投球する時にキャッチャーミットを見続ける必要はない

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投球をする際、投手は最初から最後までキャッチャーミットを見なさい、と教わった方は多いと思います。このコーチングは、制球への意識付けという点では効果があります。ですが人体のメカニズムを踏まえて投球動作を考えて行くと、これは決してベストなコーチングではないということに気付かされます。なぜなら、投球フォームがしっかりと安定していれば、大げさな話、目を閉じていても投げたいところにボールを投げることが可能となるからです。

投球フォームとは、一朝一夕で作り上げられるものではありません。数ヵ月、数年かけて作っていくものです。例えば今日何かを変えて、それがすごく上手くいったからと言って、そのフォームが完成されたことにはなりません。例え今日は上手くいったとしても、明日になればそのフォームも僅かに狂い、昨日できたことができないということが普通にあるのです。だからこそ投球フォームは数ヵ月、数年という長い時間をかけ、しっかりと体に染み込ませてこそ初めて完成したと言えるわけなのです。

さて、今回の投手育成コラムの本題は、投手の目線についてです。投手は投球動作に入ったら、最初から最後までキャッチャーミットを見続けることが大切であると言われていますが、これがすべてではないということを、みなさんには知っていただきたいと思います。キャッチャーミットを見続けて投球動作を進行させていくと、体が本来持っている「頚反射(けいはんしゃ)」という機能を使うことができなくなってしまいます。頚反射とは、顔を左に向けると、体もその動きに付いて行こうとする反応のことを言います。

頚反射と投球動作の関係をかんたんに説明したいと思います。右投手の場合、左脚を振り上げた際に顔を三塁方向に向けます。そこから並進移動に移行していく際、一気に顔を左側に向けていきます。すると頭を頂点にし、体軸に回転エネルギーが発生します。つまり体が、コマのように勢いよく回転していくということです。

この回転エネルギーが、球威をアップさせてくれます。その理由は、スローイングアーム(右投手なら右腕)がアクセラレーションフェイズ(加速段階)にある時にこの回転エネルギーが発生するため、スローイングアームの加速にさらなる勢いが与えられるのです。この回転エネルギーをボールに与えることができれば、腕をリラックスさせた状態でも勢いのあるボールを投げることができ、肩・肘への負荷も抑えることができるようになります。

ただし投球動作に頚反射を活かしていく場合、投球フォームがある程度しっかりと固まっている必要があります。投球フォームが不安定な状態で頚反射を利用しようとすると、目線がブレるだけとなり、まったく制球できない状態になってしまうこともありますので、注意が必要です。ちなみに投球フォームを作っている過程で頚反射を加えていく場合は、実際にボールを投げる前に、シャドーピッチングで動作を確認してから加えていきましょう。打者が素振りで打撃フォームを作るように、投手はシャドーピッチングで投球フォームを作っていく必要があるのです。

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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