年々増え続けて行く盗撮被害

女子競技だけでなく、甲子園でもよく問題になるのが悪質なカメラマンによる盗撮です。甲子園であればチアリーダー、オリンピックであればビキニのようなウェアを着た女子アスリートが盗撮され、それを性的な目的としてインターネットなどにアップロードされる被害は減らないどころか、年々増え続けています。そしてその手口も年々巧妙になっているようです。盗撮は本当に卑劣な行為でしかありません。

盗撮を楽しむ人間からすれば「性的対象となりうるウェアを着るのが悪いし、客席から写真を撮ることは犯罪ではない」という言い分なのでしょう。しかしこれは当人たちの性格同様に捻くれた論理です。

チアリーダーたちは毎日練習やトレーニングを頑張って、甲子園などで選手たちを応援する旗振り役を務めています。このチアリーダーたちの努力は球児同様です。ちなみにアメリカなどではチアリーディングはものすごくアクロバティックで、全国大会ともなると本当にアスリートとまったく変わりません。

ビキニのようなウェアを着ている女子アスリートにしても、少しでも良い数字を出すためにそのような限りなく空気抵抗が小さいウェアを着ているんです。何も盗撮してもらいたいから短いウェアを着ているわけではありません。彼女たちは肌の露出が多いウェアを着ることによって誰にも迷惑をかけていないし、誰かを不快にしているわけでもありません。しかし盗撮カメラマンはただただ迷惑でしかありません。

チアにしてもアスリートにしても弛まぬ努力を続け、パフォーマンスによって人々に勇気や希望を与えています。僕自身ダーリャ・クリシナという選手の大ファンで、昔から彼女のジャンプに魅了されています。彼女のジャンプを見るためだけに競技場に行ったことだって何度もあります。そして最近発売されたばかりの彼女の本も読みました。

例えばファンからしたら、大好きな女子選手の写真が性的な目的で使われることは本当に許せません。でもこれは変態カメラマンだけに限ったことではありません。スポーツ紙やテレビカメラだって、「そんなアングルから撮る必要はない!」というショットを頻繁に出して来ます。さすがにNHKの甲子園中継ではそんなショットはないとは思いますが、僕が寝ずに見てしまう世陸の中継などでは、けっこうそのような悪質なショットがあります。

甲子園で汗を流しながら一糸乱れぬ振り付けを見せて選手たちに勇気を与えているのは、当然ですが全員高校生です。大の大人が何十万円もするような高価な望遠レンズを使って彼女たちを盗撮するという行為には、本当に怒りしか感じません。盗撮されているのが自分の娘さんだったらどうでしょうか?

僕は野球場で、実際にチアを盗撮しているカメラマンに注意をしたことがあります。デジタル一眼レフなので、ちょっとモニターを覗けばどんな写真を撮っているのかが分かります。「そういうの撮るのやめろよ」と言うと、逆ギレされました。ですのでスマホで盗撮犯の顔写真を撮り、警備員に確認してもらい追い出してもらいました。

もしかしたら僕が関係者として球場にいたからだったかもしれないのですが、でも警備員も追い出すのに慣れているようでした。恐らく地方大会であっても、そういう変態カメラマンが後を断たないのでしょう。

盗撮の心配をしながら本領を発揮することなんてできない!

例えばお酒を買う時はIDの提示を求められることがあるわけですが、競技場でも「撮影したデータを確認させていただくことがあります」という内容に強制的に同意させた上で入場してもらう、という対処も必要なのではないでしょうか。

僕が大好きな陸上でも、女子アスリートの盗撮被害は大きな問題になっています。アマチュアカメラマンだけではなく、テレビ局のカメラにも選手たちから苦情が入っているほどです。

果たして「今盗撮されているかもしれない」と心配ながら、女子アスリートたちは実力を発揮することができるでしょうか?中にはそれが大きなストレスになって、実力を発揮できないまま敗退してしまった選手だっていたはずです。

女子野球の場合は肌が露出するようなユニフォームではないため、そのような盗撮被害はほとんどないとは思います。ですがチアリーダーに関しては、野球場ではもう長い間被害者となり続けています。高野連はこれに対してもしっかりと対処して行く必要があるのではないでしょうか。しかしここまでのところ、何らかの対処がなされたという話は聞きません。

僕の生徒さんの多くの方はご存知の通り、僕は野球肩経験があるため自分で野球をプレーすることはありません。というよりは、やりたくでもできません。そのため自分では幅跳び選手としてスポーツを楽しんでいるのですが、そこで知り合った女子アスリートたちと話していると、やはり盗撮被害を実感している選手は多いようでした。

甲子園のチアリーダーと話したことはほとんどないのですが、しかし高校生では被害にまったく気付くことができないというケースも多いのではないかと考えられます。16〜18歳くらいの高校生では、球場にはそういう変態カメラマンが大勢いるなんていう発想を持つことはできないと思います。だからこそこのような盗撮は悪質極まりないとしか言いようがないのです。

望遠レンズの持ち込みは許可制にすべきかもしれない

今回のコラムは野球技術とはあまり関係のない内容でしたが、しかしコーチとして球場に行くと実際に感じられた、気分がとても悪くなる悪質な行為としてご紹介させていただきました。選手たちの姿を撮影しながら、時々チアリーダーの元気な姿を写すことはまったく問題ないと思います。しかし変態カメラマンのレンズはチアリーダーにしか向けられていないのです。

お酒を買う時にIDをチェックされるように、球場で望遠レンズを使っていたらIDチェックをするというルール作りも必要なのではないでしょうか。はっきり言って高校野球のチアリーダー盗撮に関しては、ほとんど無法地帯であるように見えます。だからこそ高野連はもっと実効性のある明確なルールをチケット販売時に設けるべきだと思います。

