォームもかなり固まってきています。そのため僕も、フォームを大幅に変更させることはほとんどありません。
もちろん選手が望めば大幅に変えることもありますが、基本的には現在のフォームを崩さずに、細かなマイナーチェンジを積み重ねてパフォーマンスを向上させる方向でレッスンを進めていきます。しかし高校生の場合は、そのマイナーチェンジを受け入れる心構えができていないケースがほとんどのようです。
しかしフォームも変えたくない、今までやってきたことも変えたくない、マイナーチェンジも難しそうでは、野球塾に通ってもらう意味はありません。特に僕のレッスンのように、一緒に練習をするタイプの野球塾ではなく、フォーム改善を専門にした野球塾であれば尚更です。
僕の今までのプロコーチとしての経験から言わせてもらえれば、野球塾に通って一番成長できるのは中学生です。その次が中学生と大差なく小学生。続いて大学生という順番になると思います。大人の草野球選手に関しても、本気で受講してくださる方は40代50代でも球速が10km/h前後速くなるケースも多々あります。
投手育成コラム:中学生が野球塾に通うとグングン上達できる3つの理由
ただしこれも繰り返しになりますが、僕のレッスンを受けて本気でパフォーマンスを向上したいと考えている高校生に関しては、ご相談いただければ受け入れを行なっています。しかし試しに受講してみようかな、という程度の高校生に関しては現在はすべてお断りしております。
やはり一番良いのは、レッスンによって5〜6年生までに投打共にしっかりと正しい基礎を身につけて、中学でグングン伸びていくための下地を作ることです。そして引き続き中学でもレッスンを受け続けて、しっかりとした基礎の上に今度は応用などさらにレベルアップした内容を入れていけると、高校・大学に進んでいってもちゃんと活躍できる選手になれます。
実際このような流れで僕のレッスンを受けてくれた高校生は、高校野球で通算打率.400以上打っていたり、奪三振の山を築けたりしています。ちなみに彼らは高校入学後は僕のレッスンは受けていません。困ったことがあると時々LINEで相談を送ってきてくれる程度です。
高校に入ってからではもう手遅れ、というわけではありません。球児自身の考え方次第では高校に入ってからグングン伸びていくことも可能です。しかしできるならば野球塾のレッスンは小学生のうちから受けて、科学的に本当に正しい基礎を身につけ、そして中学で応用を入れていけるように流れを作って受講していただくのがベストです。
しかし高校生になって初めて僕の野球塾の存在を知り、本気でレッスンを受けて本気でレベルアップしたいという選手は、ぜひ保護者の方よりお気軽にメールやLINEにてご相談くださいませ。本気の選手に対しては、僕も本気でコーチングをしています。
]]>高野連は本当に大規模な改革が必要だと思います。高野連は公益財団法人日本高等学校野球連盟が正式名称であり、この公益財団法人という言葉は一つのポイントになります。公益財団法人として認められる事業は、不特定多数の利益に寄与するものだけとされています。
今回高野連において問題になっているのが、ニューバランスというメーカーのスパイクについてです。大谷翔平選手が今季からニューバランスのスパイクを着用していることで、WBC以降ニューバランスのスパイクが注目の的になっていました。
FRESH FORAM L3000 v6という黒一色のスパイクなのですが、これが高校野球では使えない規格になっているんです。どうダメかと言うと、シュータン部分に「3000」と書かれているのですが、このロゴが大きすぎるから高校野球では使えないという本当に馬鹿げた理由なんです。
高野連の規格ではロゴは縦3センチ×横5センチ以下である必要があるらしいのですが、このスパイクの「3000」というロゴがこれよりも僅かに大きいらしいんです。そのためこのスパイクを高校野球の公式戦では使うことができないのだそうです。しかし上の写真をじっくりと見ても、こんなロゴを一体誰が気にすると言うのでしょうか?
