悪いのはエラーを繰り返す子?それともコーチ?
少年野球チームでコーチをする際、まず気をつけなければならない点があります。それは、いきなり数をこなす練習は絶対にさせない、という点です。これをやってしまうと投げるにしても、打つにしても、守るにしても、走るにしても、上達までに時間がかかってしまうばかりか、遠回りさせてしまう危険性さえあります。
例えば守備で見ていきましょう。多くの少年野球チームが午前中から夕方まで、長すぎる練習時間で子どもたちを拘束しているわけですが、その練習時間の中で休憩を挟みながらも、合計1時間も2時間もひたすらノックを繰り返すチームがあります。
野球の基本は守備から、という考え方は理解できますし、守備力の強化はチーム力アップにもつながります。この点に関しては僕も異論はないわけですが、しかしただひたすらノックを続ける練習に関しては異論だらけです。
子どもたちに対しまずやらなければならない指導は、ノックのような数をこなす練習ではなく、ファンダメンタル(基本動作)の徹底です。ファンダメンタルが徹底されていない状態では、いくらノックを打ってもなかなか上達しませんし、間違ったグラブの使い方、間違った捕球姿勢、間違ったステップ、間違った投げ方によってエラーを繰り返してしまいます。
そうしてエラーを繰り返していると、挙げ句の果てにはコーチから怒鳴られてしまいます。その子はその子なりに一生懸命頑張っているのに、正しいファンダメンタルを教え込まれていないためにエラーを繰り返し、コーチに怒られてしまいます。悪いのはエラーをしているその子ではなく、その子にファンダメンタルを指導していない監督・コーチの怠慢です。
日本とアメリカの少年野球の指導法の違い
日本の野球塾の指導法
ファンダメンタルが身に付いていない状態でノックを繰り返しても、守備が上手くならない動作を繰り返すだけの練習になってしまい、いつまで経ってもエラーが減ることはありません。逆に正しくないその動作が体に染み付いてしまい、良い動作に直していく際に癖が抜けずに時間がかかってしまうケースも多くなります。
日本にもアメリカにも野球塾や野球アカデミーはたくさんあります。僕は両国の色々な野球塾を見学させてもらったことがあるのですが、そこには大きな違いがありました。
例えば日本の大手野球用具メーカーの野球塾のグループレッスンでは、ひたすらノックを受けたり、ひたすらフリーバッティングをしたりという練習をさせられていました。たまたまその日がそういう日だったわけではなく、何回か見学をさせてもらったり、情報交換をしに行ったりしても同じでしたので、いつもそうなのだと思います。
一方アメリカの、企業主導ではなく、僕のようなプロコーチが主催している野球アカデミーの場合、日本の野球塾のようにひたすらノックやフリーバッティングを繰り返す練習はまずさせません。もちろんフリータイムに選手個々が打ち込みをするようなことはあるわけですが、グループレッスンの中でノックやフリーバッティングを繰り返すことはほぼありませんでした。
アメリカの野球アカデミーの指導法
では何をするかというと、まさに上述したファンダメンタルの徹底です。グラブの向きを正しく使うための徹底指導、捕球姿勢を正しくするための徹底指導、その他ステップ、スローイング、カバーリングを正しい動作で行なっていくための徹底指導などが、まさに徹底的に、体に染みつくまで、それが癖になるまで繰り返されます。
ファンダメンタルにも様々なレベルがあるわけですが、レベルの低いところから始めていき、上達したら次のレベルのファンダメンタルに進んでいく、という流れで指導が行われます。そして正しいファンダメンタルを身につけていき、それをノックやバッティング練習で活かしていく、という流れになっていきます。
正しいファンダメンタルを身につけた上でじゃないと、ノックやフリーバッティングのような反復練習は意味を成しません。まずはボールを使わずに正しいフォームを身につけていき、それができた上で少しずつボールを使ったトレーニングにシフトしていきます。
こんな少年野球のコーチには気をつけよう!
少年野球や中学野球というのは、とにかくファンダメンタルを徹底させなければならない年代です。ファンダメンタルが身に付いていない状態でダブルプレーのような応用練習をしたところで、これは足し算もできないのに掛け算に挑戦するようなものです。
でも足し算が最初の一歩目ではありません。足し算の前にまずは1〜10を、そして1〜100を正しい順番で数えられる必要があります。数を正しく数えられない状態では足し算引き算さえままなりません。
少年野球の指導でも同じです。野球を始めたばかりの、ファンダメンタルがまだまったく身に付いていない子にノックを受けさせても上手くなるはずがないんです。まずは正しいボールの握り方を教えて、そして正しいグラブの使い方、正しい捕球姿勢、正しいステップワーク、正しい投げ方を教えていき、それを徹底させてからじゃないと、いくらノックを繰り返したところで上手くなることはありません。
このような話をすると「そんな基本練習ばかり繰り返していては子どもたちがすぐに飽きてしまう」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれはコーチの能力次第です。子どもたちがファンダメンタルを、高いモチベーションを持って楽しく学べないというのは、コーチに教える能力が足りないか、教え方が下手くそなだけです。
例えば集中力を切らしている子に対して「もっと集中しろ!」と言っているコーチには、コーチングスキルはないと思っていただいて間違いありません。コーチングスキルがあれば、「集中しろ!」というような「どうやって集中すれば良いのかがまったく分からない」あやふやな言葉を使わずに、自然と子どもたちを集中させていくことができます。これは有料の野球塾でも、ボランティアコーチが教える少年野球でも同じです。
ですのでお子さんが入る少年野球チームを選ぶ際は、いきなりノックを繰り返すようなチーム、「集中しろ!」というあやふやな言葉をよく使うコーチがいるチームはできるだけ避けましょう。と言っても、そういうチームばかりかもしれませんが(苦笑)
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