個人的には望遠レンズの利用はID提示必須の許可制にすべきだと思います。そしてチアリーダー、女子アスリートたちの被害をなくすためにも、盗撮には罰則を設けるべきです。例えばディズニーランドでは、著しくルールを破った人は一生涯ディズニーランドに出入り禁止になるのだそうです。

野球場や競技場もこれくらいの措置を施して欲しいものです。盗撮カメラマンにチケットを購入してもらえなくても、大会運営にはまったく差し障りもないと思います。

昨年以降はコロナ禍の影響で僕も野球場には行けていないのですが、このパンデミックが収束したら、悪質なカメラマンに気分を害されることなく球場で仕事ができる日が来ることを願うばかりです。

パワー=速度×重量

今回のスラッガー養成コラムでは、バットスウィングのパワーの計算方法について解説をしてみたいと思います。パワーというのはスピード×重量で計算するのですが、注意点としては、スピードを秒速に直して単位の桁を重さと合わせることです。
例:100km/h → 100,000m÷60分÷60秒=27.7m/s

では、実際に計算してみましょう。重さ850gのバットを、時速120kmの速度で振った場合、まず速度を秒速に直すと、120km/hは33.3m/sとなります。そして重さはそのまま850gとなりますので、33.3×850という計算式になり、850gのバットを120km/hの速度でスウィングした時のパワーは28,333W(28.3kW)となります。

そしてもう1パターン。900gのバットを110km/hでスウィングした場合は、27,500W(27.5kW)となります。つまり900gのバットは110km/hでしかスウィングできず、850gなら120km/hでスウィングできる場合は、850gのバットを使った時の方がパワーは大きくなるということです。

バットスウィング速度の計測

ちなみに球速を測るガンタイプのスピードガンでは、一般利用向けでバットスウィングの速度を計測できるものはほとんどありません。ですがスピードマスターという商品であれば1万円未満の価格でバットスウィングの速度を計測することができます。

ビヨンドに3〜5万円使うのであれば、1万円前後のバットとスピードマスターをセットで購入する方が練習の質を高められると思います。ただし木製バットでの計測はできませんので、スピードマスターを利用する場合は金属バットでスウィングしてください。また、この製品では投球速度を測ることはできませんのでご注意ください。

体幹が強いとすぐに分かる佐藤輝明選手の打撃フォーム

今回のスラッガー養成コラムでは、阪神タイガースのルーキー佐藤輝明選手のバッティングフォームを見ていきたいと思います。前半戦が終了した時点で打率.267、本塁打20本という数字は、ルーキーとしては本当に素晴らしいものだと思います。将来的にはタイトルを獲得することだってできるスター候補だと言えるでしょう。

佐藤輝明選手のバッティングフォームを見て、もっとも強く印象に残ったのは体幹の強さです。バッティングには下半身主導、体幹主導、上半身主導という主に3つの形があるわけですが、佐藤選手は大谷翔平選手に近い体幹主導のバッティングフォームになっています。ただ、技術レベルを見ていくと、ルーキーであるため当然ではありますが、大谷選手のレベルには至ってはいません。

大谷選手の場合は左股関節を右股関節があった場所にぶつけながら骨盤を回旋させていくという、非常に難易度の高いスウィングで打っているのですが、佐藤輝明選手の場合、股関節や骨盤の動かし方はまだまだそこには至っていません。

体幹が物凄く強いのだろう、ということはスウィングを見ればすぐに分かるほどなのですが、今後股関節や骨盤の使い方がもっとレベルアップしていけば、打率と長打力を同時に、さらに向上させることができるはずです。平たく言えば打率.350をマークしながらも、40〜50本打てるようなバッターになれる伸び代があるということです。

まだ打撃フォームに無駄が多い佐藤輝明選手

タイトルを獲得するにはまだそれほど高い技術は身に付いていない佐藤輝明選手ですが、打率と長打力を同時に向上させていくためには、ステイバックの習得を目指すべきでしょう。

現在はどちらかと言えばウェイトシフトに近いフォームで打っています。そのためスウィング中に頭の位置が大きく移動してしまい、この目線のブレがミート力の低下を招いています。

体が元気でそれほどの疲れもなかったオープン戦や開幕直後は、コンディションの良さでボールもよく見えていたのだと思います。しかし体に疲れが溜まり始めると、ステップをしながら頭の位置を大きく動かしてしまうフォームのデメリットが目立つようになり、打率も少しずつ下がってきています。

これが大谷翔平選手のようにステイバックで打てるようになると、頭の位置は自然と移動しなくなるため、体に疲れが出始めてもミート力が大幅に低下することがなくなります。すると年間を通して打率.300以上をキープできるようになります。

ステップ幅に関しては柳田悠岐選手に近いと思います。やや狭くして、体感の強さによって軸を強烈にスピンさせることにより、バットスウィングを速くさせているタイプです。187cmという長身も柳田選手と共通していますので、このステップ幅の使い方には間違いないと思います。長身選手にフィットした形になっています。

ただやはり、ステイバックの話になると柳田悠岐選手はマスターしている一方、佐藤輝明選手はまだまだステイバックをマスターしているというレベルには至っていません。連続写真を並べて、ある一部分だけを見るとステイバックになっているようにも見えるのですが、しかしスローモーション映像で細かく見ていくと、佐藤選手のフォームはステイバックと言い切れる形にはなっていないんです。


