今回のスラッガー養成コラムでは、ステップ足の役割について解説してみようと思います。この踏み出す足なのですが、実はステイバック打法とウェイトシフト打法とでは役割が少し異なるんです。
まずステイバック打法の場合、ステップ足はタイミングを取るためだけの作業になります。つまり足を高く上げても飛距離にはそれほど影響は与えられず、純粋にタイミングを取るためだけの作業となるため、シンプルに使っていくことができます。上げ方に関しては軸足に引き寄せるようにしてからステップするのではなく、その場で上げてほとんどその場に下ろす形がベストです。この形になると体重移動をしにくくなり、頭の位置も移動しにくくなります。
一方体重移動を行うウェイトシフト打法の場合、タイミングを取る作業と体重移動の両方をステップ足で行う必要があります。ウェイトシフトでももちろんノーステップ打法は可能と言えば可能なのですが、体重移動を行う場合、ノーステップで体重移動をするためには、体重移動を始動させるためのキッカケの動作が必要となり、その動作が余分な動作となってしまう可能性があります。
なおステップ足をステップする際、一度軸足側に引き寄せてしまうと、この動作が加わってしまうだけで頭が一度捕手側に移動し、それからまた投手側に戻っていく動きになりやすく、バッティングの正確性を著しく低下させてしまうんです。
体重移動そのものは、ステップ足を高く上げるほど大きなエネルギーを作り出すことができます。しかしこのステップ足で同時にタイミングを取らなければならないため、どちらかを犠牲にする必要性が生じます。つまり飛距離を取るか、タイミングを取るかという選択です。
この選択肢の存在から日本のプロ野球では3割と30本塁打を同時に達成するのが難しいと言われ続けていました。しかし現代の一流選手の多くはステイバック打法で体重移動をほとんど行わずに打っていますので、ステップ足の役割を単純にタイミングを取ることだけに集中させることができます。そして飛距離に関しても体重を軸足にしっかりと乗せることにより捕手側に壁を作り、投球の力に押し負けることなく、打球を遠くまで飛ばせるようになります。ステップ足と軸足がそれぞれ役割分担できるのが、ステイバック打法というわけです。
一般的に日本の少年野球チームなどではほとんど99%、ウェイトシフト打法の指導が行われていると思います。ウェイトシフトを指導することは決して悪いことではありません。しかし問題は、ステイバック打法の存在を知らずに体重移動をさせている、ということなのです。
もしチームの指導者がステイバックの存在を知らずに体重移動を指導しているのであれば、一度お近くの野球塾に通い、体重移動をしない打ち方の的確な指導を受けてみた方がいいと思います。その経験により打率・長打率が目に見えて向上する選手は数え切れないほど本来であれば出てくるはずなのです。するとビヨンドなどに頼らなくても良い、ということになるわけですね。