投球フォーム固めとは「せざるをえない状況」を作る作業

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投手は何千回、何万回もピッチングやシャドーピッチングをすることにより、投球フォームを作り、そして固めていきます。人間の体には運動習熟能力というものが備わっており、通常は2000回以上同じ動作を繰り返すことにより、その動作が体に染み込むようになります。ですがもし間違った形で運動習熟してしまうと、それを修正するためには2000回以上の反復により改善していかなくてはなりません。

例えば週末だけ野球をやっている選手の場合、週に100球投げているとします。すると20週間(約5ヵ月)で2000球に到達し、もしこの間ずっと同じ投げ方を続けていれば、その動作が20週間かけて体に染み込むことになります。つまり繰り返した運動動作を習熟するということになります。これはもちろん投球だけではなく、送球、守備、打撃、走塁すべてに言い換えることができます。

投球フォームを固める、とはよく言われることです。では運動習熟能力を使って投球フォームを固めるとは、具体的にはどのようなことを言うのだと思いますか?その答えは、「せざるをえない状況」を作る作業ということになります。これが上手くできた投手ほど、制球力や球威がアップしやすくなります。

「せざるをえない状況」とは、例えば腕の内旋・外旋を見た場合。テイクバックの最深部ではスローイングアームは最大内旋状態にあることが望ましく、そのためにはテイクバックの過程では腕を少しずつ内旋させていく必要があります。この時、テイクバックの前の段階の動作であるセット、もしくはワインドアップで両腕がしっかりと最大外旋状態にされていれば、テイクバックでは腕は内旋するしかなくなるわけです。

セットで最大外旋状態にされた腕を、そこからリラックスさせれば反動により放っておいても内旋するしかなくなります。この状況と、投球動作の動きを絡めていくと、セットで最大外旋状態にしておけば、テイクバックでは腕は内旋するしかなくなるわけなのです。この状況を作り出し、安定させることこそが、投球フォームを固める最大の目的なのです。

投球フォームを固める作業とは、ただ単に同じ動作をいつでも繰り返せるようになる、ということではありません。適切な動作最適な動作をいつでも体現し、ボールを投げられるようになることこそが投球フォームを固める、ということなのです。

並進移動に関してもそうです。ストライドレッグ(軸足ではない方の脚)を振り上げたら、そこから体を捕手方向に向けて並進移動させていくわけですが、オフバランスという状態を作り出すことにより、ストライドレッグを振り上げたら並進移動をせざるをえない状況にしてしまうわけです。そうすれば余計な力(二段モーションなど)を使ったり、不必要なオンバランス状態を作り出さなくても、並進移動せざるをえないだけに、脚を振り上げれば体が勝手に並進移動を始めるようになるのです。

投球動作にとって大切なのは、ひとつ前の動作です。フォロースルーの前はリリース、リリースの前はアクセラレーション、その前はコッキング、その前はテイクバック、その前はワインドアップ。前の段階の動作により、しっかりとせざるをえない状況を作ってあげられれば、投球動作は楽に進めていくことができるのです。投球動作を楽に進めることができれば、当然力む必要もなくなり、リラックスをした腕の振りで伸びのあるストレートを投げられるようになります。つまり先発完投タイプになれるということです。

ですので投球フォームを固めていく際は適切な動作、最適な動作を見つけ、その動作が発生せざるをえない状況を作るという意識で行ってみてください。そうすれば必ず、今まで以上にパフォーマンスが向上する投球動作を作り上げることができるはずです。

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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