1:05くらいでスローモションを確認できます。

ピッチングフォームに無駄な動作が多いと制球力が乱れるわけですが、バッティングフォームに無駄な動作が多いとミート力が低下してしまいます。佐藤輝明選手と、他の左打ちの一流バッターたちのフォームを見比べると、佐藤選手にはまだまだ無駄な動作が多いんです。それが絶好調時以外で打率を下げてしまう要因になっています。

佐藤選手の場合、体を一度投手側に移動させてウェイトシフト(体重移動)の動作を入れてから、体重を軸足側に僅かに戻しながらのスウィングになっています。これが今現在の佐藤輝明選手のウィークポイントだと言えるでしょう。体が元気な時はこの余分な動作が入っていてもバットを振り切ることができたのですが、疲れが溜まり始めると、この余分な動作によって1テンポ遅れるようなフォームになってしまい、差し込まれることが徐々に増えて行ったように見えます。

もし将来的にこの動作をなくすことに成功し、ステイバックの形をもっと高めていくことができれば、佐藤輝明選手は大谷翔平選手や柳田悠岐選手と同じレベルのバッターに進化することができるでしょう。

5月頃からコンディショニングに課題が見え始めた佐藤輝明選手

そして佐藤選手の長打力の秘訣は体幹の強さだけではなく、フライングエルボーも大きく影響しています。フライングエルボーとは、テイクバックで左肘(右打ちなら右肘)を肩の高さまで上げる動作のことなのですが、この動作がバットスウィングをより加速させ、強烈なインパクトを生み出しています。

また、このフライングエルボーを二段階で使っていて、その動作がラギングバック(割れ)をさらに強くしています。下手な選手がフライングエルボーで打つとラギングバックを上手く作れずに、差し込まれやすいフォームになる危険性もあるのですが、佐藤輝明選手の場合は、少なくとも体が元気な状態である時はラギングバックがとても強くなっているように見えます。

ただ、シーズンが進んでくると5〜6月くらいからこのラギングバックが少し弱まったようにも見えました。考えられる原因としては疲労により筋肉に僅かな硬さが生じてしまったか、シーズン前の体幹の強さを維持できなかったことなどが考えられます。

そう考えると佐藤選手のフィジカルでの課題は他の若手選手同様に、今後如何にして良いコンディションを長続きさせられるか、ということになってくるのでしょう。シーズン中にもしっかりと体幹を鍛え続けて、最善のコンディショニングをしていければ、調子が良い時期をもっと長くしていけるはずです。

佐藤輝明選手を封じるにはこんな配球が効果的!

開幕直後は、相手バッテリーも佐藤選手に対しどう攻めれば良いのかということを試行錯誤していたと思います。特にオープン戦では「このコースは打てるのかどうか試しに投げてみよう」という配球も多かったため、この考え方の配球により、打たせてもらったホームランも多かったはずです。

しかし打席数が増えれば増えるほどスコアラーの分析も正確性を増していき、佐藤選手の得意なコース、苦手なコースもかなりシェアされ始めてきました。

後半戦になれば配球はさらに厳しくなっていくでしょう。その時苦手なコースは今年は捨てるのか、それとも苦手なコースも対応できるようにしていくのか、という選択はとても重要になってきます。個人的にはまだ1年目であるため、「まずは打てるコースに来たらしっかりと振り抜く」という考え方でいいと思います。そうすれば打率.280前後で30本塁打くらい打てるのではないでしょうか。

佐藤輝明選手は、低めよりも高めを打ちに行った時の方がスムーズなスウィングを見せています。それはローフィニッシュが多いフォームから見ても明らかです。そう考えるとバッテリーからすると、真ん中から低めに落ちていくチェンジアップやフォークボールを振らせにくる配球が今後はさらに増えてくるのではないでしょうか。

際どいコースでカウントを整えた後で、ややシュート回転させたチェンジアップを真ん中から落としていく、というのが佐藤選手を封じるには最も効果的であるように見えます。

仮に佐藤選手が完璧なステイバックで打てていたとしたらこの配球もそれほど効果はないと思うのですが、今は体重移動をしている時にまだ頭の移動が大きくなっているため、この配球が絶大な効果を発揮していくはずです。

長身でリーチが長いため、フォークボールを真ん中にストンと落としていくよりは、シュート回転させた右投手のチェンジアップが有効になるはずです。フォークボールやスプリッターを真ん中に真っ直ぐ落として行っても、掬い上げることができてしまうのが佐藤選手の身長です。

伸び代がまだまだある完成されていない佐藤輝明選手

今現在はまだ日本代表レベルの技術には至っていない佐藤選手ですが、上述した通りまだまだ伸び代がある選手です。もうすでに完成された大卒選手ではないため、シーズンオフなどは柳田悠岐選手ら一流の左打ちの選手に弟子入りし、ステイバックをマスターすると良いかもしれませんね。

プロ野球チームの打撃コーチは、まだまだステイバックを理論的に指導できないコーチが多いんです。これは実際に12球団の中で打撃コーチを務めている方々と実際にお話をさせていただいて実感したことです。

阪神タイガースの打撃コーチがどうなのかは僕には分からないのですが、しかしもし打撃コーチ、もしくは今後契約していくであろうパーソナルコーチからステイバックを理論的に教わり、習得することができれば、佐藤輝明選手はさらに大きく進化していけるはずです。

この伸び代をしっかりと観察しながら、僕もプロコーチの一人として佐藤輝明選手のバッティングフォームを見続けてみたいと思います。1〜2年後にまた佐藤選手について書いたら、きっと進化した姿をここでお伝えできるのではないでしょうか。楽しみですね!

