2010年1月にプロコーチデビューして以来、1500人以上の選手たちを個人レッスンしてきました。が、プロアマ合わせても、「この選手にコーチングは必要ない!」と思えるほど良い形で投げていた選手は、アメリカで担当した2投手だけです。確率的に0.13%です。日本では、僕がコーチングを担当した選手に限って言えば、完璧な投げ方をしていた選手は0%です。
解剖学は筋肉の名前を覚えるだけではない!
僕らのようなプロコーチは目視だけでもある程度正確に、そしてハイスピードカメラを使うとかなり正確に、その選手が今後どこを怪我しやすいか、もしくは怪我したことがありそうな部位を数分で見抜くことができます。例えばスローイングアームだけを見ても、肘の内側、真ん中、外側、肩の前方、真ん中、後方、上腕二頭筋、上腕三頭筋など、これだけ野球選手が痛めやすい部位があるんです。
それらの部位を、ボールを投げている最中にどう使ってしまうと痛めやすいのか、ということは、解剖学が頭に入っていなければ判断することができません。解剖学とは、ただ筋肉や関節の名前を覚えるだけの話ではなく、どのように動くとその筋肉が働くのか、もしくはその筋肉を使うとどのような動作を行えるのか、など、筋肉それぞれの特性まで理解しておく必要があります。
筒香嘉智選手こそ野球を本気で愛している選手
筒香嘉智選手はかなり柔らかい表現で言ってくれていますが、しかし実際には日本の学童野球の指導内容は酷いレベルです。コーチングしている横では、週末はいくつもの少年野球チームが練習をしているのですが、ちらちら覗いたり盗み聞ぎ(笑)をしていると、あえて肩肘を痛めてしまうような投げ方を教えていることが多々あります。
筒香選手は「大人たちが正しいことを指導できなければならない」というようなことを仰っていますが、本当にその通りだと思います。高校野球の球数制限週500球に関してもナンセンスです。先発して100球程度なら、週5回先発できるという話になってしまいます。重要なのはそれほど意味のない球数による制限ではなく、指導者が、怪我をしにくい適切な投げ方の指導法を学ぶことではないでしょうか。
「下半身を使って投げろ」と言ってはいけない!
肩肘を痛めにく投げ方というのは、僕が指導する野球肩野球肘撲滅クリニックを受講された方ならご存じの通り、理論的に存在しています。僕のコーチングでは、腑に落ちないことは皆無のはずです。つまり「こういう投げ方ができるようになれば怪我はしない」という投げ方があるんです。しかし僕がコーチングをする前からそういう投げ方をしていたのは、上述したように2人だけです。もちろん僕が見たことない選手を含めれば、日本にもたくさんいるのかもしれませんが、僕のコーチング現場に限ってのみで言えば、まだ出会ったことはありません。
試しに僕が指導する内容を一度マスターしてみてください。今まで肩肘が常に痛かった選手であっても、ほとんど痛みなく投げられるようになるはずです。もちろん本格的な治療が必要なレベルではない、という段階においてではありますが。「下半身をしっかり使わないと肩肘を痛める」というのは、野球肩野球肘を防ぐための指導とは呼べません。下半身と上半身を具体的にどう使って投げれば怪我を防げるのかと、そこまで明確に伝えることが「指導(コーチング)」です。選手たちからすれば「もっと下半身を使って投げろ!」と言われても、「え?どうやって?」って戸惑ってしまうだけです。選手から戸惑いを排除させてあげられる人こそ、コーチと呼ぶにふさわしい人だと言えます。しかし日本の学童野球では、選手を戸惑わせる人ばかりのようです。