先日友人に頼まれ、その友人夫妻とお子さんと一緒に、都内のとある野球塾の見学に行ってきました。友人には「ランチをおごるから自宅近くのこの野球塾を受講しても大丈夫か一緒に見に行って欲しい」と頼まれ、ランチに惹かれ行ってきました。もちろん僕のところに通えればベストだと思ってくれていたのですが、うちは江戸川区、友人は立川市とかなり距離があったため、区ではなく、市にある東京の野球塾を探していました。
有料の野球塾でも一部はまだ昭和の指導法
営業妨害になってしまうため、どこにある何という名前の野球塾かは言えないのですが、有料の少人数制グループレッスンの野球塾でした。そこのコーチによれば、生徒さんが1人しか来ない日もあれば、けっこう賑わう日もあり、人数はまちまちだそうです。そして僕も親類の顔をして見学をさせてもらったのですが、イマイチでした。
元プロ野球選手が指導されているのですが、その指導内容が少年野球で受けられるような非論理的な昭和のやり方だったんです。例えば「肘が下がっているからもっと肘を上げて投げなさい」という指導、これは絶対に言ってはいけない言葉です。「肘を上げて投げなさい」と言ってしまうと、今度は肘が肩線分を通り越してしまい、肘が上がりすぎるようになってしまいます。
右投手の場合、左肩・右肩・右肘が一直線になった状態のみが、肘が下がってもいないし上がりすぎてもいない、唯一の良い形となります。しかしこれは肘を上下させて調整をするのではなく、重心の上げ下げによって、相対的に高さを調整していく必要があります。案の定「肘を上げて投げなさい」と言われていた子は、今度は肩線分以上に肘を高く上げて投げるようになり、そのコーチもそれを見て「オッケー!」と言っていました。僕に言わせれば、どこもオッケーではありません!
日本にはほとんどないコーディネーターという役職
うちも一応「野球塾」と名乗っているわけですが、厳密には野球塾ではなくてパーソナルコーチング、もっと言えばコーディネートという種類になります。コーディネートとは、選手の動作を細かく分析し、どの動作がプラスに働いていて、どの動作がマイナスになっていて、どの動作をどのように修正すればパフォーマンスが上がるのか、ということを瞬時に判断し、それをわかりやすく具体的に選手に伝えていく作業のことです。
日本でコーディネーターを名乗っているのは、有名どころでは手塚一志コーチらがいらっしゃるのですが、僕も厳密にはコーディネーターです。日本ではちょっとわかりにくいのであまりコーディネーターと名乗るコーチはいないのですが、メジャーリーグなどを見ていくと「ピッチング・パフォーマンス・コーディネーター」や「ヒッティング・コーディネーター」などなど、コーディネーターという役職を持つコーチが多数いらっしゃいます。
僕はアメリカの選手と仕事をする時は「Coach Kaz」と呼ばれますが、役職は「ピッチング・パフォーマンス・コーディネーター」としてオファーを受けます。この役職は野球物理学やバイオメカニクス、解剖学への造詣が深いコーチにしか務まりません。マイナーリーグとメジャーを行ったり来たりしていたレベルの選手が、優秀なコーディネーターと出会うことによって突然超一流メジャーリーガーになったという話は1つ2つではありません。
野球塾を探す際の注意点
さて、そろそろ冒頭のとある野球塾の話に戻りましょう。その元プロ野球選手のコーチに、「肩肘を痛めない投げ方って教われますか?」と聞いてみたところ「しっかり走り込みをしておけば痛めることはありませんよ。最近の子は走り込みをしないから簡単に肩肘が痛いって言いだすんです」と、何とも非論理的な説明をしていただきました。もちろん僕は友人には「ここは無料だったとしてもやめた方が良い」と、そう思う理由を伝えながらアドバイスしました。
そこはグループレッスンだったため、マンツーマン専門の僕のところよりは料金設定は低くなっていました。しかし結局は月に1~2回のペースで、「立川から江戸川に通うのがベスト」だと思ってくれたようで、最終的には遠くても僕のところに通ってくれることになりました。もちろん僕から「うちに通ってよ」とは言っていません。売り込みをしないことは、2010年以来僕のモットーでもありますので。
担当コーチの人柄や、元プロというステイタスで野球塾を選ばれる方も多いかと思いますが、それ以上に重要なのはそのコーチのコーチングスキルです。肩肘を痛めない投げ方を理論的にわかりやすく指導できるコーチがいる野球塾を探してください。それを指導できるコーチであれば、制球力・球速アップに関しても理論的に指導できるスキルを持っているはずです。野球塾を探す際は、ぜひこのあたりのことも気にしながら探すようにしてみてください。