運動軸が体の外に大きくはみ出る大谷翔平選手の打撃フォーム

正直にいうと、僕は大谷翔平選手がメジャーでここまでホームランを打てるとは思っていませんでした。シーズン25〜30本くらいは打てるのではないかとは思っていましたが、まさかホームランキングを争えるレベルで本数を積み重ねることができるとは、メジャー移籍した時には予想できませんでした。

その理由は技術的な面に加え、大谷選手が右投げ左打ちであるためです。大谷選手のようにステイバックで打つ打者の場合、メインで使われるのはトップハンドとなります。左打者の場合左腕となるわけですが、大谷選手は投げたり箸を持ったりするのは右で、利き手は右手となります。そのため利き手をメインとして使うことができなくなるため、長打力は松井秀喜選手を上回ることはないだろう、と以前僕は考えていたわけです。

ですがメジャーで活躍する大谷選手のバッティングフォームを観察すると、松井選手とは大きな違いがあることがわかります。それは運動軸がどれだけ体の外に飛び出しているか、という点です。松井選手も軸を体の外に出して打つことがあったのですが、大谷選手の場合はほとんどのヒットで軸を体の外に出して打っているんです。

スポーツをする際の軸は、体の柱となる体軸(だいたい背骨だと思ってもらって良いと思います)と、スポーツ動作をするための運動軸という2つの軸が存在します。バットを鋭く振っていくという動作は運動軸を使っていくわけですが、体軸を運動軸として使ってしまうとバットスウィングが遠回りしやすく、スウィング速度がアップしにくくなります。

しかし大谷選手の場合、運動軸が体の外に大きくはみ出ているんです。そのためあれだけの長身であるにもかかわらずバットスウィングが非常にコンパクトで、鋭い軸のスピンを可能にしています。この運動軸の体外へのはみ出し方が、松井選手よりも大谷選手の方が大きいんです。

下半身主導でも上半身主導でもない、体幹主導の大谷選手の打ち方

大谷選手のバッティングフォームを見ると、体幹の強さが人並み(普通のプロ野球選手)以上であることが伺えます。しかもその鍛え抜かれた体幹をものすごく上手く使っているように見えるんです。一般的にはバットは下半身主導で振っていくべきなのですが、大谷選手の場合は体幹主導で振っています。

体幹主導と言っても、決して上半身主導という意味ではなく、手打ちになっているわけではありません。難易度としては、非常に高いレベルのバッティングフォームで打っていると言えます。通常であれば軸足の回転によって、非軸脚股関節を内旋させることにより下半身主導のスウィングを作っていくのですが、大谷選手の場合は体幹主導で右股関節を内旋させています。

そのため、右股関節は深く内旋させられているのですが、軸足の始動に関しては通常よりもかなり遅れて動き始めます。体幹のスタビリティを非常に重要視する外国人選手にはよく見られる打ち方なのですが、日本人選手にはほとんど見られない打ち方です。

良い選手の真似をして上手くなろう!とは指導者がよく言うことですが、しかし大谷選手のフォームは、イチロー選手のフォーム同様に特殊なフォームだと言えます。そのためフォームの見た目は真似できたとしても、メカニクスまでは真似することはできないと思います。

ノーステップ打法と言われることもある大谷翔平選手のフォーム

大谷選手のフォームはノーステップ打法だと言われることも多いようですが、実際にはノーステップではなく、スモールステップ打法です。しっかりとステップをしていくことによってタイミングを計っています。

ウォーレン・スパーンというメジャーで363勝した名投手がいます。彼は「バッティングはタイミングがすべてだ。そしてピッチングの極意はタイミングを外すことだ」と語っていますが、大谷投手は右足のステップによってタイミングを計るのが非常に上手い選手です。このタイミングの取り方に関しては体幹は関わってこない部分ですので、どんどん真似していって良いと思います。

ウェイトシフト打法ではステップしていく際に生じる位置エネルギーをパワーに換算していくため、ステップをする動作でタイミングを計るということがやや難しくなります。そのためウェイトシフト打法は、ステイバック打法に比べるとタイミングを取りにくくなります。

バッティングはタイミングがすべて、と考えるのであれば、よりタイミングを取りやすいステイバックで打つことが理に適っていると言うことができます。また、大谷選手はテイクバックで間を作ることも上手く、ここでもタイミングを上手く計れているように見えます。

大谷翔平選手と松井秀喜選手の一番の違いは左肘の上げ方

大谷翔平選手の長打力を見ていくと、フライングエルボーの影響も大きいと言えます。フライングエルボーとはテイクバックした際にトップハンドの肘を肩の高さまで上げるフォームのことなのですが、日本では「脇が開くからダメ」という間違った指導をされるケースが多いんです。しかしフライングエルボーはバットスウィングを速くするためには非常に効果的で、海外のリトルリーグでは基本的にはフライングエルボーでテイクバックするように指導されます。

大谷翔平選手と松井秀喜選手には軸の使い方に違いがあると上述しましたが、最も違うのはこのフライングエルボーの有無です。松井選手は巨人時代はもちろん、ヤンキースに移籍してからもフライングエルボーにはしていません。もし松井秀喜選手がフライングエルボーを取り入れていたら、メジャーでも40本以上打てたかもしれませんね。

一方大谷選手はフライングエルボーを取り入れています。そのためバットスウィングの加速度をより高めることができています。体が万全という条件で大谷選手と松井選手を比較すると、このフライングエルボーの有無が本塁打数に影響していると言って間違いないでしょう。

ちなみにこのフライングエルボーというテクニックは、上半身主導で振ってしまうと差し込まれやすいスウィングになってしまいます。大谷選手の場合は体幹主導のスウィングで、深いフライングエルボーと体幹主導の始動によりラギングバック(割れ)を強くし、いわゆるタメを使って打つことができています。

