これまで投手育成コラムでも何回か書いてきたことですが、投球・送球動作にまったく問題がないのにイップスになるということは絶対にないんです。イップスになってしまったという自覚が出て、イップス専門のメンタルクリニックに通うという選択肢もありますが、同時に原因となった動作を改善させないと、制球難という意味では改善することはありません。
イップスになってしまう原因は人それぞれです。例えば良くない動作で投げ続けていて制球難が直らず、試合の大事な局面で大きな送球エラーをしてしまうことによって、さらに動作が悪化してしまうケースもあります。確かにイップスというのはメンタル面の問題もあるわけですが、同時に、必ず動作内にも原因があるんです。
当野球塾のイップス改善コースでは、これまで50人以上の選手がイップスを改善させてきました。10回コースで、もし改善が見られなかった場合は成果保証もあるわけですが、ポイントは、わたしがイップスの改善をサポートしてきた選手たち全員に、動作内に送球を乱している原因が存在していたという点です。これまでコーチングをしてきて、良い投げ方をしているのにイップスになっているという選手とは、まだ出会ったことはありません。
その原因の中でも特に多いのが、ランディングした足部の動作、スローイングアームの手首の動作、肩関節と股関節の動作に関する問題です。ほとんどのイップスの選手には、このうちのどれかが原因として見られました。
イップスとはもちろんメンタル面でもトラブルでもありますので、クリニックに通うなどしてメンタル面のサポートを受けることもプラスになると思います。しかし必ず同時に、動作改善を進めていく必要もあります。メンタルサポートのみでイップスが改善するケースというのは、わたしがこれまでイップスの選手たちにヒアリングした限りでは、非常に少ないようです。
イップスを実感してしまうと、楽しいはずの野球が辛いものに変わってしまいます。キャッチボールさえもまともにできなくなってしまう方も多く、実際イップス改善コースに通っていただいた選手たちはコーチング前は、相手のグラブどころか、相手の手が届くところに投げることができない選手も大勢いらっしゃいました。しかしわたしのコーチングのもと動作改善を進めたことにより、皆さん普通にキャッチボールができるまでに改善していきました。
これは野球肩・野球肘と同じなんです。肩肘も病院で治してもらっても、同じ投げ方を続けていけばまた痛みが出てしまいます。イップスも同じで、クリニックでメンタルサポートを受けたとしても、同じ投げ方を続けていればまたイップスに逆戻りしてしまうんです。ですのでぜひ、イップスを実感されている方は動作改善にも着目していただければと思います。