冬になると野球ではよく走り込みというトレーニングを行いますが、では走り込みのメリットとは一体どこにあるのでしょうか?日本人メジャーリーガーの中には有酸素運動を行っていれば必ずしも走り込む必要はないと語っている選手もいます。ですが僕は、走り込みというトレーニングは必要だと考えています。
走り込みは上半身と下半身の連動性を高める
まず結論から言うと、マラソントレーニングではなく、あくまでも野球的な走り込みのメリットは毛細血管を増やすことと、上半身と下半身の連動性を高めることにあります。走り込みを有酸素運動としてのみ考えるのならば、確かにエアロバイクだけやっていれば良い、という考え方もできます。しかし野球のトレーニングとして考えると、走るという運動は、上半身と下半身の連動が上手くいかないと速く走ることはできません。つまり上手に良いフォームで走れるようになると、野球をする時の上半身と下半身の連動性がアップしやすくなる、ということです。
言うまでもなく野球でももちろん上半身と下半身の連動は非常に重要です。専門的にはキネティックチェーンと呼ぶのですが、野球の場合、体の下から順番に適切な動作を繋げていくことにより、投げるボールを最大限加速させられるようになります。しかし上下が連動していないと腕力に頼ってしかボールを投げられなくなり、初速と終速の差が大きい、すぐに失速してしまうストレートしか投げられなくなります。
ちなみに腕1本というのは、平均的には体全体の8%程度です。つまり上下を連動させず、右投手が右腕だけに頼って投げてしまうと、体の8%しか使わずに投げるということになってしまいますので、球速はもちろんアップしませんし、小手先を使って投げてしまう分、制球力が根本的に向上することもありません。
走り込みの効果が最も強く表れるのは13~16歳
僕は野球塾でのコーチングの前後には、ほとんど毎日10~20キロ土手をジョギングしています。しかし不思議なことに、野球選手っぽいジョガーとすれ違うことはほとんどありません。大人のジョガーは時間曜日問わず男女たくさん走っているのですが、走り込みをした方が良い中高生世代の野球選手が走っているのは、土日に野球チームで走らされているところ以外ではほとんど見たことがありません。どうやらうちの近所には上杉和也のような選手は住んでいないようです。
走り込みを行って、その効果が最も強く表れるのは13~16歳という世代です。この世代のうちに適切な走り込みを行っておくと、高校大学と進んでいっても走り込みというトレーニングを楽にこなせるようになります。しかし13~16歳のうちに適切な走り込みを行っていないと、高校生以上になって走り込みが突然得意になるという可能性はほぼなくなります。ですので本気で野球に取り組んでいる選手であれば、13~16歳のうちに適切な走り込みを行っておく必要があります。
走り込みでは無理はせず、少しずつ数字を上げていく
では適切な走り込みとは?まず考えなければならないのは、今現在、自分自身がどれくらいの距離を、どれくらいの時間で走ることができるのか、というベース値です。例えば15歳の中学3年生という仮定で話を進めてみましょう。中3の野球選手であれば、5キロを20~25分で余裕を持って走れれば十分だと思います。ポイントは、走り終わった後にまだ少し走れるくらいの余裕が残っているかどうかです。走り終わってへたり込んでしまったり、軽い頭痛や吐き気を感じるような量だと、これはやりすぎです。
走れる距離、時間というのは人それぞれです。選手全員が同じ距離を走る必要はありません。例えば走るのが苦手な中3であれば、まずは2キロを13分で走れるように目指してみてください。そしてそれがクリアできたら次は2キロを12分。それもできたら今度は3キロを18分。それもできたら3キロを16分半というように、数字を少しずつアップさせていくのが走り込みのメリットを得るためのコツです。
これこそが野球選手が走り込みを行うメリット!
走り込みは、たまにたくさん走るやり方ではメリットはあまり得られません。大切なのは最低でも週に2~3回以上、できれば毎日、ペースや心拍数を図りながら定期的に走ることです。ちなみに心拍数はApple Watchのようなデジタルデバイスを使うのもいいですし、普通の腕時計を見ながら脈に指を当てて測るのでも、どちらでもオーケーです。測るタイミングは平常時、走った直後、走った3分後の3回です。走った3分後の数字が、どれだけ平常時に近づいたかが、今現在の回復力となります。
毛細血管というのは運動をするとどんどん切れていきます。そしてそれは元に戻ることはありません。この毛細血管の量と強さが回復力に直結していきます。激しい運動をした後って体が火照りますよね?それは毛細血管が運動によってブチブチ切れていっているからなんです。毛細血管が多ければ体はあっという間に元に戻りますが、走り込みを行って毛細血管が増えていない状態だと、いつまで経っても体(毛細血管)は回復しきりません。
そして体が回復していない状態で野球の練習を続けてもベストな動きで練習をすることはできず、ベストではない動作を覚えるための練習になり、まさに悪循環に陥ってしまいます。つまり、常に良いコンディションで練習をするためには、適切な走り込みによって毛細血管をしっかりと増やしておく必要があるんです。つまり走り込みや有酸素運動とは、体を回復させるためだけに行うものではなく、回復しやすい体を作ることできるんです。
走り込みによって毛細血管をしっかりと増やしておけば、たくさん練習をしても疲労はあっという間に回復し、常に良いコンディションで練習ができるため、練習の効果も効率もアップしていきます。中長期的に考えると、これこそが野球選手にとっての走り込みで得られる最大のメリットなのです。ちなみに走り込みは冬だけではなく、一年を通して行うようにしてくださいね。冬になって突然走り込みを始めると、シンスプリントや筋膜炎など、余計な怪我をしてしまいますので要注意です。
- 走り込みは上半身と下半身の連動性を高める
- 走り込みの効果が最も強く表れるのは13~16歳
- 走り込みでは無理はせず、少しずつ数字を上げていく
- これこそが野球選手が走り込みを行うメリット!
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