ファイターズ時代から大幅に進化したエンゼルス時代の大谷選手

このように大まかな部分を見ていくだけでも、大谷翔平選手がいかにレベルの高いバッティングフォームで打っているのかがよく分かります。大谷選手のフォームを総合的に真似することは難易度が高すぎて難しいと思うのですが、部分的にであれば小学生であってもどんどん真似していくべきだと思います。

大谷選手は決して天性の才能だけで打っているバッターではありません。大まかな部分を上述した通り、バイオメカニクス(科学的フォーム分析)の観点でも理に適ったフォームで打っているバッターです。

ちなみに軸や体幹などの使い方に関しては、ファイターズ時代よりもはるかにレベルアップしています。ファイターズ時代のフォームを見る限りでは本塁打王は難しいだろうという僕の意見でしたが、リハビリ中に身につけたストレングスや難易度の高いフォームを改めて見ていくと、本塁打王になってもまったく不思議ではないバッターだなという考えに変わりました。

もしかしたら渡米した年齢も影響しているのかもしれませんが、大谷選手はメジャー移籍後にさらにレベルアップしました。日本人選手がメジャーでさらにレベルアップするためには、やはりもう少し早い年齢で渡米できるようになるのがベストなのかもしれませんね。完成形でメジャーに行くよりも、大谷選手のように伸び代を持った状態でメジャーに行った方が、アメリカで活躍できる確率は高まるのかもしれません。

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怒鳴ることしかできない、指導スキルのない大人たち

野球道具メーカーのミズノが、小学生1500チームを対象とした「絶対に怒ってはいけない野球大会」を開催するそうです。スポーツに怒声や罵声は必要ないという趣旨には僕は大いに賛成です。しかしここまでしなければならないというのは、野球人としては同時に恥ずかしくも思います。

僕のレッスンを受けてくれている生徒さんの親御さんたちからも、お子さんがチームの監督・コーチに怒鳴られて、野球に対する意欲を失いかけている、といったご相談を受けることが多々あります。そしてそのような経験をしたことで、僕のメンタル強化レッスンの受講を考えてくださる親御さんも増えています。

僕自身がグラウンドに出ている時も、小中学生の子たちに怒声・罵声を浴びせる大人が多いことに本当にウンザリしてしまいます。もちろん紳士的に適切な指導をされている方も多いわけですが、しかし現実問題としては、怒鳴っている大人ばかりが目立ってしまいます。

桑田真澄コーチも仰っていますが、指導者に適切な指導スキルがあれば、怒声・罵声など一切浴びせなくても選手はどんどん成長していくんです。逆に指導スキルがないと、怒鳴ることによって支配的に子どもたちに従わせることしかできないわけです。

まともな技術指導せずに、子どもたちがミスをしたら怒鳴る。そして怒鳴るだけで、ミスをなくすための技術指導はできない。延々とこれが続いていくわけです。もともと運動能力のある子は勝手にどんどん上手くなっていったとしても、そうではなくてこれから運動能力が発達していく子は、怒鳴られるだけでどんどん置き去りにされてしまい、最悪の場合野球チームを辞めてしまうことだってあります。

僕自身は2010年1月からプロコーチとして仕事をしていますが、これまで一度も選手を怒鳴ったことはありません。しかし子どもたちはどんどん上手くなっていきますし、甲子園や神宮デビューを果たした生徒さんたちもたくさんいます。もちろんプロ野球選手のクライアントも多数抱えています。

絶対に怒ってはいけない野球大会の約束事

ミズノが開催する上述の大会には、下記のような5つの約束事があるそうです。

  1. 元気いっぱいプレーしよう!
  2. 気軽に参加しよう!体操服・運動靴でもOK
  3. みんなが主役!1人でも多くの選手が試合に出よう
  4. みんなでこの大会を盛り上げよう
  5. 失敗した時こそ、励ましあおう

(予選は5月〜8月、全国大会は9〜12月を予定)

良いじゃないですか!内容的には初心者にも野球を楽しんで欲しい、という意図が強いと思うのですが、この大会によって初心者の子が野球をどんどん好きになり、中級者、上級者へと上達していってくれれば、それこそ野球界の底辺拡大につながると思います。

本来であればこのような大会をあえて作らなくても、普通のこととして怒声・罵声がまったく聞こえないようにしていくべきだと思います。しかし日本のスポーツ界のシステムは未だ旧態依然。パワハラともなりうる怒声・罵声が響き渡っているのは何も野球界だけではありません。

日本のスポーツ界を野球が牽引していくためにも、このような趣旨を持つ大会が成功を収め、他の野球大会でも子どもたちへの怒声・罵声が禁止になっていけば、それが理想だと思います。そして本当にそうなって欲しいと、プロコーチとしては願うばかりです。

少年野球の母,少年野球の父

三日坊主癖さえも直せてしまう野球塾

お父さんお母さんがせっかく良いバットを買ってあげても、結局練習は三日坊主で終わってしまうことってけっこう多いと思います。例えば新年や新学期になって「今日から毎日頑張るぞ!」と決意しても、1週間後・1ヵ月後にはもうその決意はどこへやら、という状態。。。

でも、だからと言ってパパママが「ちゃんと毎日続けなさい!」と、くどくど言ったとしても、三日坊主癖というのは直らないんです。僕の野球塾の生徒さんにも三日坊主癖があるお子さんがたくさんいました。そういう子たちを見ていると、いつも「もったいない!」と思っていたものです。

そんなわけで3年くらい前から本格的に始めたのがメンタル強化レッスンでした。そうです、TeamKazオンライン野球塾はメンタル強化レッスンまで受けられる、日本で唯一の野球塾なのです!

