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2012年03月23日

スライダーが長打になりやすい物理的根拠と、その防ぎ方


投球術とは、その場その場の状況に応じ、臨機応変なピッチングをする技術のことです。小中高までの、比較的選手人口の多いグレードの野球であれば、例えば自分の実力さえ発揮できれば楽にトーナメントの1~2回戦を突破できてしまうこともあります。もちろんこれには組み合わせの運・不運に拠るところではありますが。しかし大学・社会人・プロレベルと選手人口が少ないグレードの野球になると、そうは行きません。自分のフィジカル面の能力だけでは勝つことは難しく、そこに投球術という新たな技術が加わっていかなければ、安定して勝つことはできなくなります。

今回は投球術の中でも、スライダーの投げ分け方について書き進めてみたいと思います。スライダーとはご存知の通り、打者にミートされると打球に最も飛距離が出てしまう球種です。その理由はスライダーという球種のボールの回転方向にあり、特に縦方向に曲がるスライダーは、打者から見ればバックスピン回転でボールが向かってきます。ボールにかけられるバックスピンは、ボールを上方へ持ち上げるマグナス力が働きます。投球であればお辞儀をしにくいストレートとなり、打者が打つ飛球であれば落下しにくい飛球、つまりホームランになる可能性の高い飛球となるわけです。

スライダーの場合、打者から見れば始めからボールにバックスピンがかけられているため、ミートすれば簡単に長打を打つことができるわけです。さらに話を深く掘り下げると、ボールという球体とバットという球体がぶつかった際、バットがボールの上方45°の角度から衝突すると、ボールには最も多いバックスピンがかけられることとなります。この時高度な技術を持つ打者の場合、バットにトップスピンをかけながらスウィングをしています。この場合さらに多くのバックスピンがボールに与えられることになり、打球の飛距離はさらに伸びていきます。これが天性のホームランバッターと呼ばれる選手のスウィングの、物理学的根拠です。

さて、今度は上述した内容を投手目線から見ていくことにしましょう。投手目線で見た際、考えるべきことはスライダーを45°の入射角度から打たせない、ということです。リーグ戦のように、何度も対戦をするチームの選手が相手であれば、情報は簡単に集めることができます。しかしトーナメント戦のように情報の少ない状態で戦わなければならない場合、まず打者が構えるバットの角度をチェックしましょう。

バッターはバットを立てて構えていますか?それとも寝かせて構えていますか?

バットを立てて構えている選手は、シンプルに分類するとすればスラッガータイプです。バットを立てて構えることでバットのトップスピードは増し、ボールに対しても45°の入射角でバットを出しやすくなります。

逆にバットを寝かせて構えている選手は、面と面で捕えて打とうとするタイプです。つまり打球にスピンをかけて上げたり転がしたりするのではなく、まるでテニスラケットのようにバットの面を使い、ボールの面を叩き、弾き返す打ち方です。この打ち方の場合、一般的には入射角は小さくなる傾向となるため、打球にはそれほどのバックスピンはかけられません。

この2つの要素とスライダーという球種を考えた際、まず縦スライダー(ヴァーティカル・スライダー)は、横スライダーよりも打者目線ではバックスピン(投球自体はトップスピン)が多くかけられています。投球軌道を真横から見ても、ストレートと比べ、縦スライダーはより深く地面方向に向かっていきます。ということはこの球種が甘く入ってしまった場合、バットを立てて構えている打者が振り出したバットは、自然と45°の入射角に近い角度でボールにコンタクトしてしまいます。しかしこれを縦スライダーではなく、真横に滑るスライダーとした場合、その投球には打者目線からのトップスピンではなく、打者目線からのサイドスピンがかけられます。バットを立てて構えた打者のバットは、投球軌道に対してダウンスウィング始動となるため、ボールの縦の動きには強くても、ボールの横の動きには少し脆さを抱えます。

一方バットを寝せて構える打者の場合、スウィングされるバットは、面で捕えに行く分ボールの横の動きには対応しやすくなりますが、投球軌道に対しレベルスウィングになりやすい分、ボールの縦の変化には脆さを抱えます。つまり横スライダーよりは、縦スライダーの方がバットを寝かせて構える打者を抑えやすい、という確率が生まれてくるわけです。

もちろんバットを立てる、寝かせるというそれぞれの構えは一般論であり、中にはバットを立てていても面で捕えるタイプの打者や、バットを寝かせている天性のホームランバッターもいます。それはその時々での見極めが必要となりますが、しかし一般論や基本をしっかりと抑えていなければ、試合中に臨機応変に対応することはできません。

スライダーという球種は、投手であれば誰にでも投げることができる難易度の低い変化球です。そのためメリットもあれば大きなデメリットもあります。この投手育成コラムで述べたような一般論、基本をしっかりと抑えておけば、今までのスライダーをさらに強い武器へと進化させることも可能となります。これから大学、社会人、プロ野球を目指していく投手は、今後は技術だけではなく、知識から培える投球術を磨くということもぜひ大切にしてみてください。


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コラムカテゴリー:投球術
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