投球の質を左右させる腕の並進運動と円運動

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投手にとってもっとも重要な要素は制球力です。投手の三大要素は制球、変化、速度とありますが、この関係は制球>変化>速度となります。つまりいくら速いボールを投げることができても、制球力と変化がなければかんたんに打ち返されてしまいます。今回の投手育成コラムでは制球力を向上させるための1つの方法をご紹介して行きたいと思います。

投手の腕の振り方には主に2種類あります。1つは陸上競技の槍投げに似た並進運動による腕の振り方。そしてもう1つはハンマー投げのような円運動による腕の振り方です。TeamKazオンライン野球塾では前者、槍投げに似た腕の振り方を推奨しています。この腕の振り方をマスターすることができれば、制球力とボールの切れという双方を向上させることができます。

「腕を大きく振れ」というコーチングを受け続けると、大きな弧を描く円運動で腕を振ってしまうようになります。この腕の振り方には大きな遠心力がかかるため、投球時に肩周辺の筋肉が必要以上に外側に引っ張られてしまいます。これにより、肩痛のリスクを大きくしてしまいます。さらには円運動で腕を振ると、弧の線上にリリースポイントを置かなければなりません。すると、弧のどこでリリースするかによって制球と球威は大きく変動してしまいます。投げてみなければその日の調子が分からないタイプの投手の多くは、円運動で腕を振っています。

一方、並進運動により腕を振ることができれば、制球力は劇的に向上します。自分の思ったところに、思ったボールを投げられる確率が大幅にアップします。常に安定したピッチングができる投手は、並進運動により腕を振っています。そして遠心力ではなく、求心力を使ってボールを投げるため、肩周辺の筋肉が必要以上に引っ張られることもなく、肩痛のリスクも最小限に抑えることができます。このことでも分かるように、投手は円運動ではなく、並進運動でスローイングアームを振る必要があるのです。

円運動でボールを投げると、0.1秒リリースのタイミングがずれるだけで、制球や球威に大きな影響が与えられてしまいます。そしてリリースのタイミングが一定しないと、指先の常に同じ場所からボールをリリースすることもできません。ボールは人差し指と中指で弾き出すわけですが、リリースのタイミングが安定しないと、人差し指側でリリースしてしまったり、中指側でリリースしてしまったり、ストレートがスライダー回転したり、シュート回転したりしてしまいます。

反面、並進運動により腕を振ることができれば、弧ではなく、一直線の線上で、まるでライフルで撃つの弾丸のようにボールを発射できるようになります。すると、人差し指と中指の常に同じ場所でボールを弾き出すことができ、制球は向上し、ボールに鋭いバックスピンをかけられるようになり、伸びのあるストレートを思ったところに投げられるようになるのです。

並進運動によって腕を振る際のメソッドですが、ボールがトップの位置に来た時、ボールとキャッチャーミットを見えない糸で結んでください。そしてその真っ直ぐな見えない糸を通していくように、ボールを移動させていってください。この時、脚の筋力が弱いとステップを広げることができず、上体が沈まない分、相対的に肘が下がってしまいます。この並進運動による腕の振りで肘が下がってしまう場合は、下半身に筋力が不足していると理解しましょう。

なお補足ですが、並進運動により腕を振る際は、腕が以下のように回旋するように心がけてください。

セット時・・・最大外旋(テイクバックの最深部に向けてここから腕を内旋させて行く)
テイクバックの最深部・・・最大内旋(ここから腕を外旋させながらトップにつなげて行く)
トップ・・・最大外旋(ここからはフォロースルーの最後まで腕は内旋運動させる)
アクセラレーション・・・内旋
リリース時・・・指先がキャッチャーミットに正対
フォロースルー・・・引き続き内旋

円運動から並進運動へのシフトチェンジは、見た目のフォームには大きな変化はありません。しかしこのシフトチェンジは、投球時のメカニズムを根底から変えていく作業となります。ですのでこのシフトチェンジに挑戦する時は、決して焦らず、長い時間をかけてじっくりと取り組むようにしてください。

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