不特定多数の利益に寄与するのが公益財団法人であるわけですが、高校野球中継でこの黒地のシュータンに黒字で書かれた「3000」という文字を読める人などいるでしょうか?高野連がやっていることは本当に馬鹿馬鹿しいことばかりです。
この馬鹿げた高野連の対応のせいで、高校球児たちは憧れの大谷翔平選手と同じメーカーのスパイクを試合で履くことができないわけです。ニューバランスのこの「3000」シリーズのスパイクは2023年3月に発売されて以来、かなりの人気商品になっていました。しかし高野連のせいでニューバランスや販売店は返品返金対応に追われているそうです。
これが例えば、球児の安全性に関わることで使用することができないと言うのなら理解できます。しかし間近でしっかり見ないと読めないような文字を高野連は問題にしているわけです。僕は昔から高野連のやり方には否定的で、このブログ内でも幾度となく高野連の対応を批判してきました。
スパイク問題で言えば、高野連は熱中症対策として白いスパイクの着用も数年前から認めています。確かに熱を吸収する黒よりは、熱を反射する白の方が足部に熱は篭りにくくなります。しかしだからといって白いスパイクを履くと涼しくなるわけではなく、黒よりはマシだけど、白くても真夏の革製・人工皮革製のスパイクの中はかなりむれて暑くなります。これを熱中症対策だと高らかに宣言した高野連の感覚を、僕には理解することができません。おそらくはスパイクを履いて炎天下で野球などやったことがない人たちが高野連を組織しているのでしょう。
ちなみにこの時、高野連の関係者が夏の日差しの下で白いスパイクを履いて、黒よりも涼しいとテレビで誇らしげに言っていました。しかし彼は履いて数秒間立っているだけでした。しかし球児たちは炎天下で縦横無尽に走り回ります。この高野連の方にも、2時間くらい白いスパイクを履いて炎天下でプレーした後に感想を言ってもらいたかったですね。それでもなお「白いスパイクは涼しい」と言えたのならば、それはそれで立派なものです。
つまり白いスパイクは、根本的な熱中症対策にはまったくなっていないということです。本気で熱中症対策を行いたいのであれば、夏の甲子園を10月下旬などに開催したり、どうしても夏休み中にやりたいのであれば、午前11時前とナイトゲームだけにすべきです。白いスパイクを履いていたとしても、炎天下の中で球児にプレーをさせれば命に関わることだってあります。
これも以前このコラムで書いたことですが、日本では美談化されることが多い夏の甲子園ですが、野球の本場アメリカでは虐待として報じられることが多々あります。高校生に炎天下の中2時間も3時間も試合をさせるのは、アメリカ人には虐待しているように見えるのです。
高野連は一度解体して、まったく新しいメンバーで生まれ変わるべきです。例えば古田敦也氏など、選手経験が豊富で球児たちのことをしっかりと理解することができ、人脈もリーダーシップもある人物をトップに据えるべきです。
現在の高野連の会長は66歳であるわけですが、この会長には今回話題になっているスパイクの問題が、問題になっていること自体が問題であることだと分からないわけです。だからこのような馬鹿げたルールによって球児たちはせっかく親に買ってもらった新しいスパイクを、憧れの選手と同じスパイクを、泣く泣く返品しなければならない事態に陥っているわけです。
そもそも黒一色、白一色のスパイクしか履けないことに問題があります。これはやはりロゴがメーカーの宣伝になってしまうからという理由なのでしょうが、それならばグラブやミットはどうなのでしょうか?必ずロゴが入っており、これはテレビ中継でも確認することができます。どの選手がどのメーカーのグラブを使っているのかがはっきり分かります。
もちろんスパイクであっても、白地に黒いロゴの場合はやはりメーカー名をはっきり見て取れます。それなのに高野連は黒地のシュータンに黒字で「3000」と書かれていることを問題にしているわけです。
さらには高野連は、グラブやミットに背番号や名前を書いたり刺繍したりすることも禁止しています。グラブに自分の名前を入れることの一体何が問題なのでしょうか?高野連はこれが売名行為に繋がるとでも考えているのでしょうか?高野連の考えることは、僕にはまったく理解できません。
そして今回のスパイク問題にあたり、ニューバランスは公式サイトでお詫び文を掲載しています。しかし本当に謝罪しなければならないのは素晴らしいスパイクを作ったニューバランスではなく、馬鹿げたルールで世間を混乱させている高野連ではないでしょうか?ただ、ニューバランスもこの馬鹿げた高野連の規格を十分に確認しなかったミステイクはちょっと痛かったですね。
問題となったニューバランスのスパイクは、高校野球であっても高野連が主催していない大会であれば着用可能です。しかしそんな大会が一体どれほどあるでしょうか?大谷選手に憧れてこのスパイクを買った球児たちは今、これを練習用にするか返品するかという選択肢を高野連に迫られています。
野球人口が減っていると言わ続けてもう久しいわけですが、こんな連盟が率いているのですから、野球人口が減っていても不思議ではありませんし、今後も野球人口はさらに減っていくでしょう。その事実を避けることはできないわけですが、しかしそれでも高野連内の人間が変われば、減っていくそのスピードを緩やかにすることは可能ではないでしょうか?
