今回の投手育成コラムでは、野球選手の体脂肪率について書き進めてみたいと思います。体重と体脂肪率の管理に関しては、アスリートにとっては絶対に不可欠な要素となります。もし体脂肪率を測れる体重計をお持ちでない場合は、それほど高価な商品ではありませんので、1つ持っておいた方がいいと思います。
さて、まずは日本のプロ野球選手の話から始めてみたいと思います。実は日本のプロ野球選手の体脂肪率を研究した論文というのはほとんど存在しておらず、野球選手全体の平均値も正確に知ることはできません。しかし個人的にヒアリングをしてみると、一般的な選手だと10〜12%、体脂肪率が高い選手だと13〜17%、アスリート体型には見えない選手の場合は18%以上あるケースが多いようです。中にはキャンプイン初日には20%近い体脂肪率で、キャンプをこなしながら15%程度まで絞っていくという選手もいるようです。しかし15%だとしても、アスリートとして妥当な数値であるとは言えません。
これがメジャーリーグになると、体脂肪率を研究した論文が多々出てきます。それらを見ていくと、まずショートストップの平均体脂肪率が9.2%で、全ポジションの中ではずば抜けたアスリート体型であると言うことができます。逆に平均値が最も高かったのはピッチャーで14.7%でした。そして外野手全体が9.9%で、内野手だと11%という数値だそうです。
野球というスポーツは、ピッチャーに関しては試合中に走り回ることはほとんどありません。そして普段のトレーニングもアジリティ(敏捷性)よりも、スタミナトレーニングの方が多くなりますので、体内の筋肉量が野手よりも増えにくいという状況が考えられます。例えば投手であっても、900gのバットを毎日数百回振れば、平均体脂肪率は下がっていくはずです。さらに言えば、先発とリリーフとを比較しても、リリーバーの方が体脂肪率は低いと考えられます。
ただ、この数値を出した際のサンプルは全ポジション合わせて170人程度で、ピッチャーの絶対数はそれほど多くはありませんでした。もっと人数を増やして平均値を出していけば、13%未満になったのではないでしょうか。
このような数値を踏まえ、ピッチャーだったら体脂肪率は10〜12%台、内野手だったら9〜11%台、外野手だったら8〜10%台、という数字を目安としてコンディショニングを行なっていくといいと思います。ちなみにマリナーズのイチロー選手の体脂肪率は7.2〜7.4%という数字が公式に発表されています。そして2019年キャンプイン時、マリナーズで最も体脂肪率が低い選手はイチロー選手だったそうです。