野球だけではなく勉強の成績も上がるメンタル強化レッスン

メンタル強化レッスンはまさに効果覿面でした。まず最初に野球で役立つ頭と心の使い方をレッスンすることにより、そこから入れていく投打のフォーム改善がどんどん進んでいくようになりました。

そしてメンタル強化レッスンは野球だけではなく、学校の勉強や私生活にもプラスの影響を与えています。野球によって自ら率先し、しっかりと自分の頭で考えて行動できるという癖が付くことにより、学校の勉強や私生活でも同じことができるようになるんです。

TeamKazオンライン野球塾でメンタルレッスンを受けたら、野球の成績だけではなく、勉強の成績も上がったというご報告をお父さんお母さんからたくさんいただけるようにもなりました!

メンタルは強弱ではなく、上手いか下手か

野球はメンタルの強さがものを言う、とはよく言われることですが、でもメンタルレッスンまでしてくれる野球塾や少年野球チーム、野球部はありますか?ないと思います。少なくとも当野球塾のように、野球動作とメンタル強化を同時にレッスンしている野球塾は、日本では他にはないはずです(この記事を書いている時点では)

ちなみにメンタルとは「強弱」で計るものではありません。「あの子はメンタルが弱い」と平気でこんなアホなことを言っている野球指導者を見かけますが、メンタルというのはレッスンや指導によってどんどん上達させることができるスキルです。

つまりメンタルスキルというのは、上手いか下手かで判断していくものなんです。メンタルスキルがまだ低い(下手な)選手の場合、指導者が適切なメンタル強化法を指導してあげることにより、メンタルスキルをどんどん向上させることができ、試合でもちゃんと持っている実力を発揮できるようになります。

ちなみに三日坊主癖や、練習でできることが試合ではできない、というような要素はすべてメンタルスキルに含まれます。例えばブルペンではすごい球を投げて、バッティングセンターではガンガンホームランを打てるのに、試合になるとそれができないという選手は、メンタルスキルをまだ持っていない、というケースがほとんどです。

野球をしているからには、やっぱりお子さんには試合で活躍してもらいたいですよね?そのためにもぜひ野球技術だけではなく、メンタルスキルも向上できるようにサポートしてあげてください。もしくは当野球塾でメンタル強化レッスンを受けてみてください。

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ベースのサイズが38cm四方から、46cm四方へと拡大?!

野球のルールは年々進化していきますね。2021年の新しい取り組みとしては、アメリカのマイナーリーグでは今季からベースのサイズが15インチ四方(38cm)ではなく、18インチ四方(46cm)になるようです。

これは、ベースのサイズを広げることによって野手と走者の接触プレーによる怪我を減らすことが目的とされています。確かにこれは理に適ったルール変更であり、コリジョンルールの延長線にあるルール改変だと言えそうです。

マイナーリーグのこの変更で実際に接触プレーによる怪我を減らすことができたら、今後メジャーリーグや国際試合に適用されていき、日本でもベースのサイズが46cm四方へと拡大されていくのでしょう。

そして塁間が16cm狭くなるということは、盗塁の企画数が増えることも予想されています。しかし盗塁時、二塁ベース上での接触プレーは捕手の送球次第という面もあるため、本当にこれにより怪我を減らせるかどうかは、やはり実際に試してみないとわからないところですね。

王シフトが禁止となってしまう新ルール

ベースのサイズだけではなく、内野手は4人ともダート内にいることが守備の条件になるようです。ダートというのは内野の土の部分のことです(日本はダートのエリアはかなり狭いか、ないに等しい球場もあります)。そして二塁ベースを中心にして、左右どちらか一方に野手が3人以上守ることも禁止となりました。

つまり昔で言うところの「王シフト」はルール上不可になってしまったということです。もちろんこれもまずはマイナーで試されていくわけですが、ベースサイズはマイナー全クラスが対象でしたが、この守備に関するルールは、まずは2Aだけから始められていきます。

極端なシフトは見ているファンを興奮させることもあるわけですが、それが見られなくなるのは少し寂しいかもしれませんね。その極端なシフトを破ってヒットを打っていく、というのも魅力だっただけに。

牽制球は3回目がセーフならボークになる?!

そしてこれは1Aでの適用開始となるわけですが、左投手が一塁に牽制球を投げる際も、軸足を完全にピッチャーズプレートから外さなければならないというルールになりました。そして牽制球も2回までとなり、3回目を投げてセーフだった場合はボークになるそうです。

これは牽制球が多くなりすぎて試合時間が伸びることを防ぎ、さらには盗塁企画数を増やすことを目的としているそうです。ベースサイズと合わせて考えると、今季1Aでの盗塁企画数は大幅に増えていきそうですね。

ちなみにマイナーリーグのチーム数は一昨年までは160球団あったのですが、昨年はコロナウィルスによりすべて中止となってしまった影響で、120球団までチーム数が減ってしまいました。この残ったチームで行われる試合をより魅力的なものにするため、アメリカでは様々なルール改変が検討されています。

これらのルールは今後日本に入ってくる可能性も高いため、今のうちに「そういう可能性もある」ということを頭に入れておいた方が良さそうです。そうすれば突然ルール変更が行われても、戸惑うことなく新しいルールのもとでプレーできるはずです。

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併殺完成数の多さは何を意味しているのか?!