]]>野球に限らない話ですが、野球界でも指導者による体罰や暴言が本当になくなりませんね。これだけ頻繁に体罰・暴言に関する報道が出されているのに、野球指導者というのはまったくニュースを見ないのでしょうか?同じ野球のコーチとして本当に呆れるばかりです。
体罰・暴言が出てくるのは、ほぼ確実に中学・高校野球部、中学クラブチーム、少年野球のどれかです。大学野球や社会人野球でこのようなニュースが出てくることはほとんどありません。その理由として考えられるのは、大学や社会人野球の指導者は報酬をもらっているということが影響しているのではないでしょうか?
僕自身も野球塾を主宰しているプロフェッショナルコーチです。お金を頂かずに選手を指導することはありません。ですが少年野球や中学クラブチームの指導者はすべてボランティアコーチですし、野球部の指導者のほとんどすべては教職員です。私立高校の野球部では中には雇われ監督もいらっしゃいますが、これはレアなケースです。
僕らのようにお金を頂いてコーチをしている人間は、やはり人よりも少しでも多く勉強をしようと考えます。野球科学・スポーツ科学、解剖学はもちろんのこと、スポーツ医学やスポーツ心理学も勉強します。そして指導者になるために最も学ばなければならないことはスポーツ心理学です。
スポーツ心理学に関しては、僕は『運動指導の心理学』という本を中心に学んでいます。スポーツ心理学に関する本はたくさん読みましたが、この一冊に関しては本当に素晴らしい内容であるため、何度も読み返しています。そして重要なポイントはノートにまとめてあり、必要な内容は一瞬で目の前に出せるようにしています。
選手に対し体罰・暴言を行う野球指導者というのは、ほとんど100%スポーツ心理学など学んでいないのでしょう。さらに付け加えれば、選手に対するセクハラも同様です。詳しくは受容性が強い選手はセクハラさえも受容してしまうというコラムで書いていますが、男性指導者による女子選手に対するセクハラもまったくなくなる気配がありません。
ボランティアコーチはもちろんのこと、教員にしても野球部の指導に対する対価は基本的には得ていません。出ているとすれば時間外労働に対する賃金となるのではないでしょうか。指導をしていることに対する報酬を得ていない分、何か他で対価を得ようとするのかもしれません。
例えばセクハラをして性的満足を得ようとしたり、部員を殴ってスカッとしようとしたり、暴言や誹謗中傷を浴びせて上位に立とうとしたり。そういうことによってなんらかの利益を得ようとしているのかもしれません。もしくは「ボランティアでやってやってるんだ」という上から目線的な意識を拭えないのでしょう。
今回は掛川工業高校の野球部指導者が選手に対し「死ね」「バカ」「使えないな」と暴言を吐いたと報道されましたね。この指導者は30代男性教員だそうです。子どもを教育する立場の人間が高校生に対し「死ね」と言っているわけです。高校野球は言わずと知れた教育の一環であるわけですが、この教員は一体どのような教育を受けて生徒に「死ね」なんて言える教育をしていたのでしょうか?
