確かにジャストミートすればアレックス・カブレラ選手のように、160mオーバーの特大ホームランを打てるかもしれません。ですがバッテリーからすれば、腕力を用いてフルスウィングをしてくる打者ほど料理しやすいタイプはいないのです。ちなみにカブレラ選手は腕力に頼る打者ではなく、質の高い技を持ち合わせた巧打者でした。
パワーというのは「速度×重量」で計算することができます。つまりいくら上腕二頭筋を太くしたとしても、速度が低下してしまってはパワーアップという結果にはつながりません。トニ・ブランコ選手が158kmというスウィング速度を計測したというニュースがありましたが、これはブランコ選手が腕力だけではなく、高い技術も持っているからこそ実現できた速度なのです。
もし腕力だけでバットスウィングが速くなるのであれば、ボディービルダーたちのスウィング速度は大変なことになってしまいます。ですが実際にはそうはなりません。なぜならボディービルダーたちには、バットを高速で振るための技術がないためです。ではバットスウィングの速度をアップさせるためには、どうすればいいのでしょうか?
その答えは2種類のバットを使いわけて素振りをすることです。素振りを100回する場合、最初の90回は通常の重さのバットで素振りを行います。最後の10回を通常の8〜9割程度の重さの軽いバットで素振りを行います。
素振りというのは打撃動作を改善するのと同時に、筋トレ効果もあります。素振りという筋トレを行った直後に、軽いバットを使って素振りをすることで、通常の重さのバットを振った時よりも速くバットを振ることができます。つまり、より速い動作でバットを振るための動作で素振りを終えることにより、より速く動く筋肉を作るという考え方です。
1kgくらいあるマスコットバットの場合は筋力アップにはつながりますが、バットスウィング速度の向上にはほとんどの場合つながりません。逆に高校球児が900gのバットで素振りをしたあとに、700g程度の軟式用バットで素振りをすると、スウィング速度は明らかに速くなります。この速くなった動作でトレーニングを終えることにより、速い動作が取れる筋肉へと再調整することができるのです。
すでに上述しましたが、パワーとは速度×重量です。つまり今現在持っている筋肉量を変えなくても、その筋肉がより速く動くように再調整してあげれば、速度×重量の計算値は今まで以上に高くなり、パワーアップに直結し、飛距離がアップするという結果に結びついていくのです。
マスコットバットをたくさん振ってしまうと、腰椎を痛めるリスクが非常に高くなるというお医者さんの研究結果も多数報告されています。ですが軽いバットを振って故障のリスクが高まるという事象はほとんど見受けられません。故障のリスクを軽減するという意味でも、スウィング速度をアップさせるという意味でも、この素振りのやり方をオススメしたいとわたしは考えています。
もしバットを買い換えても、軽いバットは捨てずに素振り用に取っておいてください。そしてぜひ上述した素振り方法をしばらくの間試してみてください。短くとも2〜3ヶ月続けて筋肉の再調整が進めば、スウィング速度もその頃にはきっとアップしているはずです。