年々増え続けて行く盗撮被害
女子競技だけでなく、甲子園でもよく問題になるのが悪質なカメラマンによる盗撮です。甲子園であればチアリーダー、オリンピックであればビキニのようなウェアを着た女子アスリートが盗撮され、それを性的な目的としてインターネットなどにアップロードされる被害は減らないどころか、年々増え続けています。そしてその手口も年々巧妙になっているようです。盗撮は本当に卑劣な行為でしかありません。
盗撮を楽しむ人間からすれば「性的対象となりうるウェアを着るのが悪いし、客席から写真を撮ることは犯罪ではない」という言い分なのでしょう。しかしこれは当人たちの性格同様に捻くれた論理です。
チアリーダーたちは毎日練習やトレーニングを頑張って、甲子園などで選手たちを応援する旗振り役を務めています。このチアリーダーたちの努力は球児同様です。ちなみにアメリカなどではチアリーディングはものすごくアクロバティックで、全国大会ともなると本当にアスリートとまったく変わりません。
ビキニのようなウェアを着ている女子アスリートにしても、少しでも良い数字を出すためにそのような限りなく空気抵抗が小さいウェアを着ているんです。何も盗撮してもらいたいから短いウェアを着ているわけではありません。彼女たちは肌の露出が多いウェアを着ることによって誰にも迷惑をかけていないし、誰かを不快にしているわけでもありません。しかし盗撮カメラマンはただただ迷惑でしかありません。
チアにしてもアスリートにしても弛まぬ努力を続け、パフォーマンスによって人々に勇気や希望を与えています。僕自身ダーリャ・クリシナという選手の大ファンで、昔から彼女のジャンプに魅了されています。彼女のジャンプを見るためだけに競技場に行ったことだって何度もあります。そして最近発売されたばかりの彼女の本も読みました。
例えばファンからしたら、大好きな女子選手の写真が性的な目的で使われることは本当に許せません。でもこれは変態カメラマンだけに限ったことではありません。スポーツ紙やテレビカメラだって、「そんなアングルから撮る必要はない!」というショットを頻繁に出して来ます。さすがにNHKの甲子園中継ではそんなショットはないとは思いますが、僕が寝ずに見てしまう世陸の中継などでは、けっこうそのような悪質なショットがあります。
甲子園で汗を流しながら一糸乱れぬ振り付けを見せて選手たちに勇気を与えているのは、当然ですが全員高校生です。大の大人が何十万円もするような高価な望遠レンズを使って彼女たちを盗撮するという行為には、本当に怒りしか感じません。盗撮されているのが自分の娘さんだったらどうでしょうか?
僕は野球場で、実際にチアを盗撮しているカメラマンに注意をしたことがあります。デジタル一眼レフなので、ちょっとモニターを覗けばどんな写真を撮っているのかが分かります。「そういうの撮るのやめろよ」と言うと、逆ギレされました。ですのでスマホで盗撮犯の顔写真を撮り、警備員に確認してもらい追い出してもらいました。
もしかしたら僕が関係者として球場にいたからだったかもしれないのですが、でも警備員も追い出すのに慣れているようでした。恐らく地方大会であっても、そういう変態カメラマンが後を断たないのでしょう。
盗撮の心配をしながら本領を発揮することなんてできない!
例えばお酒を買う時はIDの提示を求められることがあるわけですが、競技場でも「撮影したデータを確認させていただくことがあります」という内容に強制的に同意させた上で入場してもらう、という対処も必要なのではないでしょうか。
僕が大好きな陸上でも、女子アスリートの盗撮被害は大きな問題になっています。アマチュアカメラマンだけではなく、テレビ局のカメラにも選手たちから苦情が入っているほどです。
果たして「今盗撮されているかもしれない」と心配ながら、女子アスリートたちは実力を発揮することができるでしょうか?中にはそれが大きなストレスになって、実力を発揮できないまま敗退してしまった選手だっていたはずです。
女子野球の場合は肌が露出するようなユニフォームではないため、そのような盗撮被害はほとんどないとは思います。ですがチアリーダーに関しては、野球場ではもう長い間被害者となり続けています。高野連はこれに対してもしっかりと対処して行く必要があるのではないでしょうか。しかしここまでのところ、何らかの対処がなされたという話は聞きません。
僕の生徒さんの多くの方はご存知の通り、僕は野球肩経験があるため自分で野球をプレーすることはありません。というよりは、やりたくでもできません。そのため自分では幅跳び選手としてスポーツを楽しんでいるのですが、そこで知り合った女子アスリートたちと話していると、やはり盗撮被害を実感している選手は多いようでした。
甲子園のチアリーダーと話したことはほとんどないのですが、しかし高校生では被害にまったく気付くことができないというケースも多いのではないかと考えられます。16〜18歳くらいの高校生では、球場にはそういう変態カメラマンが大勢いるなんていう発想を持つことはできないと思います。だからこそこのような盗撮は悪質極まりないとしか言いようがないのです。
望遠レンズの持ち込みは許可制にすべきかもしれない
今回のコラムは野球技術とはあまり関係のない内容でしたが、しかしコーチとして球場に行くと実際に感じられた、気分がとても悪くなる悪質な行為としてご紹介させていただきました。選手たちの姿を撮影しながら、時々チアリーダーの元気な姿を写すことはまったく問題ないと思います。しかし変態カメラマンのレンズはチアリーダーにしか向けられていないのです。
お酒を買う時にIDをチェックされるように、球場で望遠レンズを使っていたらIDチェックをするというルール作りも必要なのではないでしょうか。はっきり言って高校野球のチアリーダー盗撮に関しては、ほとんど無法地帯であるように見えます。だからこそ高野連はもっと実効性のある明確なルールをチケット販売時に設けるべきだと思います。
個人的には望遠レンズの利用はID提示必須の許可制にすべきだと思います。そしてチアリーダー、女子アスリートたちの被害をなくすためにも、盗撮には罰則を設けるべきです。例えばディズニーランドでは、著しくルールを破った人は一生涯ディズニーランドに出入り禁止になるのだそうです。
野球場や競技場もこれくらいの措置を施して欲しいものです。盗撮カメラマンにチケットを購入してもらえなくても、大会運営にはまったく差し障りもないと思います。
昨年以降はコロナ禍の影響で僕も野球場には行けていないのですが、このパンデミックが収束したら、悪質なカメラマンに気分を害されることなく球場で仕事ができる日が来ることを願うばかりです。