全体的に見ると教員の数は決して足りているわけではないようですが、しかしこのような暴言を吐いた者は教員免許を剥奪されるべきです。もしくは教育実習からやり直すべきでしょう。そして再発防止プログラムを徹底させるべきです。
ちなみにニュースにはなっていませんが、選手に「死ね」という暴言を吐いている野球指導者はあちこちに存在しています。僕自身それを目の当たりにしたことも複数回あります。
東京の江戸川河川敷で、江戸川区の中学の野球部が他校と練習試合をしていました。すると内野の子が連続してエラーしてしまったんです。するとその中学の監督、つまり教員はその選手を大声で「お前頼むから死んでくれよ!」と罵倒し始めました。口調はもうほとんどヤクザです。
保護者、もしくは学校関係者の大人も数人見えていたのですが、その監督を注意する大人は一人もいないようでした。これが現実です。監督は子どもに「死ね」と怒鳴っているのに、周りの大人は何も言わない。もちろん審判も何も言わない。そして「死ね」と言われた子を助ける大人も誰もいない。こんなのまったく教育と呼ぶことなんてできません。
その時僕は隣のグラウンドでコーチングをしていたのですが、コーチングの合間に暴言を吐いた監督を
体罰は暴行罪、暴言は名誉毀損、セクハラはセクハラであり、セクハラは最悪の場合性的暴行(レイプ)に繋がります。どれも紛いない犯罪です。このような犯罪に対してはもう容赦すべきではないと思います。今回の掛川工業高校の問題に関しても、生徒側は弁護士を立ててこの教員に対し徹底的に反撃し、それなりの慰謝料を得るべきです。そして出来うれば、その慰謝料は野球部の道具購入などで使って欲しい。そして生徒たちが何の不安もなく伸び伸びとプレーできるようになって欲しい。
教育委員会はあまり頼りにはなりません。これらの犯罪報告があれば調査するけど、教育委員会自らには問題をほじくり出して改善しようという意思は見られません。そしてこれは各野球連盟にも言えることです。野球連盟も、大会開催以外で役に立っているようんは見えません。
ポニーリーグに関しては先進的な取り組みに挑戦する姿を見せてくれています。しかし他の野球連盟に関しては未だ前時代的で、昭和気質の無能な野球指導者を野放しにしているのが現状です。
やはりチームの指導者となるためには、指導者ライセンスを必須にすべきでしょう。スポーツ心理学を学んでいない人間に子どもたちを預けるべきではないと思います。指導者ライセンスはもちろん万能ではありませんが、しかしスポーツ心理学を指導者たちにかじらせることはできます。
かじってみて、そこから自ら勉強を深めていくかどうかは本人次第です。そして勉強を頑張って良い指導者になろうと努力した人に対しては、A級、S級といったクラスのライセンスを付与していけば、子どもを預ける側の親御さんも安心してチーム選び、学校選びができるようになります。
野球人口が減少していると言われ始めもう久しいわけですが、一体どれくらいの野球未経験者の親御さんが、未だに暴力・暴言の報道が絶えない野球チームにあえて子どもを入れたいと思うでしょうか?野球人口を増やすために5人制野球を作るのも良いのですが、しかしその前にまず暴力・暴言の根絶が先だと僕は思うんですが、いかがですか?財団法人全野球協会の皆様。
]]>僕は高校の入学式の前日に肩関節胞を損傷するという酷い野球肩になり、ボールを投げられなくなってしまったわけですが、これは本当に痛かった。右手では歯磨きさえもできないくらい痛かった。
