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硬式球と軟式球は打ち方が異なる、ということはわたしがコーチングをしている選手によく使う言葉です。その理由は単純に、ボールが潰れるか潰れないか、というところにあります。ただ、厳密に言えば硬式球も潰れます。時速140キロのストレートをプロのスラッガーがジャストミートすると、1/1000〜2000秒程度の短い時間で、ボールは約半分にまで潰れてしまいます。

ただ1/1000秒という非常に短い時間ですので、目視することはほとんど不可能です。性能のいいカメラであってもその瞬間を撮影することは難しいでしょう。ですが軟式球の場合は、かんたんに目視できるほど長い時間でボールが潰れていきます。そのため軟式球の場合は、ボールの面をバットの面で打っていく打ち方でないと、ボールがひしゃげて変な回転がかかってしまい、ヒットを打つことはできません。

一方の硬式球の場合は軟式球ほどは打った瞬間に潰れることはありませんので、いろいろな技術を使うことができるんです。軟式球を打つ時のように面と面で捉えていく打ち方ももちろん可能です。ですがこの打ち方は打球に回転がかからないため、飛距離は伸びません。

ですがバックスピンやトップスピンをかけられると打球はどうなるでしょうか?バックスピンがかかればマグナス力が働き、ボールは放物線を描いてホームランとして遠くまで飛んでいきます。逆にトップスピンがかかれば球足が速くなり、簡単に内野手の間を抜けていく打球になります。

軟式球というのは日本特有のボールであるわけですが、取り入れられる打撃技術は絞られてしまいます。ですので将来的にもピッチャーをやる可能性が低く、ピッチャーよりも4番打者になりたいという場合は、比較的早い段階から硬式野球に入っていった方が将来的にはプラスになります。

軟式野球では腕力やバットの質でしかなかなか飛距離を伸ばすことができないのですが、硬式球の場合は体の線が細い選手であっても技術さえ身につけられれば、ホームランバッターになることができます。例えば若い頃の清原和博選手や落合博満選手は線の細い選手であったわけですが、それでもホームランをたくさん打てていましたよね。彼らはホームランを打つための技術を持っていたからこそ、細い体でもホームランを打つことができたんです。

今で言えば2015年今季、38本でセ・リーグのホームラン王に輝いた東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手は身長180cm、体重76kgという非常に細い選手です。どちらかと言えば投手体型と言えますよね。それでも技術があればプロ野球というトップレベルであってもホームランを量産することができるんです。

ですので硬式野球をされている方は、腕力でホームランを打とうとはしないでください。腕力でホームランを打てるのはレベルが低いうちだけです。野球のレベルが高くなればなるほど、腕力ではホームランは打てなくなります。ホームランを打つためには打球にバックスピンをかけるための技術が必要で、その技術を持っていればフルスウィングをしなくてもホームランを打てるようになります。実際、埼玉西武ライオンズの中村剛也選手も7〜8割で振った時の方がホームランになりやすい、と話しています。

硬式球は、軟式球とは比べられないほど技術に対し素直に反応してくれます。技術があれば相応のパフォーマンスに繋がりますし、技術がなければパフォーマンスが上がることはありません。つまりスラッガーになるためにはまず、自分がどのようなバッターになりたいかを明確にする必要があり、そのタイプに合わせた技術を身につけていくことが大切なのです。

ホームランバッターになりたいのに、ボールにバックスピンを与えない技術を練習し続けても、どれだけ練習しても技術と目標がちぐはぐになりホームランバッターにはなれません。ホームランを打ちたければ、バックスピンを与えられる打撃技術を身につける必要があるんです。

逆に、先日216安打で日本最多安打の新記録を樹立した埼玉西武の秋山翔吾選手のようにヒットを量産したければ、それに合った技術を選んで身につける必要があるわけです。目的が変われば技術も変わり、その技術に対し素直に反応してくれるのが硬式球です。そういう意味でバッターの場合は硬式球の方が野球の幅が広く、きっと軟式球以上に野球を楽しめるのではないでしょうか。
「上から叩け」とチームで指示を受けることはよくあると思います。硬式野球でももちろん言われることですが、しかしそれ以上に軟式野球で言われることの多い指示です。そうです、これは「指導」ではなくて「指示」なのです。選手を上達させるためのアドバイスではなく、その試合に勝利するために出される指示なのです。

軟式球の特性として、バウンドが高く跳ね上がるというものがあります。硬式球の場合はいくら強く叩き付けても、プロ仕様の底が硬い人工芝球場でも使わない限りそうそう高くバウンドが弾むことはありません。ですが軟式球の場合は、バウンドがまるでフライのように高く跳ね上がることもあります。するとボールが落ちてくる前に内野安打になることが多くなります。

軟式野球の強豪大学も、内野安打を狙う作戦によって勝利を重ねているケースが多くなります。もし選手自身が将来、一生軟式野球しかしないと決めているのならば、小学生のうちから叩き付ける打撃を教え込むのも良いかもしれません。しかし将来的に硬式野球に進みたいと考えている選手であれば、ボールの頭を叩き付ける打撃を体に染み込ませることは良くないと、Littlerockheartでは考えています。

野球はチームプレーによって勝利を目指すスポーツですが、しかしチームである以前に選手はそれぞれ、一人のアスリートなのです。そのアスリートの技術向上を阻む可能性がある「指示」は、無闇に出すべきではないのです。そのような指示を出す場合は、叩き付ける打撃が必要だと選手自身が感じられる場面で出さなければ、選手の中には「気持ちよくバットを振れなかった」という思いばかりが残ってしまいます。

