現在のルールではアクシデントがない限り、ピッチャーは最低1人の打者に投げ終えない限り投手交代をすることはできません。しかし今メジャーリーグでは試合時間の短縮を目的に、これを最低1人ではなく、最低3人にしようという動きがあるんです。個人的には賛成です。
賛成なのですが、戦略上の幅が狭まってしまうことは確かです。例えば後ろに右バッターが続く場合、左対左というワンポイントリリーフという戦術を使いにくくなってしまいます。とは言え、実は良いピッチャーというのは左右の被打率には大差がないことがほとんどなんです。逆にバッターから見れば、左ピッチャーをまったく苦にしない左バッターも多数存在します。良い動作でプレーできている選手というのは、実は対戦相手の左右にはそれほど大きな影響は受けないんです。
僕のコーチングを受けている投手の中にも、以前は右打者に対する被打率が非常に高い左投手がいました。左打者の被打率は1割台なのに対し、右打者には3割以上打たれていました。しかし動作改善によってボールの軌道を修正してあげることにより、被打率は左右ともに1割台に抑えられるようになりました。
左打者からも、右打者からもボールが見えにくくなる良い投げ方というのはちゃんと存在しているんです。いわゆるスモーキーと呼ばれる投手たちの投げ方ですね。煙の中から突然ボールが飛んでくるようなイメージで、打者目線でリリースポイントをなかなか見極めることのできない投げ方、これができるようになると、打者の左右は関係なく被打率を低く抑えられるようになります。そして僕のコーチングでは、もちろん少しでもスモーキーに近づいてもらうための動作改善を行なっています。
良い投げ方さえ身につけられれば、小学生投手でもスモーキーになることができます。でも日本では「腕を大きく使いなさい」と教わることが多いですよね?でも腕を大きく使うほど、リリースポイントは打者から見えやすくなりますし、肩肘への負荷も大きくなってしまうんです。
ピッチャーがみんなスモーキーになることができれば、ワンポイントリリーフなんてまったく必要なくなりますね!でも少年野球のコーチが指導法を間違ってしまうと、スモーキーとはまったく逆のタイプのピッチャーになってしまうんです。つまりリリースポイントが打者から見えやすくなってしまうため、外に逃げるボールでしか勝負できなくなり、配球の幅が狭くなってしまうことで、力一杯投げないと打者を打ち取れなくなってしまうタイプの投手です。このような投手は先発では通用しませんし、肩肘を壊してしまうリスクも跳ね上がりますので、小学生だろうとプロだろうと注意が必要ですね。