僕の場合は、痛みに関しては急に出ました。肩関節胞の損傷そのものはすでに中学時代からあったはずなのですが、それが痛みとなって出てきたのは高校の入学式の前日が初めてでした。そして僕の場合に関しては、痛みが出た時はもう手遅れで、手術をしてもまたちゃんとボールを投げられるようになるかは分からない、という診断でした。
そのため手術はせず、しばらくは自然治癒に期待しながら、少しずつリハビリを始めていきました。でも結局ちゃんと治ることはやはりなく、今も少し強くボールを投げるとジンジン痛みます。
それでも19歳までは選手としての道は諦めず、僕は運良くプロテストのようなものを受けられることになりました。トライアウト制度がある現在はもうプロテストのようなものは基本的にはないのですが、当時はまだあって、あるパ・リーグ球団の方にプレーを見てもらいました。
打撃、走力、守備力に関しては合格でした。特に守備力に関しては内外野の両方を守らされて、どこをやっても上手くこなせました。でもやはり投げるのだけはダメで、外野フライを捕っても二塁までボールが全然届かない(苦笑)
打撃は、ホームランバッターではなかったけどヒットを打てたし、50m走は5秒台。「ボールさえ投げられればドラフト下位指名の可能性は十分」という評価でした。
ちなみにその時見てくださった方は、僕が中学時代にまだ怪我をする前に僕のピッチングを何度か見に来てくれていたスカウトマンでした。そういう縁もあり、肩が痛い僕のために時間を作ってくださったんです。
僕が野球の科学や医学を本気で勉強し始めたのは、このテストで踏ん切りがついたからでした。もう選手としての道はキッパリと諦めて、時間をかけて勉強して、いつかプロコーチになろうという決意のもと勉強を始めたのです。1997年のことでした。
当時はまだ野球科学はそれほど発展しておらず、僕がまず読み込んだのはロバート・アデアの『ベースボールの物理学』という本でした。この本は僕に大きな衝撃を与えました。この本との出会いがなければ、僕はきっと今のような理論派コーチにはなれていなかったでしょう。
この本は、ハッキリ言って難しいです。野球が大好きでも、読書が大好きでも、この本をスラスラと読める人はそうそういないと思います。それくらい難しい。だけど何度も何度もメモしながら読み返しているうちに、書かれている内容がだんだんヴィジョンとして頭の中で鮮明になっていきました。
僕はプロコーチとして、フライボール革命という言葉が誕生する前からフライボール革命の内容を選手たちに伝え続けていたのですが、それができたのも勉強し始めた時にこの本を読んだからでした。
もう古本でしか入手できないと思いますが、もし興味があれば読んでみてください。本当に興味深い一冊です。僕ももちろんこの本はまだ持っていて、今も時々開いては読み返しています。
ということで、これが僕のコーチ人生の指針となった一冊の本なわけです。
]]>僕はプロコーチとして様々なチームを見てきましたが、特に小中学生チームに多かったのが、選手たちに「なぜ」を言わせない指導者の存在です。これが高校野球や大学野球レベルになると、年代的にも選手自身である程度の理論武装をすることができます。そのため「なぜ」を言わせない指導はほぼ通用しなくなります。
しかし少年野球、学童野球、リトルリーグ、中学野球部、シニアリーグなどでは、選手に「なぜ」を言わせない指導が未だにまかり通っています。指導者自身が勝手に正しいと思い込んでいることを、子どもたちに頭ごなしに教え込むやり方です。これはまさに昭和の前時代的なやり方であって、スポーツ科学的には誤ったやり方であるとしか言えません。