さて、ではなぜ「上から叩く」打撃は硬式野球ではプラスに働かないのでしょうか?ちなみに硬式野球であっても、バットを上から出していくことは必要です。しかし上からバットを振り下ろすことと、上からボールを叩くことは似て非なるものです。まずボールを上から叩いてしまうと打球はほとんど確実にゴロになり、回転もほとんどかかりません。そのため球足の遅い、ボテボテの内野ゴロになる確率が非常に高くなります。50mを5秒台で走れる選手でなければ、バウンドも低い分ここから内野安打を稼ぐことも難しくなります。

つまり軟式球では内野安打になるゴロも、硬式野球ではただの内野ゴロになりやすいということになります。反面バットを上から振り下ろし、ボール内側の下半分を叩くことができると、フライになった場合はバックスピンがかかり滞空時間が長くなり、飛距離が伸びます。また、ゴロになった際はトップスピンがかかり球足が速くなり、内野手の間を抜けていくヒットになりやすいのです。

「上から叩け」という指示は、決して間違いではありません。しかし練習段階ではバットを上から振り下ろし、ボールの下半分を強く叩いていくことを指導していく必要があります。そうしなければ軟式球でしか通用しない打者になってしまいます。

確かに試合に勝つことは大切なことです。しかし小学生・中学生を指導する方々は、その選手が将来どのレベルに進んでいきたいのかをしっかりと確認した上で、その目標に合った内容の指導を出していく必要があります。そうしなければ軟式チームでは大活躍できたとしても、硬式野球に変わった途端、満足のいくプレーができない選手になってしまうこともあるのです。

同じバットを上から振り下ろす打ち方であっても、ボールの頭を叩くか、下半分を叩くかでパフォーマンスはまったく別物になってしまいます。子どもたちを教える監督やコーチには、そのようなこともしっかりと理解した上で指導をしていただければと思います。
なぜ日本の一流打者たちであっても、その多くがメジャーリーグで長年活躍することができないのでしょうか?本当にメジャーリーガーとして長年活躍できた打者は、イチロー選手と松井秀喜選手だけと言っても過言ではありません。今季は野手では青木宣親選手や川崎宗則選手がアメリカでプレーしていますが、なかなか活躍し切れないというのが現状です。

アメリカで通用する日本人打者が増えない要因には、日本特有である軟式球の存在があるとLittlerockheartでは考えています。軟式球と硬式球とでは、打ち方がまったく異なるのです。軟式球の場合はボールの面とバットの面を使って打たなければ、コンタクトした瞬間にボールが潰れてしまい、ポップフライになりやすくなります。一方硬式球の場合は面と面よりは、ボールにバックスピンやトップスピンをかける前提で打った方が飛距離が伸びやすく、球足も速くなります。

日本人打者の多くは子どもの頃に軟式球を経験し、その打ち方が体に染みついてしまっているのです。さらに言えば投手側の腕でバットを引っ張るようにして打つことを多くの選手が教わってきたため、体が前後しやすく、メジャー特有のムーヴィングボールに対応することが難しくなるのです。

将来メジャーリーガーを夢見るのであれば、小中学生のうちから硬式球の打ち方を体に浸み込ませる必要があります。しかし日本の少年野球では、プレイヤー本人が気持ちよく打つことよりも、右方向に転がすなどのチームバッティングが最優先されるケースが多いようです。チームバッティングはもっと技術的に向上してから覚えて行った方が良いようにわたしなどは考えてしまいます。特に小学生のうちは、おかしな動作に関しては改善指導してあげる必要がありますが、それ以外ではまずは伸び伸びとプレーをさせてあげるのが一番なのではないでしょうか。

つまり右方向にゴロを打つためのバッティングではなく、右打者であれば二塁手の頭をかすめていくような強いライナーを打てた方が、プレーをしていて楽しいと感じるはずです。そして楽しいと感じられるようになれば、中学・高校へ進んだ時に厳しい練習にも耐えられるようになります。

もし日本球界が本気で国際野球での勝負を意識するのであれば、小学生のうちから硬式球に慣れさせることも重要だと思います。例えば硬式球を一回り小さく、軽くし、小学生の体に合ったサイズにするのも一つの手ではないでしょうか。硬式球は硬いため、確かに当たったら危ないわけですが、ヘッドギアなどを着用すればその問題もある程度までは解決することができます。

日本は国際試合になるとスモールボールに徹底しますが、これは現実問題として、スモールボールにしか対応できない打者がほとんどだからなのです。国際野球やメジャーリーグで、パワーピッチャーが投げるボールを上手く打ち返す技術をもっと指導していかなければ、日本球界の打者はいつまで経ってもメジャーで安定した活躍を見せることは難しくなるでしょう。そして国際試合で活躍できる打者を育成するためには、指導者がステイバック打法とウェイトシフト打法の正しい指導方法をしっかり身に付ける必要があります。

日本球界は小学生野球を始めとして、もっと指導者が熱心に勉強しなければなりません。投球動作の指導にしても、打撃動作の指導にしても、ほとんど知識なく教えてしまっているチームが大半です。そしてチームによっては5人も6人も肩痛や肘痛を発症している選手がいるケースもあるほどです。これは指導者に指導能力がない何よりの証です。まずはここからしっかり改善し、子どもたちが怪我なく野球を続けられるサポートができる指導者が増えていかなければ、日本野球は本当の意味で国際試合で戦い抜く力を付けることはできないと、わたしは常々考えているのです。