イップスなってしまうまでの科学的解説

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以前の記事でイップスは技術的問題が引き金となって起こる、ということを書きました。今回はその技術的問題がなぜ精神的問題となってイップスになるのかを解説して行こうと思います。

イップスには、僕が考える限り必ず技術的問題が根底にあります。つまりこの根底にある問題に気付かないことで、その問題が悪化し、負のスパイラルに迷い込んでしまい、イップスという症状を引き起こしてしまうのです。ちなみにイップスという言葉は、元々はゴルフで使われていた用語でした。絶対に入るはずのパターを外してしまうことで、それが強烈な印象として脳裏に残り、それ以降同じような場面でその記憶が蘇り、同じようにパターを外してしまう症状、それをイップスと呼んだわけです。そしてパターを送球や投球に差し替えたものが、野球選手にとってのイップスということになります。簡単な送球場面であるほど、送球ミスをしてしまう状態のことですね。

技術的な問題に気付かずに暴投を繰り返してしまうことで、その経験は脳裏に強く焼きついてしまいます。そして脳裏に焼きついてしまったその心理状態、認知的な(心の)構えのことをスキーマと呼びます。暴投をしてはいけない場面、この「暴投スキーマ」が活性されてしまう状態が、イップスの基となります。

暴投をしてはいけない場面で、暴投に関する思考や行動が続いてしまうと、暴投に対する脳の反応スピードが速まっていきます。つまり「暴投をしてはいけない」、「四球を出してはいけない」と、投げる前に考えてしまうことで暴投や四球に対する脳の反応スピードを自ら速めてしまい、その反応スピードがのちの行動に大きな影響を与えてしまいます。関連する思考や行動が続く中で脳の反応スピードが速まってしまうことを、プライミング効果と呼びます。暴投に関するプライミング効果が最大になってしまった状態が、イップスの科学的説明ということになり、これが技術的問題が精神的問題になってしまう瞬間というです。

「病は気から」という言葉ではありませんが、イップスや暴投に関して考え過ぎてしまうことで、自らイップスに追い込んでいってしまう場合があります。ですので暴投を繰り返してしまう場合は、暴投してしまうことに悩むことをやめて、なぜ暴投になるのかという技術的根拠をコーチと一緒に探し出す努力をしましょう。そうすれば悪化する前に、未然にイップスになることを防ぐことができるはずです。

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