ではなぜ指導者たちは「なぜ」を子どもたちに言わせないのか?その理由は簡単で、自分たちが最新の野球指導法をまったく勉強していないからです。だから子どもたちに「なぜ」と聞かれても答えられないわけです。だから「なぜ」を言わせない頭ごなしのやり方をするしかないんです。しかしこれは指導法としては最低のやり方です。
もちろん中には、子どもたちの疑問を丁寧に解決しようとしてくれ、スポーツ科学を独学されている指導者もいらっしゃいます。しかしそのような指導者は少年野球や中学野球ではレアな存在です。ほとんどいらっしゃらない、と言った方が正確です。
僕の個別レッスンを受けたことがある方であればご存知だと思いますが、僕のレッスンでは僕の方から選手にどんどん質問をし、考えさせるようにしています。ちなみに、もちろん質問する内容はレッスンで指導済みのことのみです。
レッスンを受けにきてくださるお子さんたちの99%は、自分から「なぜ」を伝えてくることはありません。色々な動作を指導していても、なぜその動作にすると良いのか、ということを、僕が指導する前に積極的に聞いてくる小中学生は1%いるかいないかという割合です。これもやはり、チームで「なぜ」が許されない頭ごなしの指導が行われている影響だと思われます。
なお、頭ごなしと言うとスパルタ的なイメージもありますが、笑顔で優しい口調だったとしても、子どもたちが「なぜ」と聞きにくい教え込み方は、これも頭ごなしであると言えます。
実は良いコーチというのは自ら教えにいくことはないんです。もちろん僕のレッスンを受けに来てくれた子には、教えるべきことは教えるわけですが、ですがコーチの最大の仕事は、とにかく選手を観察することです。選手の細かい動作の変化に咄嗟に気付けるようにしておくことです。これができないコーチは、プロだろうとアマだろうと選手を伸ばすことはできません。
僕のレッスンではこちらからたくさん質問をしますし、ノートにもたくさんのことを書いてもらいます。このノートというのがとても大切で、いくら僕がコーチとして素晴らしいことを指導したとしても、その話を聞いた数日後には記憶は薄れていってしまいます。すると何を教わったのかをすっかり忘れてしまい、同じことを何度もレッスンしなければいけない、というもったいない状況に陥ってしまいます。
そうならないように、僕は子どもたちにはとにかくこまめにノートを取るようにしてもらっています。そして正しく書けているかどうかも確認するようにしています。しっかりとノートに書いておけば、正しい動作の記憶が薄れてしまっても、そのノートを見ればまた正しい動作を思い出すことができます。聞いて、書いて、動いて、忘れて、ノートを見て、また動いて。この繰り返しを続けていけば、どんどん正しい動作を体が覚えていきます。
そして僕は、選手たちに伝えた言葉や指導内容をすべてメモしています。僕は記憶力はかなり良い部類ではありますが、それでも時間が経つと記憶が曖昧になることもあります。そんな時は「この選手にあの内容は伝えただろうか?」と思い返し、デジタルでメモしているノートに検索をかけます。すると、何月何日のレッスンで伝えたということが一瞬で分かるわけです。逆にまだ伝えていなければ、検索結果が0件になります。
僕自身もこうしてすべてメモしていくことで、自分の言葉とレッスン内容に責任を持つようにしています。ですが上述した頭ごなしの指導者の場合、「同じことを何回も言わせるなよ!」と言いつつも、実はそれは他の選手に言ったこと、というケースが多々あります。これは少年野球や中学野球だけではなく、一般社会でもきっと同じですよね。そういう上司、周りにいたりしませんか?
