力みなく投げるとは?その具体的な改善法の鍵はサイレントピリオドにあり!

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最終更新:2023年8月24日

力まず投げる最初の一歩目は下半身主導の投げ方の習得

投手にとっても最も難しい作業の1つが、力まずに投げるということだと思います。この作業はプロレベルの投手でも苦労していることで、力みなく投げられていても、ちょっとしたことがきっかけで力んでしまうこともあります。

例えば好投をしている試合で、唯一クリーンヒットを打たれている打者を打席に迎えると、「今度は抑えてやろう!」という強い気持ちが力みを生じさせることもあります。そして力んでしまったことで急に制球を乱し、それまでの好投が幻だったかのように簡単にノックアウトされてしまうことさえあります。

では力みとは一体何なのでしょうか?どうすれば力みなく投げられることができるのでしょうか?これを突き詰めていくと、やはり下半身の強化が最も近道であると言えます。下半身を強化し、楽に広いストライド(ステップ幅)で投げられるようになれば、上半身に力を入れなくても力のあるボールを投げられるようになるため、投球動作中の腕から自然と力みがなくなりやすくなります。

理想は、投球の最初から最後まで腕の力を抜いておく、ということです。でもこれはさすがに理想論であって、実際にそれを実現するのは非常に難しいことです。ですのでポイントをしっかりと抑えて、そのポイントで力まないようにすることが重要なのです。正しいポイントを抑え、そのポイントで力を抜けるようになれば、下半身の主導で腕を楽に振ることができるようになります。

投手なら確実にマスターしておきたいサイレントピリオド

サイレントピリオドという言葉を聞いたことがあるでしょうか?筋肉を最大限活かすために必要なのが、このサイレントピリオドというものです。これは主に、投球動作内の腕の動きの転回時に発生します。つまり後ろに引くテイクバック動作から、前へ向かって加速していくための分岐点であるテイクバックの最深部です。あとは腕の最大外旋から内旋に変わっていくトップの位置でも発生することがあります。

ここでとにかく大事にして欲しいのは、テイクバック時のサイレントピリオドです。テイクバックの最深部、つまり投球肩の肩甲骨が最も背骨に近づいたところで、投球腕の筋肉活動量を0%にする、もしくはできる限り0%に近付けるということです。ここで一度活動量を0%にすることで、次の動作以降で筋肉を最大限活かしていくことができるんです。今回の投手育成コラムの最大のポイントがここです!

テイクバックの最深部、この時点で腕は最大内旋状態にあるのが理想的なのですが、最大内旋状態から、外旋に移行していくその瞬間、本当に一瞬だけ腕の力を完全に抜くように意識していってください。0.1秒にも満たないようなこの一瞬だけ腕の力を完全に抜き、サイレントピリオドを発生させられるようになると、コッキングからアクセラレーションと続く一連の投球動作内に於いて、投球腕の活動量を最大に高められるようになります。力まずに投げるとは、まさにこの状態のことを言います。

腕の力を投球動作内で、最初から最後まで0%にすることは不可能です。もちろんそれができるのが理想ではありますが、そこには限度のない難しさが存在します。だからこそ必要以上に難しく考えるのではなく、ポイントを絞り、テイクバックの最深部でしっかりと力を抜くことだけを考えれば、力みなくボールを投げることができるようになります。

そして無駄な力みをなくすことができれば制球力も向上し、試合の途中で息切れすることもなくなり、まさに良いこと尽くめ!簡単な作業ではありませんが、ぜひ時間をかけて地道に練習を繰り返し、サイレントピリオドを発生させられる投手を目指してください。

ショートアームではサイレントピリオドは発生させにくい

ちなみに人間の体の構造上、高速で動きたい直前の動作でリラックスできるほど、高速で動きたいポイントでより動作速度を速められるようになります。

逆に高速で動きたい直前、投球動作や打撃動作で言えばテイクバックに当たるわけですが、テイクバックで力めば力むほど、リリースポイントやバッティングのインパクトを最高速度で迎えられなくなります。つまり球速・バットスウィングが遅くなってしまうということです。

サイレントピリオドは、一般的にはショートアームだと発生しにくくなります。ショートアームというのは、ワインドアップやセットポジションから両手を分離させていく際、スローイングアームの肘を曲げたままテイクバックに入る動作のことです。

ショートアームというのは、筋肉を活動させて肘を曲げ続ける動作が前提になるため、ショートアームからサイレントピリオドを発生させることは困難になるわけです。

逆にワインドアップやセットから両手を分離させていく際、一度スローイングアームの肘が軽く伸び切って一瞬腕がぶら下がったような形を経由してから、重心を下げることによって相対的に腕を上げていき、そこからテイクバックを作れるようになると、サイレントピリオドを発生させやすくなります。

ちなみにサイレントピリオドは球速アップだけではなく、肩肘への負荷を軽減させることもできますので、怪我せずに速いボールを投げ続けるためにも、ピッチャーとしてはぜひ習得しておきたい技術だと言えます。

難易度は決して易しくはありませんが、サイレントピリオドを発生させるられると複数のメリットを得ることができますので、ぜひテイクバックでサイレントピリオドを発せさせられるフォームの習得を目指してみてください。

コラム筆者:カズコーチ(野球動作指導のプロ/2010年〜)
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