併殺を取った数が多いほど「良い二遊間」だと言われることが多いわけですが、これは数字的には間違った捉え方です。もちろん良い二遊間だから併殺を多く取れることもあるわけですが、しかし一般的には併殺数と二遊間の上手さは比例しません。

単純に投手陣のWHIP数値が悪ければ、ひっきりなしに走者が出塁していることになります。そしてほぼ常時一塁に走者を抱えている状況であれば、数字的には併殺を取れる可能性も高くなります。

ただし、本当に二遊間のレベルが低ければいくら走者がいても併殺を完成させることはできません。つまり併殺を完成させた回数が多いというのは二遊間の上手さを証明することがある一方、投手力の弱さの証でもあるわけです。

本当に上手い二遊間コンビの見つけ方

本当に価値のある併殺というのは、チーム防御率やWHIPの数値が良い状態で増えていく併殺完成数です。つまり投手陣があまり走者を出さない状況で増えていく併殺です。さらに言えばこの状況で併殺完成数を増やしていくためには、投手陣に内野ゴロを打たせる技術が備わっている必要もあります。

少ない併殺機会で確実に併殺打を完成させていく、これこそが本当に求められるべき併殺の完成のさせ方です。

小中学生ではなかなか併殺を完成させることは難しかったりもしますが、高校野球レベルになってくると上述したような理論がより顕著になっていきます。

また、プロ野球でも同じことが言えます。併殺完成数の多い二遊間は、その数値だけで上手いと言われることもありますが、ここで注目すべきはチーム防御率やWHIPです。

チーム防御率やWHIPの数値がリーグトップという状況で併殺完成数が多いのであれば、それは本当に二遊間の上手さを証明していると思います。

プロ野球を見る際も併殺完成数だけに注目するのではなく、ぜひチーム防御率とWHIPと併せて、併殺完成数を観察するようにしてみてください。そうすれば本当に上手い二遊間がどのチームにいるのかを知ることができるはずです。

野球指導者ライセンス

ようやく重い腰を上げた全日本野球協会

ようやく野球界が動き始めたようです。2020年11月の話ではあるが、BFJ(全日本野球協会)が「U-12指導者資格コース」を設けることを発表しました。これは本当に必要なものだったと思うし、僕自身、実際に受けられる段階になったらもちろん受験したいと考えています。

実は指導者ライセンスに関しては、もう10年以上前から導入すべきだと考えている野球関係者も、僕を含めちらほら出てきていました。日本の場合、プロ野球からのトップダウンになるケースが多いのですが、しかしプロ野球OBの多くがライセンス制度の導入に肯定的ではなかったんです。そのため野球界では、サッカー界のような指導者ライセンスへの取り組みが大幅に遅れていました。

しかしそれがようやく、2020年11月に始動が宣言されたわけです。これは僕らのように野球指導に関するスキルをしっかりと学んだ上でコーチングをしているコーチたちにとっては、本当に歓迎すべき大きな出来事です。

日本のスポーツ界には未だに暴力や暴言を指導の一環とする「勘違い指導者」が数え切れないほどいます。中でも競技人口が多いのに指導者ラインセンス制度の導入が大幅に遅れていた野球界では、そのような勘違い指導者の人数が桁外れに多いんです。

監督コーチが暴力暴言によって選手を傷つけていることもよくニュースになっていますし、選手間の暴力によって廃部に追い込まれてしまった名門野球部もあります。

日本ではスポーツと暴力の結びつきが非常に強いわけですが、これはスポーツ指導という観点においては100%間違いであると言い切れます。

連盟が乱立し過ぎている日本の野球界

今回ようやく指導者ライセンス制度の導入に向けた取り組みが始動されたわけですが、しかし簡単には行かないでしょう。その理由は日本の場合、野球連盟が乱立し過ぎているからです。

日本野球機構、高野連、シニアリーグ、ポニーリーグ、ボーイズリーグ、リトルリーグ、軟式野球連盟などなど、他の野球先進国と比較すると連盟の数が多過ぎるため、なかなか統制を取ることができないわけです。ちなみにアメリカの場合、小学生世代の野球はリトルリーグ連盟一本です。

球数制限1つ取るだけでも、導入までに本当に長すぎる時間が要されたことは野球関係者の記憶にも新しいと思います。

今回はU-12に対する指導者ライセンスの導入のみ始動されたわけですが、これはつまり小学生世代を任される指導者に対するライセンスの発給ということになります。

実は一部都道府県では、すでに独自のライセンス的なものを導入しているところもあり、野球指導者はその講習を受けなければならない状況も出てきていました。本来であれば全国一斉にやっていかなければならないわけですが、しかし一部からでも始まりつつある状況は、歓迎すべきものです。

ライセンス制度の成功に不可欠な野球界の常識の見直し

このライセンス制度の導入が上手くいけば、今後はコーチングに必要なスキルをまったく勉強していない方は監督・コーチとしてベンチ入りできなくなるのだと思います。

こう書いてしまうと、ライセンス制度が本当の意味で成り立つまではかなりの時間が必要になってくるような気もしますね。例えば基本的にベンチ入りできるのは監督と、2人のコーチだけになるわけですから、極端な話をすると、ベンチ入りしないボランティアコーチは今まで通り練習で暴力暴言を使うことができる、ということになってしまいます。

ライセンス制度を本当に意味のあるものにするためには、ライセンスを持っていない人物は野球指導の現場に介入してはいけないという明確なルール作りとルールを破った際のペナルティも同時に必要になってくるのではないでしょうか。

また、少年野球や中学野球も今後は、最小限の大人だけでも運営できるシステムに変えていく必要があります。例えばお茶当番などはまったく必要ないと僕は考えています。お茶当番は監督コーチの飲み物まで用意しなければならないわけですが、そんなものは自分たちで用意すべきです。

そして必要以上に保護者に負荷のかかる送迎に関しても、どこの家庭にも車や週末に運転できる大人がいるわけではありません。ですので送迎協力に関しても最低限で済むように、大幅に越境していくような遠征をしないで済むようにしていくためのブロック体制の整備も必要になってくるでしょう。

