子どもの未来を奪う投球過多が目に余る少年野球の現実

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日米・少年野球の投球制限ガイドラインの違い

【投手の投球数に関するガイドライン】USAベースボール・メディカル&セーフティ・アドヴァイザリ・コミティより引用

推奨される最多投球数
年齢 最多投球数/試合 最多試合数/週
8~10歳 50球 2試合
11~12歳 65球 2試合
13~14歳 75球 2試合
15~16歳 90球 2試合
17~18歳 105球 2試合
推奨される登板後の休息期間
年齢 投球数
1日 2日 3日 4日
8~10歳 20球 35球 45球 50球
11~12歳 25球 35球 55球 60球
13~14歳 30球 35球 55球 70球
15~16歳 30球 40球 60球 80球
17~18歳 30球 40球 60球 90球

【野球障害に対する提言】日本臨床スポーツ医学会より引用

練習日数・時間 小学生 1日2時間、週3日以内 ・野球肘の発生ピークは11~12歳
・野球肩の発生ピークは15~16歳
・登板翌日はノースロー
 (ほぐす程度の軽いキャッチボール)
・投込み翌日は投球数を減らす
・1日2試合の登板は禁止
中学・高校生 週に1日以上の休養日
全力投球 小学生 1日50球、週200球以内
中学生 1日70球、週350球以内
高校生 1日70球、週350球以内

選手たちの酷使を美談として報道する日本、虐待として報道するアメリカ

今回はまず、上記表をご覧ください。これは日米のスポーツ医学会がそれぞれ1995年に発表している未成年の選手に対する投球数の提言です(現在も有効)。投球数の制御によって肩痛・肘痛のリスクを軽減させるためには、これくらいの投球数が良い、という一般的な目安となります。

野球肘とは?|内旋型トップポジションが野球肘を生み出す!

しかし実際はどうでしょうか。甲子園を見ていても完投翌日にまた登板することは珍しくなく、それを美談として報道するメディアがほとんどです。小学生にしても制球力がある子ばかりが投げさせられて酷使され、その子の将来よりも、目先の勝利が優先されてしまう現実が想像以上に多いようです。

ちなみにアメリカには、日本でいうところの甲子園のような全国大会はありません。甲子園に関してはアメリカでも毎年報道されるのですが、アメリカでの報道のされ方は、日本のそれとは大違いです。「こんな猛暑の中、子どもたちに連日連戦されるなんて虐待だ」というスタンスで報道されることがほとどです。「子どもたちにこのようなスケジュールを強いるのなら、まず自分たち(大人たち)がやってみろ」というニュアンスです。

ボールを投げている限り、野球肩野球肘のリスクは0にはならない

野球肩や野球肘というのはもちろん、投球数の制限だけで完全になくすことはできません。その理由は、投球過多でなくても痛みが出ることがあるからです。投球動作が適正ではないと体への負荷が高まり、それほどの数を投げていなくても痛めてしまうことになります。

とは言え、肩痛・肘痛を100%なくすことはできません。ボールを投げている限りそこには多少なりともリスクが必ず発生するためです。だからこそ小中学生という体がまだ発達し切っていない時期に、正しい投げ方をしっかり身に付けることが重要なのです。正しい投げ方により、肩肘を怪我するリスクをできるだけ軽減させてあげることが大人たちの役割なのです。

適切な投げ方=肩肘を傷めにくいのに制球力も球速もアップするフォーム

つまり肩痛や肘痛のリスクを軽減させることができる、人体の構造に則した投球動作ということです。そのようなフォームで投げることができれば、故障のリスクを軽減し、更には制球や球威などのパフォーマンス面も向上させることができます。これこそが今、TeamKazオンライン野球塾が2010年以降、子どもたちに対し取り組んでいるレッスンスタンスです。

チームによっては、多少の痛みならば少年少女を平気でマウンドに登らせることもあるそうです。そのような経験を持つ子の親御さんからの僕(野球の先生/プロコーチ)へのご相談は、2020年になっても未だ絶えることがありません。子どもたちに対し、痛みがあるのに投げることを強いるなど、言語道断としか言いようがありません。

例えチームに9人しか選手がおらず、その子が抜けたら試合ができないような状況だったとしても、果たしてチームの運営と子どもたちの将来と、どちらが大切なのでしょうか?少なくとも僕は試合をすることよりも、子どもたちが怪我なく野球の楽しさを覚えることの方が大切だと考えています。試合とは、その上で行うべきものなのです。

野球肘の子が何人もいる野球チームが珍しくない

2010年〜2020年にかけて、TeamKazオンライン野球塾では1600人を超える選手たちを指導してきました。その中で親御さんと話をしていると、チーム内にいる複数の投手の中に、複数の肘痛を抱えた投手がいることが珍しくないという現実が見えてくるのです。

肘痛の場合は投球過多よりも先に、投球動作の良し悪しが大きく影響します。適切な投球動作を指導することができない、経験則だけで体の構造に反した投げ方を教えてしまっている監督・コーチが、非常に多いと言えます。中にはもちろん、ボランティアコーチであるにも関わらず僕のような野球の先生のところに通い、、たくさん勉強をされている素晴らしいコーチも多くいらっしゃいます。しかしそのような素晴らしい指導者さんはほんの一握りです。

野球人口が減っているのは野球人気が低迷しているからではなく、野球で怪我をする子どもが多すぎるから!

日本球界は野球をする子どもが減り、底辺が萎んできていると言われ続けています。しかしそうではありません!肩肘を痛めてしまうことにより野球の楽しさを実感できなくなり、野球から離れていく子どもたちが非常に多いのです。野球人気が低迷しているわけではないのです!

子どもたちが野球から離れて行かないような、怪我をしにくい適切な投げ方を指導ができる監督・コーチが増えて行けば、子どもたちの野球離れも食い止めることができるはずです。

AEDの使い方と場所はご存知ですか?

もしこの投手育成コラムをお読みいただいている方が野球指導者であるならば、最後に一つ質問があります。あなたはAEDの使い方と、普段練習しているグラウンドから一番近くにあるAEDの場所をご存知ですか?

肩痛や肘痛を減らす技術指導は非常に難しく、勉強も本当に大変です。ですが子どもたちの命を救うこともあるAEDの知識に関しては、その意識さえあれば誰でもすぐに身に付けることができます。子どもたちを指導する身となった際は、まずは最低限ここから始めてみてはいかがでしょうか。

天気予報の最高気温は直射日光ではなく、日陰で測っている気温なので要注意!

近年は野球肩野球肘だけではなく、熱中症で命を落とす選手も増えています。20年前とは比較にならないほど、日本の夏の気温は上昇しています。グラウンドレベルで真夏の直射日光の気温を図ると、軽く50℃を超えます。そんな中子どもたちに何時間も野球をやらせることは、果たして正しいと言えるのでしょうか?

日本の野球は、トップレベルで比較をするとまだまだアメリカの野球には遠く及びません。しかしアメリカの少年野球では、朝から日が暮れるまで子どもたちに練習を強いることはありません。遠征にでも行かない限り、ほとんどのチームは午前中だけとか、午後だけとか、こまめな休憩を挟みながら長くても3〜4時間程度で練習は終わってしまいます。しかしそれでも世界を魅了するメジャーリーガーを生み出すことができるんです。

※子どもたちの健康や未来を大切に考えている野球チームもたくさんあります。お子さんをチームに加入させる際は、そのようなチームを選ぶことが大切です。

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