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2011年11月18日

走ることを大切にする投手は、目に見えて球速が上がる


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以前、投手はなぜ誰よりも走らなければならないのかというコラムを書きましたが、今回はその続編のような内容です。前回とはまた違った観点から、投手が誰よりも走らなければならない理由を書き進めてみたいと思います。

投手というポジションは、非常に不思議なポジションです。埼玉西武ライオンズの西口文也投手のように、プロ選手として非常に華奢な体型をしていても、全盛期は150kmものスピードボールを投げていました。反面西口投手よりも筋力のある投手でも、いくら頑張っても150kmを投げられない投手は多々います。これはなぜだと思いますか?

その答えの前に、打者も一緒に見ていきましょう。打者の場合、筋骨隆々の選手はパワーでホームランを打つことができます。しかし小兵の選手であっても、時にはスラッガー並の大ホームランを打つことがあります。これもまた不思議なことだと思いませんか?

ここではまず、投手と打者の違いをシンプルに考えてみたいと思います。投手というのは、時速0kmのボールを150kmの速度まで加速させるのが仕事です。一方の打者は、150kmまで加速された、すでにエネルギーも持っているボールを打ち、遠くへ飛ばすことが仕事です。投手が投げたボールはすでにエネルギーを持っている物体であるため、バットとの出会い頭のタイミングさえ合えば、ボールが持ったエネルギーをそのまま飛距離に活かすことができるのです。この投手と野手との仕事内容の違いは決して小さくはありません。

バッティングセンターに行ったことのある方なら分かるかもしれませんが、120kmのボールを勢いよく飛ばすことはとても簡単ですが、80kmのボールを勢いよく飛ばすことは非常に困難です。完璧なメカニズムでバットを振り、完璧なタイミングで振り抜かなければ、80kmのボールを遠くまで飛ばすことはできません。つまり何が言いたいのかと言うと、対象物のスピードが遅ければ遅いほど(対象物が持つエネルギーが弱いほど)、それを扱う人間の動作メカニズムが正しくなければ、その対象物を最善に扱うことはできない、ということなのです。

つまり時速0kmのボールに150kmものスピードを与えるために必要なのは筋力ではなく、メカニズムなのです。筋力がなくてもメカニズムがあれが150kmのボールは投げられますが、筋力があってもメカニズムがなければ150kmのボールを投げることは出来ません。

このメカニズムは、少し呼び方を変えると運動連鎖という言葉で表現することもできます。投手の場合、地面から得た反力エネルギーや、並進移動によって得た並進エネルギー、ステップ脚を振り上げることによって得た位置エネルギーを足の裏、脚、腹筋・背筋、肩、肘などを経由し、無駄なくボールに伝える。これが投手にとっての運動連鎖の必要性であり、スピードボールを投げるために必要とされるメカニズムなのです。

このメカニズムは、走ることによって向上させることが出来ます。走るという動作は、上半身と下半身の共同作業によって行なわれる運動です。腕を一切動かさずに、脚だけを動かして速く走ることは不可能です。脚の動きに連動して腕を振らなければ速く走ることは出来ません。つまり、時速0kmの体に20km(マラソン選手の走る速度)というスピードをつけるためには、体全体の運動連鎖が必要となってきます。この連鎖が上手くいかなければ速度が落ちるばかりか、余分な体力を消耗することとなり、長距離を走ることはできません。

逆に運動連鎖が良くなれば、余分な体力を使わなくても楽に時速20kmというスピードをつけることが可能になります。そしてこの運動連鎖が向上すると、走る時のリズムや着地テンポも良くなります。まるで足の裏がタイヤになったかのような感じで、スムーズに足の着地と抜きを繰り返すことができます。これができていると走っている時の足音は「タッタッタッ」という、リズムカルな足音になります。逆に余分な体力を使っていたり、運動連鎖が上手くいっていないと、「バタバタドタドタ」という重い感じの足音になってしまいます。

投手にとって走るというトレーニングは基礎体力を向上させるだけではなく、動作メカニズムを向上させるという役割も秘めているのです。そしてこれを突き詰めれば、歩くという動作ももちろんメカニズムを向上させる、ということになります。普段の歩行姿勢、ランニングフォームを大切にしていけば、必ず体内メカニズムは少しずつ向上されていきます。基礎運動におけるメカニズムが向上されれば、それは当然、さらに精密な動作が求められる投球動作にも好影響を与えます。

投手育成コラムをお読みいただければ、ただ走るだけではトレーニングとしてベストではないということがよくお分かりいただけると思います。せっかく毎日5km、10kmと走るのなら、そのラン効果を最大限に高められる内容にしましょう。走るという動作を大切にしていけばメカニズムが向上し、余分な筋肉量を持たなくても150kmというスピードボールを投げられるようになります。そして余分な筋肉量を持たないということは、その分スタミナの消耗が軽減されるということを意味します。ぜひあなたも今日から、一歩一歩の運動連鎖、メカニズムを大切にしてランメニューに汗を流してみてください。



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