つまり何が言いたいかと言うと、ただライセンスを発給するだけのシステムを作っても、ライセンス制度は生かされないということです。ライセンス制度を本当に意味のあるものにしていくためには、野球界では常識とされてきた他競技における非常識を、今後はなくしていくという流れも不可欠になってくるのではないでしょうか。

ノーステップ打法のコツ

タイミングを上手く取れない打者が陥りやすい落とし穴

ミート力をアップさせるためには、タイミングの取り方も上手くなっていく必要があります。バットを出したいところに出してスウィートスポットでボールを捕らえたとしても、タイミングが合わなければ力強い打球を打っていくことはできません。

そしてタイミングを上手く取れない選手、もしくはタイミングを取るのが上手くない選手を指導する監督コーチが陥りがちな落とし穴があります。それはタイミングを取りやすくしようとして、ノーステップで打とうとしてしまうことです。

右バッターの場合は左足、左バッターの場合は右足でリズムを刻んだり、踵をタップすることによってタイミングを計り、実際にステップしていく動作によって最終的なタイミングを合わせていきます。

ですのでノーステップで打とうとすると、逆にタイミングを計ることが難しくなるわけです。

プロ野球選手でもメリットを得にくいノーステップ打法

ステップしていく動作というのはタイミングを合わせるためには不可欠になるわけですが、この時さらに、踵で地面を1回以上タップしてからステップしていく足を上げていくと、さらにタイミングが取りやすくなります。

バッティングは「動」から「動」でスウィングしていかなければなかなか上手くいきません。しかしノーステップ打法だと、「静」から「動」のスウィングになりやすいため、タイミングを合わせにくくなるだけではなく、エネルギーを効率的にインパクトに伝えていく動作の難易度も高くなってしまいます。

プロ野球選手にも何人かノーステップ打法に取り組んだ1軍レベルの選手がいましたが、最終的にはほとんどの選手がステップをする打ち方に戻しています。

ノーステップ打法に挑戦したプロ野球選手のほとんどがステップする打ち方に戻したということは、ノーステップ打法にはそれほどのメリットはなかったということです。メリットが多ければ、当然彼らもノーステップ打法を続けていたはずです。

ノーステップ打法でメリットを得られるタイプの選手とは?

これは7〜8人の僕の生徒さんから聞いた話なのですが、彼らは僕のレッスンを受ける前はバッティングの基礎も身についていなかったことから、中高の野球部でほとんどヒットを打てずにいました。

すると監督から強制的にノーステップ打法に変えさせられてしまったそうです。ちなみに7〜8人の中高生の生徒さんたちはすべて違う学校に通う選手たちですので、もちろんノーステップ打法を強制した監督もすべて違う方です。

ノーステップ打法というのは、打てない選手が打てるようになるために取り組むべき打ち方ではありません。ではどういう選手ならノーステップ打法でメリットを得られるのか?

上半身の筋力、下半身の筋力が共に鍛え抜かれていて、特に体幹の鍛え方が凄まじく、さらにその体幹を使いこなせるタイプの選手であれば、ノーステップ打法でメリットを得られることもあります。

言い方を変えると、タイミングを外されたとしても圧倒的なパワーによって、詰まっても先っぽでも強い打球を打ち返せるタイプの筋骨隆々の選手です。メジャーリーグでは、中南米の選手が圧倒的なパワーによってノーステップ打法で打つ選手が少なくありません。

ノーステップ打法のメリットは、ステップをするという動作を省略する分、より長くピッチャーのボールを見て打つことができます。そのためコースや球種の見極めは非常にやりやすいんです。しかしスウィング速度が速くなければ、ボールを長く見た分振り遅れやすくなるだけです。

パワフルなプロ野球選手でもノーステップ打法のメリットは得られなかった

中田翔選手やT-岡田選手もこのあたりのメリットを求めてノーステップ打法に取り組んでいたと思うのですが、今ではふたりともステップをする打ち方に戻しています。中田選手やT-岡田選手のようなパワーがあっても、中南米の選手のようにノーステップ打法のメリットを得続けることはできませんでした。

ちなみに一部評論家の方が大谷翔平選手の打ち方をノーステップ打法と話していたそうですが、大谷選手の打ち方はノーステップ打法ではありません。スモールステップ打法です。ステップをすることにより、しっかりと右足を使ってタイミングを取っている打ち方です。

ノーステップ打法よりも先に取り組むべきはステイバック

タイミングの取り方に関してはステップや、踵のタップによって向上させていくべきです。そしてヒットを打てない選手に関しては、間違いなくバッティング動作の基礎が身に付いていないはずですので、ノーステップ打法に走ってしまうのではなく、まずはステイバックモーションを身に付けるべきです。

ノーステップ打法というのは、応用中の応用ですので、基礎が身に付いていない選手がノーステップ打法に変えても、99.9%の確率で打てるようにはならないはずです。もちろん0.1%を求めて取り組んでいただくのは選手個々の自由であるわけですが、しかしもし僕が生徒さんにそのような相談をされた場合は、プロコーチとして一旦その生徒さんを立ち止まらせて先に、本当に必要な基礎が身についているかどうかを確認します。

僕の経験上、ノーステップ打法に取り組もうかどうか考えている選手から相談を受けた時、その選手に、バッティングに本当に必要な基礎動作が身に付いていたケースは皆無でした。

ですのでノーステップ打法に取り組む前に、まずはしっかりとしたバッティングの基礎動作を見直すようにしてください。もしご自身ではわからない場合は、ぜひTeamKazオンライン野球塾の無料の野球オンライン相談よりご連絡ください。お待ちしています!