でもそんな時、「聞いた記憶がありません」なんて言ってしまうと今度は逆ギレして、「お前が覚えてないだけだ!」と言ってきたりするわけです。もうこれはまさに最悪の部類の野球指導者ですね。もちろん最悪な指導者は全体を見渡せば一部であるわけですが、それでも全国的に見ると数え切れないほどいる、という人数になります。
皆さんはユダヤの法則をご存知ですか?これは、世の中は常に22:78の割合で成り立っている、という考え方です。良い指導者が22人いたとしたら、無能な指導者が78%いるということです。そして良い指導者22人の22%にあたる約4.8人が素晴らしい指導者である可能性があり、22人の中の78%にあたる約17.1人が普通のいい指導者と考えることができます。
逆に78人の無能な指導者の中の78%にあたる約60.8人はただ無能なだけの指導者で、78人の中の22%にあたる約17.1人は最悪の指導者である可能性があります。このように常に22:78の割合で掘り下げていくと、世の中の縮図を作ることができます。
無能な指導者は、とにかく選手に意見を求めることはしません。例えば僕の生徒さんの中に、東京の名門シニアリーグでピッチャーをやっている選手がいて、肩も肘も痛めてしまったため、それを治すために僕の動作改善を受けに来た中学生がいました。
その中学生は、シニアリーグに入ってすぐ監督にフォームを直されて肩肘の痛みを訴えるようになりました。その時の監督の言葉は「走り込みが足りないからすぐ肩肘が痛くなるんだ」というものだったそうです。野球の指導者をしているくせに、本当にどれだけ野球の勉強をするのが嫌いなのでしょうか?この監督は。
約6ヵ月間のドクターストップ期間にレッスンを受けに来てくれたのですが、6ヵ月かけて本当に素晴らしいフォームに改善することができました。肩肘は強く投げてもまったく痛まなくなり、最速110km/hだったストレートも、レッスン後は125km/hと、わずか6ヵ月のレッスンで球速が15km/hもアップしました。
そして肩肘も治り、球速も上がり、満を持してチームに復帰したのですが、監督からかけられた言葉は「俺が教えたフォームがかなり崩れている」、だったそうです。そして「俺の言う通りに投げられないなら試合では使えない」と言われたそうです。これは脅迫です。
この中学生選手は僕のレッスンを受けた後、このような形で再度監督に肩肘を壊すためのフォームに戻されてしまいました。そしてレッスン修了から約1年後、この中学生はまた肩肘を痛めて僕の野球塾に戻ってきました。僕と親御さんはそこで初めて、彼が上述した脅迫めいたことを言われ、監督に従うしかなかったことを知りました。
この中学生にとっては中学最後の夏目前の出来事でした。このようなこともあり、親御さんの方針でこの子はそのシニアチームを退部し、僕のレッスンだけを受けることにしました。チームの移籍も考えたようですが、しかしこれは日本ではとても難しいんです。日本の小中学生チームは横のつながりは本当に意地悪で、近隣チームでの退部情報はすぐにシェアされ、近隣チームを辞めた子を受け入れてくれるケースはほとんどないんです。
このような日本特有の事情もあり、親御さんは息子さんを退部させることにしました。そしてそこから高校までの間、みっちり僕のレッスンを受け、ピッチングフォームもバッティングフォームも素晴らしいフォームになりました。その甲斐もあり、彼は高校3年間で一度も怪我をすることなく高校野球を全うしました。残念ながら甲子園はあと1勝というところで届かなかったのですが、しかし大学では無事神宮デビューを果たすことができました。
ちなみにこの子に肩肘を痛めるためのフォームを頭ごなしに教え込んだ監督は、今も現役の監督だそうです。このように指導者に恵まれずに怪我に苦しんだ小中学生は、本当に数え切れないほどいます。そして子どもたちが野球から離れる理由の1位・2位は常に怪我と人間関係です。
僕の野球塾でレッスンを重ね、最終的に神宮デビューしたこの子は、中学時代は怪我にも泣かされ、指導者との人間関係にも恵まれない状況でした。でも彼は野球が好きだったのでそこで諦めることなく頑張ってトレーニングを続けました。その結果高校・大学では良い指導者に恵まれたようです。そして高校でも大学でも「本当に良いフォームで投げている」と褒められたそうです。ちなみに大学の監督さんは、僕もよく知る仲の監督さんでした。彼が監督に僕からフォームを教わったことを告げると、「どうりで良いフォームなわけだ」と言われたそうです。
そして高校の監督も、大学の監督も、疑問に思ったことはいつでも聞くことができ、質問をすると一緒に真剣に考えてくれたそうです。これこそが素晴らしい指導者のあるべき姿です。小中学生のチームにも、本当にこのような指導者たちに増えて欲しいなというのが、プロフェッショナルコーチである僕の切なる願いです。
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